賃上げ、効率化だけでは解決しない 働きがいが切り開く、人手不足への根本対策
更新日 2026.02.242026.02.24レポート
人手不足倒産が過去最多を更新するなか、賃上げや業務効率化だけでは打開が難しい局面に、日本企業は直面しています。GPTW Japan代表・荒川陽子は、2026年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100発表において、こうした問題意識を起点に、働きがいが人手不足とどのように向き合うのかを解説しました。ランキングデータや調査結果をもとに、今年の全体傾向と、働きがいをめぐる企業の取り組みの方向性を整理しました。
●2026年版「働きがいのある会社」ランキング選出企業一覧はこちら
https://hatarakigai.info/ranking/japan/2026.html
※本記事は2026年版 日本における「働きがいのある会社」記者発表会の抄録です。
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目次
人手不足をどう捉えているかで、打ち手は分かれる
みなさまも日々実感されている通り、日本の人手不足はすでに構造的な問題となっています。人手不足倒産が過去最多を更新しているというニュースも、もはや珍しいものではありません。2026年版「働きがいのある会社」ランキングの発表にあたり、今年私どもがお伝えしたいテーマは「賃上げや効率化だけでは解決しない人手不足に、働きがいがどう向き合うのか」という点です。まずは、この問題意識を共有するために、私たちが実施したインターネット調査の結果から見ていきたいと思います。

今回の調査では、「人手不足を実感している企業」と「人手不足を実感していない企業」の2つのグループに分け、それぞれに「どの施策が人手不足の抑止・解消に有効だと思うか」という質問を行いました。その結果、まず全体として、人手不足の実感の有無にかかわらず、給与や待遇の改善が最も多く選択されていました。国からの賃上げ要請もあり、これは自然な結果だと思います。
一方で、次に選ばれた施策には、はっきりとした違いが見られました。人手不足を実感している企業では、採用の拡大や業務効率化といった施策が多く挙げられていました。人が足りない状況の中で、どう補うかという、いわば補填的なアプローチです。
それに対して、人手不足をあまり感じていない企業では、職場の人間関係や働き方への投資といった施策が有効だと考えられていました。これは、人員を増やすというよりも、組織を最適化し、従業員エンゲージメントを高めるアプローチだと言えます。つまり、人手不足を感じていない企業ほど、人員が不足した場合の対応として、エンゲージメント向上に関わる施策を重視していることが分かりました。
人手不足の実感と、エンゲージメントの関係
次に、従業員エンゲージメントの状況についても聞いてみました。その結果、人手不足を実感している企業ほど、エンゲージメントが低い可能性が見られました。一方で、人手不足を感じていない企業では、エンゲージメントが比較的良好な状態にあると推察されます。
さらに、人手不足を感じている企業に対して、「エンゲージメント向上の取り組みを行っているか」を尋ねたところ、十分に取り組めていないという結果も分かりました。
この調査結果をまとめると、次のような傾向が見えてきます。人手不足を実感している企業は、補填的なアプローチを取りがちである一方、エンゲージメント向上の取り組みには十分に着手できていない。しかし、従業員エンゲージメントの向上は、日本が抱える人手不足という構造的な課題に対して、重要な解決策になり得る。私たちはそう考えています。
2026年版「働きがいのある会社」ランキングの全体像
では、こうした視点を踏まえたうえで、2026年版「働きがいのある会社」ランキングについてご紹介します。今年は683社の企業にご参加いただき、そのうち377社が一定水準を超える働きがいを実現している企業として認定されました。その中から、さらに働きがいの高い企業として、大規模・中規模・小規模の各部門に分け、合計100社をベスト企業として発表しています。

(2026年版「働きがいのある会社」ランキング全100社はこちら https://hatarakigai.info/ranking/japan/2026.html)
今年のランキングの特徴として、全部門で日系企業が1位を獲得した点が挙げられます。特に大規模部門においては実に9年ぶりのことでした。これまで外資系企業の比率が高いと言われることも多かった本ランキングですが、今回の結果は、働きがいを重視する経営が日系企業にも着実に広がっていることを示していると感じています。
なぜ、あの会社は「ベスト」なのか
続いて、今年の調査データを分析した結果についてお話しします。テーマは、「なぜ、あの会社はベストなのか」。データから、卓越した働きがいの源泉を明らかにすることを目的としました。
GPTWでは毎年、働きがいの認定企業と、その中でも特に高い評価を得たベスト企業を選出しています。一方で、多くの企業からは、「制度は整えたが、エンゲージメントが上がらない」「次に何をすべきか分からない」といった声も寄せられています。
この差はどこから生まれるのか。その正体に迫るため、今回は60問の設問それぞれについて、認定企業とベスト企業の平均スコアを比較しました。統計指標を用い、両者を分ける決定的な違いがどこにあるのかを明確にしています。

分析の結果、最も注目すべき発見は、休暇制度や福利厚生、多様性への配慮といった制度面では、ベスト企業と認定企業の間にほとんど差が見られなかったという点でした。これらの制度整備は、すでに優れた企業にとっての基本条件となっており、制度を整えるだけでは差別化にはならない段階に入っていると言えます。
では、何が決定的な差を生んでいるのか。最も大きな差として表れたのが、「仕事を楽しむ文化」でした。企業規模にかかわらず、仕事を楽しむ文化を形成できているかどうかが、ベスト企業の最大の特徴として浮かび上がっています。そして、この前向きな感情を支えているのが、適材適所の人材マネジメントと経営の一貫性でした。
企業規模別に見えた、働きがいの特徴
さらに分析を進めると、企業規模ごとに特徴的なポイントも見えてきました。
大規模企業では、明確なビジョンの浸透や、称賛し合う文化、部門を超えた一体感が差別化要因となっています。規模が大きくなるほど難しくなる課題に対し、戦略的に文化を構築している点が特徴です。
中規模企業では、「従業員の納得」が重要なキーワードとなりました。意思決定への参画、公正な評価、経営の透明性など、従業員を経営のパートナーとして扱い、その声を反映させる仕組みが機能しています。
小規模企業では、仕事の割り当てや人の配置が適切かどうかが、全体傾向よりも大きく影響していました。加えて、経営者による丁寧な情報提供、約束の履行、心理的安全性、えこひいきのなさといった点が際立っています。少人数だからこそ、経営者の判断と行動が従業員に直接影響する構造が反映された結果だと考えています。
これから働きがいを高めていきたい方へ
2026年版「働きがいのある会社」ランキング ベスト100に選出された企業が具体的にどんな取り組みをして働きがいを高めているのか、各社がイチオシする施策をヒアリングし、資料にまとめました。これから働きがいを高めたい方はぜひ参考にしてみてください。
成功企業が実践する働きがいを高める99の施策事例
▼ダウンロードはこちら
https://hatarakigai.info/whitepapers/20260213_5341.html
Great Place To Work® Institute Japan 代表 荒川 陽子 プロフィール
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