理念経営を「働きがいのある会社」調査で可視化 五十鈴グループの事例

更新日 2026.03.052026.02.18

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工場・物流の現場でも働きがいはつくれる
「必ずやりきる」と決め、わずか1年で認定獲得

五十鈴グループCEO 鈴木 勝様
五十鈴株式会社 常務執行役員 ロジスティクス部門長 ライフサービス部門長 小原尚樹様

鋼板加工流通を軸に、物流やソリューションへと事業領域を広げてきた五十鈴グループ。創業以来の理念を土台として、2024年に「働きがいのある会社」調査へ初参画し、2025年には認定を取得しています。なぜ調査に挑戦したのか、働きがいを高めるために何に取り組んできたのか。グループCEOの鈴木 勝氏、常務執行役員の小原 尚樹氏に話を聞きました。

<抱えていた課題>
・働きがいを感覚ではなく、客観的かつ共通の指標で把握したい
・理念経営の成果と、今後の「伸びしろ」を客観的に確認したい

<導入の決め手>
・多くの企業が活用する第三者評価で、組織の現在地を可視化できる
・他社の成功事例を学び、働きがい向上に活かせる

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鋼板流通を軸に広がる事業と、現場主体の分社化経営

GPTW  御社の事業概要とその特色を教えてください。

鈴木様 五十鈴グループは、鉄の流通、とくに薄鋼板の加工・供給を中核として事業を展開しています。自動車のプレスメーカーや電機メーカー、オフィス家具メーカーなど、お客様の用途に合わせて鋼板を加工し、ものづくりの現場へ安定供給するのが私たちの役割です。加工に加え、物流・保管、現場改善の知見も生かしたサポートへと機能を広げてきました。

組織面での特徴は、分社化経営です。工場単位、機能単位で会社を分け、本部機能であっても「コストセンター」ではなく「プロフィットセンター」として位置づけてきました。管理部門か現場かを問わず、一人ひとりに「会社を動かす当事者」であってほしいからです。指示を待つのではなく、自ら課題を見つけ、考え、行動する。そうした経営者マインドを組織全体に行き渡らせたいと考えています。

私は、五十鈴グループを「気分よく働けて、業績が良く、自己成長できる会社」にしたいと本気で思っています。事業も組織も完成形はなく、時代が変わっても主体的に学び、成長し続けられる集団であること。それが私たちの目指すところです。

「働きがい」は人事施策ではなく、会社存続を支える経営テーマ

GPTW  御社にとっての「働きがい」の位置づけを教えてください。

鈴木様 「働きがい」を高めることは、単なる人事施策でも、福利厚生の延長でもないと考えています。それは、会社が存在し続けるための、極めて本質的な経営テーマです。

五十鈴グループは、創業以来、理念経営を大切にしてきました。私は三代目の経営者ですが、先代の頃から一貫して、「社員が心から“この会社で働いてよかった”と思える会社にしよう」という思いが受け継がれています。企業として、お客様や社会に価値を提供することは当然の責務。しかし、その価値を実際につくり出しているのは、現場で働く一人ひとりの社員です。だから、社員が自分の仕事を通じて社会に貢献できていると実感できる状態をつくることこそ、経営の役割だと考えています。そのためには、働きやすさの整備だけでは十分ではありません。仕事の意味が伝わり、誇りにつながる状態をどうつくるか。そこに経営が向き合うことが重要だと考えています。

GPTW  「働きがいのある会社」調査に参画したきっかけを教えてください。

鈴木様 やりがいや働きがいを大切にしていると言うことは簡単ですが、それが本当に社員に届いているのか、外から見てもそう評価される状態なのかを、客観的に確かめる必要があると感じました。その手段として選んだのが、「働きがいのある会社」調査でした。これまで社内サーベイを続けてきましたが、第三者の視点で現在地を確かめ、改善を加速させたいと考え、2024年に参画を決めました。

 調査結果を受け取ったときの率直な感想は、悔しさでした。もっと評価されていると思っていた一方で、まだ足りない部分があることを突きつけられたからです。改善には時間がかかり、「3年くらいかけて認定を目指しましょう」とGPTWの方に言われたとき、「思ったより時間がかかるな」と感じました。

しかし同時に、私の中では明確な決意が生まれました。必ず認定を取る。そのために、数字を上げることを目的にするのではなく、本当に社員が働きがいを感じられる会社になるため、経営として何をすべきかを改めて考え直そうと決めました。

グループ各社が考え、動くことで進めた働きがい向上

interviwe_20260303_01.jpgGPTW 実際に2025年に実施した調査では認定に選出されています。働きがいを高めるためにどのような取り組みをしてきましたか。

小原様 事業や職種が多様な五十鈴グループでは、一律の施策を押し付けるのではなく、各社が自分たちの強みや課題を整理し、何に取り組むかを自ら決めることを大切にしてきました。多くの会社で共通して取り組んだのが、1on1の質を高めることです。形式的な面談ではなく、日々の仕事で感じている不安や困りごとを丁寧に聞き、経営側・管理職側がしっかり受け止める。そうした対話を積み重ねることで、現場との信頼関係が少しずつ深まっていきました。また、職場改善や表彰、イベントなどを通じて、「やったことがきちんと言葉として返ってくる」仕組みづくりにも力を入れました。感謝や称賛を意識的に伝えるようになり、職場の空気が前向きに変わっていく実感があります。

鈴木様 「本当に従業員が働きがいを感じられる会社になるために、経営として何をするのか」という一点に集中してきました。グループ各社が能動的に動けるよう、経営として決め、背中を押すことに徹しました。

私が考える働きがいとは、「自分はなぜここで働いているのか」という目的意識を持てて初めて実感できるものです。そこで2025年は「志の追求」を基本方針に掲げ、なぜ五十鈴グループに所属しているのか、仕事の意味や意義を一人ひとりが言葉にできるよう、丁寧な対話を重ねてきました。

カルチャーコーチングとワークショップの効果

GPTW 2025年に実施した調査ではGPTWのコンサルタントによる「カルチャーコーチング」に続いてさらに「働きがいワークショップ」を実施しています。導入された背景を教えてください。また、どのような効果がありましたか。

小原様 背景にあったのは、組織のステージをもう一段引き上げたいという思いです。先行企業の事例や他社の取り組みを学びながら、自分たちの組織文化を客観的に見直す手段として、「カルチャーコーチング」は有効だと考えました。

続く「働きがいワークショップ」では、グループ各拠点の責任者が参加し、直接顔を合わせて意見を交わしました。立場や拠点を越えて課題や現状を率直に話せる場を持てたことで、心理的安全性の重要性をあらためて実感しました。

さらに、対話の内容を具体的な行動に落とし込むために、日々の業務を振り返りながら「何を大切にし、何を変えていくのか」を整理し、共通認識として言語化できたことは大きな成果です。

その結果、拠点や組織を超えて働きがいに対する共通言語が生まれ、取り組みの水平展開が進み始めました。リーダー層が自分の言葉で語るようになり、現場との対話の質も確実に変わってきたと感じています。

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工場・物流の仕事に光が当たった瞬間

GPTW 認定をどのように活用していますか。また、どのような反響がありましたか。

鈴木様 「働きがいのある会社」に認定されたことで強く感じたのは、社内での受け止めの大きさでした。「自分たちの取り組みが認められた」と喜ぶ声が多かったです。工場や物流の現場では、無事故で運ぶこと、品質を守り続けること、工程を確実にやり遂げることが「当たり前」になりがちです。しかし私は、それらは決して簡単なことではなく、非常に難しく、尊い仕事だと考えています。安全で事故を起こさないのは当然だと思われがちですが、それを日々積み重ね続けること自体に、大きな価値があります。

だからこそ、無事故で仕事をやり遂げることがいかに難しく、価値のあることなのかを、きちんと従業員に伝えていくことが重要だと考えてきました。実際に、数十年にわたって無事故を続けてきた社員もおり、そうした人たちはレジェンドとして称え、賞賛する取り組みも行っています。無事故で終えることは簡単ではありませんが、それだけ尊く、誇るべき成果だというメッセージを伝え続けています。

今回の認定を通じて、そうした「凡事を徹底する仕事」にあらためて光が当たったと感じています。「自分たちの仕事にも意味がある」という声を聞けたことは、経営者として何よりうれしい瞬間でした。

社外からも反響があり、採用の場面では、会社の姿勢を伝える一つの指標として手応えを感じています。今回の認定はゴールではありません。この評価にふさわしい会社であり続けられるかが、これから問われます。今後も社員一人ひとりと向き合いながら、働きがいをつくり続けていきたいと考えています。

「働きがいのある会社にする」と経営が覚悟することが第一歩

GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてメッセージをお願いします。

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鈴木様 私がお伝えしたいのは、まず「働きがいのある会社にする」と経営者が決めきることが何より大切だということです。製造業や物流業は難しい、現場があるから無理だなど、やれない理由はいくらでも挙げられます。でも、そう考えている限り前には進めません。私自身も最初はそう感じていましたが、だからこそ「やると決める」ことに意味があると思っています。「認定を取ると決めて、本気で向き合えば必ず取れる」というのも、今回の経験を通じて確信しました。実際、当初は認定取得レベルに到達するのに3年ほどかかると言われていましたが、経営として本気で向き合い、現場と対話を重ねた結果、わずか1年で目標として設定していた以上のスコア改善を実現することができました。

やりがいを感じるのは、最終的には従業員一人ひとりです。ただし、そのために経営者がどう関わるのか、やりがいを感じてもらうために何を大切にし、どんな取り組みを行うのかを、自ら決め、実行していくことが何より重要だと考えています。業種や規模は関係ありません。どんな会社でも挑戦できますし、挑戦する価値があります。

小原様 取り組みを通じて私が感じている働きがいのある組織づくりの本質は、経営と社員が一緒に学び、成長していく関係をつくることです。働きがいは、どちらか一方が頑張れば生まれるものではありません。経営側が制度を整えるだけでも、社員が思いを持つだけでも不十分です。双方が向き合い、受け止め合って初めて前に進めます。働きがいのある組織づくりは一度で完成するものではありません。対話し、学び続けるプロセスそのものが、働きがいを育てていくのだと思います。ぜひ、自社なりの一歩を踏み出していただけたらと思います。

五十鈴グループCEO鈴木勝様

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創業家三代目として、2022年より現職。鉄鋼加工・流通を中核とするグループ経営を担い、分社化経営による現場主体の組織づくりを推進している。業績と人の成長の両立を重視し、製造・物流といった現場を大切にしながら、社員一人ひとりが誇りを持って働ける組織づくりに取り組んでいる。

五十鈴株式会社 常務執行役員 ロジスティクス部門長 ライフサービス部門長 小原尚樹様

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1988年に五十鈴鋼材(現・五十鈴)へ入社。以来、組織開発、採用、営業、製造など多岐にわたる領域を経験する。2008年には五十鈴マネジメントサービス社長を務め、その後11年間にわたりグループ外へ出向し、経営および組織づくりを推進。2023年に五十鈴グループへ復帰し、物流部門および建設部門の管掌として事業成長と組織力強化に取り組んでいる。また、ビジョナリー委員会 委員長として、全社の「やりがい・働きがい」向上を推進し、社員一人ひとりの成長と自発性を引き出す職場づくりを仲間とともに進めている。

五十鈴グループ

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1952年創業の鉄鋼加工・流通を中核とする企業グループ。薄板鋼板のスリット加工や切断加工を中心に、自動車部品、電機、オフィス家具など日本のものづくりを支えてきた。加工に加え、物流、保管、現場改善ノウハウを活かしたソリューション提供まで事業を拡大。理念経営を軸に、「生きがい・やりがい・働きがいを楽しくつくるビジョナリーカンパニー」を目指している。

本内容は2025年12月時点の情報です。

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