コロナ禍で真価を発揮したグロービスの未来志向型経営
ニューノーマル時代の働き方「ワークスタイル・ウェイ」で先陣を切る
グロービス経営大学院 学長
グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 堀 義人 様
更新日 2024.10.312020.08.27
コロナ禍で真価を発揮したグロービスの未来志向型経営
ニューノーマル時代の働き方「ワークスタイル・ウェイ」で先陣を切る
グロービス経営大学院 学長
グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 堀 義人 様
国内最大級のビジネススクール(MBA)「グロービス経営大学院」等を展開するグロービス。日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)では、中規模部門(従業員100人以上、999人以下)にて、2020年度まで7年連続でベストカンパニーに選出されています。さらに2020年版日本における「働きがいのある会社」女性ランキングと、アジア地域における「働きがいのある会社」ランキングにおいてもベストカンパニーに選出されました。今回は代表の堀義人様に、ニューノーマル時代の働き方の指針である「ワークスタイル・ウェイ」についてと、「働きがいのある会社」をつくるためのヒントを伺いました。
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
新型コロナウイルスの感染予防のために4月の上旬からリモートワークにシフトしました。フルリモート体制に問題なく移行できたのは「未来の経営を発明する」というビジョンを掲げて組織づくりを行ってきたからです。リモートワークで成果を上げるためには3つの重要なポイントがあると私は考えています。
まず1つ目は「MBOの徹底」。一人ひとりがやりたいことや、やるべきことを公言し、達成に向けて主体的に取り組むことが当たり前というのが、グロービスのカルチャーです。リモートワークになっても働く場所が変わっただけで、やるべきことは変わりません。だから、社員がパフォーマンスを落とすことはないのです。
2つ目は「働く環境がデジタル化されていること」です。もともとオンライン会議も当たり前の環境でしたし、大学院も2015年にはオンラインプログラムを開始しています。これまで客先に足を運んでいた営業もオンラインツールを活用したインサイドセールスに移行。ソーシャルディスタンスを保ちながら効率的にセールスをしています。
そして3つ目。最も重要なことが、「ビジョン・ミッションが明確に定義されており、全員がそれに共鳴していること」です。社員全員がビジョン・ミッションで繋がっているから、組織として向かうべき道を見誤ることはありません。我々はステイホームが求められる前から、場所に縛られない働き方ができる環境をつくっていたのです。
私はグロービスを立ち上げた時から「21世紀のリーダーとして、理想的な企業システムを実現する」ことを考えてきました。理想的な企業システム、つまり未来の経営を創ることは、グロービスの経営理念における3つの柱のうちの一つです。未来を予測しながら、経営のあり方を模索し続けており、いつでもどこでも仕事ができる環境や、労働時間ではなくアウトプットや能力を評価する仕組みは必須だと考えていました。
未来の経営を発明しようと思ってやってきたことの真価が、図らずもコロナ禍で発揮されたというのが実際のところです。新型コロナがトリガーになり、20年、30年後にやって来るはずだった未来がやってきたという感覚があります。
緊急事態宣言解除後は、さらに一歩進んだワークスタイルを追求するために、社員全員にアンケートを行いました。社員へのアンケートからわかったことは、リモートワークにより「生産性が上がった」と9割が感じていること。移動時間が少なく、有効に使える時間が増えており、さらにオンラインで仕事をする環境が整っているからだと思います。
その一方で、「雑談や、他部署・他チームとの偶発的な接点が減った」「オンラインでは相手の状態・表情が読み取りにくい」「新入社員のキャッチアップがしにくい」という声も上がってきました。例えば、セミナー後やミーティング後の何気ない雑談など、偶発的なコミュニケーションからイノベーションの種がみつかることもありますから、リアルの場での「偶発的な接点」はとても重要です。また、リモートでは新入社員のキャッチアップが難しいので、人事育成担当や所属部署が総出でフォローする体制をつくりました。
このように、全社へのアンケートを通じてオンラインの課題やオフラインの価値が浮き彫りになってきたというわけです。そのため、これからの「ニューノーマル時代」を見据え、オンラインとオフラインの長所を組み合わせた新しい働き方の指針となる「ワークスタイル・ウェイ」をつくりました。「ワークスタイル・ウェイ」をつくる上では3つの点を重視しています。「良きコミュニティ形成」「良き企業文化醸成」「良き関係性創出」です。
飲み会を通じて相互理解が進むことはよくあることですし、心通う関係性はリアルの方が築きやすいと思っています。またグロービスでは、楽しくて、クリエイティブで、規律ある企業文化を目指していますが、オンラインだけでそのような企業文化をつくることはなかなか難しいです。同じ場所で、ある程度の「接触」をしながら、一緒に何かを行うことによって生まれてくる一体感もあります。チームビルディングや企業文化の醸成には、リアルな場での「接触」がある程度は必要なのです。そんな背景から「ワークスタイル・ウェイ」では週2回の出社を推奨することにしました。加えて、原則として月1回はチームビルディングを目的とした場をつくることになっています。
このほか、「新入スタッフはHR・部門・チームで徹底的にフォローする」「会議はオフライン・オンライン自由選択」「フリーアドレス」などの原則をつくりました。「ワークスタイル・ウェイ」は、ITツールをフル活用して生産性の高い働き方を実現すると共に、一体感のあるコミュニティ、良好な関係性、強い企業文化を実現させていくためのものなのです。
21世紀のリーダーとして働き方についてもリードすべく、ここまでご紹介してきたように未来を見据えて組織づくりを行ってきました。その結果、GPTWの働きがいのある会社のベストカンパニーにも選ばれ続けています。
一生のうちで、仕事をしている時間はとても長いですから、私にとって「働きがい」とは「生きがい」と同じです。マズローの欲求5段階説にもあるように「生きがい」を感じられるのは、自己実現ができているときではないでしょうか。グロービスはその自己実現の場を提供しています。
「人間として成長すること」「社会に貢献すること」などそれぞれ自己実現のテーマは違うかもしれません。それでも、グロービスウェイに共感した人たちが集まることで、一人ではできないことが実現できるようになります。グロービスは教育によって日本全体に貢献する企業であり、また教育を通じて自分たちも気づきを得られる、アジアナンバーワンのビジネススクールです。自己実現ができる場があるから各自が成長しますし、人間的にも、金銭的にも豊かになり、教育を通じて社会に貢献していることも感じられます。
また、私は「自分が本当に働きたいと思う会社をつくる」と決めて起業したので、「服装自由」「労働時間ではなくアウトプットで評価」「給料は自己申告制」など、「これなら働きたい」と思える要素を盛り込んできました。100人に対して100人の働き方を認めてしまうとそれは非効率ですが、現在もできるだけ社員の要望に合わせて柔軟に人事設計をしています。「ダイバーシティ・ウェイ」というものも別途定めて、異能・異質を受け入れる柔軟な組織を目指しており、女性の幹部社員も多いです。誰もが能力を発揮できる環境だと思います。
ただし、「働きやすさ」と「働きがい」は別のものです。「働きやすさ」は人事制度などの環境面の話。「働きがい」はビジョン・ミッションへの共感や、理想とするキャリアの実現など、「生きがい」や「ワクワク」を感じられることから生まれるのだと思います。優秀な人を採用する場合は、「働きやすさ」よりも「働きがい」がさらに重要です。
優秀な人たちは高額なオファーがくるのは当たり前ですから、その人たちに金銭面だけでなく共感・共鳴される環境をつくっていく必要があります。グロービスには、優秀な仲間と切磋琢磨しながら学び続ける文化がある。昨日よりも今日、今日よりも明日、成長していることを想像できるからこそ、グロービスが才能ある人たちに選ばれているのだと思います。