「次世代を育てる組織論 ~若手とともに成長する会社へ~」
Vol1. 「若手が難しい」の正体――いま企業が向き合うべき"働きがい"という経営課題

更新日 2026.03.172026.03.17コラム

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「若手の離職が止まらない」
「若手育成が難しい」
「若手の考えていることが、正直分からない」
あなたが経営者や人事、現場の管理職といった立場であるならば、そのような課題に直面してはいないでしょうか?

特に1990年代後半から2010年代前半に生まれた「Z世代」と言われる世代に対して、「これまでのやり方が通用しない」と感じている人は少なくないようです。
厳しくすれば「パワハラだ」と言われ、気を遣えば「甘やかしすぎだ」と批判される。
それでも組織としては、成果を出し、成長し続けなければならない。
この矛盾を、私たちはどう乗り越えればいいのでしょうか?
このシリーズコラムでは、GPTW Japanで組織コンサルタントを務める岡部さんに、企業が次世代とともに強くなるための視点と打ち手を聞いていきます。

第1回となる今回は、まず企業と若手を取り巻く現状について、岡部さんと共に理解を深めていきます。

若手の採用難・早期離職が“経営課題化”した3つの構造変化

Q. 近年、若手の採用難や早期離職に悩む企業が増えています。これらが経営課題として注目される背景は何なのでしょうか。

大きく3つの変化があると思っています。1つ目は少子化による若手人材の希少化です。

これは景気の波のように「そのうち回復する」話ではありません。出生数は減少を続けており、若手の母数が今後も減っていくことは、ほぼ確定している前提条件です。その結果、労働市場は完全な売り手市場になり、企業側が「選ぶ側」ではなく、「選ばれる側」に回りつつあります。

2つ目が、終身雇用制度の(事実上の)崩壊です。これは特に大手企業を中心に、実質的にはかなり進んでいます。若手から見れば、「この会社にいれば将来は安泰」という前提が、もはや成立しないということです。だからこそ若手は、「この会社で働き続ける意味は何か」「ここで過ごす時間は自分の将来にどうつながるのか」を、以前よりもシビアに考えるようになっています。

3つ目が、転職市場の拡大です。転職サイトやエージェント、口コミサイトの普及によって、転職は特別なことではなくなりました。情報も集めやすく、手続きのハードルも低い。その結果、若手は「今の会社しか選択肢がない」状態ではなくなっています。少しでも違和感を感じれば、他の選択肢を検討することが現実的になっている。この環境変化によって、企業は「辞めさせない努力」をしなければ、若手人材を維持できなくなっています。

Z世代は何を重視して働いているのか:成長・貢献・専門性

Q. 「転職が当たり前になっている」という話がありましたが、それにはZ世代の働く上での価値観が上の世代と異なることも関係していそうですね。彼らは働く上で、どんな点を重視しているのでしょうか。

リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査」を見ると、「仕事をする上で重視すること」の上位は、まず「成長」。次いで「貢献」。そして3つ目に「専門性」が入ってきます。

<Q:あなたが仕事をする上で重視することは何ですか?(最大2つまで複数選択/n=2,577)>

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出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2025」

「成長」と「貢献」は例年上位に入りやすい項目ですが、近年の特徴として「専門性」が上位に来ている点には着目したいです。背景には、2つの流れがあると思っています。

1つは、AI時代に代替されない自分の強み=専門性を持つ必要があるという感覚が広がっていること。もう1つは、終身雇用の揺らぎや転職市場の拡大によって、「市場で通用する力」を意識する若手が増えていることです。専門性は、転職市場における自分の価値にも直結しますからね。

Q. この重視ポイントは、前の世代と比べるとどのように変化しているのでしょうか。

厳密に同一条件で世代比較したデータがあるわけではありませんが、以前の世代では「給与」「安定」「達成感」「昇進」といった要素の相対的な重要度がもう少し高かったというのは一般的に言われていることです。

生活の基盤としての報酬はZ世代にとっても当然重要です。ただ、それだけでは働き続ける理由になりにくくなっている。だからこそ企業側が、従来のように「安定」「待遇」「我慢すれば報われる」というメッセージだけを出しても、若手には響きづらい状況が生まれています。

若手の働きがいは「配慮」ではなく経営リターンのある「戦略投資」

Q. ここまでのお話を総括すると、若手の採用難や早期離職は、社会構造の変化によって明確に経営課題になっている。さらに仕事における価値観も、世代として変わってきているということでした。この構造変化と価値観の変化は「不可逆的」という前提で、一企業が採用難や早期離職に立ち向かうためには、何が必要なのでしょうか。

一言で言えば、「働きがい」です。

「働きがいを持てるかどうかは個人の責任だ」と思う方もいるかもしれません。しかし我々Great Place To Work(R)の30年以上にわたる研究では、リーダーとの信頼関係チームの連帯感仕事への誇りといった要素が、従業員の働きがいに大きく影響することが分かっています。経営や人事、管理職が努力できることは、多くあるのです。

Q. 若手の働きがいを高めることは、企業にとってどんな経営メリットがありますか?「若手に配慮しすぎでは」という声もありますよね。

若手の働きがいを高める取り組みは「配慮」でも「過保護」でもなく、経営的リターンをもたらす戦略的投資です。短期的メリットと中長期的メリット、両方があります。

短期的メリットは、採用力と定着率への好影響です。

まず採用についてですが、口コミサイトの影響力は、就職・転職の両方で増しています。若手の働きがいが高い企業ほど、評判が応募者に効きやすく、採用上の優位につながります。

次に定着率について。採用広告費、選考コスト、入社後の教育コスト、関わる人の工数などを考えると、1人採用して戦力化するまでの投資は、低く見積もっても数百万円単位になり得ます。それが3年以内に離職すると、多くの場合、投資を回収できません。定着率が数ポイント改善するだけでも、経営コストは大きく下がります。

中長期的メリットは、競争力や持続可能性が高まることです。もうすでに「新卒採用は取れないから諦めた」という企業が出始めています。若手採用の勝者と敗者が分かれつつあるのです。若手の確保に失敗し続ければ、組織の競争力や持続可能性は危うくなります。

こういった理由から、若手の働きがいを高めることは、経営戦略上の“マスト条件”になっていると考えます。

最初の一手は「若手の声を聞く仕組み」を経営の中核に置くこと

Q.最後に、若手にとって働きがいのある会社を実現するために、まず意識すべきことを教えてください。

まずやってほしいのは、とにかく若手の声を聞くことです。そしてそれを仕組み化して、経営の中核に位置づけることが大切です。

やり方は色々あります。マネジャーとの1on1で声を拾って上に上げる、経営層が若手社員と直接対話する場を定期的に設ける、サーベイ(アンケート)を実施するなど。大事なのは、可視化が可能な方法を選び、継続的に回していくことですね。

また、声を引き出す“聞き方”にもコツがあります。よく「困ってることない?」「何か不満ない?」いう聞き方をするケースがありますが、それだと「ないです」で終わってしまうことが多い。むしろ、「この会社でどんなことを実現したい?」「どんな挑戦がしたい?」と未来志向で問いを投げる。そこから「そのための障害はある?」と一緒に考えるスタンスを示すと、本音が出やすいです。

経営、人事、マネジャー、すべての立場が同じ方向を見てこれを遂行していく必要があります。今後このシリーズでは、具体的な企業の実践事例にも触れていきたいと思います。

 

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岡部さん、ありがとうございました。

次回は、いま話題になっている「リベンジ退職」や「退職代行」について、若手の考えていることにより深く迫りながら、解決の糸口を探っていきます。お楽しみに!

Great Place To Work(R) Institute Japan コンサルタント 岡部 宏章

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新卒で人材派遣会社に入社し、経営企画としてグループ会社の事業基盤作りや組織開発業務に携わる。
2021年よりGreat Place To Work(R) Institute Japanに参画し、コンサルタントとして中小~大手まで幅広く顧客を担当。「働きがいのある会社」調査の提供、経営層への提言・支援の他、調査データの分析研究なども担当している。