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女性管理職比率が高い会社と、従業員の働きがいは関係があるのか?

2017.6.26

「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」という政府の指針を受け、今、多くの企業が女性の管理職を増やそうと努力されています。世界的にみても、日本の企業では、女性リーダーの比率が低いことが問題視されています。

しかしながら、各企業において取り組みを加速させていくことはそう簡単なことではなく、さまざまな壁にぶつかっているというお話をよく耳にします。最近では、「これほどの努力をして女性管理職を増やすメリットはあるのだろうか。」といった社内からの声に悩む企業もあるようです。

GPTWではこれまで多くの企業で従業員の働きがいについて調査を行ってきました。そこで、今回は、「女性管理職比率が高い職場とそうでない職場」に着目し、従業員の働きがいに違いが見られるのかどうか、分析を行いました。

調査概要

2016年10月1日~2017年9月30日に GPTWの調査を行った企業のうち、女性管理職比率を確認することができた226社のデータを用いて、アンケートへの回答結果と女性管理職比率との関係を分析しました。

  • 1)
    調査項目と回答方法
    • GPTWの調査は58の設問から構成され、従業員の働きがいを「信用」、「尊敬」、「公正」、「誇り」、「連帯感」の5つの要素で測定しています。(参考:「働きがい」の要素
    • 回答の選択肢は5段階(1=「ほとんど常に当てはまらない」、2=「しばしば当てはまらない」、3=「時には当てはまらない/時には当てはまる」、4=「しばしば当てはまる」、5=「ほとんど常に当てはまる」)あり、スコアは「4」または「5」を回答した人の割合(肯定回答率)を示しています。
  • 2)
    手続き
    • 分析対象企業のうち、女性管理職比率の上位20%を「G群」、下位20%を「P群」、その中間を「M群」として、各群ごとの平均値を算出しました。 その際、従業員規模によって傾向が異なる可能性を考慮し、規模別にも確認を行いました。規模別とは、「大企業部門」が1000名以上、「中企業部門」が100~999名、「小企業部門」が25~99名の3つのグループになります。
    • この調査レポートでは、一部大企業部門の傾向についてまとめておりますが、他企業部門も同じ傾向が見られることは検証しております。また、主にG群とP群との違いについて言及しますが、M群についても確認しております。

結果概要

GPTW調査の全58問のうち、「総合的な働きがい」を問う設問(総合的にみて、『働きがいのある会社』だと言える」)の平均値を集計したところ、いずれの部門においても、G群・M群・P群の順に得点が高いことが確認されました。 特に、大企業においてその傾向が顕著に見られました。

図表1 企業部門別 女性管理職比率ごとの総合設問平均値

総合設問「総合的にみて、『働きがいのある会社』だと言える」

女性管理職比率 G群 女性管理職比率 M群 女性管理職比率 P群の順で全体74.4 67.7 63.1 大企業部門(1000名以上)79.8 63.8 54.4 中企業部門 (100~999名)70.8 66.0 62.4 小企業部門(25~99名)78.1 73.4 71.2

5つの要素ごとでみると、いずれの要素でもG群・M群・P群の順に得点が高いことが確認されましたが、なかでも「連帯感」に最も大きな差がありました。

図表2 女性管理職比率別 各要素平均値

女性管理職比率 G群 女性管理職比率 M群 女性管理職比率 P群の順で 信用67.0 61.0 57.1 尊敬65.5 61.2 55.8 公正67.3 61.7 57.5 誇り66.5 61.5 56.4 連帯感69.5 62.9 58.7

女性管理職比率の高い職場の特徴

G群とP群を比較すると、性差に関する「公正」の設問「この会社では、従業員は性別に関係なく正当に扱われている」において最も顕著な差が見られました。これは当然と言える結果かもしれません。また、「経営・管理者層は、えこひいきしないように心がけている」「この会社では、不当な扱いを受けても、申し立てればきちんと対応してくれると思う」といったその他の「公正」に関する設問にも傾向の違いが確認されました。

加えて「連帯感」に関するもので、「一体感を感じることができる会社である」、「この会社では、必要なときに協力をあてにできる」、「この会社には、『家族』『仲間』といった雰囲気がある」について大きな差が見られました。

図表3 女性管理職比率によって、特に傾向の違いが見られた項目

女性管理職比率 G群 女性管理職比率 M群 女性管理職比率 P群の順で 「公正:この会社では、従業員は性別に関係なく正当に扱われている 81.5 74.7 65.8 経営・管理者層は、えこひいきしないように心がけている 62.2 54.9 50.4 この会社では、不当な扱いを受けても、申し立てればきちんと対応してくれると思う 66.6 59.6 54.8」「連帯感:一体感を感じることができる会社である 62.2 52.4 49.1 この会社では、必要なときに協力をあてにできる 71.2 64.6 60.5 この会社には、「家族」「仲間」といった雰囲気がある 66.3 58.9 55.8

一方で、「尊敬」に関する「この会社ならではの福利厚生やメリットがある」と「公正」に関する「この会社では、働きに見合った報酬が支払われている」についてはそれほど得点差が見られませんでした。一般的には、女性管理職比率が高い職場は、福利厚生、および報酬面などが女性管理職比率の低い会社職場より十分に整備されている印象がありますが、調べてみるとそうでもなさそうだ、という意外な結果となりました。

以上のことから、女性管理職比率の高い職場では、従業員の「公正感」が高く、「仲間との一体感」を感じやすいといった特徴が見られました。言い換えれば、年齢や性別といったことに関係なく誰もが活躍することができ、雰囲気も楽しく、仲間同士一体感を持って働くことができているようです。

女性管理職の多い職場で「公正感」や「一体感」が高い理由

では、女性管理職が多い職場では、なぜ「公正感」や「一体感」をより感じることができるのでしょうか?

「公正感」については、もともと企業風土としてどんな立場の人も公正に扱う文化があるので、結果として女性の管理職登用が進んでいる、ということもあるでしょうし、女性の管理職が多いという職場の状況を見て、従業員が「この会社では男女の区別なく評価が行われ、昇進するべき人が昇進している」と認識しているということも考えられます。

また、「仲間との一体感を感じやすい」職場であることについては、次のように考えることができます。例えば、人が公正に扱われる職場では従業員はお互いを尊重し合うことによって、精神的にも安心感を持って働くことができていると推察されます。安心感があれば、人は自分の仕事に集中するだけでなく、同僚に対しても助け合い、必要な協力をするという気持ちが生まれます。お互いが思いやる気持ちがある職場は温かな雰囲気があり、一体感はとても強いのではないでしょうか。また、そうした職場では、従業員間のみならず、上下のコミュニケーションにおいても透明性が高まり、お互い分かりあうことができています。つまり、経営陣も普段のやりとりから、優秀な人材を認識しやすく、その結果として、女性が管理職に登用されている、と考えることもできるかもしれません。

実際に女性管理職比率の高い企業では、オープンな企業文化が醸成されており、職場では活発なフィードバックが立場に関わらず行われているとよくお聞きします。ある企業では、昇進昇格の検討時に各職場から候補者を選出してもらうようですが、時によっては女性の方が多く管理職候補としてノミネートされているとのことでした。その理由として、人事責任者の方にうかがってみると、日頃から男女や上下の区別なくコミュニケーションをとっているので上司も性別に関係なく適材適所の人材を把握できているのでは、ということでした。

まとめ

今回の調査では、女性の管理職が多い職場の方が少ない職場よりも、従業員は相対的に高い働きがいを感じていることが分かりました。そうした職場の特徴として、公正感や仲間との一体感を感じられる風土が明らかになりました。 女性管理職が多いことは、従業員の安心感や仕事への前向きな気持ちを引き出し、職場によい雰囲気をもたらすなどメリットが多そうだ、ということができるでしょう。

これまで女性管理職には、男性管理職に近い性質やふるまいが求められてきましたが、この分析から見えてきた職場の特徴から考えてみると、むしろ女性だからこそ得意とする気遣いや相手への思いやりが職場づくりに活かされているということも言えるのではないでしょうか。日本では働き方改革として、多くの企業で従来の労働価値観についての見直しが行われていますが、今後、多様な働き方をする従業員が増えてくれば、当然そうした従業員のマネジメントは個別対応となり、複雑化が想定されます。

そうした意味で、細やかな点に配慮が行き届き、異なる立場のメンバーに共感することが得意である女性リーダーは、職場にとって益々必要な存在であり、活躍が期待されるでしょう。まさにこういった特性は、最近のリーダーシップ研究で注目されている「トランスフォーメーショナル型」のリーダーが持ち合わる資質とも重なりますが、女性の方がむしろこの「トランスフォーメーショナル型」のリーダーになりやすいということもいわれています。(入山,2015)*1

今回の調査で女性管理職比率が高い企業群は、現在のように企業に女性管理職比率の目標数値が定められる前から属性によらない役職登用を行ってきた会社であると考えられます。そのため、数値目標を達成するために女性管理職を登用した場合には同じ結果が職場にもたらせられるとは限りません。また、性差については先行研究において統計的な違いが見出されているものの、個人差のほうが大きいということもいわれています(Hyde, 2005)。加えて、「報酬への納得感」、「特別な福利厚生やメリット」については女性管理職比率との関係は強くないことが分かりましたが、得点そのものがその他の設問と比較して低いということもあり、今後企業として対応が必要であるといえそうです。

今回の分析結果からの示唆が、女性の管理職の任用の先に公正感と連帯感にあふれた職場づくりにつながる可能性があること、それが企業として様々な優位性をもたらす可能性があること、そして女性の活躍等のダイバーシティを推進する企業の経営者・人事担当者の後押しにつながれば幸いです。そしてもっと多くの働く女性が、等身大でありながら、職場においてリーダーとしても力を発揮する道が開かれ、よい職場づくりに貢献されることを願います。

*1「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」(入山章栄、日経BP社、2015年)の中で、「トランスフォーメーショナル型」(部下を啓蒙し、その気持ちを前向きにすることで、組織に変革(=トランスフォーメーション)を起こすリーダーシップのタイプ)が女性に適しているという研究(Eagly,2003)が紹介されている。

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