遠心力と求心力の両立で「100人の壁」を打破
人の可能性を最大限引き出し、進化をつづけるスローガン
スローガン株式会社
代表取締役社長 伊藤 豊 様
更新日 2024.10.312021.10.13
遠心力と求心力の両立で「100人の壁」を打破
人の可能性を最大限引き出し、進化をつづけるスローガン
スローガン株式会社
代表取締役社長 伊藤 豊 様
「人の可能性を引き出し 才能を最適に配置することで 新産業を創出し続ける。」をミッションに掲げ、新産業に必要な人材向けのキャリア支援などを行うスローガン株式会社。Great Place to Work® Institute Japanが実施した2021年版日本における「働きがいのある会社」ランキング中規模部門(従業員100-999人)にて、2年連続でベストカンパニーに選出されるとともに、2021年版 アジア地域における「働きがいのある会社」ランキングにも選出されています。同社の代表取締役社長 伊藤 豊様に「働きがいのある会社へと進化した過程」や「エンパワーメントの仕組み」について語っていただきました。
<記事のポイント>
✔「働きがい」の鍵は、設立から15年変わらない若手への大胆な権限移譲
✔ ビジョンやカルチャーの言語化で「求心力」を高め、100名の壁を突破
✔週1回の1on1と3か月毎のキャリアアンケートで図る適切な人材配置
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
大学卒業後、米国IT企業の日本支社で働いていた私は、本社から日本市場がどう見られているのかに気づいていました。「人口減少と少子高齢化により日本社会は地盤沈下していく」と見られているのは明らかでしたし、私自身もそう感じていたのです。その課題に対する打ち手は何か。「マクロトレンドで日本全体が衰退していく中では、成熟した大手企業よりもアップサイドのあるベンチャーなど、成長過程にある企業に期待する社会にするべきではないか」という考えに至りました。
成熟した大手企業には優秀な人材が集まるけれども、そこで力を存分に発揮できるとは限りません。一方でベンチャーのように成長過程にある組織は、若い人たちの能力を開花させる機会がある。私自身、約50名の関連会社への出向を経て、飛躍することができたという原体験があります。ただし、成長過程にある会社は、無名であるがゆえに人が集まらないという人材配置の構造的な問題があるものです。「新しい事業、新しい産業が生まれる社会をつくるには、人の可能性を引き出す最適な配置を実現する必要がある」と思い、自ら起業しました。
成功確度が見えないまま起業したため、私の会社は泥舟のように見えたのでしょう。最初は仲間が集まりませんでした。そのため、母校の先輩で当時ベンチャー向けのコンサルティングやインキュベーターをしていた藤沢烈氏(現・一般社団法人RCF代表理事)の助言を受けながら学生インターンを集めて、どんどん仕事を任せて成長機会を与える組織をつくったのです。この若い人に仕事を任せる社風は設立から15年以上経った今も変わっていません。
当社は創業3期目から新卒を採用し毎年新卒を採用し続けています。その上、毎年50名以上、多いときは100名ほどインターンを受け入れています。インターンといっても、やることはさまざまで多岐に渡ります。今COOになっている仁平は当社のインターン時代、大学で見つけた学生を何人かスカウトしてきたことがあります。彼に人事権を与えたわけではないのですが、チームの予算を達成するにはデザイナーが必要だと考えて採用してきたわけです。ある意味、彼は社会人より優秀だと思いました。
とにかく「普通は若手にそこまで任せないよね」というところまで権限を与えるのがスローガン流。1on1ミーティングの仕組みをつくるHRクラウドサービス「TeamUp」など、若手の発案から生まれた事業もあります。リスクレビュー制度やIT統制の仕組みをつくったりコンプライアンスやリスク評価は事業責任者や本社でもカバーしながら、大胆に権限と機会を与えることが、若手の能力を引き出し、事業を拡大するために不可欠なのです。
社員が30名くらいまでは、よくまとまっている組織だったと思います。しかしながら、そこから組織を大きくする過程で少し苦労しました。「この会社はいい人が多いし、ミッションもいいと思います」と言いつつ、辞めていく人が少なからずいたのです。ミッション実現に向けた戦略を伝えるコミュニケーションや、ミッションの実現に貢献する手応えなどが不足していたのだと思います。そのため「ミッション+エンパワーメント」を強く意識し、権限委譲をさらに進めて事業責任者に任せる組織を模索しました。全体で80名ぐらいの規模になるころには、セクショナリズムではありませんが、社内に小さい会社がいくつもあるような状態になったのです。
社員が100名を超えたあたりからは、権限委譲による「遠心力」と、スローガンのコアの部分で繋がる「求心力」のバランスを考えるようになりました。ビジョンやカルチャーの言語化に力を入れたのは、求心力を高めることが狙いです。新卒のオンボーディングのタイミングで、ビジョンやカルチャーを共有するためのグループ・セッションなどもしています。しつこく、しつこくやり続けることが大事だと考え、まさに今も取り組んでいるところです。
1on1は週1回設け、対話の機会も大切にしています。初期のセッションでは自己開示を大切にしており「自分の価値観がどう形成されたのか」「自分の苦手な部分、弱い部分はどこか」「直したいと考えている悪い癖」などについても話します。自己開示の共有レベルが上がると率直にフィードバックし合えるようになります。私自身、ミーティングで冷たい言い方をしてしまい、出席メンバーから個別に「あの言い方は正直、イラッとしました。変えた方が良いですよ」などとフィードバックを受けることも。耳が痛いこともありますが、互いに自己開示し、フィードバックし合う信頼関係は組織の強みです。
3カ月に一度異動希望を聞く「キャリアアンケート」も、組織の安定に寄与しています。以前は「この会社ではやりたい仕事ができないので転職します」と突然辞めてしまうサプライズ転職もありましたが、今はほぼありません。社内で率直にキャリアについて対話し、本人の希望をかなえるための努力を本人とマネジメントが双方協力することで、キャリアデザインを叶えることができるケースが多いからです。また「リーダーが優秀なチームメンバーを手放すのが嫌で異動させない」などの問題が起こらないように、日頃から1on1でメンバーの要望をヒアリングしていますし、それをTeamUPでログとして残して人事や幹部と共有していることで、業務のアサインや異動の希望を受け入れるための調整ができるのです。
働き方改革とD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)にも取り組んできました。恥ずかしながら、過去に社員から「会社が好きだけれど労働時間が長いから長く続けられません」と言われたこともあります。これではいけないと思い、4年ほど前から私自身も働き方を変えて率先して早く帰ることを決めました。現在は残業もかなり減りました。その結果、生産性が大幅に向上しています。
D&Iのさらなる推進のきっかけは、コロナ禍でフルリモートに切り替えたことです。私自身、自宅で仕事をしており、妻と娘2人と過ごす時間も増えています。そのため自然と娘の将来や女性が感じているマイノリティの立場について考えるようになりました。現在は、私が率先してダイバーシティをテーマに社内発信をしたり、研修をしたりしています。性別や年齢、人種・国籍、LGBTQ+や、さまざまな障害などを理由に、機会が阻害されることは、人の可能性を最大化することをミッションに掲げるスローガンにおいてあってはならないことです。これからも当社はミッションの実現に向かって、人の可能性を引き出す環境づくりを着実に実践しノウハウを蓄積していきながら、事業を通じて社会的価値を提供し続けていきます。