社員の声を聞き、すぐ動く。アッヴィの働きがい向上の取り組み アッヴィ合同会社の事例

更新日 2026.10.092026.10.09

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2,000人企業でも、現場の声が経営に届く
ウォーターサーバーから人事制度まで、社員の声を素早く実行に移す

アッヴィ合同会社
社長 ティアゴ・カンポス ロドリゲス様
人事本部 本部長 松山 京隆様

革新的な医薬品とソリューションをグローバルに展開するアッヴィ。日本法人が2,000人を超える規模に成長するなかで、新社長のもと向き合ってきたのが「経営と現場の距離」でした。経営メンバーが全国の拠点を訪ねる「Go to Gemba」、約50名の部門リーダーによる「Japan Leadership Forum」、転勤の有無を選べる「エリアパートナー制度」。そのいずれもが、社員の声を起点に生まれています。社長のティアゴ・カンポス ロドリゲス様と、人事本部長の松山京隆様に働きがいを高めるための取り組みを伺いました。

<抱えていた課題>
✓組織や事業の変化を推進する中で、2,000人が同じゴールに同じ価値観を持って進むことが難しかった
✓ 経営陣が全国の現場で働く社員と直接対話する機会を持てず、各現場における課題を拾いきれていなかった
✓ 営業職では転勤が前提の働き方が一般的で、ライフステージや価値観に応じた働き方を選択できないことがキャリア形成の障壁になっていた

<GPTWを選んだ理由>
✓ グローバル企業として取り組んでおり、自社が「働きがいのある会社」をつくる上で考えている重要な領域をしっかり扱ってくれている
✓ 長期にわたる継続的な定点評価が、継続的改善の前提になる
✓ 社内調査ではなく、独立した第三者による評価である
✓ 外部ベンチマークによって、自分たちの立ち位置を客観的に確認できる

<成果>
✓ 調査の定性コメントを起点に「Go to Gemba」を立ち上げ。全体の約7割の営業社員と直接対話を実現し、実施後の社員アンケート満足度は98%、GPTWスコアでも「公正」「信用」「尊重」に改善の兆し
✓ カルチャーコーチングで把握した経営陣と上級管理職のスコアギャップを受けて「Japan Leadership Forum」を設立。戦略へのインプットの質が向上し、実行の浸透にも繋がった
✓ 「Go to Gemba」で収集した現場の声を踏まえ、「エリアパートナー制度」を導入。営業職の退職率が低下し、採用面でも改善が見られたほか、女性管理職の増加にもつながった


2,000人規模でも「同じゴール」に進めるか。組織が抱えた課題

GPTW: はじめに、御社がどのような会社なのかをお聞かせください。

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カンポス ロドリゲス社長:日本では現在、2,000人を超える社員が、さまざまな部門、さまざまな疾患領域で働いています。グローバルなバイオ医薬品企業の一員として、イノベーション、多様性、誠実さという一貫した価値観を大切にしてきました。

なかでもイノベーションは、科学の話に限定していません。より良いインパクトを出すこと、同じインパクトをより効率的に実現すること。行うことすべてに、この考え方を当てはめています。そして最も良いアイデアは、異なる背景、異なる世代、異なるジェンダーを持つ人たちの議論から生まれると考えています。だからこそ多様性を大切にしています。

GPTW: 社長に就任された頃、組織にはどのような課題があるとお感じでしたか。

カンポス ロドリゲス社長: アッヴィは非常に速く成長してきた会社で、常に変化しています。最大の課題の一つは、2,000人をどうやって同じゴールに、同じ価値観を持って進めるかということ。もう一つは、私を含む経営陣が、いかにして全社員と直接対話をし、そこで各現場における課題を洗い出せるか。この問いが常にありました。

まず、社員の声を聞く。物差しに選んだ「働きがいのある会社」調査

GPTW: その課題に対して、まずは社員の声を聞くところから始められたと伺いました。数あるサーベイのなかで「働きがいのある会社」調査を選ばれた理由をお聞かせください。

カンポス ロドリゲス社長: グローバル企業として、複数の国ですでにGreat Place To Workと取り組んできました。この調査は、私たち自身が「働きがいのある会社」をつくると考えている重要な領域を、しっかり扱ってくれていると感じます。

そして、継続的改善には長期にわたって一貫した評価のプロセスが不可欠です。加えて、社内調査ではなく独立した第三者に見てもらうこと。さらに外部ベンチマークが得られることで、自分たちを継続的に問い直せます。

社内にはさまざまなサーベイがありましたが、GPTWのサーベイとグローバルで実施している社員サーベイに絞ることで、改善に向けた取り組みをより集中して進められるようになりました。

GPTW: 5カ年計画の目標にも「働きがいのある会社」ランキングトップ10を掲げていらっしゃいます。

カンポス ロドリゲス社長: 野心的な目標の目的は、私たち自身をさらに前へ進ませることにあります。目標は、目指すべき遠くの目標であると同時に、進捗を測れるものである必要があると考えています。その中の一つが「働きがいのある会社」ランキングトップ10です。5年は長い。進みながら軌道に乗っているかを確認し、乗っていなければ何を修正できるかを考える。そのための指標です。

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聞いた声を動きに変える。加速する「Go to Gemba」

GPTW: 調査で見えてきた声は、どのように組織変容につながりましたか。

カンポス ロドリゲス社長:まず効いたのは、スコアではなくコメントでした。組織のレベルによって足並みが揃っていないと感じる。透明性をもっと高めてほしい。そうした声を受けて、社長を含む経営メンバーが全国のフィールドオフィスを訪問し、社員とのタウンホール、医師面会への同行、懇親会を通じて双方向の対話を行う「Go to Gemba」を立ち上げました。

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松山様: 2025年は16拠点を訪問し、184名の医師、そして全体の約7割の営業社員と直接対話を行いました。そこで寄せられた声をもとに、営業社員向けOne stop portalの作成、営業報告書の簡素化、インセンティブ基準の見直し、夏季のフィールド職のドレスコード変更(ノーネクタイやポロシャツ可)、主要ポジションのキャリアパスの可視化、マネジャー昇格制度の見直しなどを迅速に実行しています。実施後の社員アンケートの満足度は98%で、訪問した拠点では調査スコアが全体的に高く、特に「公正」「信用」「尊重」で改善の兆しが見られました。

カンポス ロドリゲス社長:今年は全国のフィールドオフィスに給水器を導入しました。単純に見えますが、社員の声がこうした小さな変化にも、休暇制度やキャリア制度のような大きな変化にも、同じようにつながっていく。その両方があるのは、とても良いことだと思います。

「Go to Gemba」は、社員の声を経営の意思決定につなげ、社員と経営が共に会社を創る文化を体現する取り組みとなっています。

経営層と管理職のギャップを埋める。「Japan Leadership Forum」の立ち上げ

GPTW:調査後に実施した カルチャーコーチングの目的と、実施されてのご感想をお聞かせください。(※カルチャーコーチング:GPTWのコンサルタントが調査結果の分析や打ち手の検討を支援するサービス)

松山様: 昨年10月に実施していただき、今年もお願いしています。目的はトップ10という目標を掲げるなかで、コメントやフィードバックを中心にアクションを計画したいということでした。

そこで非常に良いインサイトをいただいたのが、経営層と上級管理職層とのスコアのギャップです。ここに一つ改善の機会があるのではないか、と。その後11月の経営陣オフサイトでその結果を見ながらアクションを立てていき、生まれたのがJapan Leadership Forum(JLF)でした。今年は1月と6月に丸一日集まって課題を話し合い、11月にまた来年のアクションを検討します。

GPTW: Japan Leadership Forumでは、具体的に何をされているのでしょうか。

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カンポス ロドリゲス社長: 約50名の、上級管理職を含むトップリーダーの集まりです。まずこのグループと、新5カ年計画「Beyond the Best」に沿って会社の優先課題を精緻化しました。注力領域と2026年に実行すべきプロジェクトを定義し、各メンバーにはその取り組みのリーダーとして責任を持って進めてもらう。成果は二つです。戦略へのインプットの質が上がったこと。そして、経営陣以外も構想段階から関わるため、実行の浸透が良くなったことです。

松山様: 前回の調査では、上級管理職のスコアも高水準でしたが、「信用」の項目を中心に改善機会が見られました。変革を加速するには上級管理職を戦略立案の初期段階から巻き込むことが重要だと判断したのです。参加者の9割が、JLFは会社にとって重要と回答しました。始まったばかりで試行錯誤をしながらですが、かなり良い循環になっていると感じます。

転勤を「選べる」ものに。エリアパートナー制度

GPTW:転勤がない「エリアパートナー制度」は、製薬業界では非常に斬新な取り組みだと感じました。導入の背景をお聞かせください。

カンポス ロドリゲス社長:これまで私たちの業界では、営業社員は数年おきに転勤を求められる働き方が一般的でした。最初の「Go to Gemba」で現場に足を運んだとき、いまの制度では仕事でやり遂げたいことと家庭の両立が難しい、という声が明確に上がってきたのです。

松山様: 社内のジェンダーサーベイでも、営業職の男女ともに4割近くが、勤務地の制約を将来のキャリア選択におけるハードルとして挙げていました。私たちは、この課題の本質は転勤そのものではなく、社員がライフステージや価値観に応じて働き方を選択できないことにあると考えました。

カンポス ロドリゲス社長:そこで、従来型の「ナショナルパートナー」と、転勤のない「エリアパートナー」という二つのキャリアパスをつくりました。重視したのは、エリアパートナーの条件が魅力的であり続けることです。処遇でも、マネジメントポジションへ進めるという点でも。自分の人生と自分のキャリアは自分で決めていいのだと感じられるようにしたかった。

松山様: 2026年1月に、営業職とエリアマネージャー職を対象に導入し、評価・昇格・昇給・報酬はナショナルパートナーと同一としています。

カンポス ロドリゲス社長: 発表後、対象社員の約2割がエリアパートナーを希望しました。応募した方については3年以内に希望のエリアに配置することをお約束しましたが、結果として応募者の7割は最初の1年で配置できています。

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松山様: 営業職については退職率が下がりました。採用面でも、会社の取り組み姿勢に共感して、アッヴィを選ばれる方が増え、採用ポジションが短期間で埋まることも増えました。さらに、本制度の導入により女性管理職の登用が進みました。転勤はできないけれど、この地域であれば管理職をやりたい。これまで躊躇してきた人も、この制度によりチャレンジが可能になりました。

GPTW: ナショナルパートナーを選んだ方から、不満は上がりませんでしたか。

カンポス ロドリゲス社長:まず、自分で選んでもらうという設計であること。加えて、ナショナルパートナーには転勤時の一時金を増やし、単身赴任の手当も見直しました。エリアパートナーには社宅の提供がありませんので、その原資を回す形で公平性を持たせています。ですので、いまのところ大きな不満は出ていません。

認定・ランキングは社員の誇り。声を聞いたら、すぐ動く文化が働きがいをつくる

GPTW: 「働きがいのある会社」認定・ランキングは、どのように活用されていますか。

カンポス ロドリゲス社長:非常に重要だと思うのが社員の誇りです。自分の会社が認められるのを見ることは、全社員にとって大きなモチベーションになる。この会社の一員になることに、より自信を持てるようにしてくれます。

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松山様: 採用の場面でも効果を発揮しています。当社を知らない人に対して、外部機関にしっかり評価されているという安心感は非常に役立ちます。実務的には、今年から名刺のガイドラインを変えて認定マークを入れられるようにしました。FacebookやLinkedIn、採用冊子でも発信しています。受付にあるランキングのトロフィーも常設です。候補者の方との面接はほとんどそのフロアで行いますから目に付くだろうと。

GPTW: 社員の声をここまで形にできる、御社ならではの強みはどこにあるとお考えですか。

松山様: さまざまな会社出身の社員と話すと、何人もの人に共通して言われることがあります。これまでは声は聞かれるけれど特に何も起きなかった、けれどアッヴィではそれが実際に起きているし、しかもかなり短い期間で起きている、と。声を聞くからにはアクションを取らなければいけない。給水機設置の話も、1ヶ月前に聞いた話が1ヶ月後には実現していましたし、ドレスコードも、アナウンスまで3〜4週間ほど。2,000名を超えていても、このスピード感でやれる、ということですね。

カンポス ロドリゲス社長:会議の最中に変更を決めた例すらあります。ある表彰に、年齢基準を設けていましたが、全員と同じ仕事をしているのですから、基準を撤廃しました。現場からフィードバックを受け「わかりました、変えましょう」と。その場で制度変更が完了です。

松山様: スピード感を持って実行できる背景には、経営や人事だけでなく、現場のリーダーや社員一人ひとりが、難しい課題に対して自ら解決しようとする文化があると思っています。患者さんに対する使命感と明確なゴールを共有しているからこそ、何のために変えるのかが全員に腹落ちしている。それが、意思決定と実行のスピードを支えているのだと感じています。

 

GPTW: 最後に、同じ課題を持つ企業へのメッセージと、今後目指す組織像をお聞かせください。

カンポス ロドリゲス社長:どんな課題を持っていようとも、それを解決するのは人である、ということです。社員に最善の条件を提供すること。会社がいまどこにいて、どこへ向かうのかを共通理解にすること。そして一人ひとりに選択肢を与え、自分で選んでもらうこと。問題に近い人ほど、解決策を見つけるための良いインサイトを持っていますから。

そして、組織作りに最終的なゴールはありません。いまは「Beyond the Best」に取り組み、財務的な成果、顧客からの評価、職場環境という観点でゴールを定義しました。毎年、進捗を評価し、必要な修正や改善を加えていく。そのすべてが、その実現につながっていきます。

アッヴィ合同会社 社長 ティアゴ・カンポス ロドリゲス様

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1999年、アッヴィの前身であるアボットラボラトリーズ(ポルトガル)に入社。以来25年にわたり、欧州現地法人のゼネラルマネジャーなどを歴任し、2010年には日本でイミュノロジー事業本部長を務めた。2013年以降海外での要職を歴任し、2024年11月、アッヴィ合同会社 社長に就任。

人事本部 本部長 松山 京隆様

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大学卒業後、日系大手事業会社に入社。本社および北米での複数回の勤務を通じ、多様かつ戦略的な人事業務に携わる。その後、欧州系製薬会社で人事責任者を務め、2024年9月に、アッヴィ合同会社 人事本部長に就任。

アッヴィ合同会社

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「現在の深刻な健康課題を解決する革新的な医薬品の創製と提供」をミッションに掲げるグローバルなバイオ医薬品企業の日本法人。免疫疾患、がん、精神・神経疾患、アイケアなどの領域で製品の開発・提供に取り組んでいる。本社は東京都港区芝浦、国内従業員数は約2,000名。「働きがいのある会社」ランキングには2015年版から通算9回選出され、2025年9月に5回目の「働きがい認定」を取得。

※ 本内容は2026年10月時点の情報です。

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