水上印刷株式会社

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未来のために就業時間の10%を投資
経済的満足と精神的満足の調合が働きがいづくりのカギ

水上印刷株式会社
代表取締役社長 河合 克也 様

印刷の域にとどまらず、顧客の課題へ360度のフルサービスを展開する水上印刷株式会社。
2019年度版の「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)において、中規模部門(従業員数100名以上999名未満)17位に選出されました。市場規模が縮小しつつある印刷業界で、年々輝きを増す同社の「働きがいの向上」を目的とした、数々の取り組みについて、代表取締役社長の河合克也様にうかがいました。

水上印刷を「日本一勉強する会社」にしたい

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21世紀の日本において最も希少な経営資源は「人」になるだろうと考えています。「人が集まる会社づくり」と真剣に向き合わないと、未来は危ういのではないでしょうか。日本のGDPは、90年代以降停滞しています。印刷産業の出荷額は停滞どころか、30年間で50%の市場が消えている状態です。印刷会社が当たり前のように現状維持を続けたら、衰退してしまいます。しかしながら、当社は2012年から7期連続で増収を達成し、売上は2012年と比較し、2.5倍まで伸ばしました。売上だけを見ていたわけではなく、一人当たりの付加価値や残業時間、女性の育休産休復帰率など、さまざまな面を考慮しながら、改革を進めてきた結果です。

企業価値は単純に売上を追うだけのものではないと考えています。例えばダイヤモンドの価値は、カラットだけでは決まりません。透明度やきらびやかなカットなど、さまざまな要素で決まります。会社もこれと同じだと思うのです。売上や従業員数、規模だけではなく、働く人の幸福度、顧客からの信頼など、多面的な価値を磨いていく必要があります。

企業価値を高めるための第一歩として、私は2014年に「日本一勉強する会社になる」と宣言をしました。毎年、数%でも成長し、前進し、改善を繰り返す企業文化を定着させることが狙いです。50億円の企業が毎年6%成長を100年続けると、複利の力が働いて2兆円になります。2兆円企業を目指すつもりはありませんが、成長を継続させることが偉大な企業への近道であると確信しています。また、企業の成長こそ、働きやすさの源泉になるのです。

「日本一勉強する会社」を目指すために取り組んでいる施策の一つは、「未来活動」。就業時間の10%を未来のために使うというもの。10%の時間を、勉強や改善活動にあてています。もともと就業時間内に研修や業務改善を行う取り組みはありましたが、忙しい中で業務外のことをするのは面倒だと思われがち。そのため、最初から就業時間の10%は、「未来のための時間」と認めて、時間を確保できるようにしました。また、研修費用は全て会社が負担。就業時間の10%の中で、チームや我々の未来につながる研修に対しては、しっかりとサポートしています。

教える側も成長する「MICアカデミー」に代表される取り組み

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2015年に立ち上げた「MICアカデミー」は、いわゆる企業内大学です。大きな特徴は、講師を外部から招くのではなく、我々が自ら先生という立場になっている点。社内の講座数はおおよそ130あります。研修を通じて本当の意味で一番勉強するのは、実は先生ではないでしょうか。真の意味で理解していることでなければ、人に教えることができないからです。また、人前で分かりやすいように話すことも、本人を鍛える機会になります。講義の内容は、我々のコア技術である印刷をはじめ、デジタル技術、IT、ロジスティクスやモノづくりの改善などさまざま。海外視察も実施しており、最大で30人程度の一団を組んで渡航したこともありました。

「日本一勉強する会社」を目指し、成長していくためには、採用・教育・制度・評価を一気通貫する仕組みも重要だと思います。良い人材を採用し、その人たちを伸ばして、働きやすい制度をつくり、一貫性のある評価をする。そして、次のモチベートをしていく。これが大事だと考えています。

従業員の満足度は人それぞれですが、大きく分けて2つの要素に分かれると考えています。簡単に言うと、経済的な満足度と、精神的な満足度です。片方だけ引っ張り上げようとすると、制度疲労を起こします。経済的満足を無視してやりがいだけつくろうとするのは、健康的じゃないし、経済的なところばかり押し出しても、残念ながら今の若い世代には響かなくなっているのです。働く人がどんなところに価値を置くのか、少し敏感になりながら、経済的満足と精神的満足を調合していかなくてはいけないと考えています。

「働きがい」と「働きやすさ」もバランスが大事です。ベンチャー企業の立ち上げ時のような「働きがい」も必要ですが、それ一辺倒ではなく、休みがとりやすい、社内の風通しをよくするなど、「働きやすさ」も併せて高めていくことが理想だと思います。やはり、「働きがい」と「働きやすさ」の調合も欠かせないのです。

給与体系の再構築、女性活躍推進…人事制度をバージョンアップ

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2009年頃から給与制度を見直しました。

きっかけは学生の面接での一コマ。私は同席だけしていたのですが、そこで印象的なやりとりがありました。学生から「給与の規定はどうなっていますか?」という質問が出た時に、面接官が「弊社の規定によります。詳細は外部の方には公開していません」と返答したんです。その学生はそれ以降の選考には参加しませんでした。給与体系について、隠したいことがあったわけではありません。単純にオープンにする文化がなかっただけです。そのとき私は「給与に関して曖昧な説明をするのは良くない」と痛感しました。それと同時に「好待遇」の会社にしていくことも重要であると思ったのです。

当然、資本・資源は限られているので、そのなかで分配を変えていくことになります。せめて安心して結婚して、相手を養っていけるとか、子どもを2人、3人養える、もしくは、地元に家を買えるくらいの給与にしたい。あるいは、30代で年収1000万円を目指せるであるとか、生涯この会社で働くことをイメージできるとか、いろいろなことを考えました。詳細は割愛しますが、考え抜いた末に給与制度・評価制度改革に着手し、「グレード式基本給(職務+職能)+「業績連動型賞与(組織業績×個人評価)」を組み合わせた制度をつくりました。社員の意欲と能力を最大限に引き出す給与制度であり、社内はもちろん、学生にも説明できるくらいオープンであるところが特徴です。

女性活躍の推進にも力を入れています。当社の採用説明会の参加者は約8割が女子学生です。一方で、社内の女性比率は10年前まで15%ほどであり、由々しき問題だと捉えていました。まずは、育児と仕事の両立が不可欠ということで、「スリークオーター制度」を導入。これは8時間勤務を6時間にする時短制度です。さまざまな取り組みの結果、産休育休後の復帰率は100%に。特別手当として育休復帰後は毎月2万円を、2年間支給しています。さまざまな取り組みの結果、15%だった女性比率も、現在は44.3%と言うところまで伸びてきました。このほか、働きやすさを向上させるための新しい仕掛けにも着手しているところです。

ここまでご紹介してきた複合的な取り組みが、GPTWのベストカンパニーへとつながったのだと思います。しかしながら、人づくりに終わりはありません。今日より明日は、少しでも前に進む。これを永遠に続けたいと考えています。

水上印刷株式会社 代表取締役社長 河合 克也 様 プロフィール

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「日本一勉強する会社を目指す!」と宣言する水上印刷株式会社の代表取締役社長。7期連続増収(直近4期連続二桁増)を牽引する。2002年早稲田大学商学部卒業後、同年、株式会社キーエンスに入社。2007年に水上印刷に転じ、2008年に経済産業省 商務情報政策局 情報政策課への出向を経て、2010年水上印刷の経営戦略室長、取締役管理部長を歴任し、社内制度改革、ビジネスモデル改革、組織改革、業務改善プロジェクト、コーポレートブランド改革業務等を先導する。2014年11月より現職。目指すのは「100年連続で成長し続ける企業文化を築く」こと。

水上印刷株式会社

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1946年、活版印刷を行う企業として創業。時代の流れに応じて事業領域を広げ、現在は顧客第一主義の理念に基づき、「お客様の『ココロにヒビク』をつくる」を合言葉に、オンリーワンのソリューションパートナーを目指している。事業領域は360度フルサービス。「販促支援ソリューション分野」「デザイン・クリエイティブ分野」「品質・技術ソリューション分野」「業務改善・BOPサービス分野」が軸になっている。経営革新企業やおもてなし経営企業など経営コンテストの受賞歴も豊富。

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