本気の理念経営で「キャリアオーナーシップ人材」を増やす
従業員の旺盛な成長マインドがイノベーションの源泉となる
パーソルキャリア株式会社
代表取締役社長 峯尾 太郎 様
更新日 2024.10.312021.06.23
本気の理念経営で「キャリアオーナーシップ人材」を増やす
従業員の旺盛な成長マインドがイノベーションの源泉となる
パーソルキャリア株式会社
代表取締役社長 峯尾 太郎 様
転職サービス 「doda 」などで知られる人材 サービス大手企業パーソルキャリア株式会社。2021年版GPTWランキング大規模部門の16位に選ばれています。9年連続のベストカンパニー選出であり、近年はイノベーションに関連するスコアが高いという特徴があります。そこで同社代表の峯尾 太郎様に、イノベーションを生み出す組織づくりのためにどのような取り組みをされているのか伺いました。
※本記事は2021年5月28日に開催したGPTW主催セミナー『イノベーションを創出するカルチャーは、「働きがい」の高い会社にある』の講演抄録です。
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私は1994年にパーソルキャリアの前身にあたるインテリジェンスに入社しました。社員数が16人の会社にも関わらず、新卒社員を10名採用したうちの1人です。2016年にパーソルホールディングスとの経営統合のタイミングで代表になりました。人材紹介サービスを軸に転職サービス「doda」などを展開しています。
我々のミッションは「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」です。これは、キャリアオーナシップを持つ人を増やしたいということを意味しています。その実現のためには「“はたらく課題”と“ビジネス”をつなげてとらえ、自分ゴトとしてその解決プロセスを楽しむこと」が大切で、「外向き」「自分ゴト化」「成長マインド」の3つを、私たちが大事にしたいバリューとして定めました。ミッションの実現には、全員が心からそれを信じて追求することが必要であり、その突破口がバリューです。そして「働きがい」はミッション・バリュー実現の鍵であり、経営テーマの一つと捉えています。
ミッション・バリューを社内に掲げ、それを社員とともになんとなく唱えたりしている企業は多いことと思います。我々も同じことをしていた時期があり「ミッション・バリュー風味の経営」だったように思います。ミッションドリブン経営をやりきっていない反省を込めて、そのように呼んでいます。現在はミッション・バリューをいかに浸透させるかということを、イベントや私自身の振る舞いなども含めて考えています。それ以外にも文化醸成、環境整備に取り組む組織開発・人材開発のチームがあり、私もそのチームの一員です。つまり経営陣が本腰を入れて取り組んでいます。
我々の経営指標には当然、売上や利益がありますが、加えて「COI(ミッション指標)」を設けています。COIは「キャリアオーナーシップインデックス」の略です。これを全役員の業績評価に加えました。転職採用領域のサービスのアクティブユーザーを拡大し、キャリアオーナーシップを持つ人の含有率を高めることで、COIを増大します。2030年度までの約10年間の目標計画を策定し、財務指標のみならず非財務指標として来年から外部に公開し、3年ごとに洗い替えながら取り組む数値にする予定です。
評価制度も全て刷新しました。これまでは目標達成度を賞与に、基礎能力を基本給に反映していました。現在は目標達成度の結果とプロセスは賞与で評価し、バリューの体現度を基本給に反映しています。「目指す姿を見据えて意識して学ぶ」「マネジメントスタイルを確立する」「ビジネスを創出する」など、若手から事業部長クラスまで、等級ごとにバリューの行動基準を策定しました。各事業部で正しく評価できるようにトレーニングもしています。このようにミッションドリブン経営として、一貫した取り組みを行っています。
文化醸成も強く意識して取り組んでいます。年1回の社員総会では、業績の共有や方針発表、表彰など一般的な内容を行っていました。これを「Mission Valueを考える社員総会」に変更。1年間のミッション・バリューに沿った取り組みの具体的な成果を、全社員で共有することで、1日かけてミッションやバリューについて感じて考えるイベントにしました。「対話セッション」という取り組みも始めました。当社にはいわゆる課長単位のチームが約600あります。各チームのメンバーは平均して6、7名。計3,500名以上の社員が四半期ごとに、バリュー体現度についてサーベイを行い、自分たちのチームがほかと比べてどこがいいのか、伸ばしたいのはどこなのかを話し合っています。
人材開発では、「自分ゴト化させるリーダーシップ」をどう高めるかを主眼に置いています。そのため、社内の全職種それぞれに必要なスキルを「見える化」しました。エグゼクティブコーチングをしていた方を2名採用し、ゼネラルマネージャー以上に定期的にコーチングの研修をする体制も整えています。さらに、自分が望むキャリアの実現に向けてどこを極めていくか考えたり、また社内の仕事を転職サイトのようにさまざまな切り口で検索したりできるキャリア自律支援システムの仕組みもつくりました。
我々としてはイノベーティブな組織を目指すというよりは、成長マインドの体現度を高めていく結果として、イノベーティブな組織になっていくのではないかと考えています。したがって、イノベーションを阻害するプロセスや文化があるのであれば、それを排除するという発想です。また定期的に組織サーベイを実施し、「変化を楽しんでいる」「失敗を恐れない」「フィードバックを取り入れる」など、成長マインドに影響を与える指標について測定しています。アンケートの結果には「質問することが怖くなくなった」「自分もやろうという勇気が湧いた」「失敗からの気づきも価値として許容される空気感がある」など前向きな回答が集まるようになってきました。
日々の仕事は「ユーザー体験の改善」「サービス品質の均一化」「生産性の向上」など地道なものですが、一人ひとりの主体的な創意工夫や挑戦が、既存サービスのイノベーションにつながっています。その例をいくつかご紹介します。ジョブごとの報酬水準データを提供する「Salaries」は転職メディアに蓄積された膨大なデータを再活用しています。また、ミッションドリブン経営の中から、「はたらく未来図構想」というサービスも生まれました。これは一人ひとりの理想のはたらく未来の実現を支援するとともに、我々のミッションを体現するサービスです。「はたらく」「学ぶ」そしてその「環境」を結びつけることを、企業と一緒に取り組んでいます。法人向けには「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」を発足。これは我々のミッションを実現するために、個人と企業の関係性はいかにあるべきかを参画企業と探求するものです。
上記にご紹介した通り、さまざまな取り組みが動き出しているものの、まだまだ手探り状態であることも事実です。地道な取り組みを通じて、価値あるイノベーションを生み出す集団になれればと願っています。