文化祭前夜のような高揚感と従業員の絆が
ディアーズ・ブレインのDNAを強くする
株式会社ディアーズ・ブレイン
代表取締役 小岸 弘和 様
更新日 2024.10.312020.01.09
文化祭前夜のような高揚感と従業員の絆が
ディアーズ・ブレインのDNAを強くする
株式会社ディアーズ・ブレイン
代表取締役 小岸 弘和 様
地方中堅都市でのドミナント戦略と、店舗ごとに異なるコンセプトでウエディングを提案するスタイルで、ブライダル業界に新風を吹きこんできた株式会社ディアーズ・ブレイン。日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)では、中規模部門(100-999人)にて2017年から3年連続でベストカンパニーに選出されています。「OPEN DOORS!!」 「楽しくなければ、やったところで知れたもの」という指針のもと、どのようにして働きがいのある会社をつくってきたのか、同社代表取締役社長の小岸 弘和氏にうかがいました。
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
ディアーズ・ブレインがGPTWの「働きがいのある会社調査」に参加したのは、会社の未成熟部分を探すためです。もともと、組織の活性度調査を実施していました。自分たちの会社を多面的に見るという点では有効ですが、外から眺めたり、他社と比較したりできるものではありません。自社を客観視するためにGPTWの調査を役立てられるのではないかと考えました。
2017年から参加し、2019年まで3年連続でベストカンパニーに選ばれています。最初に選ばれたとき、たまたま広報の担当者が受付にトロフィーを飾ろうとする場面に遭遇。「1個だけでは寂しいよ。2個、3個と増えてから飾ろうよ」といったものです。結局、飾られていましたが(笑)。GPTWの調査の結果は、いわば1年に一度もらえる「経営者の成績表」。大切なのはこれを毎年、少しずつでも、着実に向上させていくことだと考えています。
当社は年間約4500組のウエディングに携わっています。それはすなわち私どものメンバーが、4500話のウエディングストーリーを創っているということ。この幸せのステージを創造する仕事は、『完璧に結んであたりまえ』。その当日に向けてのプロセスを、新郎新婦とともに、ワクワク感と緊張感を持って段取りしていくのがウエディングプランナーの醍醐味です。お二人の人生最高の日を創るウエディングプランナーに求められる必要条件は「自分が幸せな気持ちで仕事に向き合えていること」だと思っています。なぜならその空気感は必ずお二人はもとより、ご列席の方々にも伝わると思うのです。緊張感が最高潮になる前日をも「学園祭前夜」な気分で迎えるメンバーたちであって欲しいと思っています。ディアーズ・ブレインという会社を、「ここで働いていることが幸せでしかたがない」と感じられるチームにしたいのです。
当社では、創業時の理念である「楽しくなければやったところで知れたもの」と、現在の理念である「OPEN DOORS!!」という二つのポリシーを大切にしています。この2つの言葉は、「仕事をとことん楽しむ」「そのために強くなる」「チャレンジすることを忘れない」という想いが込められています。そして、この言葉に共鳴したメンバーの集団になっていると思っています。ともに結婚式を創るパートナー企業の方々から、「ディアーズ・ブレインのみなさんは、仕事を楽しんでいますね」と言っていただくことは僕にとって一番の褒め言葉です。
GPTWの調査で毎年1回、客観的に会社の様子を振り返るのと同じように、自分たちの成長を、社員みんなで共有する機会も不可欠だと思っています。僕たちは年に一度1月に、グループ会社含め全メンバーを集めて全社キックオフミーティングを開催しています。2019年は全国から舞浜に約1000人が集結しました。
キックオフミーティングは2004年に結婚式場運営会社をM&Aしたタイミングから続けています。当時、5名余りの会社だった我々が、70名の会社を引き受けたのです。その時に「組織にとってDNA(社風・風土)を整えること」の大切さを実感し、その大いなる解決方法のひとつが「同じ時間と空間を共有すること」だと認識し、その想いと動きをメンバーが大きく増加した今でも続けています。
キックオフミーティングは2部制になっており、1部では昨年の振り返りや、新年度を迎えての新しいプロジェクトの発表や事業戦略を共有。さまざまな角度から、メンバーをたたえる表彰を行います。2部は宴会です。店舗ごとに仮装して盛大なパーティーを開催。全メンバーの中からウエディングプロデューサー、キッチンメンバーのNO.1を決定する「DB Grand Prix」の表彰、その年の各部門、項目ごとのMVPの発表も行われます。
このキックオフの前日の準備風景から、当日の集合場面、そして1部、2部の様子はすべて撮影され、キックオフ2日目の最後にその映像を見て解散します。わずか28時間あまりの「同じ時間と空間の共有」ですが、この映像に、“今のディアーズ・ブレイン”が凝縮されていると思っています。この映像は、中途採用の最終面接によく登場し、「この空気感に馴染める?」(笑)と確認しています。DNA(社風・風土)を強めることを重要視する我々にとって、優秀であるかどうかの前に、「このチームで走りたい」という意思が何よりも大切だと考えているからです。
キックオフミーティングはメンバー同士の絆を再確認する場だとすれば、その絆の構築は、内定者時からスタートしています。ディアーズ・ブレインでは、内定者時の研修を、2007年の新卒1期生を迎える時より、「アジアに学校を寄贈し、その開校式典を内定者のみで企画、実行する」という宿題を提供し、実行させています。昨年12月で10ヶ国14校になりました。この「Ring活動」とネーミングされたプロジェクトの運営のプロセスで、「同期としての認識と繋がり」ができ、絆づくりが始まっているのです。
内定者と言っても、所詮は学生、当然、事はうまく運びません。しかし、期日は迫ってくる。この「どんな状況でもやり遂げなければ意味がない」という体験を通して、「仕事とは、やり遂げること」の始まりを体感してくれたらとも思っています。準備する中、けんかもする。そうした中で、少しずつ成長し、学生から社会人へと“脱皮”する様を見るのが大好きです。開校式典を終えた瞬間に表情が変わり、本物の“同期”になっていきます。
既存メンバーの知見を深め拡げるユニークな制度として、「弾丸トラベラー研修制度」というものがあります。そのネーミングの通り、72時間(エリアによっては84時間)以内であれば、地球上のどこに行って、何をしてもいいという研修です。費用もこだわりません。もちろん、その体験が自身の学びと成長に寄与するという前提条件はありますが。ブラジルでのワールドカップ見学に行ったメンバー、音大出身なのでウィーンでコンサート三昧してきたメンバー、ニューヨークでウエディングの視察をしてきたメンバーなどがいました。もともと海外旅行が好きなメンバーが多いのですが、社会人になり、なかなか海外に行けないという声を受け、旅行と絡めて記憶に残る研修ができないか考えたことがきっかけです。渡航先で学んだことをレポートするという宿題はありますが、大事なのは限られた時間の中、どこで何をするのか、すべて自分で考え段取りし、実現すること。これが、お客さまの要望を聞いてカタチにしていくウエディングプランナーの仕事とも通じ、また海外での記憶が人としての成長を促してくれればと思っています。
ともに高め合うメンバーが集い、自身の成長を意識しながら自走するメンバーがいれば事業は動き出すと考えています。
当社で大切にしている「楽しくなければ、やったところで知れたもの」という言葉が生まれたのは、自身が起業するタイミングでした。起業するなら思う存分仕事がしたい、しかも、どうせなら自分が今まで一番楽しく仕事をしていた時の感覚でずっと仕事していたいと。そんな時に思い浮かんだのが、この言葉だったのです。自分もそうありたいし、自分のもとに集ってくれたメンバーにもその感覚で仕事をしてもらいたいと思っています。
今、僕が最重要事項として取り組んでいるのは、「次世代のリーダーを育成する」こと。自社はもちろん、グループも拡大する中、さまざまな場面で組織をリードし、経営者感覚で事業を運営できるメンバーの育成が急務だと考えています。目の前にある業務に長けるだけなく、グループ企業での“他流試合”にも挑んだ経験を踏まえ、現在のディアーズ・ブレインの弱点を指摘しつつ、自らその改革に挑むことができるメンバーです。それによって、ディアーズ・ブレインはより進化したDNAを獲得できると思っています。
また、僕を育ててくれたリクルートでは、卒業したメンバーが「元リク」という表現でその関係性を続けています。とても刺激的で素敵な関係です。ディアーズ・ブレインでも、いずれそうした卒業生たちが各地で奮闘し、時には集まる、そんな“大人”な集団へと成長して行ってくれればと願っています。