調査を活用し「組織づくりのPDCA」を回す
「働きがいのある会社認定」は採用強化の武器に
株式会社NEWONE
代表取締役社長 上林 周平様
更新日 2025.02.202025.02.20
調査を活用し「組織づくりのPDCA」を回す
「働きがいのある会社認定」は採用強化の武器に
株式会社NEWONE
代表取締役社長 上林 周平様
人材育成や組織開発、人事コンサルティングの分野で実績を積み重ね、「働きがいのある会社認定」に4年連続で選ばれている株式会社NEWONE。「エンゲージメント」を起点に、社員の主体性を引き出すためのワークショップ型研修や、組織の活性化を促す仕組みづくりを行ってきました。今回のインタビューでは、代表取締役の上林様に、エンゲージメント向上のポイントや、実際の取り組み事例、そして企業成長の秘訣を詳しくうかがいます。
<記事のポイント>
✓短期と中長期視点の2つの調査で「働きがい」の意識を醸成
✓調査結果共有を通じて、組織が進化している実感・自己貢献の実感を醸成
✓未完成であることをポジティブに捉え、主体性を引き出す
GPTW 株式会社NEWONEの事業概要とその特色を教えてください。
上林様 当社は2017年の設立以来、「エンゲージメント」をキーワードにビジネスを展開してまいりました。創業当初は、多くの企業が働き方改革に着手し始めた時期でしたが、いわゆる上意下達型で、会社が主導し個人が従属するかたちが一般的でした。これに対し当社では、個人と会社が相互に貢献し合う関係を実現するため、大手企業を中心に企業研修や人事コンサルティングを提供しています。
具体的には、管理職向けに部下の主体性を引き出すマネジメント研修や、新入社員を早期オンボーディングすることで自発的に組織貢献を促す研修など、幅広い階層とテーマで展開しております。
大きく3つの点で大手企業から高く評価いただいています。まず1つ目は、私自身が2002年から人材育成・組織開発のキャリアを20年以上積み上げる中で、時代を先取りして「エンゲージメント」を軸にセミナーや研修を行ってきたことです。現在も「オンボーディング」などの新しいトピックを積極的に取り上げるなど、こうしたアプローチがアーリーアダプターの企業に支持されています。
2つ目は、当社の独自のプロセスです。一般的な研修会社は、パッケージ化された「既存プログラムの提供」を基本とするのに対し、当社は人事担当者との密な連携のもと、一緒にカスタマイズしながらオリジナルのプログラムを作り上げることを重視しています。
3つ目は、組織や教育の変化に対して抵抗感を持つ層へのアプローチです。企業内では、新しい取り組みに不安や反発を抱える方も少なくありません。当社では、そうした懸念に寄り添いつつ、相手の感情や状況に合わせた対応を心がけています。
GPTW 働きがいを高めることを大切にしている理由を教えてください。
上林様 私たちには、「みんなで“いい組織”を作りたい」という強い思いがあります。そのスタンスを大切にしながら組織づくりに取り組んできたので、その成果を示す指標として、働きがいのある会社調査を活用したいという考えがありました。
実際に調査結果を活用することで、組織づくりのPDCAを回しやすくなりました。組織づくりは一朝一夕にできるものではなく、常にチューニングを続けることが大切です。毎年の調査結果を見て「次のテーマはここだな」と考え、それを施策に反映しながら組織づくりを行っています。
GPTW 最初の調査結果をご覧になったときは、どんなことを思いましたか。
上林様 「なるほど」と納得できる部分が多かったですね。私たちがとても大切にしていた“公平性”や“受け入れる歓迎ムード”といった点を高く評価してもらえたのは、素直に嬉しかったです。
印象的だったのは、地域貢献に関する項目があったことです。そういう視点をあまり取り入れていなかったので、評価も低かったのだと思います。それを受けて、寄付活動やスポンサーシップなど、いくつかの施策に取り組んだことで、調査結果も徐々に変わっていきました。
調査結果を見るのが楽しみな一方で、経営者にとっては通知表のような意味合いもあるので、良くも悪くもドキドキしますね。
GPTW 働きがいを高めるために実施した改善の取り組み内容を教えてください。
上林様 私たちは、「フラットでオープンな場」をつくり、誰もがそこに参画できることを大切にしています。たとえば、行動指針を示した「クレド」を刷新した際も、新入社員から経営者まで、全員が同じ度合いで関わることを基本に考えており、「自分たちで作っている」という感覚を持ってもらえるように促しています。
日頃のお互いに対する感謝や称賛を送りあえる「ピアボーナス」という制度も運用しています。重要なのは、誰が誰を称賛しているかを全員が見られることです。営業成績のように数字として目立つ部分は自然と評価される一方、日々のフォローやサポート業務など、目に見えにくい貢献は埋もれがちになります。こうした活躍を「見える化」して光を当てることが狙いです。数字には表れない貢献にスポットライトを当てる仕組みとして機能しており、全社的に透明性が高まりました。
珍しい取り組みとしては、オフィスの近くで行う飲み会に対して1人あたり月に3回まで補助金を出す制度があります。制度を利用する際は、「4人以上での飲み会」であることと、「その場の写真を撮って全社に共有すること」が条件です。4人以上にするとチームを超えて集まるケースも増えるので、部門間の壁を取り払うきっかけになるんです。また、その際の写真を全社で共有することで、「業務以外の一面」も自然と共有され、コミュニケーションをとるきっかけにもなります。
GPTW 働きがいを高める取り組みとしてはほかにどのようなものがありますか。
上林様 月に一度、全社員にアンケートを実施しています。結果は毎月集計され、過去5年分の推移も見られるので、「どのタイミングで数値が変化したか」「他社と比べるとどうなのか」などを把握できます。それを踏まえて「今月はここを強化しよう」というPDCAを回しているんです。全員が「自分のチームや組織のエンゲージメントはどうだろう」と考えるきっかけになるので「組織がよくなるための大事な時間」だと捉えています。月ごとのアンケートで細かくチューニングしながら、年に一度、「働きがいのある会社調査」の別の基準で評価を受けるという、短期と中長期の視点でエンゲージメントへの意識を高め、施策に落とし込んでいます。
GPTW 「働きがいのある会社認定」の影響を感じていますか?
上林様 結果を社員全員に共有し、施策を展開することで「組織づくりが前に進んでいる」という実感と、「自分たちで組織を作っているんだ」という感覚がしっかり根付くので、組織として一段高いところを目指す原動力の一つになっていると感じます。
採用を強化していくうえでも、認定があることで「いい会社かもしれない」という仮説を持って面接に来てくださる方が多く、不安が解消される一つの判断材料になっているようです。採用活動では、採用担当や経営陣との面接だけでなく、現場の社員とも話してもらい、様々な観点から「ここなら大丈夫だ」という確信を持ってもらうことを大事にしています。
また、認定を取り始めてから社員数がほぼ倍になりました。3年前は30名台だったところから、今期は70名にまで増えています。採用が活性化している要因はいろいろあると思いますが、「働きがいのある会社」という評価は、一定の説得力があるのではないでしょうか。
認定に関して、もう一つ重要なポイントがあります。私たちは企業研修や人事コンサルティングを提供しているので、「イマイチな組織にサポートしてもらうのは嫌だ」という感覚を持たれてもおかしくありません。そういう意味で、「働きがいのある会社」という認定は、クライアントからの信頼を得る後ろ盾になっていると感じます。
GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてのメッセージをお願いします。
上林様「みんなで作っていく」という姿勢が大事です。未完成な部分をみんなで良くしていこうと考えることで、現状に対して前向きな気持ちを持てるようになります。経営者の中には「まだ完璧じゃない」「予算も十分ではない」という理由から、一歩踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、未完成だからこそ、全員でアイデアを出し合い、少しずつより良い方向へ進んでいけるんじゃないでしょうか。もし最初から完璧な職場だったら、人はどうしても受け身になりがちですよね。未完成であることをポジティブに捉えられれば、みんなが主体的に関わるようになり、その結果として高いエンゲージメントが生まれる。そこがすごく大切なポイントだと思っています。