全社員一丸で会社の未来をつくる「MI制度」で
チームワークとエンゲージメントを高める
ソースネクスト株式会社
代表取締役社長 兼COO 小嶋 智彰 様
更新日 2024.10.312021.11.24
全社員一丸で会社の未来をつくる「MI制度」で
チームワークとエンゲージメントを高める
ソースネクスト株式会社
代表取締役社長 兼COO 小嶋 智彰 様
AI通訳機「ポケトーク」やWeb会議用カメラ「Meeting Owl(ミーティングオウル)」、そのほかソフトウェアやスマホアプリを展開しているソースネクスト株式会社。2021年版GPTWランキング中規模部門(100人から999人)においてベストカンパニーに選出されています。同社代表の小嶋 智彰様に、全社的な連携を強め、イノベーションを生み出す取り組みをお話しいただきました。
※本記事は2021年10月27日に開催した【GPTW事例セミナーVol.5】タテ・ヨコ・ナナメの連携を強化し働きがいを高める!ニューノーマル時代の”強いチーム”をつくるには~「働きがいのある会社」ランキング上位企業登壇~において、『スピードとエンゲージメントを高める独自のMI制度とは』というテーマでご講演いただいた内容の抄録です。
<記事のポイント>
✔働きがいの源泉は2011年に日報から始まった「MI制度」
✔MI制度成功の鍵は、トップが全アイディアに目を通し、24時間以内に返信
✔MI制度により経営陣と現場のギャップが埋まり、エンゲージメントも向上
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
当社は1996年に創立し、今年25周年を迎えました。代表的な製品は「POCKETALK (ポケトーク)」という61言語を音声・テキストに翻訳し、21言語をテキストのみに翻訳ができるAI通訳機です。このほか900を超えるパソコンソフトやスマートフォンアプリを展開しています。社員は約150名です。
ミッションは「製品を通じて喜びと感動を世界中の人々に広げる」。ビジョンは「世界一エキサイティングな企業になる」です。普段から「私たちにとってのエキサイティングとはなにか」と社員とも議論し、認識をすり合わせています。私たちが考える「エキサイティング」は「正しい、喜ばれる、面白い」という3つの条件を満たすものです。面白い製品ができたとしても、「本当に喜ばれるのだろうか」「社会から見て正しいか」などと振り返ります。単に儲かるかどうかで判断することはありません。全社員で大切にしているバリューは、「お客様の声を聞く」「新しい市場に挑戦する」そして「挑戦を楽しむ」です。採用時の判断軸の一つになっており、入社面接の際にも共感してもらえるかどうか確認しています。
今回ご紹介する「MI制度」は、創業社長(現会長)である松田が、リーマンショック時に会社が危機的な状況に陥ったなかで、利益を生み出すにはどうしたらよいのか学ぼうと読んだ、ピーター・ドラッカーの名著『マネジメント』がヒントになっています。書籍の中に「企業の目的は顧客の創造である」「企業には2つの基本的な機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである」という言葉があります。つまりMI制度はMarketingとInnovationの頭文字からつけた名前です。当社では社員全員の業務情報を共有するため、メールで日報を送付していました。その日報の中に「ぜひマーケティングやイノベーションに関するアイディアを書いてほしい」と松田が社員にお願いしたことがMI制度の始まりでした。2011年のことです。
MI制度は強制でありませんが、全社員に向けてどんなアイディアや疑問でもいいので書いてくださいと伝えています。アイディアが書かれた日報には、松田が必ず24時間以内に返信しました。何か発信すれば社長が必ず目を通して返信してくれること、また発信したアイディアが翌日の会議で議論され、採用されたり、製品化したりすることが、社員のアイディア出しの原動力になったのだと思います。意外なことに、一番アイディアを出してくれたのは管理部門でした。製品の企画やマーケティングに直接携わっていないことが幸いし、ユーザー目線の「こうなるとよいと思います」「ここが使いやすくなると便利だと思います」という素朴なアイディアがたくさん届くようになったのです。MI制度から生まれた製品もあります。例えば、「超ブルーライト削減」。ブルーライトをカットするメガネが人気ですが、そもそもブルーライトを発していなければ、メガネをかける必要がありません。そこでモニター側のブルーライトを削減する製品をつくりました。「超節電」も、スマートフォンのバッテリー容量が足りないという声から生まれたアプリです。スマートフォンの普及期や、ポケモンGOが流行したときに好評いただきました。
当社はパソコンソフトの開発や販売から始まった会社ですが、スマートフォンが普及し始めてからはスマホ用アプリの提供を開始し、2017年からはIoT製品に取り組むという具合に、お客様のニーズや時代に合わせて、さまざまな「製品」を提供してきました。コロナ禍の中でも、お客様のニーズは大きく変わりました。コロナ禍直前の2019年は年間売上の5割以上がポケトークでしたが、渡航が制限され、オリンピックの開催が危ぶまれる状態でインバウンド・アウトバウンドのニーズが大幅に減少していきました。一方で、コロナ禍の中で日本でもテレワークやウェブ会議が急速に普及し始め、会議用のツールのニーズが高まりました。そこで、アメリカの企業が開発した会議室用カメラ「Meeting Owl(ミーティングオウル)」の日本での販売を開始しました。この製品を使ってウェブ会議をすると、360度カメラにより会議室全体の様子がわかります。また、まるで専属のカメラマンがいるかのように、発言した人の顔がフォーカスされ、マスクをしていても誰が発言しているのかがわかり、臨場感のある会議ができます。発売から10ヶ月で累計出荷台数15,000台を超える製品になりました。
2021年からは創業社長の松田から私が経営を引き継ぎました。私の代からはMIの提出にSlackを使うことにしました。日報の提出は1日1回に限られますが、Slackであれば、1日に何回も投稿ができますので「アイディアを思いついたらすぐに投稿してください」と社員に伝えています。これにより、やりとりもよりスピーディーになり、スレッドに「○○さんどうですか?」と担当の部門長や社員をメンションすることで、そこから議論が始まることもあります。最近では私が返信をする間もなく、担当の社員がどんどん返信して、議論が膨らんでいく様子も見られます。
改めて振り返ると、MI制度の効果は絶大です。第一に「顧客視点での製品やマーケティングのアイディアが上がってくる」ことが大きいと思います。「アイディア発信を通じて、社員がビジネスの背景を理解すること」も重要です。経営陣と現場とのギャップを埋めるコミュニケーションや、部署ごとに異なる業務について理解を深める機会を生み出しています。さらに「上下の意見のやりとりがスムーズ」になりました。社長が直接アイディアを受け取って返信をしているので、すべてのアイディアがもれなく社長に届きます。全社で取り組むことにより「落ちそうなボールを拾う文化」も醸成されています。ただし、MI制度は大前提としてトップのコミットが必須です。トップが必ず全てのアイディアに目を通して、24時間以内に返信をする。ボールが拾われていないと感じたらさらにフォローをする。これを常に実行する必要があります。
私たちはMI制度を始めとする取り組みを通じて、世の中の動きを敏感に捉えて、変化を楽しみながら、「世界一エキサイティングな企業になる」というビジョンを実現させるつもりです。同じ目的地を目指す仲間とともに、これからも旅を続けていきます。