鹿児島から初ランクイン。理念経営を徹底し離職率27%→5年連続離職者ゼロへ
県内外から人が集まり、定着し、主体性を発揮する組織づくりとは
株式会社現場サポート
代表取締役 福留 進一 様
更新日 2024.10.312020.11.25
鹿児島から初ランクイン。理念経営を徹底し離職率27%→5年連続離職者ゼロへ
県内外から人が集まり、定着し、主体性を発揮する組織づくりとは
株式会社現場サポート
代表取締役 福留 進一 様
鹿児島市に本社を構え、全国の建設業者向けにパッケージソフトウェアやクラウドサービスの企画・開発・販売・サポートなどを行なっている株式会社現場サポート。2020年版日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)では、初参画で小規模部門(従業員25人以上、99人以下)2位。さらに女性/若手ランキング小規模部門2位、アジア地域ランキング小規模部門13位という優良企業です。今回は同社代表の福留様に、これまでの歩みを踏まえて、特に若手が活躍する「働きがいのある会社」のつくり方についてお話しいただきました。
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
当社は鹿児島県鹿児島市に本社を置き、建設業のお客様をサポートしているIT企業です。建設業に特化した情報共有システム「現場クラウド for サイボウズ Office」や「現場クラウドConne(コンネ)」などのクラウドサービスを通じて、日本全国の建設現場の業務を見える化・効率化しています。
私はもともと富士ゼロックスの販売会社の社員でした。その当時、新規事業として建設業向けのソフトウェア事業に関わっていたことが今につながっています。実は32歳から34歳までは東京で勤務した経験も。その当時から感じていたのは、「ビジネスをするために東京にこだわる必要はない」ということです。もちろんマーケットのポテンシャルは東京にかないませんが、鹿児島でも優れたビジネスモデルは通用すると確信していました。そして、事業撤退の方針が出されたとき、開発パートナーやお客さまを裏切りたくないという気持ちから独立し、鹿児島で現場サポートを設立したのです。
設立してから最初の5年の業績は好調でしたが、ピーク時は離職率が27%ある状態でした。その頃に圧倒的に欠落していたのは理念。「少人数の会社に理念は必要ない」と思っていましたが、理念がないと人は離れていくばかりだと思い知りました。それから理念とビジョンを明確にして、組織への浸透をはかるように。近年では最大で年86回、私が主催する勉強会で、繰り返し理念とビジョンの振り返りなどをしています。
理念経営を徹底することで離職率は激減しました。ここ5年間で離職者ゼロを継続しています。Google社が「心理的安全性」を大切にしていることはよく知られていますが、当社の心理的安全性も極めて良好な状態だからだと思います。理念の共感を促す活動に加えて、長期疾病者のケアに関するガイドラインも社員の定着に寄与しています。フルフレックスタイムのコアタイム制限の排除、定期的な面談などを通じて段階的に復帰できるようにしているため、疾病による退職者もおりません。
採用基準に関しても理念への共感を重視しています。「私たちの会社はこんなことを成し遂げたい。だからあなたの力が必要だ」という採用スタンスなので、採用選考時に2時間くらい理念について話すこともあるくらいです。
新卒採用、キャリア採用ともに、多数の応募をいただいています。これは、「鹿児島県経営品質賞(知事賞)」、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」などの第三者機関から評価されることで、経営改善に邁進している企業であるとブランディングできているからだと思います。客観的な評価が応募者や応募者のご家族の安心や採用競合企業との差別化にもつながっているのではないでしょうか。今後コロナにより、働く場所の縛りがなくなると都心の企業も競合になってきますので、よりよい組織づくりに注力しなければと思っています。
地元の大学からはクチコミでの評価が高いです。その多くは先輩から後輩へのクチコミであり、今活躍している社員が満足してくれているからだと思います。採用に至らなかった応募者の方に対しても、「あなたのこんなところがいいと思いました」というメッセージをしたためています。せっかく当社に関心を持ってくれたのだから、少しでも彼らの役に立ちたい。採用活動自体も社会貢献だと思っています。応募者に対する姿勢も当社の評判につながっているのかもしれません。
私たちは建設業向けのクラウドサービスを提供していますから、そもそも自社の組織能力が高くなければ良いサービスを提供できません。だから、採用活動に注力していますし、入社してくれた社員の幸せを一番に考えています。ES調査を以前から行なっているのもそのためです。しかしながら、改善を続けていくうちにスコアが高止まり状態に。「満足のさらに上には何があるのか」を考えさせられました。その答えの一つが、「幸福」であり、幸福になるには「他者への貢献」が必要です。そういったことからGPTWの「働きがい」の概念を知り、とても共感しました。世の中の経営者の多くはES調査を通じて「休日がほしい、働きやすい場所がほしい」と社員からの要望に追われています。もちろん全てに応えたいけれど限界があるわけです。一方、「働きがい」は社員が能動的に高めていくことができます。ここに大きな意義があるのです。
2020年に初めて「働きがいのある会社調査」に参加し、最初は30位以内に入れればと思っていましたが、いきなり小規模部門で2位に入ったので驚きました。しかも、若手の満足度が高いと評価されています。若手がイキイキと働くことができるのは、主体性が育まれる環境だからです。入社2年目、3年目くらいの若手がどんどん手を挙げて公募型のプロジェクトに入るのが当たり前。プロジェクトの推進にあたって必要なフレームワークの提示や管理職のフォローもありますが、あくまで若手が主体です。また、コミュニケーションもかなり活発で、自社開発のSNS(現場クラウドConne)で1日に1,000通ほど、オープンなコミュニケーションが繰り広げられているのです。
当社の若手の主体性を表す、象徴的なエピソードを紹介させてください。入社2年目、福岡県出身で、カスタマーサポートとインサイドセールスを担当している女性社員がいます。先日、彼女が社長面談で「6月に福岡に帰ります」と言ってきました。当社には福岡に拠点がありますから、「福岡でインサイドセールスに専念するの?」と尋ねると「福岡にサポートセンターをつくりたい」と言うのです。会社としても、サポートセンターが鹿児島と福岡の2拠点になれば不測の事態に備えられますので、プロジェクトとして取り組むことになるでしょう。もちろん、事業全体をきちんと回すことが大前提ですから、若手の希望を100%叶えられるわけではありませんが、やりたいことが会社の戦略に沿うものであればどんどん任せていきます。
経営理念をつくるプロジェクトにも若手が参加しています。当社は2020年に設立15年周年を迎えました。これを節目と考え、昨年から経営理念を刷新する全社プロジェクトを行っていたのです。従来の経営理念のままでも成長させていけたとは思いますが、さらに上を目指すためには会社の根幹である理念をつくりかえるべきだと考えましました。これを経営者がつくるのではなく、「自分たちで」つくることに意味があると考え、社員の意見を集め、議論を重ねて経営理念をつくりました。だから、新しい理念を「私たちの理念」と名付けています。
自分たちでつくった理念だからこそ、本気になって叶えたいと思えるし、自分が何をすべきか見えてくる。これが若手の主体性の高さに結びついています。「私たちの理念」は「チームを活かす、だれもが活きる」です。まさに、私たちが目標とする組織像を表しています。私たちの中には、誰一人、不要な人はいません。みんなが活躍できる組織をつくりたいと思っています。そして、いずれは自社だけではなく、世の中全体にも私たちの考えを波及させていきたい。特定の仕事だけを見れば、当然、その仕事が得意な人も、苦手な人もいると思います。それでも必ず、その人が輝くことができる場所があるはず。私たちはそれを見つけ出し「チームを活かす、だれもが活きる」を実現していきます。