離職率33%を3%に変えた改善サイクル 医療法人社団翔志会の事例

更新日 2026.09.142026.09.14

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調査結果を起点に、評価制度と組織文化を改善し続けた5年間

翔志会たけち歯科クリニック
理事長 武知幸久 様
経営戦略室人事・労務 高橋 めぐ 様
経営戦略室労務 渡邉 麻紀恵 様

一般企業と比べて「やりがい」「働きやすさ」の面で課題があるとされる医療業界。その中で、医療法人社団翔志会が運営する、たけち歯科クリニックは、11年前の離職率33%をきっかけに働きがい改革を推進してきました。「働きがいのある会社」調査で組織課題を可視化し、評価制度や企業文化を見直しながら改善を重ねた結果、調査開始翌年から4年間の離職率は平均3%に。調査を「やりっぱなし」にせず、毎年の改善につなげてきた取り組みを伺いました。

<課題>
✓ 働きがい改革を推進する中で、「頑張っているのに評価されない」「現場の声が届かない」という声が浮上。経営層と従業員の間に、意識のギャップが生まれていた
✓ 「取り組みが従業員にどう届いているか」を把握できず、目に見えない組織課題の解像度を上げることが必要だった

<GPTWを選んだ理由>
✓ 世界共通の設問で組織状態を客観的に把握でき、業界を超えた比較によって自社の立ち位置を確認できる
✓ 他サーベイでは見えにくかった組織課題を可視化し、「次に何をすべきか」という具体的な施策立案につなげられる

<成果>
✓ 調査結果をもとに人事評価制度をゼロベースで再構築。価値観・企業文化も評価基準に組み込み、「何を頑張れば評価されるか」を従業員に明確に示すことができた
✓ 調査開始翌年から4年間、離職率平均3%を実現。現在も調査・1on1・従業員の声を改善サイクルに組み込み、制度・施策のアップデートを継続している

>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る


「患者も従業員も同じ」対話を軸に、人の幸せに関わる歯科医療

GPTW 翔志会たけち歯科クリニックの事業内容と組織の特徴を教えてください。

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武知様 歯科医療を提供しており、3つのクリニックを運営しています。従業員は約80名です。大事にしているのは、人の幸せにどう関わっていくか。患者さんが本当に求めているのは「幸せに豊かに暮らしたい」ということで、そこにどう価値提供していくかが僕らの仕事です。人と人との豊かなつながりが、幸せにつながっていく。その手段として歯科医療を提供する、と考えています。

患者さんの言葉にできない思いをどうヒアリングして医療に役立てるかに力を注いでいて、初診時には通常の歯科医院に比べてかなり時間をとってお話を伺っています。また、患者さんと従業員は同じだと考えているので、従業員の声も丁寧に拾っています。そのため、1on1を大切にしており、対話のトレーニングを積んで基準を満たした者だけが、聞き手として担当する形に変えました。

課題①:医療業界特有の働きにくさ/課題②:経営層と現場の意識ギャップ

GPTW 調査に参画される以前は、どのような組織課題をお感じでしたか。

武知様 医療業界は、一般企業と比べて働きがいや働きやすさの面で遅れをとっているのが実情です。予約を取って患者さんに施術する業種のため、急な休みが取りにくく、時間的な制約が大きい。人の体を触る仕事ならではの責任の重さもあります。仕事と家庭の両立が難しいという声も、特に家庭を持つ女性の従業員からありました。

また「頑張っているのに評価されない」「働く人の声が上層部に届きにくい」「休みの取り方に不満がある」といった声が、一部の意見としてあったんです。そこから、私を含めた経営層と従業員の間で、職場で起こっている出来事への意識が乖離しているんじゃないかと思うようになり、それを調査して改善に役立てられるツールを探していました。

実は11年ほど前、離職率が33%という時期がありました。どうしたら従業員が「うちの職場で働きたい」と思ってくれるのかという視点で、働きがい改革に取り組むようになったんです。ただ、経営層が懸命に改革を進めても、「現場にいる私たちの声は本当に届いているんですか」という意見が一部ありました。経営層が取り組んでいることと、従業員が実際に感じていることとのギャップを、もっと解像度高く知りたいというのが「働きがいのある会社」調査参画の背景です。

なお、以前は他のサーベイを取り入れたこともあったのですが、結果から目に見えない組織課題を的確に知るのが少し分かりにくいと感じていました。GPTWのサーベイは、世界共通の設問でグローバルに比較でき、日本での参加企業も多い。そして、目に見えない組織課題が明確になり、次に何を施策としてやればいいのかが見えてくる。そこが決め手でした。

愕然とした初年度結果が転機に。評価制度をゼロから作り直した理由

GPTW 初めて調査を実施されたとき、結果をご覧になってどんなことをお感じになりましたか。

武知様 最初に見たときは愕然としましたね。初年度から良い評価はいただけたものの、数値が僕の思っていたよりも低かった。ここまで一生懸命取り組んできたのに……と、すごく傷ついた体験でした。特に低かったのが、一番力を入れていた給与や評価など人事制度に関わるところです。「私たち経営陣の想いが全然伝わっていなかった」と感じました。懸念していた経営層と従業員のギャップが、取り組んでいたところに表れてしまったわけです。

GPTW そこから、どのようなアクションにつなげられたのでしょうか。

武知様 人事評価制度をゼロベースに戻して、一から作り直しました。 私たちの業界は、どうしても技術が優先されます。歯科医師や歯科衛生士は技術で価値を提供する仕事ですから、当然、技術が一番の評価基準になる。けれど、技術だけを評価してしまうと、技術が高い人ほど指導する立場になり、厳しさが行き過ぎてしまうこともあります。そこで大切になるのが、人としての成熟度や周囲との関わり方、いわゆる「器」の部分です。そういった人間性や器は、むしろ医療従事者にこそ必要で、評価基準にあったほうがいい と考えました。でも世の中になかなかないので、自分たちで考えて評価制度に組み込みました。

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同時並行で取り組んだのが、価値観の言語化、つまり企業文化づくりです。言語化した価値観を守れている社員、文化づくりにエネルギーを注ぐ人を評価できる基準を設けました。そうすることで「頑張っている」が定義され、 何を頑張れば評価されるかが明確になり、従業員も迷わなくなります。

今は次の段階として、業績目標と個人のやりがいをつなげる取り組みを進めています。従業員の待遇をさらに良くしたいですし、歯科医療は毎年進歩し、業界のデジタル化も進んでいますから、投資のための収益拡大が不可欠です。そこで法人のKGI(最終目標数値)をクリニック・部署・個人へと分解し、個人のKPI(達成のための数値目標)とやりがいをつなげて評価していこうとしています。 そうすることで、

個人が達成する数値が最終的に法人の数値になります。まだ形になりきってはいませんが、毎年アップデートして精度を上げ、個人も法人も良い成果を出せる相乗効果を期待しています。

「やりっぱなしにしない」——調査・1on1・対話を回し続けた5年間

GPTW 調査結果は、社内でどのように共有・活用されていますか。

武知様 たとえば「職場に行くのが楽しいと思えているか」という設問がありますよね。僕はそれをすごく重視しているのですが、歯科医師の部門だけ結果が異様に低かった。チームにその理由を聞いたら、「明日は難しい治療をしなければいけない、というストレスで、行くのが億劫なんです」と。責任の重さがしんどい、という話だったんです。まさに思い込みが外れた瞬間でした。部門ごとに傾向も違いますし、丁寧に聞いていくと「なるほど」がいっぱい出てくる。それは調査の活用の仕方として、すごくいい点だと思っています。

また、調査結果は幹部だけで抱え込まず、良かった点・改善点を全社員に共有しています。結果に対して、部署ごとの話し合いの場から意見を吸い上げる体制にし、調査結果を見て終わりではなく、そこから具体的な改善につなげることを大切にしています。この5年間で思うのは、「やりっぱなしにしない」ことが一番大事だということです。毎年結果が返ってきて、従業員がコメントも書いてくれる。それを参考に、一度作った制度を去年よりも今年、今年よりも来年とアップデートし続ける。その改善のために何が必要かを知るのに、このサーベイはすごく参考になる。そこが非常に有用だと感じているところです。

離職率33%→3%へ。数字が証明した、改善サイクルの効果

GPTW 調査と改善活動を重ねたことで、離職率には変化がありましたか。

武知様 GPTWの調査を始めた翌年から、4年間平均で3%になりました。それまでの数年間で少しずつ下がってはきていたのですが、調査に参加している期間の中で3%になったのは事実です。ただ、GPTWの調査や何か一つの取り組みだけが離職率の改善につながったとは考えていません。働きがいだけでなく、働きやすさの面も含めて、調査の結果を踏まえて、職場そのものを少しずつ改善してきた結果だと思っています。

その根本にあるのが、コンプライアンスをしっかり守ることです。国が働き方改革を進める中で、職場として、一般企業として求められるルールをきちんと守る。そして、「私たちはこの規範に則って制度を作っています」と、従業員に公明正大に、胸を張って言える状態にすることを大切にしてきました。制度について、嘘やごまかしなく説明できること。それが働きやすい職場をつくるうえで、何より大事だと思っています。

GPTW 高橋様、渡邉様は現場を支えるお立場から、調査の価値をどのようにお感じですか。

高橋様 私たちは診療室で働いているわけではないので、「働きがいのある会社」調査の結果を見て分かることが大きいですね。みんなが日々感じていることを、一人ひとり細かく聞けるわけではありません。だからこそ、調査結果を見て「ここはこう感じていたんだ」と初めて気づくことがあります。そうした気づきが、日々の改善につながっていると感じています。報酬や福利厚生もそうですし「経営層が期待していることが明確かどうか」といったことは、普段のコミュニケーションでは分かりづらいところですから。

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渡邉様 私は入職1年未満(取材当時)ですが、一般企業から来て感じるのは、本当に公明正大であることと、武知理事長の人事制度への本気度、経営者としての目線です。常に最新の情報を学ばれていて、社員のために還元したいという思いをすごく感じます。高橋を含め、価値観や文化を作っていく尊敬できる方が多い職場です。「働きがいのある会社」調査の結果をもとに経営層が本気で考えていく姿を目の当たりにして、すごいなと。この姿は診療室のスタッフにもより一層伝わったらいいなと思っています。

「認定」が採用を変えた。求職者の3分の1が興味を持つ外部評価の力

GPTW 調査で一定水準を満たした企業に付与される「働きがいのある会社」認定を採用ページで掲出されています。どのようにご活用いただいていますか。

武知様 採用における影響力がかなり大きいですね。人材採用は年々難しくなっていて、応募はあっても、求める人材を採用することが以前より難しくなっています。でも認定を前面に押し出すことで興味を持ってくださる方が多く、求める人材にマッチする人を今のところ採用できています。認定があることで応募の母数を維持でき、その中でカルチャーや価値観に合う方と出会うチャンスも増えます。肌感覚では、求職者の3分の1くらいの方が認定に興味を持って「これはどういうものですか」と質問されます。就職説明会でも認定を前面に押し出していて、すごく効果が出ていると思っています。

GPTW 成果を出せた秘訣と、今後のビジョンを教えてください。

武知様 秘訣は、調査結果を軸にした改善サイクルです。まず価値観を言語化して企業文化という基準を作り、それに見合った採用基準で採用し、自社に合う教育制度で育てていく。根幹には人事評価制度の見直しがあり、フィードバックできる文化も同時に作る。そこまでしたものを、また1on1やサーベイで丁寧にヒアリングして、教育や人事制度に反映させる。これをひたすら繰り返すことが、企業を成長させるうえで一番大事だと思っています。もうひとつ大きいのは、GPTWの表彰式や懇親会でいろいろな企業取り組みを共有していただけること。「うちはもう少し頑張れるな」というヒントをいただいて、社内制度を整えることを重ねてきました。

実は今年から、クリニックと、高橋や渡邉のいるサポートチームを別会社に分けることにしたんです。医療業界はどうしても「特殊」だと捉えられがちですが、組織として人と人とが一緒に働き、社会に価値提供していくことは、他の企業様と何ら変わらない。自分たちが経験してきた職場づくりを、この新しい会社から発信していきたい。働きがいに悩む中小企業の方々にも全く同じことが言えると思うので、それを広めることを企業の目的に据えて動き出したところです。医療業界だけではなく、社会にたくさんの働きがいのある会社、働くことが楽しいと思える会社を増やしていくことも、この会社の一つの価値提供だと考えています。

医療法人社団翔志会 理事長 武知 幸久

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1989年徳島大学歯学部卒業。1997年にたけち歯科クリニックを開業し、2011年に医療法人化。現在は京都市内で3クリニック・従業員約80名の組織を率いる。「人の幸せ」への価値提供を軸とした歯科医療を実践するとともに、働きがい改革による組織づくりを推進。2026年にはサポート部門を別会社化し、医療業界内外への職場づくりのノウハウ発信にも取り組む。

翔志会たけち歯科クリニック

京都市内で3つの歯科クリニックを運営する医療法人。「医療を通して、豊かで温かい人との繋がりを社会に築く」をパーパスに掲げ、患者が本当に求める「幸せで豊かな暮らし」への価値提供を、歯科医療という手段を通じて実現することを目指す。「働きがいのある会社」調査には2021年から参画し、調査上位の企業が選出される「ベストカンパニー」に5年連続で選出。時間的制約や責任の重さといった医療業界特有の課題に対して、働きがいと働きやすさの両面から改革を実践している。