コロナ禍のリモートワークで生産性を向上させるには
心理的安全性と透明性のあるコミュニケーションが重要だ
Slack Japan 株式会社
日本法人代表 佐々木 聖治 様
更新日 2024.10.312021.01.07
コロナ禍のリモートワークで生産性を向上させるには
心理的安全性と透明性のあるコミュニケーションが重要だ
Slack Japan 株式会社
日本法人代表 佐々木 聖治 様
世界17カ所に拠点を構え、各地でビジネスのコラボレーションを実現しているSlack社。その日本法人Slack Japan株式会社は、2020年版GPTWランキング小規模部門の11位に選ばれています。同社日本法人代表の佐々木 聖治氏に、「Slackでつながる人と組織」と題して、コロナ禍でも前向きな企業文化をつくるためのヒントをお話しいただきました。
※本記事は2020年12月10日に開催した特別セミナー『世界を舞台に成長する企業を支える「働きがい」のある組織づくりとは』の講演抄録です。
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Slackは全世界で1250万人が同時接続しているチャンネルベースのメッセージプラットフォームです。全世界で社員は2400名強、日本では東京と大阪にオフィスを構えています。ユーザーはスタートアップ企業からAmazonのような大企業までさまざま。近畿大学や慶應義塾大学、N高等学校などの教育機関でも利用されており、デジタルキャンパスの構築に貢献しています。
Slackのミッションは「みなさんのビジネスライフをよりシンプルに、より快適に、より有意義に」。その実現に向けて6つのコアバリューを掲げています。「共感」「匠の精神」「思いやり」「遊び心」「向上心」「チームワーク」です。我々はこれをまとめて「Slackっぽさ」と呼ぶこともあります。
さらに創業当時から「社員に求める4つの性質」を大切にしてきました。4つの性質とは、「Smart(探究心、好奇心、創意工夫)」「Humble(相手への敬意と思いやり、向上心)」「Hardworking(自己実現、プロ意識、ハングリー精神)」「Collaborative(チームワーク、切磋琢磨)」です。これらは社員が活動をする上で常に意識している言葉であり、上司が部下を評価するときの基準の一つでもあります。採用においても「この人はどんなスマートさを持っているだろうか」「チームワークを大切にしてくれるだろうか」など、社員に求める4つの性質について、面談を通じて見極めています。
カルチャーづくりにおいては「インクルーシブな環境」を意識しています。「インクルーシブな環境」とは、社外の関係者も包み込むような環境のことです。実現に向けて「多様性」「エンゲージメント」「帰属意識」を高める取り組みをしています。例えば、女性リーダーたちが、「Women Japan channel」をつくり、女性従業員が集まって活動をしたり、社外の方々と同じ時間を共有するイベントを企画運営したりしています。Slackは女性が活躍している組織であり、現在は女性の技術者は33.4%、管理者も46%を超え、幹部役員の割合は3割強というところも特徴と言えるかもしれません。マネジャーには多様性への理解や、採用をする上でのトレーニングなど、組織づくりに深く関わる人間の「意識づくり」を施すことが大事だと思っています。
Slack Japanは3年ほど前に日本に上陸してチームを発足して以来、年2回ほど全員参加でワークショップをしています。ときには一泊二日の合宿をすることも。その中で生まれた「Initiative」は日本独自のプロジェクトです。合言葉は「我々自らがモデルカンパニーになろう」。日本でSlackを普及させていくために、まずは自分たちがモデルカンパニーになり得るような活動をしています。GPTWに参画する姿勢も同じです。せっかくやるのなら、モデルカンパニーと評価されるような取り組みをしようということで取り組んできました。
合宿で生まれた二つめのプロジェクトは「Education」です。次世代を担う学生さんたちが社会人になると同時にSlackを使うことができる。正しいコミュニケーションができるように環境を提供したいと考えて、大学生や高校生が集まるコミュニティに入って活動しています。学生の皆さんにSlackのオフィスに遊びに来ていただきアイディアソンをしたり、ハッカソンのテクノロジーサポーターとして環境を提供したりしているところです。近畿大学に至っては全学生がSlackを使っているところまで発展し、デジタルキャンパスが出来上がっています。
三つめのプロジェクトは「地方創生」です。地方の活性化と今後のビジネスの発展に向けて、さまざまなカタチでお手伝いができるのではないかと考えています。最近では、内閣府が掲げる地域未来構想のオープンラボに申請し、Slackを地方創生に役立てていただけるよう提案しているところです。このほか、長崎県五島市で行われたリモートワークのトライアルプロジェクトに参加し、リモートワークやワーケーションのあり方について議論しました。もちろん、地方の老舗企業のSlackを活用したコミュニケーションづくりもサポートしています。
コロナ禍において、我々がどのようにリモートワークを進めてきたのかも紹介させていただきたいと思います。今年は「Work Hard & Go Home」というキャッチフレーズのもと、みんなと対話をしながら、リアルに会って活動することを大事にしようと決めました。その矢先に、コロナに突入してリモートワークがスタート。2月から全員が自宅からリモートワークを続けている状態です。
リモートワークをする中で、我々が重要だと考えていることが3つあります。「透明性を確保すること」「心理的安全性を維持すること」「生産性を向上させること」です。Slack社では全社一斉にリモートワークをスタートした前後で仕事のパフォーマンスは変化していません。透明性と心理的安全に支えられ、生産性を維持しています。
どうして透明性が重要なのか。これまではオフィスに出社し、会議室などの限られたフロアの中で会話をしてビジネスを進めてきました。Slackを使えば、擬似的な環境の中でオープンにコミュニケーションをして業務を進めることができます。我々はあたかもオフィスにいるような感覚が大事だと考えており、そのためには全ての情報がオープンに保たれていることが不可欠なのです。
CEOやCMOもSlack上でオープンなコミュニケーションを実践しています。このほか営業チームの過去のやりとりもオープンに共有されたり、日々の活動の報告を随時アップデートしたりしています。Slackで情報がオープンになっていれば簡単に答えを探すことができます。メールの場合はメールボックスの中に情報が埋没する可能性がありますが、過去のやりとりまでオープンであればすぐに見つかるのです。関係者がリアルタイムで同じ情報を見ているので、事前情報などの前提を揃えるのも簡単です。そのため何か活動をする時も、素早く立ち上げることができます。
当社の心理的安全を支えているのは、トップのメッセージの浸透や、交流を促す仕掛け、積極的なリアクションです。トップの考えを知ることで不安を和らげることができますし、交流を促すことによってコラボレーションが生まれます。それに対して積極的にリアクションすることで、コミュニケーションがより活発になる。Slackの中にそういった環境を作ることで、カルチャーが確立されている状態、それが心理的安全性を保つものだと考えています。
特に、トップから全社員への思いやりと信頼のメッセージは重要なポイントです。「月1回、金曜日はお休みにしよう」というCEOの声がけがきっかけで、社員に新しいベネフィットが生まれたこともありました。社員の交流を活発にするための取り組みとしては、例えばSlackの中に新入社員を紹介するチャンネルを作り、Donutボットと連携してSlackが無作為に選んだオフィス内のメンバー同士の会話を促すこともあります。加えてオフィスごとに雑談チャンネルをつくり、そこで社員の趣味や嗜好に対して新しい発見をしたり、みんなで話題を共有したりできるのです。
さらに、積極的にリアクションをすることは、前向きな文化をつくるという観点で有効だと考えています。会社にとってプラスになるメッセージにはコメントや絵文字でリアクションをします。これが前向きな文化を醸成することにつながるのです。
透明性と心理的安全性が整ったら、Slackの中でいかに生産性を上げていくか、リアルタイムでビジネスを進めていく上で3つのポイントを紹介します。まずは、チームの週報を簡単なフォーマットで作り、情報を共有しています。次に、必要な情報がいつでも手に入るように検索性を高めること。そして、社外とのやりとりもSlack上で安全に行うことによって、生産性が向上します。このほか、弊社では、例えば業務でGoogle Workspaceを使っているのですが、GoogleカレンダーやGoogleドライブでのファイルの共有、そして資料自動的作成ボットなど、よく使うアプリをSlack上で連携させることで生産性を上げています。ご紹介してきたような環境を整えることで生産性が維持され、イノベーションや新しいアイディアを創出できると我々は考えています。