日本ヒルティ株式会社

更新日 2022.04.262018.12.11

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最も効果的な投資は「企業文化の醸成」に資すること
グローバル企業ヒルティが世界で評価される理由

ヒルティ 名誉会長 マイケル・ヒルティ 様
日本ヒルティ株式会社 代表取締役社長 下元 紳志 様

リヒテンシュタインにグローバル本社を構え、世界120カ国で高付加価値を備えた製品、システム、サービスを通じて建設業界にソリューションを提供しているヒルティ。日本ヒルティ株式会社は、2018年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)の中規模部門においてベストカンパニーに初選出。ヒルティグローバルでは、ドイツ、UAE、アイルランド、パナマなどでランクインしています。今回は、創始者のマーティン・ヒルティ様のご子息であり、名誉会長のマイケル・ヒルティ様と、日本ヒルティ代表取締役社長の下元紳志様に、1980年代から続く企業文化づくりの取り組みについて伺いました。

1984年から始まった「企業文化をつくる」という終わりなき旅

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ヒルティ様 ヒルティの創始者である父は、価値観を大切にする経営者でした。一人ひとりの社員をリスペクトし、「起業家のように行動してほしい」と常々語りかけていたのです。

ところが、1972年に父が重い心臓病にかかり、私は勤めていたチェース・マンハッタン銀行を1975年に退職して、ヒルティへ入社しました。その当時、ヒルティのマネジメントチームでは、権力闘争が起こっていたのです。社内のいざこざは社員のモチベーションを下げ、時間もエネルギーも浪費させます。

もう一つ、課題に感じていたことがありました。1982年に世界経済が後退しましたが、ヒルティに長く働いている社員達が、時代の変化に対応できていないことに気づいたのです。彼らの目を開かせるような施策が必要だと痛感しました。

これらの課題の解決に向け、1984年に次世代を担うマネジャーを集めて会議を行いました。テーマはリーダーシップやマネジメントについて。4日間の会議を通じて出た結論は、「世界で共通の企業文化が必要である」ということでした。それ以降マネジメントチームは年2回、1回3日間かけて企業文化をつくるためのトレーニングを行うことに。社員も1日から2日かけてトレーニングを行うようになったのです。

継続的な取り組みが実を結び、社員に愛される企業を称えるカール・ベルテルズマン賞を、世界的な自動車メーカーや製薬会社と競った末、受賞することができました。1984年に「企業文化をつくる」という終わりのない旅に出て、約20年がたった2003年の出来事です。

社外から「過剰」と言われるほど企業文化へ投資する理由

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ヒルティ様 2003年に誇らしい賞をいただいたものの、私たちはそれまでに培ってきた企業文化をさらに新しいものにしようと考えていました。企業文化をつくるための投資は、大きな恩恵となって戻ってくることに気づいていたからです。

私たちが目指している企業文化は、社員一人ひとりが「起業家精神」を持ち、お互いの違いを尊重しながら相乗効果を上げて、顧客に貢献するというもの。これらは私たちが大切にしている行動指針「誠実」「勇気」「チームワーク」「コミットメント」にも表れています。

社員一人ひとりの尊厳を認めて成長の機会を与える企業文化がつくられると、社員が自ら「挑戦したい」「貢献したい」と考えるようになります。その姿勢の変化はお客様にも伝わり、「ヒルティは違うね」という評価にもつながるのです。

しかしながら、どこまで行っても完ぺきな企業文化は存在しません。持続的な取り組みが不可欠です。代表的な取り組みの一つとしては、世界共通の企業文化を浸透させるために、前述のトレーニングをリニューアルした「The Hilti Way」。社内で構築したこのトレーニングでは、企業文化を専門とする「シェルパ(ヒマラヤ登山の案内役が由来)」に任命された75名が指導します。トップマネジメントをはじめ、全ての社員が2日間から2日半かけて受講。企業文化をつくるために資金も時間も惜しみなく投資しています。

社外からは、「企業文化に投資しすぎじゃないか」と言われることもありますが、ヒルティは企業文化にこれだけの投資をしてきたから、企業として成功できたと思うのです。製品やサービスはコピーされることもあるでしょう。しかしながら、私たちが30年以上、まるで花を育てるのと同じように、大切に育んできた企業文化は、決してコピーできないのです。

人口3万人のリヒテンシュタインで66カ国の人たちが働く

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ヒルティ様 当社の企業文化を語る上で、多国籍企業であるということも欠かせない要素です。リヒテンシュタインの本社には、全世界から人が集まっています。リヒテンシュタインはドイツ語圏ですが、公用語は英語としました。

下元様 ご存知の通り、リヒテンシュタインは小さな国です。人口は約3万人で、そのなかに66カ国の国籍を持つ人たちが住んで、働いていることを想像してもらえれば、そのインパクトが伝わると思います。これは非常にユニークなことです。

ヒルティ様 インクルージョン(受容性)の考え方も浸透しています。多様性を尊重するとともに、異なる個性を持つ人たちが、同じチームの一員として力を出せる環境がとても大切です。ヒルティでは、どんなバックグラウンドを持つ人たちも、同じ仲間としてすぐに溶け込むことができます。

下元様 ダイバーシティ(多様性)は多様性を重要視する考え方ですが、相乗効果を発揮して力を生み出す反面、個性を尊重するだけで方向性がバラバラでは、力が発散する可能性もあります。そのため、多様な考え方を広く受け入れる環境を整えるだけではなく、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受容性)をセットで考えることが重要だと考えています。

ヒルティ様 マネジメントのポジションは男性の比率が大きいという現実もあります。建設業界はまだまだ男性優位の業界ということもありますが、マインドセットを少しずつ変えていく取り組みが必要です。私たちは建築業界の企業ですが、ハイテク企業であり、イノベーターであることを示していきたいと考えています。

現在、ヒルティ取締役会には7名いますが、そのうち1名は女性です。これは女性だから登用したのではなく、ふさわしい方が女性だったということです。

下元様 日本ヒルティも経営役員8人のうち2人が女性ですが、ほかの業界と比較すると割合として小さいです。女性の力を引き出していくため、これからも継続して改善に取り組みたいと考えています。

外部からのフィードバックを求めてGPTWに参加

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ヒルティ様 これからのヒルティの重要なチャレンジは、昨年、全世界で採用した5000名を企業文化のなかで育てていくことです。将来的にはミレニアル世代などの若い人たちがヒルティを担うことになります。彼らを企業文化と融合させ、いかに企業を進化させていくか考えていかねばなりません。

企業文化を進化させるヒントは、客観的なフィードバックの中からも見つかります。GPTWに参加しているのはそのためです。自社の企業文化を見つめ直すとともに、他社事例から学ぶことができるとても良い機会になっています。そして、「ヒルティは優れた企業文化を持つ働きがいのある会社である」と、客観的に評価されることは、私自身の働きがいにもつながっています。

これは常々言っていることですが、私を含めトップのマネジメントラインにいる人たちが自ら企業文化の醸成に寄与し、価値観を実践していくことが重要です。そのため、外部から登用する場合も、重視するのは高いパフォーマンスよりも、企業文化へフィットするかどうか。私たちは長期にわたり、規律のあるマネジメントを実現し、社員が安心して継続的に力を発揮できる環境を整えていきたいので、企業文化・価値観を体現できるリーダーが必要なのです。

繰り返しになりますが、今ある企業文化がベストだとは思っていません。これからもエクセレントを目指していきたい。いつか私たちはいなくなりますが、ヒルティの企業文化が長きにわたり継承され続けていくことを願っています。

ヒルティ 名誉会長 マイケル・ヒルティ 様 プロフィール

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ヒルティの創立者、マーティン・ヒルティ氏の息子。大学卒業後、ロンドンのチェース・マンハッタン銀行にて勤務し、1975年にマーケティング部門長代理としてヒルティに入社。 1990年からCEO、1994年から2006年まで取締役会長を務める。現在は、ヒルティ取締役会名誉会長、マーティン・ヒルティ家族信託の受託者、ヒルティ基金の役員、ヒルティ芸術基金の会長。リヒテンシュタイン王子ハンス・アダム2世の王侯商務参事官を含む数々の管理職を経験し、ザンクトガレン大学から名誉評議員の称号を授与されている。

日本ヒルティ株式会社 代表取締役社長 下元 紳志 様 プロフィール

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九州大学を卒業(機械工学学士号取得)後、米国スタンフォード大学で機械工学修士号を取得。1996年に千代田化工建設株式会社に入社し、機械エンジニアとして従事。2000年よりベイン・アンド・カンパニーのコンサルタントとして活躍、在任中に仏国INSEADで経営学修士号(MBA)を取得。2006年2月に日本ヒルティ株式会社へ入社。戦略マーケティング・ディレクター、米国ヒルティのセールス・マネジャー、ヒルティ・アジア・パシフィック・リージョンのマーケティング担当副社長などの要職を経て、代表取締役社長に就任。

ヒルティ

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120カ国以上の拠点に28,000人以上の従業員を抱えるグローバル企業。日本の新幹線の線路や世界最大の都市の地下深くにある地下鉄トンネルなど、世界の壮大な建設プロジェクトを日々サポートしている。建設工事に全面的なサポートを提供しており、現場で使う工具にとどまらず、工具管理ソフトウェアや、フリートマネジメント、修理、安全講習会や、施工状態を確認する試験、さらにコンサルティングまで対応。世界のクライアントのワンストップショップとして徹底的にサポートしている。

本内容は2018年12月時点の情報です。

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