復活、中間管理職 ー 働きがいから問い直すマネジャーの役割
Vol1. なぜ今、中間管理職だけが疲弊しているのか ー 現場のリアル

更新日 2026.03.132026.03.11コラム

column_20260312_main.png

「中間管理職って、しんどい。」
「管理職になったこと、後悔してる…」
労働人口減少や人手不足に直面する日本企業の中間管理職からは、残念ながらそんな声を聞くことが珍しくありません。
何が彼らをそこまで疲弊させているのでしょうか。
中間管理職の「働きがい」は、失われてしまったのか。それとも、見えなくなっているだけなのか。
中間管理職の誇りを復活へ導くために、組織にできることは何なのか。
このシリーズコラムでは、GPTW Japanで組織コンサルタントとして活躍し、自らも中間管理職経験がある植田 若葉さんに、中間管理職が直面しているリアルと、その先にある未来を聞いていきます。

「本来は上に行くほど働きがいが高い」はずなのに、いま起きている逆転

Q.近年、「中間管理職が大変すぎる」というような声が聞かれます。「働きがい」を研究するGPTWとして、今の状況をどう捉えていますか?

当社の調査(エンゲージメントサーベイ)では「一般従業員」「中間管理職」「上級管理職」「役員・経営幹部」といった階層ごとの結果も確認できるのですが、まず前提として、働きがいの低い企業では、この階層間の差が大きく出やすいです。

さらに最近見られるのが、「一般従業員よりも中間管理職のほうが働きがいが低い」という状態です。GPTW調査参加企業でも約3割はそのような逆転現象が起きています。本来、責任や裁量が増えるはずの中間管理職が、むしろ働きがいを感じにくくなっている。ここに、今の問題の象徴があると感じています。

Q.一般従業員より中間管理職の働きがいが低い現象は、理想的な構造から外れているということですね。

一番の理想は階層間の差がほとんど無くフラットであることですが、一般的には階層が上がるほど働きがいが高まりやすい傾向があります。なぜなら、経営に近い立場になるほど会社への信頼感を持ちやすく、また権限委譲が進むことで仕事への誇りも高まりやすいからです。それにも関わらず、中間管理職だけがその流れから取り残されているのだとしたら、彼らに何らかの負荷が集中しているのでしょう。

管理も育成も複雑化する中で、中間管理職に集中する負荷

Q.近年、間管理職の負担が増えたと言われますが、その背景には何があるのでしょうか。

中間管理職の仕事は大きく分けると、「仕事の管理」と「人の管理(ピープルマネジメント)」の二つがあります。

まず仕事の管理では、働き方改革以降、生産性向上に対する要請が高まり、チームがより短い時間で成果を出すことが求められるようになりました。KPIの設定やデータによる可視化が進み、マネジメントが見る粒度も項目数も増えています。さらにコンプライアンス対応なども重なり、管理業務自体が以前より重くなっています。

一方で、人の管理も大きく変化しました。これまでは、「昇進・昇格」といった比較的共通した価値観を前提に、マネジメントを行うことができていました。しかし現在は、正社員に限らない多様な雇用形態の広がり、ライフステージに応じて変化する働き方、さらには若手世代の価値観の変化などにより、立場や背景の異なる人をマネジメントする場面が増えています。加えて、勤怠管理など従来からの管理業務にとどまらず、キャリア支援を通じて個人の成長により深く関与すること、心理的安全性の醸成やエンゲージメント向上といった組織運営の観点も、これまで以上に求められるようになりました。

こうした変化が同時に起きる中で、調整役・受け皿としての負荷が中間管理職に集中してしまっている。これが、多くの企業で共通して見られる構造だと思います。

Q.特に「育成」の負担は大きそうですね。

そうですね。生産性向上が求められたゆえの変化として象徴的なのが、若手の成長プロセスです。人はスキルがないうちはある程度の量をこなすことで成長し、量が質に転換していくものだと思いますが、今は当然若手であっても長時間労働はNGで、量で経験を積む余地が小さくなっています。その分、成長に必要な時間やフィードバックの負荷を中間管理職が引き受けることになる。

適切なフィードバックをするためには、部下のアウトプットに目を通したり、現場に同席するなど、「観察」に多くの時間を費やす必要があります。気づけば日中はほとんど育成のために時間を使っていて、自身のプレイング業務は残業で対応せざるを得ないということになりがちです。現代のマネジャーの9割はプレイングマネジャーと言われていますから、疲弊するのは無理もありません。

悪循環から脱するために―中間管理職の「役割の再定義」を

Q.この「中間管理職の働きがいが低い」問題を放置すると、企業にとってはどのようなリスクがありますか?

この問題を放置すると、負荷が高い管理職を目の当たりにして、管理職になりたがらない若手が増えます。そうすると次の管理職を成熟度が低いまま登用しなければいけなくなったり、逆に登用できないからさらにマネジメントの負荷が増えたりして、「なりたくないマネジメント像」に磨きがかかる… こうした悪循環になってしまいます。

 Q.それは何としても食い止めたい悪循環ですね。最後に、中間管理職の働きがいが高まるために重要なことは何でしょうか。

まず、中間管理職の働きがいが低いのを個人の責任にするのではなく、組織の構造的な要因が潜んでいるのではないかという視点を持つことが大切です

そのうえで重要なのが、「役割の再定義」です。中間管理職に最も期待したいことは何かを経営として定め、それ以外の仕事の負荷を極力下げる。そのためのサポートを組織として行っていくことが不可欠だと思います。

―――

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次回の記事では、GPTWの調査データをもとに中間管理職の働きがいが下がる構造的な要因にせまり、問題の本質を深堀していきます。お楽しみに!

Great Place To Work(R) Institute Japan シニアコンサルタント 植田 若葉(うえだ わかば)

column_column_20260312_main_profile.jpg

新卒でリクルートスタッフィングに入社。
2016年リクルートマネジメントソリューションズに転籍し、中小~大手企業までを幅広く担当。
顧客企業が抱える人・組織課題の整理、提案、支援を行う。
2021年より同社の事業推進部を兼務し、戦略転換期における営業組織の組織開発に携わる。
2022年よりGreat Place To Work(R) Institute Japanに参画。コンサルタントとして顧客の顧客の働きがい向上支援を行う。