クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社

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行列を捨ててV字回復へ導いた組織改革の要は、
ミドルマネジャー強化と事業戦略の「自分ごと化」

クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社
代表取締役社長 若月 貴子 様

アメリカ生まれのプレミアムドーナツブランド、クリスピー・クリーム・ドーナツ。日本1号店の新宿サザンテラス店は1時間待ちも珍しくない行列をつくり、大きな話題となりました。その後は組織の構造改革を経て、30カ月連続で既存店売上高が前年比を上回る「V字回復」を実現しています。同社代表の若月 貴子様に、「V字回復」に繋がった組織改革と働きがいのある職場づくりについて伺いました。

<記事のポイント>
✔長く愛される企業を目指し、まず着手したのは「組織と人事」の変革
✔変革成功のカギは、ミドルマネージャー強化と事業戦略の「自分ごと化」
✔「既存店売上高」「お客様満足」「従業員満足」すべてが向上し、V字回復

「行列ができるドーナツ屋」は望ましい姿ではなかった

私が入社した2012年は、前年度の売上と利益がともに過去最高を記録しており、まさにバブルの頂点にあった時期です。あえてバブルと表現するのは、その当時は日本で長く愛され続けるブランドになるための基盤が全く整っていなかったから。「行列ができるドーナツ屋さん」と話題になっていましたが、「いつの間にか消えていくブランド」になるリスクを抱えていました。

一般的に、改革の方向性としては、「大胆なコストカットをして利益を伸ばす短期的なもの」と、「人と組織の可能性に投資し、従業員の価値観と組織の変容を促す長期的なもの」があると思います。日本で長く愛されるブランドを目指す私たちが選んだのは後者でした。

「人の可能性への投資」の大切さを学んだのは、前職の西友時代、親会社のウォルマートに研修生として派遣されたときのこと。ウォルマートは合理化を積極的に進めるドライな会社のイメージでしたが、実は人を大切にする会社だったのです。印象的だったのは入社半年の前職が会計士の社員との会話。私が「クレジットカードの手数料をあと数%下げられたら…」と言ったら、その社員は間髪入れずに「お客様に還元できるね」と言いました。ちなみに私は「利益が増える」と言おうと思っていたので、その返答に驚きました。わずか半年でここまで社員に価値観を浸透させるウォルマートの凄さを感じましたし、優れた戦略はそこで働く人の手によって実現させられるのだと改めて気づいたのです。

組織改革のKPIは「既存店売上高」「お客様満足」「従業員満足」

バブル期のクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンの大きな課題は、経営と現場の足並みが揃っていなかったことです。経営と現場をつなぐミドルマネジャーが力を発揮できていませんでした。大手ファーストフード店でマネジメント経験がある人材などが集まっていたものの、マネジメントは属人的でした。そのため、クリスピー・クリーム・ドーナツとしてのありたい姿をしっかりと共有し、現場に伝えられるミドルマネジャーを選抜し、育成を強化することにしたのです。

ミドルマネジャーは全従業員対象の挙手制で募り、外部のアセスメントを使用することで、フェアな手続きを通じて20代後半から30代前半の若手を中心に登用。マネジメント経験が少ない者が多かったため、事業の方向性や価値観を共有するコミュニケーションや、マネジメント研修。未熟なミドルマネジャーの日々のケアに力を入れました。

また、組織改革のKPIを「既存店売上高」「お客様満足」「従業員満足」と設定し、ミドルマネジャーの育成と並行して、従業員満足向上の取り組みを実施しました。従業員が意欲的に働くためには、当社のビジネスやビジョンを「自分ごと化」することが欠かせません。主体性は働きがいの源泉の一つでもあります。

そのため、半年に1回の社員集会時にも「自分ごと化」を促すためのワークショップを実施しました。そこで会社が目指す姿を経営が従業員に語り、それぞれが当事者としてどのように実現を目指すのか話し合いました。しっかりと言語化して共有し、「自分ごと化」を促したのです。

例えば、会社として新しいプロモーションに取り組むことが決まったとき、以前は「どうせやってもうまくいかない」と“やらされ感”があったのも事実。しかしながら、会社のビジネスを自分ごと化できる従業員が増えると、「どうやったらうまくできるだろうか」と前向きに捉え、経営と現場が連携してプロモーションを展開できるようになりました。

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事業を「自分ごと化」する従業員たちが、長く愛されるブランドをつくる

interview_210524_03.jpgビジネス面では選択と集中を進めました。2015年には三大都市圏に店舗を集中させています。ちょうどそのころ、コンビニエンスストアが店頭でドーナツを販売するようになり、メディアが「コンビニに押され、ドーナツ店が危機に」と報道したこともあり、ネガティブな撤退であると誤解されました。実際はクリスピー・クリーム・ドーナツを日本で長く愛されるブランドにするための判断だったのです。「お店の行列がなくなったね」と言われたこともありましたが、顧客満足度と従業員満足度を高めるために、行列しない店舗づくりに取り組んできた結果でした。

改革の成果が現れはじめたのが2017年の夏頃から。それまで下がり続けていた対前年度比の既存店売上高がプラスに転じ、その後のV字回復と言われる段階に入り、今に至ります。

当社がGPTWの調査を実施したのは、2014年、2017年、2021年の3回。2014年のスコアはあまりいいものではありませんでした。改革の最中ということもあり、年々スコアが下がっていたのです。その後、改革の成果が現れはじめた2017年、そして今回の2021年とスコアは着実に上昇しています。直近の結果を見て1番嬉しかったのは「失敗を許容する」設問が大きく改善したこと。特に今の若手は失敗を恐れる傾向があるので、日頃から「失敗してもいい」と繰り返し伝えてきたことの手ごたえを感じました。

interview_210524_04.jpg2020年は当社もコロナウィルスの影響を受けました。緊急事態宣言期間中、わざわざご来店くださったお客様にサンキューカードをお渡しする取り組みを始めました。宣言が解除された後も、現場の従業員が自主的にサンキューカードの取り組みを続けてくれています。特に印象的だったのは神戸店での出来事。市内に2店舗あった店舗を統合することになったとき、現場の従業員が「こちらの店舗は閉店しますが、もう1店舗のご愛顧をよろしくお願いします」とお客さまにお伝えした結果、存続店は売上を大きく伸ばしました。このように主体的に動いてくれる従業員に感謝していますし、経営の意思が伝わっていることを嬉しく思いました。

自分のお店が好きなスタッフが多く、「現場力」が高いことが弊社の財産です。これからも失敗を恐れずチャレンジに前向きな風土を醸成し、レジリエンスの高い組織になっていきたいと思っています。

クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 若月 貴子 様 プロフィール

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筑波大学卒業後、株式会社西友入社。経営企画や海外法人担当を歴任した後、株式会社経営共創基盤に参画。主に小売・衣料・食品等BtoC事業の支援に携わる。2012年クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社に管理本部長として入社後、管理本部長として経営企画や財務・総務・人事など、バックオフィス全般を担当。2014年10月に副社長に就任しマーケティング部門も統括。 2017年4月代表取締役社長就任。

クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社

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1937年に米国ノースカロライナ州ウィンストン=セーラムで創業したクリスピー・クリーム・ドーナツは、代表的なオリジナル・グレーズド®を中心に、高品質のドーナツとコーヒーを提供するリーディングブランド。2021年1月時点30カ国、約1500店舗、日本国内は49店舗を展開。日本で長く愛されるブランドを目指している。

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