GPTWベストカンパニーのナレッジを自社に応用
カルチャーを基軸に働きがいのある会社を作る
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社
代表取締役社長 鈴木 努 様
更新日 2024.10.312020.02.13
GPTWベストカンパニーのナレッジを自社に応用
カルチャーを基軸に働きがいのある会社を作る
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社
代表取締役社長 鈴木 努 様
クライアント自身の変革マインドを引き出す「ファシリテーション型変革コンサルティング」を武器に、「組織・業務変革」「経営戦略立案」「IT戦略立案」など、あらゆる企業や業務の変革プロジェクトにおいて、成功率「95%以上」を誇るケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社。日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)では、2016年に小規模部門(従業員25人以上99人以下)、2017年以降は中規模部門(従業員100人以上、999人以下)にて、4年連続でベストカンパニーに選出されています。働きがいのある会社はいかにしてつくられたのか、同社代表取締役社長の鈴木 努氏に伺いました。
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
当社の事業は、お客さまの「変革を成功に導くこと」です。テクノロジーに関する内容から組織づくりに関する内容まで、プロジェクトの種類は多種多様ですが、共通しているのは「何かを変えようとしている」こと。プロジェクトの主役は、あくまでもお客さまご自身。仮に3年間のプロジェクトなら、コンサルタントがお手伝いするのは最初の1年目だけということもあります。その後は、お客さま自身が変わらなければ、変革プロジェクトを成功させることができないからです。VUCAと呼ばれる予測不可能な時代だからこそ、お客さまが自らオーナーシップを持って変革を進めることが不可欠。私たちが力添えするのは、お客さまが自走できるようになるまでです。
当社は2016年にGPTWに初参画し、小規模部門(従業員25人以上99人以下)でいきなり2位をいただきました。しかしながら、働きがいのある会社とは言えない時代があったことも事実です。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズは1984年にアメリカで設立されました。2001年のネットバブルが弾ける頃に、トップマネジメントを担っていた優秀な人材がみんな引き抜きにあったのです。その当時、アメリカではインターネットコンサルティングの分野で、ケンブリッジは非常に高評価だったのですが、それがかえって人材流出を加速させ、結果的に買収されてしまいました。
その後は坂道を転げ落ちるように人が辞めていき、日本法人も2006年の時点で32人しか残っていませんでした。このままではいけないということで、本社に掛け合って日本だけ切り離してもらい、日本ユニシスの子会社になったのです。
32人という小所帯だからこそ、全員で心を通わせながら会社づくりに取り組み、ビジョン・ミッション・バリューを固めていくことができました。かつて会社が急成長していたとき、カルチャーに合わない人を採用して失敗した経験があります。再出発後はカルチャーに共感できる人だけを慎重に採用し、じっくり育てていくと決めました。
それから約10年が経ち、これまで私たちが取り組んできたことを外からの目線で見た時にどうなのかを知るために、2016年のGPTWの調査に参画したのです。GPTWでベストカンパニーに選ばれたことをきっかけに、メディアに好意的な内容で取り上げられることが増えました。当社が「働きがいのある会社」に選ばれたことは、就職活動をしている学生にもインパクトがあったようです。
実は、今のオフィスに移転したこともGPTWの調査結果が関係しています。というのも以前のオフィスは人数のわりにせますぎて、お客さま先から一斉にコンサルタントが帰ってくる帰社日、ぎゅうぎゅう詰めになっていました。GPTWの調査で環境衛生面での評価が一部、極端に低かったのはこれが原因です。今のオフィスに引っ越してからはスコアも向上しています。元々新オフィスの構想もありましたが、GPTWの調査結果が構想の実現を後押ししました。
2017年に当社が20周年を迎えた際に、お客様感謝パーティーを実施しました。その時お招きしたお客さまに、当社と一緒にプロジェクトに取り組んでよかったことをカードに書いていただきました。(写真)
「お客さまから感謝の一言をもらえる仕事をしたいよね」と私はコンサルタントに常々話しています。実際にお客さまの直筆でメッセージをいただくと嬉しいものです。
繰り返しになりますが、私たちは変革プロジェクトの入り口のところでお手伝いはしますが、その後のプロジェクトを動かしていくのはお客さまご自身です。私たちが携わったプロジェクトが、どれだけお客さまにインパクトをもたらしたかのかを、お客さまの言葉で伝えてもらうことで、コンサルタントたちは自分の存在意義を強く実感できます。そのため、プロジェクトのアフターストーリーをお客さまにヒアリングし、そのメッセージを多くのコンサルタントが目にするように社内にて情報発信を行っています。
GPTWの参画をきっかけに、ベストカンパニーとの交流も生まれました。私たちが直面している課題をすでに解決した経験を持つベストカンパニーに話を聞けるのは、とても大きなメリットです。例えば、組織が大きくなるにつれて、組織の風通しが悪くなる問題を多くの企業が経験しています。当社にも2年続けて新入社員が10人ずつ入ってきた時期がありました。新人たちは社内にいるためコンサルタントのことを知っているのですが、普段お客さま先でプロジェクトに従事しているコンサルタントは、新人たちのことを知りません。帰社するたびに人が増えて、疎外感を抱いていたコンサルタントもおり、GPTWの調査結果にもその傾向が見えました。そこで、ベストカンパニーに話を聞かせてもらうと、ある程度の規模まできたら「社内交流の仕組み化」が必要だとわかったのです。普段顔を合わせない人たちをシャッフルしてランチに行く会をつくったり、私とコンサルタントが定期的に話をする機会をつくったりなど、解決に向けて新しい取り組みをスタートしました。
交流のあるベストカンパニーから学ぶだけではなく、こちらからもメリットを提供することもあります。当社は通年採用を行っているため、タイミングによっては研修を受ける人数が少なくなることも。研修にかける時間とコストは、5名に対して研修を実施するのと、20名に対してやるのとさほど変わらないので、お客さまやパートナー、GPTWで交流が生まれたベストカンパニーに研修機会を利用していただくこともあります。
多くのコンサルタントは日々、お客さま先で働いています。離れているからこそ、ケンブリッジのビジョン・ミッション・バリューを振り返ることが大切です。コンサルタントたちは、ケンブリッジの価値観に基づいた行動ができていたかどうか、チームメンバーとともに日々振り返っています。
月1回の帰社日には、ケンブリッジのカルチャーについて考える機会も設けています。費用はかかりますが、大阪や福岡の拠点で活躍するコンサルタントも本社に集めていますし、時差がある米国オフィスのメンバーもWeb会議に参加できるように午前中に開催するなど、顔を合わせるための工夫をしています。
普段は別々のプロジェクトで活躍しているコンサルタントを混ぜこぜにして、我々のカルチャーに関わるところで、どんな問題が起こっているのか、その解決のためにどんなことをしているのか話し合うことも。このほかにも、ケンブリッジのカルチャーを浸透させるためにメンバーが主体的に考えて、多種多様なアクティビティーやワークショップを実施しています。
当社のカルチャーを構成する重要な要素の一つが、「教えあい」と「支えあい」です。コンサルタントたちが多様なプロジェクトを通じて得たスキルやナレッジを、プロジェクト固有のものではなく、少し汎用的なトレーニングに仕立てて、トレーナーとして勉強会を開催しています。コンサルタントが教える側に立つことで、説明が得意になります。このスキルは、お客さまとプロジェクトを進める上でも非常に役立ちます。コンサルタントがそばにいなくても、お客さまがプロジェクトを動かしていけるように導くことが、コンサルタントの仕事だからです。
今もコンサルタントはそれぞれの持ち場で働いていますが、世の中全体を見渡しても、これからの時代は一つの場所にとどまって仕事をする人が少なくなると思います。副業OKの会社が増えていますし、当社にも副業を始めているメンバーがいます。パラレルキャリアが当たり前になるからこそ、より一層、企業のカルチャーにフォーカスすべきではないでしょうか。
コミュニケーションの手段が広がり、距離が離れていても情報伝達をしやすくなっていますが、大切なことを話すときは、やはりface to faceの方がいいと思います。世界中にケンブリッジの拠点があったとしても、大切にしている価値観を共有している状態でありたいですし、地理的に離れていてもお互いに学びあい、支えあうことができる組織であり続けたいです。