社員のアイディアが次々と事業の柱に成長
イノベーションを生むための“挑戦”を歓迎する文化づくり
株式会社キュービック
代表取締役社長 世一 英仁 様
更新日 2024.10.312021.06.25
社員のアイディアが次々と事業の柱に成長
イノベーションを生むための“挑戦”を歓迎する文化づくり
株式会社キュービック
代表取締役社長 世一 英仁 様
「インサイトに挑み、ヒトにたしかな前進を。」をミッションに掲げ、デジタルメディア事業を展開する株式会社キュービック。2018年から4年連続でGreat Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社ランキング」ベストカンパニーに選出されているイノベーティブな会社です。同社代表の世一英仁様に『イノベーションを生むための“挑戦”を歓迎する文化づくり』というテーマでお話いただきました。
※本記事は2021年5月28日に開催したGPTW主催セミナー『イノベーションを創出するカルチャーは、「働きがい」の高い会社にある』の講演抄録です。
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
私は大学を卒業してから会社に就職することなく創業しました。サラリーマンの経験が一切ないまま、試行錯誤を繰り返しながら会社づくりに励んでいます。これまで大変なこともありましたが、現在メンバーは約370名、グループ全体で400後半の規模まで成長しました。平均年齢は30代前半で、学生インターンの割合が約4割という若い組織です。
デジタルマーケティングを生業としており、ジャンルに特化した専門的な情報を紹介するバーティカルメディア(垂直型のメディア)の構築が得意です。例えば、ウォーターサーバーにまつわる情報を丁寧に解説する『ミズコム』、またはFXの口座解説を検討されている方に向けて情報を発信する『エフプロ』など。その他、幅広いジャンルを扱うWeb上の雑誌のような総合比較メディア『your SELECT.』なども展開しています。SNSアニメの『モモウメ』は3分程度のショートムービーで、YouTubeチャンネル登録者数は48.4万人(2021年5月時点)と人気を集めています。
当社がイノベーティブな組織という評価をいただいているのは、ボトムアップの取り組みが始まりやすい文化だからだと思います。先ほど述べた『your SELECT.』がその典型です。
これは我々の得意なバーティカルなメディアではなく、ホリゾンタル(水平型)なメディアです。リリースしてからわずか数ヶ月で、驚異的な売上の伸びを見せ、事業収益の柱になりました。新卒2年目の若手社員が僕にSlackで「こういうことやりたいんですけど、検討してもいいですか」と連絡してきたので「いいんじゃない?」と1往復だけのラフなやりとりから始まったものです。我々の業界には、Web上に転がっている情報をなんとなく繋ぎ合わせてSEOの要素を盛り込み、記事を量産してトラフィックを集めているメディアもあります。それに対して我々は識者に深く取材をしてWebメディアをつくることにしました。取材後は必ずご本人に書いたものをチェックしていただいて、意図通りになっていなければ修正するというプロセスを経て、信頼性のあるコンテンツを提供しています。
先ほどご紹介したSNSアニメ『モモウメ』は「OLあるある」のネタが好評で、コメント欄にも友好的な内容が多く、共感を集めています。再生回数も一番人気の動画は1000万回を突破。自社プロダクトを持つことが我々の悲願だったこともあり、この反響には社内も沸き立ちました。もともと「バーティカルメディアを成長させるために何か面白い動画をつくってよ」とプランナーに相談したのがきっかけで、「こんなのどうでしょう」と出てきたのが「モモウメ」でした。こちらも大きな事業に育っています。
社員発のコンテンツがブレイクした要因は三つに分けられると考えています。一つ目は「オープンな文化」です。会社の経営情報をなるべく精緻に共有しています。例えば経営会議は基本的に全社員、場合によっては内定者、一部のインターンも含めてZoomで視聴できるようにしています。また、1週間/1ヶ月/3ヶ月/半年ごとに全社ミーティングを実施し、業績報告とその要因、今後の戦略、その他重要トピックスなどをメンバー全員で共有。全社の現状や部署ごとの活動を理解することで、全社一丸となって課題解決に取り組んでいけるようにしています。
二つ目は「コラボレーションが生まれやすい土壌」です。我々は、斜めの関係づくりを重視しています。関係づくりの例として雇用形態を問わずすべてのメンバーが配属チームとは別のコミュニティに所属します。キュービックではこれを「FAM(社内家族)」と呼んでおり、家長と長男・長女などが設定され、さまざまな活動を行なっています。歓迎会や誕生会、仕事終わりのスポーツ、なかには「聖地めぐり」というテーマで、昔のオフィスの見学に行ったりしているFAMも。エンジニアと営業、ディレクターと経理など職種が異なる斜めの関係が、新しいコラボレーションを促進しているのではないかと思います。その他、3ヶ月間の社員向けオンボーディングでもさまざまな施策を行っていますね。「経営陣との1on1」や本人が交流したいメンバーとランチができる「リクエストランチ」など、所属部署以外にも関係性を広げていくための施策が非常に多いです。
そして、三つ目は「挑戦を奨励する文化」。我々のミッションは「インサイトに挑み、ヒトにたしかな前進を。」です。ミッションは北極星のように航路を照らしてくれるもの。ミッションの実現に向けて、日々何を意識して行動すべきかを明確にしているのがクレド。「Dive into Insights - 本質を追求しよう -」「Brave Heart - ワイルドにいこう -」「Team CUEBiC - チームでやろう -」「Act with Pride - プロフェッショナルであろう -」という四つで構成されていますその中の「Brave Heart - ワイルドにいこう -」は、積極的にリスクをとって挑戦することや批判を恐れず失敗を歓迎することを促すものです。このクレドが組織に定着することで、挑戦を奨励する文化が生まれ、イノベーションへとつながっています。
これまではデジタルマーケティングのビジネスを主軸にしたが、これからは複数のビジネスをつくり、迅速な変化対応と意思決定ができる組織に進化する必要性を感じています。新しい戦い方やケイパビリティ開発の取り組みが進んでおり、ここにも「挑戦」という言葉を使っています。
抜擢人事にも積極的です。先ほど紹介した『your SELECT.』のアイディアを出した新卒2年目の彼は、年商数億円に発展したこの事業の責任者に抜擢されました。年商16億円、40名の事業のトップをまかせている入社4年目の社員もいます。マネジメントは勉強すれば身につくかもしれませんが、リーダーシップはメンタリティの部分が大きく、成長を促すには挑戦的な機会提供でしか醸成されないからです。
このほか、役職につく前に一度その景色を見せる「キャリアフライト制度」というものや、高い目標を設定し、達成まで支援し、そのプロセスも評価する「キャリアディベロップメントサイクル」などの取り組みもあります。これらの仕組みを回して全員が常にストレッチしている状態をつくることが、高い成長率を生み出すと考えています。
最後になりますが、個人的にはイノベーションを生み出すより、イノベーションを阻害しないことが大事だと思っています。私には生まれたばかりの子どもがいますが、好奇心と想像力を働かせていろんな遊びをしているんですね。これは人間が本来持っている力なのかなと。大人になってからでも、その力を呼び起こすことはできるはず。挑戦する人に「いいね、それ。やってみよう!」と声をかけられる文化を大切に育てていきたいですね。