アルバイトが主役の組織で「働きがい」をどう育む?
理念と仕組みを両立させるファイブグループの挑戦
株式会社ファイブグループ 執行役員 光藤 雅基様
株式会社ファイブグループ 経営企画室 室長 浅川めぐみ 様
更新日 2026.03.262026.03.26
アルバイトが主役の組織で「働きがい」をどう育む?
理念と仕組みを両立させるファイブグループの挑戦
株式会社ファイブグループ 執行役員 光藤 雅基様
株式会社ファイブグループ 経営企画室 室長 浅川めぐみ 様
居酒屋をはじめとして多彩な飲食ブランドを展開する株式会社ファイブグループ。2013年から「働きがいのある会社」調査に取り組み、雇用形態を問わず一人ひとりの主体性を引き出す組織づくりを続けてきた、「働きがいのある会社」ランキングの常連企業です。今回は、同社執行役員の光藤 雅基 様、経営企画室の浅川 めぐみ 様に、働きがいを軸にした経営の考え方とその実践について伺いました。
<抱えていた課題>
✓「働きがい」を感覚や経験則ではなく、共通言語となる指標で捉えたい
✓経営理念が、現場にどう届き、どんな成果を生んでいるのか客観的に確認したい
<導入の決め手>
✓第三者機関による評価を通じて、組織の現在地を客観的に可視化できる
✓外食業界に限らず、多様な業界の事例と比較し、自社の立ち位置を確認できる
GPTW 御社の事業内容と組織の特徴について教えてください。
光藤様 外食・飲食業界で、居酒屋業態を中心に事業を展開している会社です。現在およそ90店舗、グループ全体では約140店舗を運営しており、「とりとん」や「居酒屋いくなら俺んち来い。」「洋風居酒屋Pecori 」など、それぞれ明確なコンセプトを持った店舗でサービスを提供しています。最近では「酒飲んで飯食って蛙之介」という店舗で、ケロリン桶に入ったお酒をみんなで注ぎ合って飲むスタイルがSNSで話題になりました。料理や空間だけでなく「体験そのもの」を楽しんでもらう工夫をしています。
組織の特徴として、現場の多くをアルバイトスタッフが担っている点があります。学生を中心とした20代前半のメンバーが多く、週に数日勤務するスタッフも含め、非常に多くの人が関わる組織です。まさに「アルバイトが主役の会社」といえる体制です。
GPTW 御社にとっての「働きがい」の位置づけを教えてください。
光藤様 創業当初から「関わるすべての人が楽しくなれる環境をつくる」という考え方を大事にしてきました。「楽しく」というのは、ラクをするという意味ではありません。自分で考え、自分で決めて、自分で行動するから「楽しい」。誰かに指示されて動くだけの仕事は、あまり楽しくないですよね。自分が主体者として関わり「今日はどうやったら目の前の人を喜ばせられるだろう」と考えながら仕事をする。その状態こそが、働きがいにつながると考えています。
浅川様 たとえば、ホールスタッフの場合、お客さまが目の前にいて、こちらの関わり方ひとつで場の空気が変わり、「ありがとう」「楽しかったよ」という言葉がその場で返ってくる。一人ひとりの主体的な関わりが、そのまま顧客体験の質に直結します。その積み重ねが、お客さまの満足を生み、結果として事業の成長を支えていく。私たちにとって「働きがい」は、経営理念の実現を支えるものであると同時に、競争力の源泉そのものだと考えています。
GPTW 「働きがいのある会社」調査に参画した背景を教えてください。
光藤様 私たちは、現場で働くスタッフ一人ひとりのやりがいや働きがいを高めることが、サービスの質の向上や業務改善、ひいては事業の成長につながると考えています。いわゆるサービスプロフィットチェーンの考え方です。
社内では以前から、「仕事を楽しみながらでも、やりがいや成果につながる」という認識を共有してきましたが、それが本当に客観的にも成り立つのかを確かめ、証明したいという思いがありました。その検証の手段の一つとして、「働きがいのある会社」調査に取り組んでいます。
一般的に、外食・飲食業界は「きつい」「長時間労働」「続かない」といったネガティブなイメージを持たれがちです。しかし私たちは、その見方に対して違和感を抱いてきました。飲食業界の中で評価されることが目的なのではなく、さまざまな業界と並べて見たときにも、「働きがいのある会社だ」と言える存在でありたいと考えています。その想いこそが、第三者の視点で自社の在り方を確かめようとした理由です。
浅川様 実は、初回の「働きがいのある会社」調査結果は“ずたぼろ”な状態でした。ただ、その結果を否定するのではなく、幹部がアンケート項目や数値一つひとつに向き合い、「なぜこうなったのか」「どうすれば良くなるのか」を真剣に議論しました。その象徴が、「GPTW人事部」という名称の部門を立ち上げたことです。採用のためではなく、働きがいそのものに向き合う組織として、本格的な改善に取り組みました。
GPTW アルバイトを含めて調査する狙いはなんでしょうか。
浅川様 働く人の約8割がアルバイトという組織で、その声を聞かずに働きがいを語ることはできません。「働きがいのある会社」調査の調査項目によってはアルバイトのスコアのほうが高く、現場の前向きさを再認識するきっかけにもなりました。
アルバイトの回答率を高めるために、なぜ調査をするのか、何のために声を聞くのかを丁寧に伝えることを大切にしています。LINEを使った社内インフラで事前に目的を共有し、リマインドを行う。加えて、店舗で直接声をかけるなど、オンラインとオフラインの両方で働きかけています。
GPTW 働きがいを生み出している考え方や仕組みを教えてください。
光藤様 私たちが現場で大切にしているのは、「マニュアル通りにできたか」ではなく、「目の前のお客さまをどれだけ楽しませられたか」です。どう声をかけるか、どんな距離感で接するか、そのやり方はスタッフ一人ひとりに委ねています。実際に、新人のアルバイトが「最初に自己紹介してもいいですか?」と自分なりに考えて動き出すこともありますし、そうした主体的な行動を私たちは歓迎しています。
浅川様 従業員向けのハンドブックやオリエンテーションでも「私たちの仕事はお客さんと仲良くなること」という考え方を繰り返し伝えています。仲良くなれば、相手が何を求めているのかが分かってくる。お客さまの気持ちが見えてくることで、自然と良いサービスにつながり、結果として成果も出る。まずは楽しむ。その上、結果も出る、という感覚を現場で実感できるようにしています。
光藤様 現場で大切にしている考え方や文化は、つくっただけではなかなか浸透しません。全員にきちんと届け切るためには、仕組みやインフラが欠かせないと考えています。仕組みの一つとして、毎月実施している全社アンケートがあります。働きがいやチームワークに関する項目を定点で取り、点数や傾向を可視化することで、今の状態を“感覚”ではなく“事実”として捉えられるようにしています。一種の健康診断のようなもので、結果を見ながら、どこに手を打つべきかを考える材料にしています。
浅川様 もう一つ大きいのが、LINEを活用した社内インフラです。アルバイトを含め、多くのスタッフが日常的に使っているツールだからこそ、情報が届きやすい。重要なお知らせやリマインド、各種手続きの案内、困りごとの相談窓口などを一元化し、双方向でやり取りできる仕組みを整えています。もともとは社内用に始めたものですが、現場での使い勝手や効果が高く、今では事業化するまでになりました。
光藤様 こうしたシステムに頼りきるのではなく、店舗での声かけや対話と組み合わせて、誰一人取り残さず、考えや取り組みが伝わっていく状態をつくること。これが働きがいを支える土台になっていると思っています。
GPTW 「働きがいのある会社」認定の取得やランキングへの選出について、どのような反響がありましたか。
光藤様 採用面では「働きがいのある会社」ランキングに選出されていることが、応募者にとっての安心材料になっています。外食業界に対してネガティブなイメージを持っている人や、その親御さんから見ても、「ここなら大丈夫そうだ」と思ってもらえる。いわゆる親ブロックの場面でも、客観的な評価として機能していると感じます。説明会や面接の中で話す内容に、裏付けが生まれるんですよね。
社内への効果も非常に大きいです。アルバイトや若手にとっては、「自分の働く場所は胸を張っていい場所なんだ」と感じられることが、モチベーションにつながっています。さらに、同業他社や異業種の企業から視察や問い合わせをいただくことも増え、業界全体の価値を高めていく議論につながっている点も、大きな意味があると感じています。こうした活動を通じて、外食業界の位置づけを引き上げることに貢献できれば幸いです。
GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてメッセージをお願いします。
光藤様 まずやるべきは、「人を大切にする」と腹を括ることです。人口が減り、担い手が少なくなることが分かっている時代に、会社が成り立つかどうかは人との関係性にかかっています。社員もアルバイトも、お客さまも含めて、「お互いに大切な存在だ」と感じ合える状態をつくる。そこがスタートだと思います。
制度や施策はもちろん必要です。ただ、制度はつくっただけでは浸透しません。理念も掲げただけでは形骸化します。だから私たちは、愚直に一人ひとりに向き合い、日々の対話と承認承賛を積み重ねてきました。メンバーの声に耳を傾け、伝えるべきことは丁寧に伝える。その繰り返しが、働きがいを手触りのあるものに変えていくと感じています。
まず人を大切にする。日々の対話と承認承賛を続ける。そして、伝わるインフラを整える。その積み重ねが、結果として組織の力になり、事業を支える土台になる。私たちは初回の調査では散々な結果でしたが、今は「働きがいのある会社」ランキングにも常連入りしています。だから、これから取り組もうとしているみなさんにも、恐れず一歩目を踏み出していただきたいです。
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