なぜエンゲージメントサーベイは「やりっぱなし」になるのか?効果を出す運用法

更新日 2026.01.162026.01.16コラム

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なぜエンゲージメントサーベイは「無駄」だと言われてしまうのか?

エンゲージメントサーベイが「無駄」と評される背景には、いくつかの典型的な失敗パターンが存在します。

これらの問題点は、サーベイの設計から実施後の運用に至るまで多岐にわたりますが、多くは従業員の不信感や負担感に起因するものです。サーベイ自体にデメリットがあるというよりは、運用の注意点を押さえていないことが形骸化を招きます。

ここでは、サーベイが機能不全に陥る主な原因を5つの観点から具体的に掘り下げていきます。

従業員にサーベイの目的が正しく伝わっていない

サーベイを実施する目的や、その結果を何に活用するのかが従業員に共有されていない場合、従業員は「なぜ回答する必要があるのか」という疑問を抱きます。
目的が不明確なまま回答を求められても、その意味を理解できず、協力的な姿勢を得ることは難しいでしょう。

形式的なタスクとして捉えられ、表面的な回答しか集まらなくなる可能性があります。結果として、得られたデータは組織の実態を正確に反映せず、分析しても価値のある示唆を見出すことは困難になります。

実施後に結果がフィードバックされず「やりっぱなし」になっている

サーベイを実施したにもかかわらず、その結果が従業員に共有されない「やりっぱなし」の状態は、最も典型的な失敗パターンです。

従業員は時間を割いて回答したにもかかわらず、会社から何のアクションもなければ、「自分たちの声は無視された」と感じてしまいます。

このような経験は会社への不信感を増大させ、次回以降のサーベイへの協力意欲を著しく低下させる原因となります。
一度失われた信頼を回復するのは難しく、サーベイの形骸化を決定づける要因になりかねません。

サーベイ結果が具体的な組織改善アクションにつながっていない

サーベイ結果を分析して課題を特定しただけで満足し、具体的な改善アクションに移せていないケースも少なくありません。

データから問題点が明らかになっても、それを解決するための施策が実行されなければ、組織は何も変わらず、サーベイの効果は得られません。

従業員から見ても、サーベイ後に職場の問題が何一つ改善されなければ、「結局何も変わらない」という諦めや失望感が広がります。
分析で終わらせず、改善策の実行までをセットで計画することが不可欠です。

質問項目が多く、回答する従業員の負担が大きい

組織の課題を網羅的に把握しようとするあまり、質問項目数が過剰に多くなってしまうことがあります。

設問が多すぎると、従業員一人ひとりの回答にかかる時間が長くなり、大きな負担を強いることになります。
この負担は、回答率の低下や、後半の設問に対する回答精度の低下を招くデメリットにつながります。

サーベイの目的を絞り込み、本当に必要な情報だけを問う設問設計にすることで、従業員の負担を軽減し、より質の高いデータを収集することが可能となります。

正直に答えると評価に影響するのではという不安がある

サーベイで自部署の課題や上司への意見などを正直に回答すると、それが誰の回答かバレるのではないか、自身の評価に不利な影響が出るのではないか、という不安を従業員が抱えている場合があります。

匿名性が担保されていない、あるいは担保されていると信じられていない状況では、従業員は本音での回答をためらい、当たり障りのない回答を選択しがちです。

これでは組織のリアルな課題を把握できず、サーベイで得られるデータの信頼性そのものが損なわれてしまいます。

「意味がない」サーベイから脱却!無駄にしないための5つの対策

エンゲージメントサーベイを形骸化させず、組織改善に活かすためには、陥りがちな失敗パターンを避けるための対策が不可欠です。
サーベイの目的共有から改善アクションの実行、そして効果検証という一連のプロセスを正しく設計し、運用することが求められます。

ここでは、サーベイを「意味がある」ものへと転換させるためのおすすめの対策を5つ紹介します。
これらのポイントを押さえることで、従業員の協力を得ながら、継続的な組織改善を実現できます。

【対策1】サーベイの目的を明確にし、全従業員へ事前に共有する

まず、サーベイを実施する目的を明確に定義することが重要です。
「従業員の働きがいを高め、離職率を改善する」といった具体的なゴールを設定し、なぜ今サーベイを行う必要があるのかを経営層から全従業員へ丁寧に説明します。

サーベイが単なる業務ではなく、より良い職場環境を作るための共同作業であるという意味を伝えることで、従業員の当事者意識を高め、前向きな協力を引き出すことができます。
目的への共感が、正直で質の高い回答の収集につながります。

【対策2】集計結果と今後の改善方針を速やかにフィードバックする

サーベイ実施後は、可能な限り速やかに結果の概要を全社にフィードバックします。

結果から見えた組織全体の強みや課題を共有し、それらに対して会社として今後どのような改善方針で取り組んでいくのかを具体的に示しましょう。

従業員は「自分たちの声が会社に届き、行動につながっている」と実感することで、会社への信頼感を深めます。
透明性の高い情報開示と、改善への真摯な姿勢を見せることが、次回のサーベイへの協力を促す上で極めて重要です。

【対策3】現場が実行できる小さな改善アクションから始める

全社的な大きな制度改革だけでなく、各部署やチーム単位で主体的に取り組める小さな改善アクションから始めることも有効です。

例えば、部署ごとのサーベイ結果を基に、管理職とメンバーが対話の場を持ち、「チーム内の情報共有を増やす」「定例会議の進め方を見直す」といった身近な課題の改善計画を立てて実行します。

現場レベルでの成功体験を積み重ねることが、従業員のエンゲージメントを高め、ボトムアップでの継続的な組織改善文化を醸成します。

【対策4】回答の匿名性を担保し、心理的安全性を確保する

従業員が安心して本音を回答できるよう、回答の匿名性を徹底的に担保することが不可欠です。

システム的に個人が特定できない仕組みを導入するとともに、その点を従業員に明確に伝え、不安を払拭する必要があります。
特に、匿名性担保を保証している外部の専門機関が提供するツールを利用することは、中立性や信頼性の確保に有効です。

個人が特定される懸念なく、誰もが自由に意見を述べられる心理的安全性の高い環境を整えることが、組織の真の課題を浮き彫りにするための大前提となります。

【対策5】一度きりで終わらせず、定期的に実施して効果を測定する

エンゲージメントサーベイは、一度きりのイベントで終わらせるのではなく、年に1回や半年に1回など、定期的に実施して組織の状態を定点観測することが重要です。

継続的に実施することで、前回サーベイ後に実行した改善施策の効果を測定し、その有効性を客観的に評価できます。
施策によってスコアがどう変化したかを検証し、次のアクションプランに活かすPDCAサイクルを回すことで、組織改善の精度と実効性を着実に高めていくことが可能になります。

…対策は分かった。でも実際には…

「経営層の理解が得られない」
「人事だけで抱え込んでしまう」
「現場管理職が動いてくれない」

実は、サーベイ実施企業の半数近くが「人事施策に活用できていない」という現実があります。

形骸化の3パターンと具体的な打開策を解説する
「形骸化を防ぐサーベイ運用の再点検ガイド」もぜひお読みください。
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正しく活用すればメリット多数!エンゲージメントサーベイで実現できること

エンゲージメントサーベイは、運用上の注意点を守り正しく活用すれば、組織にとって多くのメリットをもたらします。

単に従業員満足度を測るだけでなく、組織が抱える課題をデータに基づいて可視化し、戦略的な人事施策の立案を可能にする強力なツールです。
サーベイを起点とした組織改善サイクルを回すことで、従業員のエンゲージメントを高め、ひいては企業全体の生産性向上や持続的な成長を実現する効果が期待できます。

勘や経験に頼らないデータに基づいた組織課題の把握

エンゲージメントサーベイの最大のメリットは、これまで経営層や人事担当者が勘や経験則で捉えていた組織風土や人間関係といった定性的な情報を、客観的なデータとして可視化できる点にあります。

全社平均だけでなく、部署、役職、勤続年数などの属性別に結果を分析することで、どの層にどのような問題点が存在するのかを具体的に特定できます。
データという共通言語を持つことで、課題に対する認識を組織全体で揃え、根拠に基づいた的確な対策を講じることが可能になります。

従業員のエンゲージメント向上による離職率の改善

サーベイを通じて明らかになった課題に対し、会社が真摯に向き合い、改善策を実行する姿勢は従業員のエンゲージメントを高めます。

自分の意見が組織を良くするために役立っていると実感できることは、会社への帰属意識や貢献意欲の向上につながります。

エンゲージメントが低い状態は離職の兆候とも言われますが、サーベイをきっかけとした対話や改善活動を通じて働きがいを高めることで、優秀な人材の定着を促進し、離職率の改善という具体的な成果が期待できます。

働きがいのある職場環境がもたらす生産性の向上

従業員エンゲージメントが高い組織は、そうでない組織に比べて生産性が高いことが多くの調査で示されています。

エンゲージメントの高い従業員は、自らの業務に誇りを持ち、主体的に能力を発揮しようと努めるため、個人のパフォーマンスが向上します。
さらに、チーム内の協力体制が強化されたり、顧客へのサービス品質が向上したりと、組織全体にポジティブな影響が波及します。

働きがいのある職場環境を整備することは、最終的に企業の業績向上にも直結する重要な経営課題です。

成果を出すためのエンゲージメントサーベイ実践ステップ

エンゲージメントサーベイを成功させるには、計画から実行、そして改善までの一連のプロセスを体系的に進めることが重要です。
ここでは、サーベイを導入し、組織改善という成果につなげるための具体的な実践ステップを6段階に分けて解説します。

これからサーベイを始める企業はもちろん、現在の運用方法を見直したい企業にとってもおすすめの手順です。

各ステップのポイントを押さえ、着実に実行することで、サーベイの効果を最大化できます。

Step1:組織の課題に合わせた目的とゴールを設定する

最初に「なぜサーベイを行うのか」という目的を明確にします。

例えば「若手社員の離職率の高さ」や「部門間の連携不足」といった自社が抱える経営課題や人事課題を洗い出し、サーベイを通じて何を明らかにしたいのか、どのような状態を目指すのかというゴールを設定します。
この目的設定が、後の質問項目設計や結果分析の軸となります。

サーベイを実施すること自体が目的化しないよう、その先に解決したい課題と結びつけて意味を定義することが不可欠です。

Step2:実施スケジュールと従業員への周知方法を決める

目的とゴールが定まったら、具体的な実施計画を立てます。

回答期間、集計・分析期間、フィードバックの時期などを含めた年間のスケジュールを策定しましょう。同時に、従業員への周知方法も計画します。
サーベイの目的、匿名性の担保、今後の流れなどを経営層からのメッセージとして発信するなど、丁寧なコミュニケーションを心がけることが重要です。

周知の質は回答率や回答の真剣度に直結するため、注意点として細やかに準備を進める必要があります。

Step3:サーベイを実施し、回答データを集計する

策定した計画に沿って、サーベイを実施します。

近年では、設問設計から配信、自動集計までを簡単に行えるクラウド型のサーベイツールが数多く提供されています。
これらのツールを活用することで、人事担当者の運用負荷を大幅に軽減できます。

回答期間中は、未回答者へのリマインドなども行い、回答率の向上を目指します。

Step4:結果を分析し、優先的に取り組むべき課題を特定する

回答データが集まったら、結果を分析します。

まずは全体のスコア傾向を把握し、自社の強みと弱みを明らかにします。 次に、部署や役職、年代といった属性ごとのデータを比較分析(クロス集計)することで、特にスコアが低い層やばらつきが大きい項目など、より具体的な問題点を掘り下げます。

すべての課題に一度に取り組むことは非現実的なため、結果の重要度や改善の緊急性などを考慮し、優先的に着手すべき課題は何かを見極めることが重要です。

⇒課題は特定できた。でも…

「複数の課題から優先順位を決められない」
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こんな壁にぶつかっていませんか?
サーベイ結果を「分析で終わらせない」ための3つの階層(経営・人事・現場)の役割と、 具体的な改善アクションへの落とし込み方を解説

▼ 組織を本気で動かすサーベイ運用の全体像
「形骸化を防ぐサーベイ運用の再点検ガイド」

Step5:具体的な改善策を計画し、実行に移す

分析によって特定された優先課題に対して、具体的な改善アクションプランを策定します。

課題の原因をさらに深掘りし、「何を」「誰が」「いつまでに」行うのかを明確にした計画を立てましょう。
例えば、管理職のマネジメントに課題が見られた場合は、管理職向けの研修を実施するなどの施策が考えられます。

計画の実行にあたっては、関係部署や現場の従業員を巻き込み、全社的な取り組みとして進めていくことが、改善の実効性を高める上で不可欠です。

Step6:施策の効果を次のサーベイで検証し、PDCAを回す

実行した改善施策がどのような効果をもたらしたかを、次回のサーベイで検証します。

前回のサーベイ結果と比較し、課題としていた項目のスコアが改善したか、あるいは新たな課題が生まれていないかなどを評価します。この効果検証を通じて、施策の有効性を判断し、次の改善アクションへとつなげていきます。

この「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」というPDCAサイクルを継続的に回し続けることが、組織を着実に成長させる鍵となります。

エンゲージメントサーベイに関するよくある質問

エンゲージメントサーベイを導入・運用する際には、担当者がさまざまな疑問や悩みに直面します。
例えば、回答率の低さや結果のフィードバック方法、適切な実施頻度などは、多くの企業で共通する課題です。

ここでは、そうしたサーベイに関するよくある質問を取り上げ、それぞれの注意点や対応策について簡潔に解説します。
これらのポイントを事前に理解しておくことで、よりスムーズで効果的なサーベイ運用が可能になります。

サーベイの回答率が低い場合、どうすれば上がりますか?

回答率向上の鍵は、事前の目的共有と事後のフィードバックにあります。

サーベイが組織改善に繋がるという信頼感を醸成することが最も重要です。また、経営層から協力を呼びかけるメッセージを発信したり、回答をリマインドしたりすることも有効な手段となります。

回答率が極端に低い場合は、サーベイへの不信感や過度な業務負担など、根底にある原因を探る必要があります。

従業員への結果のフィードバックは、どの範囲まで行うべきですか?

全社的な傾向と今後の改善方針は、原則として全従業員に公開するのが望ましいです。

部署ごとの詳細な結果は、個人が特定され誰が回答したかバレる事態を避けつつ、当該部署の管理職やメンバーに共有します。
重要なのは、犯人探しではなく、前向きな対話を促すための情報提供とすることです。
透明性を保ちながらも、個人のプライバシーには最大限配慮することが求められます。

サーベイの頻度はどれくらいが適切ですか?

年に1〜2回の実施が一般的です。

この頻度であれば、施策の実行から効果が現れるまでの期間を確保しつつ、組織の変化を定点観測するのに適しています。
ただし、組織改革のスピードが速い場合など、目的に応じて頻度を調整することも有効です。

例えば、年1回の詳細なサーベイと、四半期ごとの簡易的なパルスサーベイを組み合わせることで、より機動的な組織改善が可能になります。

まとめ

エンゲージメントサーベイが「無駄」になるかどうかは、その運用方法に大きく依存します。

目的が不明確なまま実施されたり、結果がフィードバックされず改善アクションに繋がらなかったりすれば、従業員の不信感を招き形骸化してしまいます。

一方で、明確な目的を共有し、結果を真摯に受け止めて組織改善のPDCAサイクルを回すための対策を講じれば、サーベイは従業員のエンゲージメントを高め、企業の成長を促進する極めて有効なツールとなり得ます。


サーベイを「無駄」で終わらせないために。
本記事で紹介した対策を実践しようとしても、組織の壁に阻まれることがあります。

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