スリーエム ジャパン株式会社

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闘病の中で見た真のダイバーシティ&インクルージョン
3M昆社長が率先する働きがいのある会社づくり

スリーエム ジャパン株式会社
代表取締役社長 昆 政彦様

広範な産業分野と身近な暮らしの中でサイエンスを活かした5万5000にのぼる製品を展開している3M。サイエンスカンパニーである3Mの日本法人として日本で60年以上活動を続けているのがスリーエム ジャパン株式会社です。製造拠点などを含む3Mジャパングループとして、Great Place to Work® Institute Japan の2021年版「働きがいのある会社ランキング」では「従業員1000人以上の大規模部門」において第21位。2017年、2019年に続きベストカンパニー選出は3回目となります。同社の代表取締役社長 昆 政彦様に、働きがいを高めた施策や並々ならぬ覚悟でダイバーシティ&インクルージョンに取り組む理由についてお話しいただきました。

3Mのイノベーションの源泉である企業文化と15%カルチャー

interview_210407_01.png3Mはテクノロジーを通じてお客様のビジネスを前に進めること、製品を通じて毎日の暮らしを快適にすることを目指してきました。その中でいくつものイノベーションを生み出しています。例えば、ポスト・イット® ノートは接着力が弱い失敗作の接着剤の「はがすことが可能な性質」からアイデアをひらめき利用したものです。他には、サステナビリティに貢献するイノベーティブな製品には遮熱性能を持つウインドウフィルムがあります。ガラスの遮熱性を高めることで空調などに使われるエネルギーを削減する効果がありますが、一方で遮熱性とガラスの透明度はトレードオフの関係でした。遮熱性と透明度を両立させたウインドウフィルムの誕生はイノベーションの賜物です。このほかにも様々な場面で3Mのイノベーションが生活を快適にしています。

こうしたイノベーションは、3Mの企業文化である「お客様を中心に」「イノベーションを大胆に」「インクルージョンを原動力に」「アジャイルで成功する」「揺るぎない誠実さをもって」という5つの中にも明文化されています。

また、よく知られている3Mの不文律として「15%カルチャー」があります。85%の時間は会社が求める仕事をするために使いますが、残りの15%はビジネスに役立つと考えることであれば、自分に与えられたテーマとは別に業務時間を自由に使っていいというもの。この「15%カルチャー」は、社内規定などにも含まれない不文律ですから、わざわざ時間を測定したりはしていません。大事なのは社員の自主性、主体性を尊重することなのです。

3Mのカルチャーはイノベーションの土台であると同時に、働きがいにも深く関わっています。私たちがGPTWの調査に参加している理由の一つは、ブランディングのためです。GPTWの調査の上位にランクインすることによって、働きがいのある職場であることを外に向けて発信できます。

もう一つの理由は、フィードバックを得られることです。調査によってどこに課題があるのかがわかりますし、どのようなアプローチが有効なのかヒントをいただくことができます。往々にして、マネジメントが会社をよくするため「問題はこれに違いない」と思い込んで施策を出していくと、現場の考えにそぐわないということになりがちです。GPTWの調査を役立てることで、他社の事例を見た上で客観的に自社の状況を比較し、取り組みを検討できる点も有意義だと思います。

年20回を超える「ラウンドテーブル」で社員の生の声を聞く

interview_210407_02.pngGPTWの調査で当社が高く評価されたのは、オープンなコミュニケーションです。例えば、経営会議でディスカッションした内容のサマリーをまとめて全社員が読めるようにしていますし、さらに上の階層から下の階層へとしっかり説明しています。

3Mは製品が5万5000以上、事業部も約20あります。現在は各事業部の戦略性を強めるため、アメリカ本社と密に連携して進めています。するとどうしても事業部間の壁が厚くなり、裁量的になるため、誰かが横串を通さなくてはなりません。そのため「ラウンドテーブル」という取り組みを始めました。私が10名ほどのラウンドテーブルで、社員の話を聞くというものです。これを年20回以上開催しています。会社の方針を伝えるにしても、「アメリカの本社が言っているから」という理由では伝わりません。やはり日本のトップが、自分の言葉で話すことが大事だと思います。

このコロナ禍では社員の健康と安全を第一に考えてきました。昨年からリモートの仕組みを積極的に取り入れ、現在は7割から8割がリモートワークになっています。事業所や工場で働く社員もいますから、職場の感染予防も必須です。私たちはマスクも取り扱っていますので、マスクの付け方をはじめとして感染予防の教育をしたり、ソーシャルディスタンスを徹底したりしてきました。感染予防についてはグローバル全体で取り組んでおり、安全管理を目的とした膨大なチェックリストもあります。

デジタルシフトも一気に進みました。これまで相模原事業所内にあるカスタマーテクニカルセンター(CTC)にお客様をお呼びして我々の技術を直接お見せすることで接点を増やしていましたが、コロナ禍では訪問いただくことはできません。そこで「バーチャルCTCライブツアー」という現地まで足を運ぶことなくお客様の会議室から、あるいはご自宅から3Mの技術 ・ カルチャーを見学いただくことができるオンラインサービスをつくりました。ライブツアーなのでその場でご質問やご要望にお答えできる双方向コミュニケーションが可能です。もちろん、これはあくまで一例です。

自分自身がマイノリティになり、新たな課題が見えてきた

この1年は、本当の意味でのダイバーシティ&インクルージョンを考えた1年でもありました。私は2020年1月1日に社長に就任しましたが、その就任前にがんにかかっていることがわかり、実は今も抗がん剤を打つなど闘病を続けながら仕事をしています。闘病していることを承知の上で、3Mは社長として私を選んだのです。正直、闘病している自分に社長を任せるとは思っていませんでした。

私は体力的に24時間働くことはできません。「だから社長はできない」と自分で差別を作り受け入れてしまっていたんですね。でも、それは間違いであると今は断言できます。そもそも何時間も残業するという考えがおかしいのであって、残業をせずに成果を上げる仕組みをつくることが自分の仕事だからです。自分は病気をするまでマイノリティを差別していないと思っていましたが、マジョリティだったからこその思い込みがあることに気づかされました。

日本ではよく「女性が昇格したがらない」という声が聞かれます。闘病前の自分なら、言葉通り受け取っていたかもしれません。しかしながら本当は違うと思います。昇格後のやりがいをイメージすることなく、「自分には昇格は合わない」と諦めてしまっている人もたくさんいるはずです。そのバリアを壊すことができるのは、マジョリティの人たちです。昇格後の世界をマジョリティの人たちが教えてあげなきゃいけないと思います。

私が闘病中だから社長はできないと考えて壁をつくっていたとき、それを壊してくれたのは前の社長たちでした。たとえば、育児との両立のため働ける時間が限られているから昇格は無理だと思っているのだとしたら、働く時間と成果を出すことは別だということを伝えます。たとえ5時間しか働けなくても、その中で成果を出すことは素晴らしいことではないですか。

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みにはまだまだ課題があります。マイノリティの可能性を解き放つことはマジョリティだった自分の役目です。今後のGPTWの調査では、真のダイバーシティ&インクルージョンを追求し、評価されることで上位に選ばれるようになりたいと思います。

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※ 本取材をお受けいただいた昆 政彦様が2021年4月24日に逝去されました。生前のご貢献に深く感謝申し上げるとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

スリーエム ジャパン株式会社 代表取締役社長 昆 政彦 様 プロフィール

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早稲田大学商学部卒業シカゴ大学経営大学院修士課程修了(MBA)。GEキャピタルリーシング(株)執行役員 最高財務責任者(CFO)等を経て、2006年12月に住友スリーエム(現・スリーエム ジャパン)(株)執行役員 財務担当として入社。取締役、常務執行役員、財務・情報システム・総務・人事などを担当し、2013年10月に代表取締役 副社長執行役員などを経て、2020年1月より現職。
米国公認会計士(イリノイ州)、公益社団法人経済同友会幹事、早稲田大学大学院客員教授、グロービス経営大学院教員。

スリーエム ジャパン株式会社

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1960 年、3Mのアジア初の現地法人として創業。粘着テープや反射材、接着剤、研磨材などの輸入販売を行い日本の高度成長に貢献するとともに、1961 年には相模原事業所を設立し、現在の研究開発活動の拠点とした。1970 年にはスリーエム ジャパンプロダクツ(株)山形事業所(旧・山形スリーエム(株))を設立し、国内最大の製造拠点として3Mジャパングループはもとより、グローバルの「スーパーハブ」として海外の3M各社へも製品を提供。

本内容は2021年4月時点の情報です。

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