人・情報・機会…をつなぎ、日本の働き方に変革を起こしたい
シスコシステムズ アジアパシフィック アンド ジャパン
プレジデント 兼 シスコシステムズ合同会社
代表執行役員社長 鈴木 みゆき 様
更新日 2024.10.312018.04.01
人・情報・機会…をつなぎ、日本の働き方に変革を起こしたい
シスコシステムズ アジアパシフィック アンド ジャパン
プレジデント 兼 シスコシステムズ合同会社
代表執行役員社長 鈴木 みゆき 様
2018年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)において、大規模部門(従業員数1000名以上)1位に輝いたシスコシステムズ合同会社。多くの社員が「会社に行くのが楽しみである」と回答している同社には、どのような「働きがいを生み出す企業文化」があるのか、シスコシステムズ アジアパシフィック アンド ジャパン プレジデント 兼 シスコシステムズ合同会社 代表執行役員社長の鈴木 みゆき様に伺いました。ダイバーシティ活動が会社の成長に大きく寄与した事例は必読です。
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
1984年にサンフランシスコで誕生したシスコは、創設以来ITネットワークの基盤づくりで世界に貢献してきました。ネットワークは、人と人、人とモノ、モノとモノをつないで初めて価値を生むものです。「つなぐテクノロジー」で、従来不可能だったことを可能にしたり、企業経営の効率を向上させたりなど、数々のイノベーションの実現を支援してきました。そんなシスコが掲げるビジョンは「Changing the way we work, live, play and learn – 人々の働き方、生活、娯楽、学習のあり方を変える」です。リモートワークをはじめとする新しい働き方を自社で実践し、成果を上げてきた実績もあります。
世の中の働き方や、学び方を変えるテクノロジーの多くは、シスコの企業文化の中で育てられてきました。企業文化の礎となっているのは、会社と社員の間にある尊敬と信頼です。シスコが大切にしている「People Deal」という理念には、会社が社員のためにできることと、会社が社員に期待することが示されています。これは、会社は社員の成功に必要な情報・機会・人とのつながりと構築を支援し(Connect Everything)、イノベーションが活性化する環境を整え(Innovate Everywhere)、相互に成長が促進されるカルチャーをつくること(Benefit Everyone)に、会社と社員の双方がコミットするという考え方です。
たとえば、毎日決まった時間で働くのが難しい育児中の社員がいるとします。会社は社員に対して成果を期待しますが、一方で社員はその成果を達成するためにリモートワークができる環境など、必要な支援を得ることができます。時間ではなく成果で管理し、達成のためにあらゆる支援をする。この発想が社員の働き方を変えるきっかけになり、働きがいを生み出すことにもつながっています。
企業が成功する一番の要因は人材です。これまでもシスコは働きやすい環境を築いてきましたが、優秀な社員を維持し、モチベートするためには何をしないといけないのか、常に考え続けなくてはなりません。「働きがいのある会社」の調査に参加したのはそのため。世の中のベストプラクティスのなかで、我々がまだ取り組んでいないものがあれば参考にしたいし、調査を通じて社員の声を「見える化」したいと考えていました。
実際に調査を行ってみて、とても嬉しく感じたのは「会社に来るのが楽しみ」という回答が非常に多かったこと。ただ単に与えられた仕事をこなし、それなりの成果が出るだけだったら、会社に来るのが楽しみというほどの働きがいはきっと感じられないでしょう。シスコのミッションやバリューの実現に貢献し、世の中にイノベーションを起こすきっかけづくりをしていると感じられるから、もっと仕事がしたい、もっと貢献したいという、高いレベルでモチベーションが維持された状態になるのではないかと考えています。つまり、多くの社員がシスコのミッションやバリューに深く共感しているから、仕事から得られる喜びが膨らむのです。
シスコでは、ミッションやバリューが記されたカードをグローバル全体で7万人を越える社員全員が携帯し、機会があるたびに確認しています。また、マネージャーたちは定期的に勉強会を開催し、その都度ビジョンや行動基準の意味を見つめ直す機会を設けています。だから、ビジョンや行動基準を具現化する行動を正当に評価・報奨できるのです。このように社員全員にビジョンの実現に向かっている認識があり、さらに、世界を変えていく手ごたえを深く実感できるから、「会社に来るのが楽しみ」になるのだと思います。
「働きがいのある会社」調査に参加した背景には、我々のベストプラクティスを世の中に発信していきたいという想いもあります。日本ではいま、多様性を力に変えるための働き方改革をいかに推進するかが大きな課題であり、そこではシスコの培ってきたノウハウがお役にたつ場もあるはずです。
たとえば、ダイバーシティ活動。異なる立場、価値観や性別、国籍の人達の力を包括的にまとめて、協働によって成果を上げていくI&C(インクルージョン&コラボレーション)という取り組みをしています。シスコでは、I&Cを人事的な取り組みではなく、「経営戦略」として推進しています。
I&Cには6つのテーマがあります。まずは「Connected Women」。いかに優れた女性を採用し、育成するかを考え、実現のために取り組んでいます。続いて「Connected Disability Awareness Network」。障がい者の方を考慮した環境づくりに力を入れています。「PRIDE」は、LGBTQを尊重するための取り組み。「Flexible Work Practices」では、より柔軟な働き方を追求しており、社会貢献を目的とした「Volunteer Network」の活動も活発です。
そして、「Early Career Network」では、知的好奇心にあふれる新卒やミレニアル世代と言われる若手を対象とし、デバイスやシチュエーションにこだわらない、新しい働き方を好むジェネレーションの社員のアイディアを吸い上げています。当社は2017年度、大きな成長を達成し、シスコグローバルでのトップカントリーとして表彰されました。その大きなきっかけが若手社員のアイディアと参画でした。
私が3年前に入社したころは、日本のシスコのビジネスは安定的ではあるけれど、エキサイティングではないという見方がありました。期待されている高い成長を目指すには、戦略を改めるべきであると考え、若手社員を中心にした部門横断型の全社プロジェクトを発足させたのです。
そのプロジェクトでは、「バカなアイディアなんて一つもありません。ぜひ自由な発想を」と奨励し、固定概念を打ち破る大胆なアイディアを求めました。集まったアイディアは200以上。そのうち優先度が高く実行可能な10から20のアイディアに絞り込み、一つひとつ具現化していきました。取り組みの中で、とくに私の胸に響いたのは、「もっと日本の市場に根ざした企業を目指すべき」という声。「日本のマーケットは世界3位の規模。日本独自のお客様ニーズに適した製品やサービスを提供できれば、日本の業績そしてシスコ全体にも貢献できるんじゃないか」という仮説をもとに、日本の中堅中小企業向けに特化したブランドとソリューション「Cisco Start」を開発しました。これが大好評で、中堅中小企業向けのビジネスは30%以上成長し、シスコ日本法人は大きな成長を達成。海外のグループ会社からも、「自分たちのマーケットでもCisco Startを導入したい」というリクエストが届きました。日本発信のイノベーションがグローバルに展開されたのです。
これまでのシスコは、中堅中小企業からの認知度はそれほど高くありませんでした。「英語でしか対応してくれないんでしょ?」というような誤解を受けることもありました。都市圏の大手企業を中心に拡大してきましたが、地方の中堅中小企業でもシスコブランドが評価されるようになったのは、「Cisco Start」が生まれたことがきっかけです。ヒエラルキーではなく、ボトムアップでアイディアを吸い上げたからこその成果です。日本のチャレンジは本社からも非常に高く評価されており、社員のモチベーションアップにもつながっています。
今後は、さらに社外とより積極的につながってアイディアをクリエイトし、戦略を練り上げて、価値あるイノベーションを生み出したいと願っています。シスコには、それを可能にするテクノロジーがあります。たとえば、ビジネス メッセージ、ビデオ会議などのコラボレーション機能、ビデオ会議端末の相互接続を行う「Cisco Spark」は、ただ単に情報をシェアするためのものではなく、遠隔地から同時にホワイトボードに記入できるなど、アイディア創出を活発にするためのものです。
IoTやAIなどの開発を一社で成し遂げるのは困難です。自社にない能力や経験を持つ企業と、コラボレーションして作り上げるから、開発のスピードも精度も高められます。コラボレーションを社外に広げ、アイディア交換を容易なものにしていくために、より一層、力を注いでいきたいと思います。すでに製造業では新しいコラボレーションの取り組みがいくつもスタートし、お客様ともにビジネスのデジタル変革を支援する製品を共同で開発しています。
2020年に向けて新たに掲げたビジョンは、「All Connected Anything Possible」。あらゆるものをつなげることで、これまで不可能だったことを可能にすることを目指します。もはやアイディアを社内に封じ込めておく時代ではありません。異業界、異文化の中で活躍されている企業と情報共有、アイディア共有することによって、これまで聞いたこともない新鮮な発想が生まれてくるのだと確信しています。