アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.

従業員の多様性を推進力に変える。「選択肢の多い組織」をつくりたい

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.
社長 清原 正治 様

2016年度の働きがいのある会社ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)において、従業員数1000名以上部門2位のアメリカン・エキスプレス。そのトップを務める清原正治氏は、「選択肢の多い組織」を理想に掲げています。「選択肢の多い組織」とはどのようなものなのか、それがどんなメリットを生み出すのか、語っていただきました。

一人ひとりが異なる「働きがい」を持っている

「働きがいとは何か?」と考えたとき、二つの答えが浮かびました。私個人としては、「新しさ」との出会いに喜びを感じます。たとえば、この取材の直前に、グローバルで実施している社内ビジネスコンテストの投票をしていましたが、そこには見たことも聞いたこともないビジネスアイディアがあふれていて、ワクワクしました。自分の想像を超えるような新しいアイディアやテクノロジーなどとの出会いが、私のモチベーションの源なのです。

一方、チームとして考えた場合の働きがいは、私のそれとは異なります。モチベーションのあり方は人それぞれだからです。社員には、自分の価値観にもとづき、人の顔色をうかがうことなく、自由に働いてほしい。「働きがい」とは、自分の役割や責任を果たしながら、主体的に働いているときに感じられるものではないでしょうか。私が「選択肢が多い組織」を理想と考えるのはそのためです。

ビジネスとしてのミッション・ビジョンは一つですが、その実現に向けたアプローチはさまざまでいい。がむしゃらに働きたいという人がいれば、今は仕事と育児の両立をしたいという人もいるでしょう。そうした考えを受けいれる多様なワークスタイルがあってよいと思います。

評価のあり方も同様です。アグレッシブにリーダーシップを発揮する人がいれば、寡黙だけれど仕事の質が高く信頼されているという人もいます。会議で答えを出すのが得意な人がいれば、山にこもって考えるのが好きな人もいるかもしれません。そのどれもが尊重されるべきで、ひとつの正解があるわけではないのです。

インフォーマルな双方向コミュニケーションで選択肢を増やす

選択肢を増やすために私が意識しておこなっているのは、インフォーマルな双方向コミュニケーションです。その反対はフォーマルで一方通行なコミュニケーション。権威を持って全員に伝えるときは有効かもしれないですが、聞き手はちょっと堅苦しさを感じるかもしれません。それに、一方通行の情報伝達では聞き手の意見も上がってきません。伝える内容や聞き手の性格、時間帯や業務状況によって、コミュニケーションの方法を柔軟に選択したほうが伝わるのではないでしょうか。

そのための施策のひとつとしてランチミーティングを年間40回ほど開催しました。施策といっても、社員と話す機会を増やそうと意気込んでやっているのではなく、私自身が一人で昼食を食べるよりも、わいわい食べたほうが楽しいからやっているという感じですね。

ランチミーティングでは、まず自己紹介から始めるのですが、その際に小ネタをはさむのが通例になっています。たとえば、「猫を9匹飼っています」とか「アメックスに入る前はバンドをやっていました」という話が一つあるだけで、ずいぶんと場の空気が柔らかくなる。もちろん、ただ楽しければいいわけではなく、「みなさんが実力を十分に発揮するために、会社ができることはなんですか?」と問いかけています。ここで出た意見が、選択肢を増やすヒントになるわけです。

加えて、社内向けに、ブログでメッセージを発信したりもしています。「私が最近面白いと思ったデジタルコンテンツ」というように、個人的な体験を交えた読みやすいものを意識して書いています。「最近は投稿が少ないですね」と突っ込みを入れてくれるくらい、熱心な読者もいるんですよ。

本人が心から「やりたい」と感じることが重要

なぜ、私が「選択肢を増やすこと」や「伝えること」を大切にしているのか。それは、社長は方向性やビジョンを示し、そこに向かっていくエネルギーを与える役割だからです。どこに行くのかわからなければ、エネルギーは湧いてきませんし、目的地にも到達できません。しかも、社員が会社から言われたやり方で働くのと、自分が納得して選んだ働き方で目標に取り組むのとでは、大きな違いが出ます。社員が主体的に目標に向かっていくためには、会社のメッセージを腹に落としてもらうことが大事であり、モチベーションを維持して仕事を進めるための選択肢が必要なのです。

何事も本人が心から「やりたい」と感じて選択することが重要なので、例えば当社では管理職を対象とした研修を行っていますが、強制ではありません。その分、出席している人は本当に必要だと思って学んでいるので真剣です。一方で出席者が少ない研修は、「研修内容の何がダメで参加者が少ないのか」と反省できる。研修の質を高めることにもつながります。

私としては、社員にもっと自分の意思や意見を主張してほしいのですが、まだ少し遠慮が見られます。日本人はともすると「和を乱さない」ことを重視しがち。もちろんそれは、日本人のいいところでもあるのですが、ビジネスのスピードを高めるという面ではマイナスに働くこともあります。社内の輪を大切にするのは強みである一方で、決断までに時間がかかるというデメリットにもなる。スピードをあげるために、率直なコミュニケーションを文化として根付かせていきたいです。

「社長、それは間違っていると思います!」と言われるのが嬉しい

率直に意見を交わしていたら、完全に食い違うことも出てくるでしょう。私は海外で働いた経験があり、そこで何度も意見が衝突したことがありました。でもむこうは、「これだけ話し合って理解し合えないなんて、僕と君のどっちかがおかしいのかもしれないね(笑)」などと冗談っぽく言えるカルチャーがあるのです。

意見が違ってもケンカ別れをするのではなく、ものごとを前に進める力に変えていけるような、建設的なコミュニケーションをしたいものです。

そんな想いがあるので、「社長、それ間違っていると思います!」と言われると嬉しくて仕方がありません。「よく言ってくれましたね!」と、その人と握手したくなるくらい。なぜなら、その一言によって、私のなかに「社員の意見を聞いて決定を変える」という新しい選択肢が生まれるからです。率直に意見してくれる人がもっと出てきてほしいと願っています。

一般的に言えば、「上司の顔色を気にして言いたいことが言えない」とか、「こんなことを聞いたらバカにされてしまうかも」とか、考える人が多いのかもしれません。相手の意見に否定的なことを言うのは、気持ちがいいものではありません。でも、意見を自制してばかりで、生まれるはずの選択肢を摘み取るのはもったいないと思います。

クレームや不協和音を恐れず、まずはアクションを起こすべき

当社では定期的に社内でグローバル共通の社員満足度調査もおこない、組織作りに役立てています。社内サーベイは海外との比較になるため、どうしてもその国のカルチャーの違いが出てきてしまいます。たとえば、日本人は控え目な人が多いので、「最近どう?」と聞かれて「グレイト!」と答える人は少ないですよね。「ぼちぼちです」となってしまう。サーベイの結果にも似たような傾向が出るため、「どうしたの?日本、元気ないね」となってしまうこともあるわけです。

でも、これが国内の他社との比較なら違った結果になります。GPTWの調査を併用しているのはそのためです。国内の他社との対比や、社内サーベイにはない設問により、新しい気づきが生まれています。社内では当たり前だと思っていたことが、「実は素晴らしいものだったんだ」と気づくこともあるわけです。

2016年度の働きがいのある会社ランキングでは、従業員数1000名以上部門2位という結果でした。誇らしいことではありますが、私は順位からはアクションは生まれないと考えています。順位に一喜一憂せず組織が昨日より今日のほうがよくなることが大事。「働きがい」は勝ち負けを競うものではありません。大切なのはアクションを起こすことです。

ひょっとしたら、「選択肢を増やすとか、率直なコミュニケーションとか、アメックスさんだからできるんですよ。我が社でやったらどんな問題が起こるかわかりません」と考える方もいらっしゃるかもしれない。でも、クレームや不協和音を一切出したくないと考えたら、何もできなくなってしまいます。それに心配ごとのほとんどは、実際には起きないものです。ですから、アクションを起こそうか迷っている方がいるとしたら、まずやってみることを勧めたいですね。

清原 正治 様 プロフィール

住友化学工業(現 住友化学)でキャリアをスタートし、米GEの子会社のGEコンシューマー・ファイナンスに入社。新規ビジネスリーダー、常務取締役を歴任し、GE Moneyファイナンスの代表取締役を務めるなど、グローバル企業で力強いリーダーシップを発揮。2011年に日産自動車に入社し、数々の要職を経て、タイ日産販売金融会社の社長兼日産自動車アジア・パシフィック上級副社長に就任。2014年9月より、アメリカン・エキスプレスの日本における代表取締役社長を務める。

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1850年(嘉永3年)米国ニューヨーク州にて創立したグローバル・サービス・カンパニーです。多様な商品・サービスを通し個人顧客には「特別な体験」をお届けし、また優れたデータ分析や経費削減ツールを用い幅広い法人顧客のビジネス成長を支援しています。世界に広がる独自の加盟店ネットワークと、世界140カ国以上のトラベル・サービス拠点を通じ、最高品質のサービスを提供しつづけています。

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