経営危機から「働きがいのある会社」へ
コミュニケーションゲートが描く社員ファースト経営
株式会社コミュニケーションゲート
代表取締役社長 櫻井正朋 様
更新日 2025.02.032025.02.03
経営危機から「働きがいのある会社」へ
コミュニケーションゲートが描く社員ファースト経営
株式会社コミュニケーションゲート
代表取締役社長 櫻井正朋 様
初回の調査で「働きがいのある会社認定」を取得した株式会社コミュニケーションゲート。何度か挑戦して初めて認定を取得する企業が多いため、初参画で達成する企業は稀です。
その背景には、経営危機を乗り越える中で築き上げた独自の施策と、社員一人ひとりの力を引き出す工夫がありました。今回は、同社の代表取締役社長・櫻井正朋様が取り組んできた「働きがいのある会社」づくりについて伺います。
<記事のポイント>
✓「働きがい」調査で取り組み成果を可視化し、更なる改善点を発見
✓「働きがい認定」を採用活動の強力なツールとして活用
✓「ここで働いてよかった」と感じられる体験が、社員の自発的な行動を引き出す
GPTW 御社の成り立ちとこれまでの事業の変遷、そして現在の事業の状況などについてお聞かせいただけますか。
櫻井様 当社の創業は1898年(明治31年)です。当時は材木を扱う会社でしたが、1970年代のベビーブームには「街のおもちゃ屋さん」、テレビゲームが爆発的な人気を獲得した90年代は「テレビゲーム販売」、そして携帯電話が急速に普及した90年代末からは「携帯電話・スマホ販売」というように時代の変遷とともに事業を展開してきました。FC加盟店を募るスタイルで行っていた時期もあり、ゲーム販売事業では一時期、全国で50店舗以上を展開していたこともあります。
しかし、基本的に「薄利多売」のビジネスモデルだったので、加盟店に商品を卸すための資金の借り入れが、かさんでいくことに。債務超過に陥った会社の立て直しを担い、私が当社取締役として入社したのが2013年のことでした。
まず着手したのが、従来のビジネスモデルの見直しによる小売主体のビジネスからの転換です。よりサービス業に近い事業コンセプトに基づき、スマホなど端末を販売するだけではなく、スマホの初期設定やデータ移行、独自の端末補償サービスなど、お客様のニーズや用途に合う自社独自のサービスを提供するようにしました。このサービスで気がついたのは、携帯キャリアなどのプランを提供する側と、契約するユーザーとの間にある情報の非対称性の問題。そこから着想を得て2024年から開始したのが、お客様それぞれのライフプランに合った資産運用のサポートや保険商品のご提案などを行う新規事業です。
情報の非対称性を減らす企業として、ミッションに「本当に必要な人に、本当に必要な情報を提供し、豊かで活気ある社会を創ると共に、わたしたちに関わる全ての人を幸せにする。」を掲げ、社名も日野屋玩具店からコミュニケーションゲートに変更しました。
GPTW 働きがいのある会社調査を実施した理由を教えてください。
櫻井様 入社してから、先に述べたようなビジネスモデルの転換や、それに伴う新規事業の立ち上げとともに、社員が働きやすい職場環境づくりにも積極的に取り組んできました。どんなビジネスも根幹を担うのは人。前職での経験から一人ひとりを大切にする環境を実現し、社員の思いをひとつにしていくことの価値を実感しており、それを当社でも実現したいと思って経営をしてきました。
そんな思いから、社内のコミュニケーションを促進するための支援や、年齢や社歴ではなく成果や実力がフェアに評価されるようにするための「評価制度」の変革など、さまざまなことを行ってきました。
「働きがいのある会社調査」を実施したのは、これまでの取り組みによる成果をきちんと可視化しておきたいという思いから。また同時に、調査によって自分たちが気づいていないさらなる改善点が見つかるかもしれないという期待もありました。
申し込んだ時は、何度かの調査を経て少しずつ改善しながら認定を目指すことを予想していましたが、思いがけず初回調査で「働きがいのある会社」の認定をいただくことができたのはうれしい驚きでしたね。
GPTW 働きがいのある会社調査の結果については、どのように受け止められましたか。
櫻井様 いい結果が出た部分に関しては、素直にうれしかったですね。とくに、「経営者と管理者層の示すビジョンが明確」「報酬に対する納得感が高い」「特別なことがあれば祝い合っている」という三つのポイントで社員から高く評価してもらえたことは励みになりました。
私が入社した当初の経営は赤字状態で、一人ひとりへの報酬も十分とは言えない状態でしたが、そこからビジネスを変え、少しずつ業績を回復できたことで、しっかりと社員に還元できるようになりました。現在では、新卒の初任給についても新潟県の平均をやや上回るレベルを実現できているのではないかと思っています。
また、社内のコミュニケーションを促進するため、店舗ごとの目標を達成したときなどに、飲み会の費用を会社が負担したり、年初のキックオフのタイミングで前年のパフォーマーを表彰するイベントなどを積極的に開催してきました。そんな成果や取り組みが、社員にもきちんと伝わったことが、初回調査での認定につながったと思います。
一方で、調査によって今後改善すべきいくつかの点も見つかりました。とくに社員からの評価が低かったポイントが「快適・安全に働ける職場環境」です。出店している店舗によっては、夏は暑く、冬は寒いというような就業環境になっているところがあることは認知しており、可能な限りの冷暖房対策はしてきていたつもりではありますが、今回の調査結果をもとに、もう一段踏み込んで職場環境を改善していくことの必要性を強く感じました。
GPTW そのほか、社員の働きがいを高めるために取り組んでいることはありますか。
櫻井様 社内のコミュニケーションの活性化については今も積極的に注力しています。
最近も、メンバーへの感謝を伝えるとそれがタイムラインで流れたり、店舗目標の達成を祝して開いた食事会の様子を簡単にレポートしたりできる社内コミュニケーションツールを導入しました。導入直後は現場での普及に若干の苦労もありましたが、現在では自発的に使う社員も増え、サービス提供会社から、中規模企業全国1位の表彰を受けました。
また、普段からお客様に触れる現場の声を、新しい事業やサービスにつなげていくための仕組みとして、「事業提案制度」も導入しました。一人ひとりがお客様の期待に応える新たなビジネスやサービスのアイデアを考え、発信できる機会をつくることで、自分たちの力が事業や会社が育てていくことを実感してもらうのが目的です。まだ始めたばかりなので事業化に至ったアイデアはありませんが、予算はしっかり確保していますので、今後、いろんな声が出てくることを楽しみにしています。
GPTW 「働きがいのある会社認定」をどのようなシーン・目的で活用されていますか。
櫻井様 採用での活用をメインに考えています。会社や仕事に興味を持っていただくための求人広告や企業説明会では、自社の働きやすさをアピールする必要があります。その際、自分たちの主観でただ「働きやすいですよ」と伝えるより、やはり第三者による客観的な基準と調査の結果、働きやすさが認められた会社だと伝えられた方が、効果があるのは明らかです。まだ認定から間もないので目立った成果は出ていませんが、今後も人材採用を軸に、さらに活用の幅を広げていきたいと考えています。
GPTW これから働きがいを高めたい企業に向けてのメッセージをお願いします。
櫻井様 少子高齢化が進み、日本も人口減少の時代を迎えつつある現在、あらゆる業界での人材不足がさらに加速していくことが予想されます。多くの企業にとって、事業継続のために必要な人材をいかに確保していくかがより大きな課題になるでしょう。そんな時代において、「働きがい」を定量化してくれる「働きがいのある会社認定」は、他社と差別化するためのひとつの基準です。
私自身は、いい会社、いい事業、いい職場というものは、社員の自発的な行動や、それぞれの結びつきから生まれてくるものだと信じています。「ここで働いていてよかった」と感じてもらえる環境を目指していくことは、社員の自発性を促し、より良い会社の未来をつくることにつながると確信しています。