7年連続1位の「働きがいのある会社」を率いた三村氏からのメッセージ

更新日 2025.03.122025.03.10インタビュー

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2018~2024年版調査まで、「働きがいのある会社」ランキングで7年連続1位を達成したコンカー。その成功の背景には、元社長・三村真宗氏が掲げた大胆な改革と、従業員の声を最大限に活かす経営手法がありました。どのようにして混迷する状況から組織を立て直し、従業員の自律性と信頼を引き出してきたのか。その全貌に迫ります。

<記事のポイント>
✓コンカー元代表取締役社長三村氏が「働きがい」にこだわった理由
✓7年連続「働きがいのある会社」1位となったコンカーで行われた再現性の高い取り組み
✓三村氏が働きがいのある会社づくりを目指す経営者へ伝えたいこと

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コンカー時代に「働きがい」へコミットした理由

私がコンカーの社長に着任したのは201110月です。外資系の社長はすぐ結果を出さないとクビになるので、その焦りから数字を追い求める経営をしていました。

ミッションやビジョンなど最初に着手すべきことをおざなりにしたり、カルチャーマッチングを考慮せずに、とにかく数字を上げられそうな人を採用したりしたことで、社内が混乱していたのです。当然、数字も低迷する悪循環に陥りました。なんとか状況を打開するために、従業員とのオフサイトミーティングの場で、大きな2つの目標を共有したのです。

一つは、米国外でNo.1の業績を出す国になること。もう一つは、日本のIT企業で最も働きがいのある会社になることです。実は、私自身がカルチャーや従業員のやりがいを軽視しかねない人間だったので、自分への戒めという意味であえてIT企業で働きがいNo.1という目標を置いたのです。

この二つの大きな目標を掲げたことで、従業員の視座が変わりました。二つの目標をどうやって目指すのか、自分はどうやって貢献できるのかと自律的に考えるようになったのです。それが、今日の文化醸成の第一歩になりました。

そして、「働きがい」をGPTWの調査で可視化できると知り参画することに。GPTWを選んだ理由は、従業員への設問内容が優れているからです。長年にわたり全世界で展開しているのは伊達ではないと感じました。そこで、GPTWの数字にしっかりと向き合うことにしたのです。働きがいの要素を分解し、課題を一つ一つ克服することが働きがいの向上につながると信じて、指針にしました。業績に関しては数字をもとに本社に褒められたり叱られたりしますが、働きがいに関してレビューしてくれる人はいません。働きがいのある会社調査こそが、働きがいの出来不出来を示す「経営者の通信簿」と位置づけました。

前述の大きな目標を共有したオフサイトミーティングから5年後の2018年に、米国を除く国別にNo.1になることができました。「コンカージャパンは全世界の成長エンジンだ」と評価されるほどになったのです。「働きがいのある会社」ランキングにおいても、2024年まで7年連続でNo.1という栄誉をいただきました。

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コンカーで行った再現性の高い取り組み

コンカーが取り組んできた数々の取り組みのなかでも、根幹をなすものが3つあります。まずはMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)です。MVVが形骸化する理由は、現場感のないトップが抽象度の高いMVVを定義して、一方的なアナウンスをしておしまい、という企業が多いからだと思います。だから私たちは、全従業員にアイデアを出してもらい「自分たちの思いを込めて決めたんだ」というものをつくり、全従業員に私から説明しました。さらに、これを定着させるための草の根的な活動に従業員が率先して取り組んでくれたのです。

二つ目はフィードバックの文化です。会社が大きくなるにつれて、他部門の陰口や批判が目立つようになりました。陰口や批判をするくらいなら、相手にフィードバックすべきという思いから「フィードバック文化の醸成」に取り組みました。ただし、フィードバックに失敗すると、相手を傷つけて関係悪化に繋がりかねません。そこで、まず私から経営者として「フィードバック文化をつくる」と力強く宣言をするステップを踏みました。続いて、「ギャップフィードバック(課題の指摘)は人前でしない」などのフィードバックのルールを決めて、私が先生役としてルールを定着させる活動をしました。

三つ目はVOEVoice Of Employee)経営です。経営者がやるべき仕事は、大きな方向性を決めたり、経営資源を適切に割り振ったりすること。一方で、お客様に接しているのは11人の従業員です。顧客の課題をすくい上げたり、私には考えつかない気づきやアイデアを尊重することによって、得られるものがあるはずと考えました。

たとえば、年1回実施しているコンストラクティブ・フィードバックでは、従業員が会社と部門と上司に対して、強みと課題をアンケートフォームに入力して集めています。従業員の声をすくい上げることが目的です。創業から数年後、「既存顧客を重視すべき」という従業員の声が膨れ上がりました。コンカーが日本に新規参入した当初、新規顧客の開拓は数字に直結していましたが、既存顧客が増えてきた段階で、現場では既存の優先度を高めるべきという意識が芽生え始めていたのです。「新規でまだまだいける」と思っている私の意識とギャップがあることに気づかされました。そのタイミングから、経営資源も既存顧客向けにより多く振り向ける意思決定をしたのですが、従業員の声を聞いていなかったら決断が3年遅れていたかもしれません。

コンカーの「働きがい」は他社でも再現可能

コンカーがつくりあげてきた働きがいのある組織は、他社でも再現可能な施策・制度によって成り立っています。働きがいに絡むさまざまな課題が出たときに一過性の対処で終わらせず、さらに継続的に起こらないように「仕組み化」を大事にしてきました。だからこそ、他社でも仕組みを使えば、同じように働きがいのある企業が増えるはずなのです。そのため、コンカーの取り組みを世の中に発信し、他社でも再現してほしいという思いで書籍を出したり、フィードバックの研修を外部にも公開したりしてきました。従業員と外部のビジネスパーソンや学生が一緒に出席するオープン講座になり、数千人の方に参加していただいています。

私は、日本に働きがいのある会社が増えることを心から願っています。それはなぜか。従業員が生き生きと働き、辞めなくなり、さらに「働きがいのある会社だ」という評判が世の中に知れ渡るにつれ、応募者も増えて、優秀な従業員に恵まれました。その結果、業績が伸びたからです。働きがいを高めることこそが、業績アップの近道だと気づきました。働きがいを高めることは、社会貢献活動や慈善活動ではありません。非常に重要な経営戦略なのです。

コンカーを卒業し株式会社U-ZEROを立ち上げた理由

私は、コンカーの日本支社の創業社長であり、全従業員を私が採用してきました。カルチャーづくりの初動は私でしたが、いつしか「カルチャーは与えられるものではなく、自分たちで作り上げるものである」と全員が考えるようになったと思います。私が退任した後も「三村がいなくなった今だからこそ、コンカーのカルチャーを絶やさないようにしよう」という意識が高まっていろんな活動をしているようです。

コンカーの社長を退任したあと、本当に多くの企業からご相談いただきました。こんなにも悩む経営者が多いのであれば組織として取り組もうということで、株式会社U-ZEROを立ち上げました。相談に来る経営者の悩みはほぼ同じで「エンゲージメントサーベイの数値が低いのですがどうしたらいいのでしょう」「コンカーのフィードバックの研修やってもらえませんか」というものです。コンカーの制度は他社でも再現可能ですが、その内容を伝えたところで「なるほど」で終わるケースがとても多い。そうならないように、コンカーでの取り組みをクラウドサービス化して提供しようということで、製品開発を着々と進めています。

ちなみにU-ZEROの由来は「unhappyな働く人をゼロにする」であり、これこそが経営理念です。コンカーの7年連続「働きがいのある会社」ランキングNo.1という実績を上げた取り組みを型紙として、カルチャー改革が進めば、今まで漠然と悩んでいた企業が、ある程度の方向性を見出せるはず。U-ZEROで改革に取り組んだ企業が、GPTWの上位を席巻する。そんな未来をつくりたいですね。

※SAP、SAPロゴ、記載されているすべてのSAP製品およびサービス名はドイツにあるSAP SEやその他世界各国における登録商標または商標です。またその他記載された会社名およびロゴ、製品名などは該当する各社の登録商標または商標です。

GPTWコメント

コンカーでは働きがいを高めることこそが事業成長に繋がる重要な経営戦略として位置づけ、着実に実践をしてきている。また、講演活動や書籍の出版などを通じて、コンカーの働きがいを積極的に外部へ発信することにより、採用ブランディングにおける優秀な人材の獲得やコーポレートブランディングなどを進めてきた。特筆すべきは、当時代表取締役社長を務めていた三村氏が率先してこの活動を牽引していった点である。代表自らのコミットメントによって取り組みが促進される共に、働きがい向上が重要な経営戦略であると社内外に示してきた。だからこそ、これらの活動そのものがコンカーのカルチャーとなり、組織に深く根付いていると言える。その結果として、働きがい向上とブランディングの両活動が好循環を果たし、「働きがいのある会社」ランキングにおいて7年連続1位を達成した。

従業員が働きがいを感じて生き生きと働くことで成し遂げられる事業成長は持続可能性が高い。日本の多くの企業が働きがい向上を重要な経営戦略として位置づけ、取組を進めていただきたい。

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株式会社U-ZERO 代表取締役 三村 真宗様

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1993年 慶應義塾大学法学部卒業。同年、日本法人の創業メンバーとしてSAPジャパン株式会社に入社。以後13年間に渡り、社長室長、戦略製品事業バイスプレジデント等を歴任。2006年 マッキンゼー・アンド・カンパニー。2009年 ベタープレイス・ジャパン株式会社。2011年 株式会社コンカーの日本進出に伴い代表取締役社長に就任。「働きがいのある会社」ランキング(中規模部門)で国内史上最長となる7年連続首位に選出。2023年末にコンカー代表を退任し、2024年6月に従業員エンゲージメントの改革をミッションとする株式会社U-ZERO(ユーゼロ)を創業。同社代表取締役に就任し現在に至る。2023年から株式会社インテグリティ・ヘルスケアの社外取締役に就任。著書: 新・顧客創造(ダイヤモンド社、2004年)、最高の働きがいの創り方(技術評論社、2018年)、みんなのフィードバック大全(光文社、2023年)

株式会社U-ZERO

「口をつぐむ文化」を脱却して、「伝え合う文化」へ。ヨコ(従業員と従業員)の関係性において、フィードバック文化を醸成し、従業員の成長、従業員同士の連帯感を高め、タテ(経営と従業員)の関係性において、Voice of Employee(従業員の声)に基づいた経営改善、改革による、経営への従業員の信頼感の醸成を目指し、企業競争力の強化とエンゲージメントの強化によって、ヒトと企業の成長をサポートする。

本内容は2024年12月時点の情報です。

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