お知らせ
【セミナーレポート】これからの時代を生き抜く"強い"組織の創りかた~「働きがいのある会社」ランキング上位企業が語る事例セミナー~
2020.9.3
2020年8月26日(水)、オンラインセミナー『これからの時代を生き抜く“強い”組織の創りかた~「働きがいのある会社」ランキング上位企業が語る事例セミナー~』を開催いたしました。
本セミナーでは、「働きがいのある会社」ランキング常連企業の経営・管理者層の方々に登壇いただき、働きがいの高い組織づくりのために、何を大切にしているのか、具体的にどのような取り組みを行っているのかをお話しいただきました。
以下に、各発表内容のサマリーをお知らせいたします。
株式会社グロービス (中規模部門第4位、女性ランキング中規模部門第3位)
マネジング・ディレクター 経営管理本部 本部長 内田 圭亮氏
”これからの時代”とはコロナショックに象徴されるVUCAの時代であり、そんな時代を生き抜く”強い組織”とは「変化適応型組織」や「変化創造型組織」であると定義づけます。そして人材という観点でいえば、「自律型人材」に溢れる組織ではないでしょうか。
当社では自律型人材で組織を構成するために、性善説に則った「自由と自己責任原則」を追求しています。規則やルールでマネジメントするのではなく、「グロービス・ウェイ」と呼ばれる、いわゆる価値観(バリュー)・行動指針によってマネジメントするというのが基本方針です。
もちろん採用においても「価値観(バリュー)の共有」を最重要視しますが、同時に「異質の効用」も追求しています。スキル、能力、視点やバックグランドにおいては異なる(異質な)方を採用する、ダイバーシティ経営です。当社は2020年版女性ランキングにも選ばれましたが、それは何か女性に特化した施策を打っているというよりも、性別の差というものを一切感じさせない経営をしている、ということが表れた結果なのだと思います。
働きがい向上には「貢献実感」と「成長実感」が非常に大事だと考えています。貢献実感は日常業務と理念の繋ぎ、組織貢献目標の設定、360度評価における感謝のコメントなどで醸成しています。成長実感は、積極的な権限委譲や、潤沢な自己啓発機会などによってもたらされます。自己啓発機会については、経営大学院を事業とする当社ならではの様々な教育・研修が、福利厚生として受けられるようになっています。
あらゆる場面で社員の可能性を信じて自由裁量を付与し、全員経営ができるかどうかが、”強い組織”になるための鍵なのではないかと思います。
レバレジーズ株式会社 (大規模部門第15位、若手ランキング第5位)
執行役員 藤本 直也氏
2005年の創業以来、当社は右肩上がりで売上を成長させてきました。社員数は現在1125名。平均年齢が26歳ととても若い会社ですが、2017年当時の600名というところから毎年20%前後の割合を新卒で採用してきたため、平均年齢が年々下がっており、若手中心で経営が回っているという背景があります。
GPTWはハーズバーグの二要因理論に基づいて『働きがい=働きやすさ(衛生要因)+やりがい(動機付け要因)』と説いていますが、当社では特に動機付け要因の部分に注力しています。仕事のパフォーマンスに影響を与える因子として「スキル」「経験」「モチベーション」があったとき、若手であればあるほど「モチベーション」の比率は高くなると考えます。そのため若手のモチベーション管理のためのピープルマネジメントが不可欠です。
マネジメントの方向性は大きく「仕事の意味付け力の強化」と「目標設定の強化」に二分されます。仕事の意味づけ力強化を目的とした施策の一つが「部門ごとのミッション・ビジョンの浸透」です。当社は30種類近いサービスを提供しておりチームも多岐に分かれますが、必ず部門ごとにミッション・ビジョンを持ち、毎月のキックオフなどで定期的な浸透を図ります。次に「メンバーに一番近いリーダーの意味づけ力UP」です。一番身近なリーダーが仕事の面白さや将来像を語れることで、部下も仕事に価値を見出せるようになるということです。
目標設定の強化については、まず「will can mustの徹底」をしています。人は「自分のやりたいこと」=「今やっている仕事」となる状態でないと本気で仕事に取り組みませんから、本人のwillと会社の方向性を一致させるよう心がけます。もう一つは「OKRの導入」。組織が大きくなったがゆえに自分の仕事を単なるタスクと見てしまうことも起こり得るため、チャレンジ目標を設定することで達成感や主体性を育む狙いがあります。
最後に、何よりも「採用」が重要です。当社の新卒採用では直近で約4万人の応募があり、そのうち200人を採用、という倍率です。採用時点でwill can mustを徹底的にすり合わせ、前向きに仕事に取り組む意欲のある方だけを採用しているからこそ、前述のような施策が活きてくるとも言えるでしょう。
Great Place to Work® Institute Japan
代表 荒川 陽子
”強い組織”の定義は様々あると思いますが、そのひとつは「持続的に成長をしている」ということです。GPTWの「働きがいのある会社」ランキングに選ばれているベストカンパニーは、株価の投資リターンが市場平均を大きく上回っています。また、働きがいが離職率を引き下げるというデータも出ています。「働きがい」こそ、強い組織の条件と言えるのではないでしょうか。
2020年度ベストカンパニーの調査結果を分析すると、ベストカンパニーは共通して人種、性別、年齢による格差がなく、また働く人が責任ある仕事を担っていると感じられる組織運営を行っていることが見えてきました。人材の多様性が増すこれからの時代、「すべての人」の働きがいを高めること―性別や年齢、役職による格差がないことは、特別なことではなく、組織運営の前提とならなければいけません。
しかし、日本全体としては、まだ理想とギャップのある部分が見られます。例えば性別に関しては、2020年版調査ではすべての従業員規模において、男性のスコアの方が女性のスコアよりも高いという結果が出ています。また年齢に関しては、若手はワークライフバランスを自分でコントロールできる組織を望む傾向が年々強まっており、働き方の柔軟性を高めることが急務になっています。
このような背景から、GPTWジャパンは女性ランキングと若手ランキングの2種類のサブランキングを発表しています。女性のベストカンパニーの特徴としては、「仕事への誇りの高さ」が挙げられます。また若手のベストカンパニーは、「職場の連帯感の高さ」が特徴です。どちらも、「働きやすさ」だけではなく「やりがい」に焦点を当てた会社施策を数多く行い、組織の働きがいを高めています。
しかし、コロナショックを経験した日本の企業は、ワークライフバランスは向上したものの、連帯感・コミュニケーションが減少傾向にあることが見てとれます(GPTW独自調査)。また仕事への誇りを生み出す一つの因子ともいえる「会社のビジョンや方向性に触れる機会」が減少傾向にあることは注意が必要です。加えて、生産性向上が主目的とされるテレワークですが、約半数の生産性は変わらず、加えて3割の生産性はむしろ下がったという結果が出ていることには警鐘を鳴らします。
これからのニューノーマルの働き方において、働く人の「やりがい」を高めていくためには、①目指すべきビジョンをはっきりさせること、②仕事の誇りを高める仕掛けをすること、③頻度高くコミュニケーションをとること、この3点が明暗を分けるポイントになってくるでしょう。
株式会社コンカー (中規模部門第1位、女性ランキング第2位、若手ランキング第1位)
代表取締役社長 三村 真宗氏
× Great Place to Work® Institute Japan 代表 荒川 陽子
テーマ① 働きがいを高める背景や経営メリット
荒川 当機関発表の研究レポートで、調査企業を「いきいき職場」「ばりばり職場」「ぬるま湯職場」「しょんぼり職場」の4つの職場タイプに分けて業績を比較したところ、「いきいき職場」の売上の対前年伸び率が圧倒的に高く、「ぬるま湯職場」が一番低いという結果が出ています(詳細はこちら)。これも踏まえ、働きがいを高める経営メリットについてどのようにお考えでしょうか。
三村氏 私が働きがいについて外部の方に講演をした際、参加者に「皆さんの職場は4つの職場のうちどれにあたると思いますか」と何度かアンケートを取りました。結果は、約3分の2が「ぬるま湯職場」とお答えになったのです。日本で一番多い「ぬるま湯職場」が、一番売り上げの伸び率が低いというのは日本の将来を考えたとき少し残念に思いますが、悲観はしておりません。働き方改革によって多くの企業は働きやすさが上がっていますので、少なくとも「しょんぼり職場」ではない。あとはやりがいを高めれば「いきいき職場」になれる。当社が「いきいき職場」、つまり働きがいのある職場を目指すのは、社員に取り入っているというわけではなく、働きがいを高めることが結果的に業績に繋がることを経営者として肌で感じているから。合理的な判断に基づき、一つの戦略として取り組んでいるのです。
テーマ② コロナによる強制的なテレワークで聞かれた声
荒川 コロナ禍でのテレワークを受けて、GPTW調査に寄せられる働く人のコメントにはポジティブな声もネガティブな声もどちらも寄せられます。ネガティブなものは「コミュニケーションが取りづらい」「通信環境/労働設備が十分でない」「金銭的負担が増えた」「家庭との両立が難しい」「管理・指導が難しい」などが挙げられましたが、御社ではどのような影響があり、どう対処されていますか。
三村氏 当社も挙げて頂いたような課題は同じように感じており、いかにその課題を小さくしていくかということで様々取り組みを行っています。先日、毎年行っている全社員合宿をオンラインで行ったのですが、テーマのひとつとして「コロナ禍における働き方と働きがい」を掲げて全社員で話し合い、出てきた数百件のアイデアを実現に向けて整理しています。例えばコミュニケーションについてだと「ちょっとした会話ができない」という問題がよくありますが、意外と推奨しているのが電話の利用。ただし、電話を受けた側がもし忙しくて取れなかった場合でも、電話を折り返す義務はないということにしています。また通信環境や金銭的負担の課題については、当社ではリモートを前提にしたので、通勤定期を廃止しました。その分を原資にして、毎月リモートワーク手当を支給しています。
テーマ③ 働きがいを高める上で大切な価値観や考え方のうち、コロナの影響を受けて変わったこと・変わらないこと
荒川 テレワークによって、一般的にワークライフバランスが向上した人は多く、一方で連帯感やコミュニケーションの問題が挙がっています。御社ではコロナの影響を受けて変わったこと、また逆に変わらないことはどのような点にあるのでしょうか。
三村氏 当社はミッション・ビジョン・コアバリューの設定をしています。ミッションは変わりませんが、ビジョンについてはこれまで掲げていたものがコロナによって大前提が変わり、社員と一緒になって新たなビジョンを考えています。また、ワークライフバランスが改善したことで新たな趣味に打ち込む社員が以前にもまして増えたように思います。ただ、同じ空間を共有できないというのは特に社歴の浅い社員にとっては孤独感を抱えやすいものです。そこで当社では、「絆ミーティング」と呼ばれる週1回の朝礼を始めました。私が最近感じていることを話したり、ある社員をゲストとして迎えて深掘りしていくコーナーを設けたりしています。そんなことをやっていると、リモートでありながらも社員との距離を近づけられている感じがしますね。
テーマ④ これからの日本企業に求められる「働きがい」とは
荒川 これからの日本企業に求められる働きがいとは何なのか、お考えをお聞かせください。
三村氏 これからの時代、人材の流動化がますます加速していきますので、人材は優秀であればあるほど売り手市場になっていきます。「働きがい」を高めることは、採用やリテンションにおいて重要な取り組みだといえます。更に、やはり人は働きがいを持って働いていると、自分の実力以上のものを発揮できるものです。それを組織単位で考えれば、働きがいのある企業とそうでない企業では全くパフォーマンスが変わってきますから、「働きがいは企業の競争力に直結する」というのはある種の原則なのです。最終的には、経営者自身がそのことに腹落ち感を持ち、経営資源を投じられるかどうかというところにかかっています。