エンゲージメントとは?従業員満足度との違いや高める方法
更新日 2021.12.232021.12.23コラム

少子高齢化による人手不足や価値観の多様化により、「これからの時代は従業員のエンゲージメントを高めることが重要だ」と様々な場で語られることが増えています。本コラムでは、「エンゲージメント」とは何なのか?「働きがい」や「従業員満足度」とは何が違うのか?について改めて整理をし、エンゲージメントを高める方法についても触れていきます。
エンゲージメントとは?
本来、エンゲージメント(engagement)は「婚約」「約束」「契約」といった訳語を持つ英単語です。これらの訳語には、どれも二者間の深い繋がりや信頼関係を示しているという共通点があります。例えば「顧客エンゲージメント」は企業とその顧客との親密度を表す言葉です。「ソーシャルエンゲージメント」は、SNS上の投稿がいいねやリツイートを得ることを指しています。
一般的に経営・管理者層や人事が従業員との関係性において使うエンゲージメントは、「従業員エンゲージメント(あるいはエンプロイー・エンゲージメント)」を指していることになるでしょう。ここからは、従業員エンゲージメントの定義やその高め方に焦点を絞ってお話ししていきます。
従業員エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントとは「会社と従業員の間の信頼関係」であり、従業員エンゲージメントを向上させるということは、「従業員が会社に対して信頼感や愛着、貢献意欲を持てるようにする」ことだと言えます。
ただし、従業員エンゲージメントは学術的に定義や測定項目が定められているわけではないため、やや曖昧だと感じられるかもしれません。そこで、「ワーク・エンゲージメント」「従業員満足度」「働きがい」といった類似語の意味についても理解しておくと、解釈がし易くなるでしょう。
ワーク・エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントと類似の概念に「ワーク・エンゲージメント」があります。ワーク・エンゲージメントはオランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授によって学術的に定義が定められており、「熱意=仕事に誇りややりがいを感じている」「没頭=仕事に熱心に取り組んでいる」「活力=仕事から活力を得ていきいきとしている」の3つが揃った状態を指しています。
従業員エンゲージメントは仕事・組織・人間関係など様々な要因が絡み合った中での「会社への愛着・貢献意欲がある状態」を見ているのに対し、ワーク・エンゲージメントは「仕事」のみを対象としているため、異なる概念として整理されています。しかし一般的にビジネスの場で「エンゲージメント」と言う時にその二つが切り分けて考えられていることは少なく、ワーク・エンゲージメントも要素のうちに含んだ従業員エンゲージメントとして語られていることが多いでしょう。
従業員満足度との違い
一方で「従業員満足度」という言葉もよく耳にしますが、従業員エンゲージメントとは何が違うのでしょうか。
従業員満足度は、仕事内容や職場、上司、会社などについて文字通り「満足しているか」を測る指標であるのに対し、従業員エンゲージメントは会社に対して「自発的に貢献する意欲」を意味する点に違いがあります。「会社に満足はしているけれど、自発的に貢献したいとまでは思わない。やる気に溢れているわけではない。」という心理状態は、意外と容易に想像できるものではないでしょうか。
ベイン・アンド・カンパニーとEIUの合同調査によると、社員を意欲レベルに応じて「満足していない」「満足している」「当事者意識あり」「やる気に溢れる」の4階層に分類し生産性の違いを調べたところ、「やる気溢れる」社員はただ単に「満足している」社員に比べて実に225%ものパフォーマンスを発揮しているという結果が出ています。
従業員満足度は、報酬や待遇、福利厚生等を改善することである程度高めていくことが可能です。しかし経営・管理者層や人事はそれだけに終始せず、「いかに従業員のやる気や貢献意欲を引き出すか」にまで目を向けることが、従業員エンゲージメントの本質を捉えた取り組みをすることに繋がります。
働きがいとの違い
日本においてGPTWは「働きがい」という言葉を大切にしており、近年はSDGsの8番に「働きがいも経済成長も」という項目が設定されたことから、働きがいもより注目を浴びる言葉になりました。
働きがいと従業員エンゲージメントはどのような違いがあるのでしょうか。結論から言えば、両者は全く異なるものではなく、働きがいは従業員エンゲージメントを包含していると考えるのが良いでしょう。
GPTWジャパンは、働きがい=「働きやすさ」+「やりがい」と定義しています。働きやすさは快適に働き続けるための就労条件や報酬条件を指し、やりがいは仕事に対するやる気やモチベーションを意味します。
※本来「働きがい」は非常に曖昧な言葉であるため、例えば報酬が高いだけで「働きがいがある」と言う人も勿論いるでしょう。ここでいう働きがいは、「自社の従業員の働きがいを高めたい」と言う時の「働きがい」をどう捉えればいいのか、という視点でGPTWが提唱する定義です。
先の話に照らしていえば、全く同義ではありませんが、働きやすさを高めることは従業員満足度を高めることに近く、やりがいを高めることは従業員エンゲージメントを高めることに近いと考えます。近年、働き方改革やコロナ禍におけるテレワークが急速に進み、働きやすさは多くの企業で改善されました。しかし大切なのは働きやすさとやりがいの両輪を回すことですので、「働き方改革」で成果を出すことができた企業は、次なる「やりがい改革」に目を向ける時が来ています。
従業員エンゲージメントが注目されている背景
そもそも、なぜ近年は従業員エンゲージメントが注目されるようになったのでしょうか。
日本で終身雇用の文化が根強かった時代には、あえて会社側から従業員へそういった働きかけをするということは重視されてきませんでした。会社からの働きかけがなくとも大半の従業員は自社に留まり続けてくれるし、自身の健康や家庭を犠牲にしてまでがむしゃらに働く、いわゆる「モーレツ社員」も当たり前のように居る時代だったのです。
しかし、バブル崩壊後から現在までの日本は以下のような状況に直面しています。
・少子高齢化による生産年齢人口の減少
・個人の価値観の多様化
・国際競争の激化
これらに対応するために、現代の日本企業は優秀な人材を自社に留め、より多くの成果を上げるための努力が必要とされています。従業員エンゲージメントを向上させることは離職防止や生産性向上に繋がるとして、多くの企業で注目されるようになりました。
従業員エンゲージメントを高める方法
この記事を読んでいる多くの方は、「どうすれば従業員エンゲージメントが高まるのか」ということにも関心があるのではないでしょうか。
前提として、「従業員エンゲージメントを高める方法に唯一の正解は無い」ということを認識しておく必要があります。従業員が何にやりがいを感じるのか、どうすれば会社に信頼感や貢献意欲を持ってくれるのかは、その会社に属する人の価値観やカルチャーによって異なるからです。まずは自社の現状を知り、そこから抽出された理想とのギャップに対して手を打っていくというのがあるべき姿です。ここからは、その具体的なステップについてお伝えします。
はじめに:ありたい職場の姿を描く
従業員エンゲージメントを高める具体的な活動に入る前に、まずもって重要なのが「ありたい職場の姿を描く」ということです。多くの企業では経営理念やミッションが制定されていますが、それらの実現のためにはどのような職場でありたいのか、従業員にどのような行動を期待するのかを、できる限り解像度を高めて言語化しましょう。そうしないと、せっかく活動を始めても従業員に意図が伝わらない、施策が的外れなものになってしまうといった危険性があります。また、経営者一人が分かっている状態ではなく、職場づくりの担い手全員の共通認識とすることが大切です。
ステップ1:従業員サーベイの実施
ありたい職場の姿を描いたら、次は自社の現状を把握しましょう。「改めて調べなくても何となく分かっている」と思う方もいるかもしれませんが、職場づくりは一人でなく職場を構成するメンバー全員でするものです。そのときに主観だけに頼って行動しようとすると、意見の分裂や、認識の齟齬が生まれかねません。誰もが納得できる客観的な(数値的な)根拠を用意しましょう。
手法は様々考えられますが、まずは全社的な従業員向けサーベイを実施し、会社全体の傾向を知っておくことをおすすめします。会社というのは一つの経営理念やミッション・ビジョン・バリューのもとに求心力を高め、経営・管理者層と従業員が同じ方向を見て動いていくことで一気に力を発揮します。そのため、会社という組織を一人の人間に例えた時の「性格」のようなものを把握することができれば、その元々ある性格を大切にしながら、カルチャーを強固なものに仕上げていくことが出来るでしょう。
ステップ2 調査結果から取り組みテーマを決める
サーベイを実施したら、最初に決めたありたい姿に照らして、「うまくいっていること」と「うまくいっていないこと」を洗い出します。同時に、事象の背景にある「要因」についても考えましょう。この時、要因は以下の2つに区分できます。
・内部要因・・・自社で対応できること
・外部要因・・・自社では対応できないこと
職場環境を改善しようと思うとどうしても「うまくいっていないこと」だけに目が行きがちですが、「うまくいっていること」にも目を向けることが大切です。そこを把握していないと、悪い部分を改善したいあまりに元々持っている“良い部分”を潰してしまうことになりかねません。
このように事実・結果と要因を結び付けながら洗い出したら、主に内部要因を中心に、今期取り組む「職場テーマ」を決めます。例えば「経営者からの発信強化」や、「テレワーク下でのチームワーク強化」といった具合です。あまり多すぎても取り組みが中途半端になるので、特に重要だと思う1~2つ程度のテーマに絞って始めるのが良いでしょう。
ステップ3:打ち手の機会を広げる
テーマを選択したら、次は打ち手を考えていきます。このとき、いきなり決め打ちでやることを考えるのではなく、「現状の職場では打ち手としてどのような機会があるのか」を一度棚卸しすることをおすすめします。それによっては必ずしも新しい施策を始める必要は無く、今ある施策の運用を見直す方が近道になることもあるかもしれません。
また、似たような課題を持つ他社はどうしているのか情報収集をすることも有効です。業種や従業員規模が同じ企業、あるいは企業の成長フェーズとして似たような段階にある企業は、概して同じような課題を抱えているものです。そのまま真似すれば同じように効果が出るということはありませんが、まずは情報を集め、自社に取り入れられそうな部分は取り入れてみるのが良いでしょう。
ステップ4:取り組み内容を決める
いよいよ、それぞれの職場テーマについて具体的な取り組み内容を考える段階に入ります。アクションを考える際には、あまり考えすぎず、自由な発想で数を沢山あげることを優先しましょう。思いついたものは付箋などに手あたり次第書いていきます。
風呂敷を広げてアイデアを出しきったら、最終的には優先順位を決めて絞ることが必要になります。その際、「効果性」×「着手容易性」の2軸でアイデアを分類してみると、整理がしやすくなるかもしれません。
特に「効果性」はやってみないと分からないという部分もありますが、まずは他に出ているアイデアと相対的に比較したときのイメージで決めてしまって大丈夫です。分類が終わったら、実際に着手する施策を議論し、決定します。施策は1テーマにつき1~2つに絞るのが良いでしょう。
ステップ5:計画を立て実践する
決定した施策を行動に起こすには、先々の長期的な計画を立てることが重要です。
・いつ何を実行するのか
・どのような体制・メンバーで実行するのか
・どのような状態を目指すのか(定量化できるものは、数値として決める)
・どのタイミングで振り返りをするか
といったことを予め言語化しておくことで、いつの間にか取り組みがフェードアウトすることがないようにしましょう。
取り組みは必ずしも経営者や人事だけが先導するものではありません。部署や店舗単位の活動もあるでしょうし、中には部署横断型のタスクフォースを組む企業もあります。ただし、「なぜその取り組みをする必要があるのか」という大義名分を当事者たちがきちんと持てていることは非常に重要です。経営者自らがその理由や必要性を語りかけることで、施策の担い手が当事者意識を持てるようにする工夫は必要でしょう。
まとめ
これからの企業は「従業員満足度」だけでなく「従業員エンゲージメント」を高める必要性が出てきていることや、高めるためのステップについて、ご理解頂けたでしょうか。
1、2年で従業員エンゲージメントを飛躍的に高められる企業は殆どありません。今回ご紹介した従業員エンゲージメントを高めるためのステップは、定期的に振り返りを行い、同じサイクルを何度も繰り返すことで少しずつ効果が表れてきます。従業員サーベイも定期的に実施し、重点テーマとした部分の数値の推移を追っていくと、取り組みのモチベーションを保ちやすくなるでしょう。
「働きがいのある会社」調査
「ありたい姿を描き、そこに対してのギャップを把握する」というのは、初めてこういった取り組みをする企業には難易度が高く感じることもあるかもしれません。そんなときは、GPTWが提供する従業員サーベイ(「働きがいのある会社」調査)を活用するのはいかがでしょうか。
「働きがいのある会社」調査は、社員が働きがい(エンゲージメント)を持って働いている会社の多くに共通する5つの要素―信用・尊重・公正・誇り・連帯感―を測るサーベイです。予め「あるべき姿」の観点がこのモデルで示されていると考えると、何もないところから考えるよりは議論がしやすくなるのではないでしょうか。
この調査の結果(スコア)が高い企業群と低い企業群では業績に明確な差があることも研究結果として出ており、自信を持っておすすめできるモデル、調査内容になっています。
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働きがいワークショップ
また、サーベイを実施したものの、「打ち手の機会を広げる」「取組内容を決める」段階で議論が紛糾したり、逆に議論が全く盛り上がらなかったりという課題が出てくることもあります。GPTWでは、調査結果を活用し打ち手を探るための「働きがいワークショップ」をご提供しています。人・組織領域の専門的なトレーニングを積み、企業の働きがい向上について知見を持ったトレーナーが進行を担当し、参加者が従業員エンゲージメント向上について主体となって考え、明日から「一歩」が踏み出せるように運営を行います。
これらのサービスを、従業員エンゲージメントを高めるための有効な手段として、より多くの企業にご活用頂けることを願っています。
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