インタビュー記事
Great Place To Work ® Institute Japan
代表取締役社長
荒川 陽子
働きやすさ+やりがい=「働きがい」
GPTWでは、「働きやすさ」と「やりがい」から成るものが「働きがい」だと定義しています。私はもともとやりがいに比重を置いてきました。30代前半ごろまでは会社が労働時間に寛容だったこともあり、思う存分働いてきたんです。共通の目的に向かって共に頑張れる仲間がいて、信頼できる上司がいる。刺激し合える環境下で安心して自分らしさを発揮しながら働けることが、私の「働きがい」でした。
しかし、今はやりがいに加えて働きやすさも重要だと感じています。変化のきっかけは出産でした。パートナーと協力体制を作れていたとしても、家事育児をしながらの仕事には時間に制約が生じます。限られた時間で仕事の成果を最大限に上げるためには、無理も禁物。働きがいを感じられるためにはヘルシーに仕事をすることが必要で、しっかり眠り、子どもとの時間も大切にし、リフレッシュすることで、またフルスロットルで仕事ができる。経営者として判断力を鈍らせないためにも、働きやすさとやりがい、双方を高いレベルで実現できていることが重要だと実感しています。
「働きがい」は働く個人の権利
働きがいの高い職場で働くことは、自分の能力を最大限に発揮し、自分らしく働くための個人の権利です。ですから、生活のためだけに無理をしてやりがいを感じられない仕事に就いたり、やりがいはあるけれど身体的に無理がたたる仕事を続けたりといったことはあってはならないと思っています。働きがいを求めるのは個人の権利。まずは皆さんにそう自覚していただきたいです。
日本の経営者の多くは、働きがいを上げるのではなく、従業員の心身に悪影響を及ぼさないよう一定レベルから下げないことが重要だと考えています。GPTWのランキングに入るような、働きがいをより高めていこうという企業は、全体から見るとほんのわずか。だからこそ、そんな経営者の増加を後押しするため、個人から「働きがいは自分の権利であり、重要事項である」ことを発信し、ムーブメントを作っていきたいと思っています。
働きがいは100人100通り。多様性をまとめ上げる組織は素晴らしい
共働き家庭が増えたことで、結婚したり子供が出来たりしたあとに働きがいについてあらためて考える男性も増えてきています。やりがいと働きやすさの双方を高めていかなければ、働きがいは向上しない。公私を完全に分けて考えるのではなく、両輪で考えていくことが今後ますます必要となっていくでしょう。
私生活が人それぞれ異なるように、働きがいにも明確な答えはなく、100人いれば100通りあります。そんな多様性を認め合える職場こそが素晴らしい。多様性をまとめ上げられる企業ではビジョン・カルチャーが明確であり、それは結果的に採用面や業績面において、良い影響をもたらしてくれるのではないでしょうか。
グロービス経営大学院 学長
グロービス・キャピタル・パートナーズ
代表パートナー
堀 義人
「働きがい」は「生きがい」
働く時間は、睡眠時間を除くと人生のおよそ半分以上を占める方も多いと思います。ですから、働く時間が楽しくなければ、多くの人の人生が生きがいを感じられないものになってしまうでしょう。働きがいは、イコール生きがい。自分の人生をどう生き、どう有意義なものにしていくのかを考えるのが生きがいに繋がるのと同様、仕事を通して社会にどう貢献し、生きてきた功績を残していくのかを考えられることが働きがいに繋がる。そんな場が働きがいのある会社だといえるでしょう。
本来、会社は働きがいを感じられる場であるべき
私は飛行機事故で亡くなった祖父が20代のときに書いた「吾人の任務」というエッセイを読み、生きがいや使命について考えるようになりました。会社にはビジョンがあり、そこに共鳴共感した人たちが集まってくるのだと考えてきたのです。そんな考えを持って就職したのち、いろいろな疑問を持つようになりました。例えば、年功序列で決まっていく給与や昇進、労働時間や服装の規定などです。そこで、グロービスを起業するにあたり、自分が本当に働きたいと思える会社を作ることにしました。社会に貢献し、自己実現の場があり、そして21世紀を代表する理想的な企業システムを作ると決めたのです。
コロナ禍や共働き世帯の増加などで、働きがいに注目し始めた経営者の方もいるでしょう。「時代のニーズに合わせなければ」と考えているかもしれません。しかし、時代によって変わるのは働きやすさであり、働きがいは過去も未来も変わらないのではないでしょうか。ビジョンに共感して、やりたいことができて、自分の能力も開発できて、いい仲間がいて、やっていることが社会に貢献していると実感できて、適切な報酬がもらえれば、みんなが働きがいを感じることができます。わざわざ「働きがいのある会社」を目指すものではないし、働きがいを向上させることにより業績が上がるなどのメリットを重視される方もいますが、それも順序が逆。業績が上がるのは当たり前のことで、本来会社は働きがいがある場であるべきだと思います。
経営者がやるべき事は自身の考えや想いの発信とコミュニケーション
どれだけ社員数が増えても、社員に会社として目指したい想いを伝え、コミュニケーションを取る機会を重視してきました。入社時や3年目など節目のタイミングで対話する場がありますし、また、毎年全社員を何グループかに分け、泊まりでコミュニケーションを取る場を設けています。今では私の年間20数日をこの場に割いています。
これらの時間を取ることこそが大切。夕食時にすべてのテーブルを回る中で、一言ずつもらえるフィードバックは私の励みになりますし、要望があれば会社の改善にも繋げられる。また、自ら想いを伝えることで、社員に仕事の意義を感じてもらうこともできるでしょう。コロナ禍で飲み会ができないなど難しい部分もありますが、表面上ではないコミュニケーションで経営者と社員とが触れ合うことが、社員が働きがいを感じられることに繋がっていくのではないでしょうか。
学習院大学
キャリアセンター担当次長
淡野 健
役に立っている実感が働きがいになる
働くことについて考えるときに思い出すのは、学生時代に先生から言われた「『働く』は人が動くと書く」という言葉です。ヒトやモノが動かなければ世の中は回らない。儲かるか儲からないかはあくまでも結果と考えます。
私は卒業後、リクルートに入社して24年ほど働き、スポーツ選手のセカンドキャリアを応援する会社を立ち上げましたが、働くって楽なことばかりじゃないし、むしろ考え・悩むばかりで辛く苦しいこともあると思っています。
辛く苦しい中で、何を働きがいと言えるのか。私は「何かの役に立ったとき」だと思っています。大小は関係ありません。経験上、お客様を相手にするライン(営業など)ではお客様から感謝されたとき、社内の人間を主に相手にするスタッフ(総務など)の仕事では、社内の人が気持ちよく働いて社外で成果を上げられるよう支えられたときに、働きがいを感じました。
「社会軸」起点で考える
学習院大学で行っているキャリア支援では、「何で働くの」と学生に問いかけています。その答えには3つの軸がある、と想定しています。
1つ目は自立や自分の成長のため。2つ目は企業のため。いずれも間違ってはいません。でも、1つ目は人事担当者から「会社は君の自立のためにあるんじゃない」と言われることもあるでしょう。2つ目は、まだ働いたことのない会社のためだなんて、正直少し気持ち悪くないですか(笑)。じゃあ、何が大切か。「自分軸」「企業軸」でなく、3つ目の軸「社会軸」です。世のため人のため、社会のためにどう働くか、ということです。自分軸、企業軸もいいのですが、ぜひ3つ目の「社会軸」から考えてみないか?と学生たちに伝えています。
会社は「自分がどう働きたいか」を叶える手段
社会が不安定な中、親や親戚から大企業や安定した企業への就職を勧められている学生もいるでしょう。しかし、私の学生時代に名の知れていた企業の中には、今は存在しない企業も多くあります。時代は急速に変わりますから、企業名ではなく、自分はどういう働き方で生きていきたいのか、社会貢献していきたいのか、で選んでほしいですね。会社はその手段です。
私は知名度ある企業の内定を辞退して、当時ベンチャーだったリクルートに入りました。ここなら自分の手で何かを変えられる余地があると思えたからです。その判断は今も間違っていなかったと思えます。とはいえ、私が今、学生に伝えている「働きがい」について、当時の私が考えられていたわけではありません。多くの知見と今後の多様化社会からの助言です。就活生が不安になるのは今も昔も当たり前。社会に出て、学生時代までの守られる立場から守る立場になることで、働きがいに通じ、社会人としての覚悟になっていくのではないかと思っています。
関わる人が増えたことで、趣味から仕事へと意識が変わった
学生時代にゲーム実況を始めたことが、YouTuberとして仕事をすることになった原点です。そのため、当初は趣味感覚で、「仕事をしている」感覚は特にありませんでした。企業とタイアップするようになったころぐらいが、自分の活動が仕事なのだと思うようになっていった契機だったと思います。
自分一人で発信しているときには、撮影の仕方が少し雑だったり、何かトラブルがあったりしても、私一人の問題であり自己責任です。しかし、企業との活動では、私の失敗が企業にも影響してしまう。個人と企業では責任範囲も違います。チャンネル登録者数が〇万人を超えたり、組織に属したりといったことももちろんですが、自分以外の人に迷惑をかけないようにという責任感が芽生えたことが、「これは仕事だ」という自覚に繋がったと思います。
誰かにいい影響を与えられたとき、「働きがい」を感じます
影響力を持つことが嫌だとは思っていません。むしろ、私にとっては見てくれている誰かに何かしらいい影響を与えられたときこそが「働きがい」を感じる瞬間なのです。「ゆきりぬさんの動画を見て、明日も仕事をがんばろうって思えました」とコメントをもらったり、イベントで対面したファンの方が感極まって泣いてしまい、「元気をもらってます!」と言ってくれたりすると、やっていて良かったと感じます。過去には、「動画から元気をもらって、通えなかった学校に行けるようになりました」とお手紙をもらったこともあるんです。
また、今はファッション関係の仕事も増えてきたのですが、以前の私は自分に自信が持てず、お洋服を可愛いと思っても手に取れずにいました。
そこから勇気を出して自分が着てみたい服装に挑戦してみたら、「元気が出た」とコメントをいただけて。私自身も「ファッションを楽しむってこういうことなんだ」と気づけましたし、視聴者の方にも喜んでもらえて、動画を出してみて良かったと思いました。
自分の人生に後悔しない選択を
若い人たちから「好きなことがわからない」と相談のコメントをいただくことがあります。確かに私は「好き」をとことん突き詰めてYouTuberになりましたし、好きなことがある人にはどんどんチャレンジしてほしいと思っています。しかし、「好きなことを仕事にする人生」だけが働きがいのある良い人生だとは思っていません。
「周りの人を大切にしたい」「お母さんを喜ばせたい」も、自分自身の気持ちなのであれば、その人にとって正しい選択だといえるでしょう。私が大切にしているのは、「人生を後悔したくない」。その結果が、私は自分の「好き」を突き詰めることでした。皆さんにも、自分は何に幸せを感じ、何でモチベーションが上がるのかを把握して、自分の人生を歩んでいってほしいなと思います。
#働きがい実態調査
(職場に対する意識の実態調査2023)
世の中の人が今の職場や仕事についてどう感じているのか、WEBアンケートで実態を調査しました。
あなたの職場は働きがいのある職場でしょうか。
あなたの職場はどうですか?
※本調査はGreat Place To Work®の認定・ランキングに使用する「働きがいのある会社」調査とは異なります。
※調査の詳細について詳しくは以下のリンクをご確認ください。