公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を

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「生きるとは何か」「仕事とは何か」
日々の対話と内省が、働きがいの源泉に

公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を
代表理事 大住 力 様

難病や障害を患う子どもとその家族が社会とつながる機会をつくる「公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を[略称:H&W(ホープ&ウィッシュ)]」。日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)2020年版において、小規模部門(従業員25人以上、99人以下)のベストカンパニー(3位)に選ばれました。代表理事の大住 力氏は、前職の株式会社オリエンタルランドにて、ウォルト・ディズニー氏の研究会を立ち上げ、現場の組織活性に役立てた実績の持ち主でもあります。初参画でベストカンパニー入りした背景にある大住氏の考えや、従業員との関わり方について伺いました。

GPTWのコンセプトに共感し、設立10年目の節目に調査実施

家族旅行や毎日の食事、何気ない会話など、多くの人々にとっての“普通”は、難病の子どもとその家族にとって特別なことです。我々は難病の子どもとその家族を応援し、社会とつなげるための取り組みをしています。たとえば、「ウィッシュ・バケーション」と呼んでいる家族全員旅行。旅行中の身体的ケアや旅費などをすべて無償で提供しています。旅先で待ち受けている方々に歓迎していただき、心通わせることで、家族全員が「社会とつながっている」と実感できる旅です。

2020年3月には、Hope&Wishバケーションハウス「青と碧と白と沖縄」を沖縄県恩納村真栄田にオープンさせました。24時間365日体制を整え「難病の子どもとその家族がリフレッシュできる家」です。一般的な家族にとって当たり前のことが、難病の子どもがいても当たり前にできる環境や、社会的健康を促進するコミュニティーの場にしたいと考えています。

企業のCSR活動や研修を通じて、難病のご家族と対話する機会もつくっています。協力いただいたみなさんから、「生きることや家族を持つことについて、深く考えさせられました」とか「目の前にいる人をどう喜ばせるかという大切なことを思い出しました」など、嬉しい言葉をいただくことも。活動を通じて家族が社会とつながれるだけではなく、企業の方になにかしらの影響を与えられるところに意義があると考えています。そんな活動をしている我々ですが、以前から働きがいのある会社調査のことは知っており、メディアを通じてどんな会社がベストカンパニーに選ばれているのか拝見していました。とても気になっていましたし、「いつか我々も調査をしたい」という想いがあり、10年目の節目に参画を決めたのです。

敬愛するウォルト・ディズニー氏は、70年前から従業員の幸せが大切であると語っていまました。私は前職で人材育成や組織活性化を任されていたので、従業員満足度が高いときは嬉しかったものです。働きやすさというと、給与面や有給休暇の取得率が目安の一つになりますが、それだけではスタッフは満足しないと思っています。「何のために」仕事をしているのか、それが心の中にあるかないかで全く異なるはずです。従業員の幸せは、「働きやすさ」と「やりがい」から生まれるものだと思います。だからこそ、働きやすさと働きがいの両面で調査するGPTWの考え方に共感しましたし、そのことが働きがいのある会社調査に参画した大きな理由です。

実際に調査を実施してみて、会社の状態を可視化する良い機会になったと感じました。調査をきっかけに、スタッフといつも以上に対話する時間を増やしています。今回、小規模部門のベストカンパニーに選ばれたこともあり、おかげさまで社内はとても良い雰囲気です。初参画で3位という結果には驚きましたし、いきなり高い評価をいただいてしまったからこそ、気持ちが引き締まりました。

喜びや感動、気づきなど、数値化できない情報をFace to Faceで共有する

interview_200324_01.jpg働きがいのある会社調査での高い評価の背景にあるのは、Face to Faceのコミュニケーションです。Face to Faceのコミュニケーションでは、お互いの仕事ぶりを褒めたり、喜びを共有したりということを意識的にしています。私は超アナログ人間ですので、できるだけ対面でのコミュニケーションを心がけています。そのために特別な時間を設けるというよりは、一緒に食事に行ったり、打ち合わせの時に話をしたりといった具合です。離れた拠点のスタッフと話すときも、メールやチャットではなくZOOM(Web会議ツール)でお互いの顔を見ながら実施しています。アナログとデジタルのハイブリッドで、熱量のあるコミュニケーションを心がけているのです。

私が考えるに、情報には大きく2種類あります。一つは、売上などの数値的なもの。もう一つは喜びや感動、誇りなど数値化できないもの。その数値化できないものをいかにシェアしていくのかが大事なのです。それが、自分たちの仕事の意味を問う、深い内省につながります。

数値化できない情報の多くは、会議室や執務室ではなく現場にあります。難病の子どもとその家族を応援する仕事ですから、死に直面することもあるのです。スタッフはいつも「生きるとはなんだろう、何のために生きているのだろう」という深い問いを持って働いています。

癌の影響で髪の毛も全部抜けて元気がなくなってしまった子どもと、その家族をディズニーランドに連れて行ったときには、お母さんからこんな一言を言われました。「今日ここに来たのは、実は病気の子のお兄ちゃんのためです」と。お母さんはずっと病気の子どもに付きっきりで、お兄ちゃんと話したりする時間が少なかったのだそうです。「だから今日はお兄ちゃんのほうについて行きます」とそのお母さんは言いました。私自身、母親はそこまで家族全体のこと考えているのかと思い知らされるわけです。こういう話をスタッフとシェアすることで、「家族ってなんだろう」「仕事ってなんだろう」と考えるきっかけをつくります。

ときには、難病の子どもの両親からお叱りを受けることもあります。一般的に難病のご家族を支援するボランティア団体や慈善団体は、車椅子で移動する子どもがいる場合は、車椅子に乗ったまま移動できるレストランなどにご案内します。一方で、我々がご案内したのは、明治時代から続く浅草の天丼屋さん。昔の建物ですから、エレベーターはありません。お父さんに子どもを背負って急な階段を登ってもらいました。その子どもは食欲がなくて何も食べないと言われていましたが、1時間くらいかけて天丼を食べ切ったのです。でも結局、その子は後に亡くなってしまいます。告別式で、お父さんから「あの時、どうしてバリアフリーのレストランに案内しなかったのか。下見も勉強もしていないのか」と言われたのです。私はこう返事をしました。「階段で息子さんを担いだときの重さは、絶対に忘れられないはず。 我々はそのためにあの店を選んだのです」と。

我々は難病の子どもの病気を治すことはできません。けれど、子どもが生きていたことを実感させることならできる。ただ単にスムーズな運用をすることが、我々の仕事ではないのです。こうした私の「想い」を従業員に伝えることで、気づきを与えるきっかけになればと考えています。そうして従業員たちが日々の仕事を通じて、「どうして働くのか」「誰のための仕事か」を考えているからこそ、働きがいや生きがいを感じられるのです。

WIN-WINではなくHAPPY-HAPPYを追求していきたい

interview_200324_02.jpgここまでお話ししてきたような経営者として自分の考えを、スタッフのみんなにきちんと伝えることも、組織全体の働きがいを高めるために大切なことです。経営者がどんなことを考えているのかわからないのは、働きがいの欠如につながります。

難病の子どもとその家族に夢を与えたいという気持ちに嘘偽りはありません。しかしながら、難病は医師もお手上げの人間の叡智を超えた現実。そこに対して我々ができることはないと考えています。むしろ「かわいそうだね」で済ませている社会のほうに問題があるのです。我々はそこを変えていきたい。

難病の子どもとその家族は、死に直面しています。その上で、生きることを選択している人たちなのです。それに対して、自分たちは本気で、相手を想って、仕事をしているのかといつも考えさせられます。それと同じように、死を突きつけられてもなお本気で生きることを考えている人たちの姿を見れば、社会の人間たちも変わると思うのです。社会で不自由なく生きている人、企業で働く人たちを、一瞬だけでも変えることに意味がある。今社会全体が、「生きるとは何か」「幸せとは何か」「家族とは何か」という問いを持ち、答えを求めていると思います。我々の課題は、そういう数値化できないものを、より多くの人たちに体験していただく機会をつくることなのです。

よく世の中ではWIN-WINという言葉が使われていますが、私たちは関係性を勝ち負けを基準に考えていません。だから、HAPPY-HAPPYと表現しています。目指すべきは、関わる人すべてがHAPPYであること。そのためにはまず、スタッフのみんなが幸せにならなくてはいけません。自分が幸せでなければ、相手を幸せにすることができないからです。

スタッフにもいろんな人がいます。夜寝る前が一番幸せという人がいれば、猫といるときが幸せな人とか、いろいろな幸せがあると思いますが、みんなの幸せを可視化して、それを実現し、そこから世の中にHAPPYを広めていくことが次の10年の目標です。

公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を 代表理事 大住 力 様 プロフィール

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東京ディズニーランド等を管理・運営する株式会社オリエンタルランドの人材教育の領域において、現場の組織活性を目的にディズニーランドの創始者であるウォルト・ディズニー氏の研究会を立ち上げ、 そのリーダーとして現場の指揮向上に努めた。2010年3月に難病と闘う子どもとその家族への応援を目的とした(非営利組織)「公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を」を設立。そのほかソコリキ教育研究所 所長、東京2020オリンピック・パラリンピックにおけるボランティアサポートセンター・アドバイザー(人材教育担当)、国立富山大学、東京家政大学非常勤講師、山野医療専門学校元講師などを務める。現在は、国内外で「ボランティア」「CSRの専門家」「社会起業家」「組織活性の専門家」「女性の人材活用の専門家」としての講演も多く手掛け、評価も高い。

公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を

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「難病を患う子どもとその家族との永続的な交流をもとに、“家族” “いのち” “しあわせ” を社会で共に育み合う場を創出します」というミッションのもと、女性力の向上、少子高齢化社会対策、ダイバーシティ対策、クオリティーオブハピネス(QOH)の価値観の創出を促すことを目的としている。2010年3月に一般社団法人として設立。2012年11月公益社団法人認定(内閣府)を受ける。米国フロリダ州非営利慈善団体「ギブ・キッズ・ザ・ワールド」認証姉妹団体。国際ビジネス賞2014年スティーヴィー賞金賞受賞。2016年には、大住力が製作総指揮を務めたドキュメンタリー映画「Given ~いま、ここ、にあるしあわせ~」で日本医学ジャーナリスト協会映像部門大賞を受賞。公益のために私財を寄付した個人、法人に天皇陛下から授与するものとして制定された「紺綬褒章」の寄付先認定団体として内閣府賞勲局より認定されている。

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