認定を取ることよりも、挑戦し続けることが大切
建設業界に「新しいあたりまえをつくる」ベンチャー企業の組織改革
ユニオンテック株式会社
代表取締役社長 大川祐介様
経営企画室Brand Communication部 山野 桂様 岩橋 敦子様
更新日 2025.02.172025.02.17
認定を取ることよりも、挑戦し続けることが大切
建設業界に「新しいあたりまえをつくる」ベンチャー企業の組織改革
ユニオンテック株式会社
代表取締役社長 大川祐介様
経営企画室Brand Communication部 山野 桂様 岩橋 敦子様
「BUILD A NEW STANDARD. 新しいあたりまえをつくる」をミッションに掲げ、果敢に組織改革を進めるユニオンテック。「働きがいのある会社認定」に挑戦しながら、あえて“取れなかった”ことをPRするというユニークな発信で注目を集めています。組織開発の強化や独自の仕組みづくりに取り組んでいる同社の代表取締役社長・大川祐介氏と経営企画室
の山野桂氏、岩橋敦子氏に、これまでの歩みと今後の展望を聞きました。
<記事のポイント>
✓建設業界のロールモデルになるべく働きがいへの積極的な投資を行う
✓働きがいのある会社調査により、取り組むべき課題が明確に
✓あえて“認定ならず”を公表し、自社の挑戦の様子をアピール
GPTW 御社の事業概要とその特色を教えてください。
大川様 私は18歳のときにクロス職人としてキャリアスタートし、20歳で内装仕上げ業を専門とする会社をつくりました。当時、内装仕上げ専門なのに、お客さまの勘違いでスケルトン(建物の柱・梁・躯体壁を残して骨組みだけになった状態)からお店をつくる話が舞い込んできて、「できますよ!」と調子よく引き受けたもののそこからが大変で、タウンページで片っ端から調べて職人さんや設計士を探したんです。なんとかお店を完成させた経験が最高に面白かったため、空間づくりをまるごと行う今のような空間デザイン会社になりました。
単に空間を作って終わりではなく、利用者がどう使うのかをイメージしながらモノづくりをしていたら、自然と品質も高くなるし、チームワークも良くなるものです。リーマンショックで受注が減少し、経営危機を迎えたときも、利益率を20%まで上げて高収益体質に。さらに、“下請け”から脱却し“元請け”の仕事を増やして、オフィス空間、美容・医療クリニックなどを中心とした商空間、そして施工事業に 力を入れてきました。
私たちは現在、「BUILD A NEW STANDARD. -新しいあたりまえをつくる-」というミッションを掲げ、建設業界を新たな価値観で牽引するリーディングカンパニーを目指しています。業界全体の発展に貢献するためには、まず私たち自身がロールモデルとなるべきだと考え、自由な働き方の推進や人的資本への積極的な投資を行っています。特に給与面においては、業界の上位1%に入る水準を実現し、当社より売上規模の大きい上場企業をも上回る水準に達しています。
GPTW 働きがいのある会社調査に参画したきっかけを教えてください。
大川様 一言で言えば“井の中の蛙”になりたくないからです。社内だけの価値観で「うちはいい会社だよ」と言っていても、客観的な評価がないと本当のところは見えにくいですよね。実はすでに2回チャレンジして働きがいのある会社認定はとれなかったのですが、むしろ、課題が見つかってよかったと思っています。
たとえば、当社の従業員は「お客さんと向き合っていいものづくりをする」ことにやりがいを感じています。しかしながら、“働きがい”という観点でいえば、「働きやすい環境」「チームワーク」など、いろんな要素がありますよね。仕組みやサポートの面でまだまだ課題が見えてきました。そこで、山野と岩橋を中心とする組織開発のチームをつくり、年間予算3,000万円と権限を与えたんです。まさに今、さまざまな施策を打っており、従業員同士の事業間連携を強めたり、ミッションを共有したりして、“働きがい”を高めているところです。
GPTW 具体的にどんな取り組みをしていますか。
山野様 はじめて働きがいのある会社調査に参加した際に、管理職メンバーの満足度や働きがいのスコアが高い一方で、メンバーのスコアは低い傾向にありました。原因を分析し、「経営理念や目標の浸透が管理職のレイヤーで止まっているということは、そこがボトルネックになっているのでは?」と考えたんです。そこで、役員や事業部長たちが日々考えていることがクローズドにならないようにインタビュー記事を定期的に公開したり、事業部長会議の議事録をオープンにシェアしたりすることで、経営陣の思考に社員の誰もが触れることができる環境をつくりました。また、管理職メンバーのスキル開発に力を入れ、社員表彰の審査や部下のエンゲージメントの振り返りに管理職が主体的に参画できるような仕組みを作ったり、管理職同士の横のつながりを強化して、お互いの課題を共有し、解決策をディスカッションして経営陣に提案する取り組みを進めたりしています。
“働きやすさ”という点でも課題があったので、2024年1月にオフィスを青山から渋谷に移転しました。前のオフィスは人数が増えて手狭になっていたからです。自分たちの意見を取り入れながらオフィスを設計し、ユニークな空間に仕上げました。「働きやすさ」を高める意味で、とても即効性があったと思います。
岩橋様 “働きがい”を高める取り組みとしては、「IDEA UNION」というアイデアコンテストがあります。挙手制で集まった従業員でチームをつくり、「どうすれば、売上100億円(UT100/ 2025年までに売上100億円、営業利益率20%を目指す)を実現できるか?」というテーマで話し合いました。みんな仕事の合間を縫って熱心に取り組んでくれて、参加者からは「またやりたい」と声があがるほど好評でしたし、UT100という目標が一人ひとりの「自分ごと」になったことを感じました。
従業員から出てきたアイデアは、社内アワードの場で最終審査されます。たとえば、一般の人はリフォーム業者から出された見積もりが正しいのかどうか、判断することが難しいと思います。でも私たちには査定の知見があるから、その“価格の妥当性”を見極められる。そうした背景から、「住宅のリフォーム業界に、内装・査定ノウハウを持ち込む」というアイデアが誕生し、アワードでも評価されました。
こうした企画を通して、普段あまり交流しないメンバー同士がチームを組んだり、事業部の垣根を超えて意見を出し合ったりするので、組織全体で“働きがい”が高めることにつながっていると実感しています。
岩橋様 チームビルディングの一環として「スナックにゅ〜すた」という社内飲み会イベントもあります。みんなで軽くつまみながらワイワイしゃべることができるので、あまり接点のない従業員同士も交流できます。オフィスにあるビールサーバーを開放したり、昨年の夏はオフィスに縁日を開いて、みんなで振る舞い合ったりしました。日々の業務から少し離れたところで雑談することで自然と仲良くなれるのです。
このほか、いろんな施策を同時並行でやっているので、どれがどのくらい効果を発揮しているかは正直まだ手探りですが、これらの取り組みが“働きがい”に繋がればいいなと思っています。
GPTW 認定を受けられなかったことを発信したのはどうしてですか?
山野様 取り組みの甲斐があり「働きがいのある会社」調査のスコアそのものは、1回目と2回目で大きく改善しました。担当の方から「ここまで一気に上がるのは珍しい」と言われてうれしかったのですが、残念ながら認定までは届かず……。でも、この前向きなチャレンジの様子を社外にも知ってほしいと考え「残念ながら認定までは届きませんでした」というリリースを発信しました。私たちは失敗を“伸びしろ”だと捉えています。改善点が見つかれば、それだけ成長の余地があるということ。実際にプレスリリースを見てくれた同業他社の広報さんから「さすがだね」と声をかけてもらえたり、ニュースで話題にしてもらえたりして、「思いが届いてるんだな」とうれしくなりました。
求職者の方にも「私たちはこういう挑戦しているよ、一緒にこの伸びしろを伸ばしてみたい方いませんか?」というメッセージを届けたいと思っています。「認定はまだ取れなかった」という情報を開示することで、当社の今後の成長への期待感やポジティブさを伝えられていたとしたらうれしいです。
GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてのメッセージをお願いします。
大川様 “働きがい”や“やりがい”って人それぞれ全然違うものだと思うんですよね。たとえば、あなたの働きがいと私の働きがいが、100%一致することはまずないわけです。
だから、「働きがいを高めたい」と考えている経営者さんや人事の方がいるなら、まずは“誰に対してどんな価値を提供したいのか”を明確にして、そのために従業員が思う存分に活躍できる“場”をつくる。そこに対話を重ねて、一人ひとりの想いを引き出してあげること。それだけで、何もやらないよりは確実に前に進むし、従業員がやりがいや達成感を得やすくなると思っています。
そもそも当社は「働きがいのある会社認定」は取れていないですが、「認定がないほうが、自由度が高いんじゃないか」って思う部分も少しありまして。認定をとると、今度はそれを維持しようという意識が働くからです。会社としては、やりがいを持って働ける環境を作り続けること自体がゴールで、それは一生チャレンジし続けるものだと考えているので、認定を取ろうが取るまいが同じです。もし認定を取れたら、「お、取れたんだ。じゃあ次はどうしようか」くらいのノリで新しいチャレンジをしていきます。