エンゲージメントサーベイとは?種類と特徴、実施の流れをご紹介
更新日 2024.10.312022.02.22コラム
近年「エンゲージメント」や「エンゲージメントサーベイ」に注目している企業が増えてきています。一方で、それらが具体的にどういったものなのか、組織改善の取り組みにどうつなげていけばいいのかわからないといった声も同時に多く耳にします。本コラムでは、「エンゲージメントサーベイ」とは何か、そしてその実施方法について紹介していきます。
エンゲージメントとは
エンゲージメントというキーワードは近年非常に注目度が高まっており、「従業員エンゲージメント」「顧客エンゲージメント」など、いろいろな場面で使われることが多くなってきました。
一般的には、経営・管理者層や人事が従業員との関係性において使うエンゲージメントというと、「従業員エンゲージメント(あるいはエンプロイー・エンゲージメント)」のことを指します。そして「従業員エンゲージメント」とは、会社と従業員との間での確固たる信頼関係を意味します。
この「従業員エンゲージメント」を高めることは、
・組織としてのパフォーマンスを上げることができる
・離職率の低下につながる
・人材確保につながる
などといったメリットをもたらします。
他にも似た概念として「ワーク・エンゲージメント」や「従業員満足度」といったものもありますが、それぞれの違いについては別コラム記事で紹介しているので、詳しくはそちらをご覧ください。
関連記事:エンゲージメントとは?従業員満足度との違いや高める方法
エンゲージメントサーベイとは
エンゲージメントサーベイとは、従業員エンゲージメントを測定するツールです。様々な設問項目によって、組織・人に関する情報収集を行います。制度や待遇といった就労・報酬条件への従業員満足度だけではなく、仕事へのモチベーションや組織における人間関係の状態などといった内容も含めてチェックし、会社と従業員の結びつきの強さの現状を可視化するものです。
昨今、「財務情報」だけでなく、「非財務情報」も考慮して投資を行うこと、その中でも特に環境(E:Environment)、社会(S:Social)、企業統治(G:Governance)の3つの要素を投資対象の決定に取り込むESG投資が活況です。また、SDGsに紐づけたESG投資を行う機関投資家が増えてきていると言われています。そうした社会的情勢の中で、組織改善の取り組みの最初のステップとして、まずは組織の現状を知り、課題が何なのかを特定していくために、エンゲージメントサーベイ実施を検討する企業は、非常に増えてきています。
組織サーベイの種類と特徴
主な組織サーベイの種類について紹介します。
いわゆる組織向けのサーベイというのは世の中に数多ありますが、エンゲージメントサーベイの他に、従業員満足度調査というものも存在します。
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違い
エンゲージメントサーベイとよく混同されがちな従業員満足度調査ですが、これは制度や待遇といった就労・報酬条件や、仕事や職場に対して従業員がどれくらい満足しているのかを可視化するものです。一方、エンゲージメントサーベイではそれらに加えて従業員の会社に対しての信頼度合いや仕事に対しての意欲がどれくらいあるのか、などもみていきます。
センサスサーベイとパルスサーベイ
また、エンゲージメントサーベイにおいては実施方法によっても違いがあり、年に1回程度で多くの質問数で実施するセンサスサーベイと、より高頻度に少ない質問数で実施するパルスサーベイがあります。センサスサーベイであればより詳細に組織の状態を見ていくことができる一方、パルスサーベイではより短いサイクルで組織の状態を見ることができます。
それぞれ特徴や狙いが異なっているため、両者を併用して活用している事例も少なくありません。目的に応じて、適切なオプションを選ぶ必要があります。
エンゲージメントサーベイの実施メリット
エンゲージメントサーベイで組織の状態を可視化し、その結果をもとに課題への対策を打つことで従業員エンゲージメントを向上させることが可能となります。
従業員エンゲージメントを高めることによる主なメリットを、改めて紹介します。
①組織としてのパフォーマンスを上げることができる
従業員エンゲージメントが高い企業ほど業績も高いという相関があることがわかっています。
2010働きがいのある会社ポートフォリオ(2010年版日本における「働きがいのある会社」ランキングに選定された企業のうち、上場企業10社のポートフォリオ)に対して、ランキング発表後に等金額を投資した場合の、2021年3月末時点までの投資リターンを分析したところ、2010働きがいのある会社ポートフォリオのリターンは同時期のTOPIXや日経平均のリターンを大きく上回っていました。
また、従業員個人レベルにおいても生産性を高めるという研究データも出ており、従業員エンゲージメントは組織と従業員のパフォーマンスに大きな影響を与えうるということが示唆されています。
②離職率の低下につながる
組織と従業員の間に信頼関係があれば、当然ながら可能な限り長く働きたいと思う従業員も増えていきます。人間関係や報酬面など、離職には人それぞれの理由があるものですが、サーベイを通じてどのような不満を従業員が抱えているのか・どのようなことに対してやりがいを感じられるのかがわかれば、先手を打って対応・改善を進めることで離職率を抑えることができます。
また、エンゲージメントサーベイの結果から仕事のあり方や職場環境の改善をし、信頼関係の構築などの工夫を重ねるプロセスの中で、職場環境や会社自体に愛着を持たせ、離職率の低下や定着率の向上につながるようなケースもあります。
特に各企業の人事担当者の頭をよく悩ませているのが、若手の離職率の高さです。
未来を担う今の若手がどのようなことを会社に対して求めているのかを、サーベイ結果を通じて可視化することも可能です。
③人材確保につながる
従業員エンゲージメントが高まれば、採用面においても好影響をもたらします。
ここ数年、採用コストを押さえつつマッチ度の高い人材を採用できる手法として「リファラル採用」が注目されています。従業員が企業に対し愛着や信頼関係を維持できていると、就職・転職を考えている知人や身内の人に対して「自分の職場を紹介したい」と考えるようになるので、リファラル採用の強化につながります。
実際に、近年従業員の職場に対する推薦度を測る「eNPS(Employee Net Promoter Score)」を経営指標の一つとして採用する企業が増えています。従業員エンゲージメントを向上させることはeNPSの向上に直結します。自社の社員が推薦する人材は社風とマッチする人材である確率が高く、結果として定着率にも寄与することも多いです。
エンゲージメントサーベイの実施方法
エンゲージメントサーベイを実施する方法としては、自社で質問などを設計して実施するか、外部のパートナー会社のサービスを利用するか選ぶことになるでしょう。
それぞれについて、実施の流れや注意点を紹介します。
自社で実施する場合
社内でエンゲージメントサーベイを実施する場合は、当然ながら自社で質問を設計する必要が出てきます。今後の組織改善の取り組みに必要な情報を質問に盛り込みましょう。その際予め会社としての目指すべき姿・ありたい職場の姿を定義し、それに基づいて設計できるとよいです。
エンゲージメントサーベイの質問項目例
GPTWの質問項目例を紹介します。GPTWは、従業員エンゲージメントが高い会社(=働きがいのある会社)では、経営・管理者層と従業員の間に高い信頼関係があると考えており、その信頼関係を構成する5つの要素(信用、尊重、公正、誇り、連帯感)を定義しています。そしてそれらに紐づいた質問が設計されています。
<GPTW質問項目例(表現に変更あり)>
信用:経営・管理者層の期待していることが明確か
尊重:労働環境は、安全で衛生的であるか
公正:従業員は性別に関係なく正当に扱われているか
誇り:私たちが会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思うか
連帯感:この会社の人たちは、お互いに思いやりをもっていると思うか
外部サービスを活用する場合
自社でサーベイを設計・実施することもできますが、初めてエンゲージメントサーベイの実施・取り組みをする企業にはハードルが高いと感じられるかもしれません。そこで、目的に合った外部サービスを探して活用するということも選択肢としてあります。
外部サービスには、サーベイ実施と結果のフィードバックのみのサービスもあれば、課題分析や施策提案まで行うものまで様々あります。エンゲージメントサーベイの実施自体が目的ではないはずなので、しっかりと組織改善のPDCAを回していけるようなサービスを選びましょう。
外部サービスを利用する最も大きなメリットは、他の会社との比較が可能な点です。
自社内での実施の場合でも、部署別の比較や前回結果との比較は可能です。一方で、雇用の流動性が以前よりも高まっている昨今において、同業界や同業種の他社と比べて自社の結果はどうなのかという視点も重要です。またGPTWであれば、世の中の働きがいのある会社として認定・ランキングされている企業と比べることができます。このように外部サービスであれば、社内の基準ではなく世の中の基準との比較で、現状スコアを評価していくことができます。
【ホワイトペーパー】エンゲージメントサーベイ導入ガイド【比較表あり】
エンゲージメントサーベイは、働き方改革や人的資本経営の活性化にともない、注目を集めています。この資料では、エンゲージメントサーベイの基本情報や目的、メリットに加え、実施の注意点や手順、ポイントなど細かい点まで解説します。
エンゲージメントサーベイ実施の流れ
エンゲージメントサーベイを実施する主な流れ(ステップ)を紹介します。
① 実施目的の定義・スケジュール策定
まずは、サーベイを実施する目的を整理しましょう。会社として目指すべき姿はどういった状態なのかを定義し、それに対する課題の仮説まで立てられれば理想的です。また、どのタイミングでアンケートを実施するかも重要です。現場の繁忙期は避けるなど、従業員の負荷なども考慮したうえでスケジュールを検討しましょう。
② 従業員への周知・理解促進
サーベイを実施するには、回答者である従業員の協力が不可欠です。より多くの従業員に回答をしてもらうために、実施の目的や回答方法などをきちんと周知しましょう。例えば率直な回答を促すため匿名で実施するのであれば、回答内容によって個人が特定されないこと、回答者に不利益がない形で実施するといったことの説明などを行うとよいでしょう。
③ サーベイ実施・分析・結果のフィードバック
サーベイを実施し、結果を基に組織課題の特定や今後の方針を決めていきます。また、その後の取り組みを円滑に進めていくためにも、サーベイ結果と今後の方針については従業員にもフィードバック・共有しましょう。従業員エンゲージメントを高めるうえで、いかに現場を巻き込んだ取り組みにしていくことができるかは非常に重要です。
当然のことながら、一度エンゲージメントサーベイを実施して終わりではありません。サーベイ結果を基に新たなアクションを実行したとしても、すぐに成果が出るとは限りません。その後も継続的にモニタリングし、アクションの評価をしていくことも重要です。成功していれば、その取り組みを一旦終了する、さらに継続する、他部署へ横展開するなどといった検討を進めます。一方でうまくいっていない場合においては、さらなる原因の追究と新たなアクションの実施が求められます。
まとめ
エンゲージメントサーベイとは何か、どのような流れで取り組んでいくべきなのか、ご理解いただけたでしょうか。
エンゲージメントサーベイとは組織の状態を可視化するツールではありますが、「何のために」組織の状態を捉える必要があるのか、という観点をぜひ忘れないでいただきたいです。そして、「何のために」の観点で重要な要素のひとつは「現場の組織をよくすること」です。
サーベイの結果として分かった情報は、一部のメンバーの間でのみ利用するのではなく、現場の組織にも情報を開示し、その活用を支援することも大切です。
リモートワークが常態化している昨今において、これまでよりも組織への帰属意識を感じづらくなっている会社は多いと思います。従業員エンゲージメントを高める意義の重要性がこれからの時代においてさらに高まっていくことは間違いありません。まだ取り組まれていない企業においては、今からでも遅くはないのでぜひ取り組みを検討いただきたいと思います。また、すでに取り組みをされている企業においても、今の取り組みが従業員エンゲージメントを高めることにつながっているか、さらにできることはないか、改めて振り返っていただければと思います。
GPTWでは、従業員エンゲージメント(=働きがい)の現状を明らかにするサーベイ調査に加えて、様々な分析ツール、コンサルタントからの事例紹介や施策提案の場を提供することが可能です。是非活用をご検討ください。