急成長による組織の歪みをアンケートで可視化
社員の本音をもとに、評価制度を見直す取り組み
アイムファクトリー株式会社
取締役 平山 穰一郎 様
更新日 2025.06.042025.05.28
急成長による組織の歪みをアンケートで可視化
社員の本音をもとに、評価制度を見直す取り組み
アイムファクトリー株式会社
取締役 平山 穰一郎 様
IT人材に特化した人材サービス企業・アイムファクトリー株式会社。同社は、ここ数年で従業員数が増加する急成長の中、「Great Place To Work(R)働きがいのある会社調査(以下、働きがいのある会社調査)」に参画しました。全従業員の率直な声を余すところなく集め、評価制度の不透明さやマネジメント体制の課題を可視化し、組織変革の起爆剤として活用しています。今回は、その取り組みの詳細について、同社取締役・平山穰一郎様にお話を伺いました。
<抱えていた課題>
✓事業成長を目指す上で社員一人ひとりの成長、優秀な人材の確保が必要だった
✓人員増加に伴い、マネジメントが追い付いていない現状にも課題を感じていた
<導入の決め手>
✓従業員エンゲージメントと採用力向上の両輪での取り組みに活用できると感じた
✓エンゲージメント向上に向けて、社員の声を集めて現状を可視化することを第一歩とした
✓働きがい認定取得により社外に向けてのブランディング効果が期待できると感じた
GPTW 御社の事業概要とその特色を教えてください。
平山様 弊社はIT人材に特化した人材サービスを展開しており、2008年に設立、2025年7月には18期目を迎えています。業績も順調に成長しており、IPOを目指しています。
IT特化の人材サービスですが、事業の柱は大きく分けて2つ。ひとつは正社員・契約社員を対象とした「人材紹介サービス」、もうひとつはフリーランスエンジニア向けの「案件紹介・就業支援」です。また、人材紹介サービスだけでなく、ダイレクトリクル―ティングサービスも2025年からスタートするなど、サービスを拡充させています。また、自社メディアとして、ITエンジニアの転職やフリーランス案件紹介に特化した『エンジニアファクトリー』、社内SEや情報システム領域に特化した『社内SE転職ナビ』を展開しています。なかでも当社が強いこだわりを持つのが「社内SE」です。弊社が定義する「社内SE」とは、ヘルプデスクや情報システム部門の担当者をはじめ、DX推進やIT戦略を担うCTO(Chief Technology Officer)クラス、あるいはITコンサルタント級のハイレベル人材までを含む広義の概念を指しています。彼らは企業の事業構造を深く理解し、社内のIT革新を牽引する中核的存在として活躍できる人材です。そういった「社内SE」として活躍される方、もしくは目指される方への転職支援に長けているのも強みの一つになります。
また、社員としての転職、フリーランスとしての就業支援両方ご提案できるというのも、クライアントと求職者様の双方にとって非常に強みとなっています。
クライアントは開発や事業戦略に必要なITエンジニアが確保できなければ、計画が停滞し、最終的には売上や収益に影響します。反面、ITエンジニアの社員採用は人材不足であるため、リードタイムが非常に長くなります。そのため、まずは即戦力のフリーランスITエンジニアに参画して頂き、開発や事業推進を停滞させず、並行して社員採用を行えるといった提案ができます。
また、求職者様側でも今後のキャリアを見据え、社員としてキャリアアップしていくか、フリーランスとして独立されるかなど、ご提示できるキャリアの方向性が広いことが強みです。
ただIT人材を紹介するだけではなく、「変革を起こす人」と「変革を求める企業」をつなぐ存在でありたい。それが、私たちの掲げる理念「変革を起こす人と企業をつなぐ」の実現につながると考えています。
GPTW 働きがいのある会社調査に参画した目的を教えてください。
平山様 働きがいのある会社調査への参画によって、採用面では、ブランディングによる応募数の増加や新卒採用における内定辞退率の改善、社内に対しては、エンゲージメントの向上による社員のパフォーマンスアップが目的です。
当社ではここ数年で従業員数が増加していますが今後も事業成長を目指す上では社員一人ひとりの成長、そして優秀な人材の確保が必要です。また人員増加に伴い、マネジメントが追い付いていない現状もあります。特に人財という無形商材を扱うため、社員自体の成長やパフォーマンスの上げ方は非常に重要です。
参画当初は、特に働きがい認定取得による社外に向けてのブランディング効果を期待していましたが、調査結果を確認する中で元々組織に感じていた問題点が再発見でき、概要結果のみの「認定プラン」から、調査結果やコメントを閲覧できる「分析プラン」へと切り替えました。
GPTW 働きがいを高めるために、具体的にどんな取り組みをしていますか。
平山様 まずは会社の制度改定に取り組んでいます。今回、詳細な結果を確認できたことで、当初から必要性を感じていた改善点が明確に表れ、「やはり皆も同じように感じていた」という共通認識が可視化されました。その結果、「改めて良い評価制度をつくろう」という機運が高まり、会社全体で制度改革を進めています。
改革にあたり、まずは「3年後、5年後に社員がどう成長し、どのようなキャリアを描いていくのか」というビジョンを明示し、キャリアステージを定義。そのうえで、年間研修プログラムや職種別キャリアパス、グレード、報酬レンジまでを一体的に設計しています。さらに、マネジャーによる定期面談を通じて、コンピテンシーや目標の進捗状況をフィードバックし、育成を促進する運用体制の整備も進行中です。導入後は、実際の運用を通じて柔軟にブラッシュアップしていく予定です。
次なるステップでは、評価制度と密接に連動したキャリアプラン、育成ロードマップ、そしてマネジャー向け研修や評価制度の整備に取り組む予定です。ただ、今は制度自体の構築に着手していますが、実際には制度をスタートして運用、定着化し、最終的には社員が成長を実感できる環境が整えられて、初めて成果と言えると考えます。
GPTW 「働きがいのある会社認定」をどのように活用していますか。また、どのような効果を感じていますか?
平山様 働きがい認定については、これから徐々に効果が現れてくるものと捉えています。時間はかかりますが、例えば採用に関していえば内定辞退率や承諾率といった定量的な指標に明確な動きが出てくるのは、新しい評価制度の運用が軌道に乗ってからになるでしょう。
一方で、働きがいのある会社調査のアンケートでは、当社の課題に加え、「会社をもっと良くしたい」「改善すればさらに成長できる」といった前向きな意見が想像以上に多く寄せられました。社員が自社に対して前向きな視点を持っていると再認識できたことは、大きな成果のひとつです。
今後は、評価制度の実践と「働きがい認定」の活用を両輪とし、エンゲージメントの向上と採用成果の最大化を目指していきます。さらに、今回限りで調査を終えるのではなく、改善の取り組みが一段落したタイミングで再び調査を実施し、その効果を検証する予定です。もちろん、すぐに結果が出るものではありませんが、来年あたりから徐々にポジティブな声が聞こえてくることを期待しています。
GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてのメッセージをお願いします。
平山様 私たちと同じように、多くの企業が何かしらの課題感を抱え、「変えていきたい」と感じているのではないでしょうか。その第一歩として欠かせないのが、社員の声を集め、現状を可視化することだと考えます。
今回の働きがいのある会社調査は、会社にとって大きな気づきを得る貴重な機会となりました。特に印象的だったのは、ネガティブな意見だけでなく、ポジティブな声も数多く集まった点です。
働きがいを高めるには、調査結果をどう活用するかがカギを握ります。たとえば、評価制度の明確化など、経営陣がどのようにアクションを起こすかによって、その成果は大きく左右されるでしょう。もしそこで何も動かなければ、「言っても変わらない」という失望が広がり、社員のモチベーション低下を招きかねません。変革に対する覚悟があるのであれば、ぜひ働きがいのある会社調査を積極的に活用していただきたいと考えています。
大切なのは、会社が何かを与えて終わるのではなく、従業員自身も評価制度のもとで主体的に仕事に向き合うという意識です。こうした相互作用のサイクルが生まれれば、組織としての働きがいは、より確かなものへと進化していくのではないでしょうか。