調査開始から5年で「働きがい」のスコアが約2倍に
目指すはグループ2万人超が主体的に働く自律型組織
TIS株式会社
代表取締役社長 岡本 安史 様
人事本部 人材戦略部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室長
細谷 悦子 様
更新日 2024.10.312022.02.22
調査開始から5年で「働きがい」のスコアが約2倍に
目指すはグループ2万人超が主体的に働く自律型組織
TIS株式会社
代表取締役社長 岡本 安史 様
人事本部 人材戦略部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室長
細谷 悦子 様
日本のITリーディングカンパニーとして、キャッシュレス決済や電力のようなインフラから、産業・公共を支えるサービスまで、社会基盤をITで支えているTIS株式会社。「働きがいのある会社調査」(Great Place to Work® Institute Japan)の調査スコアも年々向上し、確実に組織に変革が起こっています。そんな同社が「働きがい向上」を経営目標として取り組む理由や、ここ5年間のスコア向上につながった取り組みについて、代表取締役社長の岡本様と、人事本部 人材戦略部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室長 細谷様に伺いました。
<記事のポイント>
✔「働きがい」を経営指標へ。まず手を付けたのは「働きやすさ」
✔大きな転機となったトップからの「理念浸透」と人事の「マニフェスト実行」
✔TIS株式会社の成功事例を今後はグループ各社へ
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
岡本様 当社にとって人は財産です。システムを構築して運用していくのはほかならぬ人ですから、「全ての基盤が人である」という前提に立っています。だからこそ、月曜日の朝「会社に行きたくない」とか、金曜日の夜「明日から会社に行かなくてすむ」と思われるような会社であってはなりません。それでは当然、生産性も上がらないし、良いものもつくれないでしょう。社会は厳しいところですが、仲間と一緒に課題を乗り越え、仕事を通じて社会に価値を提供し、「働きがい」を感じてほしいと願っています。社員が働きがいを感じるのは、能動的に仕事をしている状態が大前提だと思います。調査を始めた当初、とある組織 の「働きがいのある会社調査」のスコアが非常に高かったのですが、その理由は「自分たちでサービスを考え、創り出していたから」でした。どちらかというと受動的になりがちなSIer業務の中で、お客様とパートナーシップを組んで、共に学び、サービスをつくるという一連の活動を、能動的にしているから、「働きがい」を感じていたのだと思います。その時、「働きがい」を高めるためには、自分の挑戦したいWILLに向かって能動的に仕事をすることが、最も大事だということに改めて気づかされました。
細谷様 社員の働きがいは、何かのきっかけで一気に上がるということはありません。2016年に働きがいのある会社調査を開始し、少しずつ地道な改善を重ねた結果、現在は「働きがいのある会社である」と感じる社員のスコアが、開始時の2倍近くになりました。人事部として、取り組みの当初は、まず衛生要因(働きやすさ)の改善に注力しました。各種人事制度の充実、育児介護の両立支援、社員教育への投資など、全社員にメリットがある「働きがい」の向上に努めてきました。衛生要因が満たされた状態で、さらにしっかりと動機づけができれば、より社員に響くと考えていたからです。働き方の選択肢が増え、社内環境や制度整備が目に見えて進んだことで、会社が変わってきたことを社員も徐々に実感してくれたと思っています。
岡本様 社員への発信頻度を高めたことも、働きがいの向上につながっていると思います。私からメッセージを出すタイミングは当初は年度の初めだけでしたが、3カ月に1回へと変更しました。 メッセージの核にあるのは「OUR PHILOSOPHY」という経営理念です。元々25年程前に作った理念でしたが、2018年に再度作り直しを行いました。繰り返し「OUR PHILOSOPHY」を考える機会をつくり、社員と共に浸透させていくことが不可欠だと思います。 私が一人で機関車のように走り回ってもできることには限界があります。それぞれが自立してビジネスに邁進してもらうことが重要です。社長にできることは、ビジネスを成功させるためにみんなのベクトルを合わせることだと考えています。
細谷様 衛生要因がある程度満たされ、「OUR PHILOSOPHY」の浸透により動機付けを行うのと同じ時期に、人事本部からも「人事本部マニフェスト」を出しています。これは全社で取り組む施策について、「なぜ取り組むのか」「それがどう役立つのか」を公表し、活動計画と実績 を公開するというものです。働きがいを重視することを発信して、ビジョンに沿った人材戦略をとっていくことが、「人事本部マニフェスト」の基本的な考え方です。エンゲージメント向上を人材戦略の重要なファクターとしてとらえ、スコアをもとに結果を分析。期中にも中間サーベイを実施して経営陣と確認・合意しながらPDCAをまわしています。150以上の部室がありますが、「働きがいのある会社調査」を含め、各種サーベイの結果を、かなり細かいところまで読みこんでいます。改善点は組織によって異なることが多く、「ここが悪いからこう直せば、全社的によくなる」というものではありません。また変革を自走して行う組織もあれば、そうではない組織もあるので、人事が直接行う「組織開発支援」という取り組みを始めています。人事が介入し、どこがレバレッジポイントになるのか念入りに探し、現場でのヒアリングを重ねながら、組織長と一緒に改善に向けた施策を推進しています。
岡本様 理念浸透においては「ディスカッションキャラバン」という取り組みもしています。私や部門長、グループ会社の社長や執行役員など十数名が集まり、これまで17回ほどディスカッションしました。グループ内には開発保守、コンサルティングなど様々な職種がありますが、それぞれが能動的に動けることが理想であると改めてメッセージしています。自ら考え、自ら動き、新しい価値を生み出すことに喜びを覚える組織にしていきたいからです。これらの取り組みにおいて大事なのは、「隗より始めよ」で私自ら能動的に行動することだと考えています。例えば、社長挨拶の原稿の中によくあるのが「みなさん頑張ってください」というニュアンスの言葉です。私から社員に対して一方的にやって欲しいことだけを伝えることは好ましくなく、そこに向かうために、「まず私自身は何をするのか」を明示することが重要です。また、繰り返しになりますが、社長ができることには限界があります。グループ全体2万3000人の一人ひとりが、能動的に働くことで、無限の可能性が広がると思うのです。だからこそ、「私が先頭に立ってやるから、一緒にやろう」とメッセージを出しています。ひいてはこれが、マネジメントへの信用にもつながるのではないでしょうか。口だけのマネジメントには、人はついてきません。率先垂範なしに、働きがいのある能動的な組織はつくることはできないのです。
近年の兆しとして嬉しいのは、組織同士が連携し合い、新しいビジネスやサービスを生み出す動きが出てきていることです。組織が縦割りになっていると、自分たちのお客様や成績だけ良ければいいと考えがちですが、そうした価値観も徐々に崩れてきたように感じます。このように部門の壁を越えて、自分たちに生み出せるサービスがないか能動的に考える動きが、化学反応のようにグループ全体に広がっていく気運を感じるので、これからがとても楽しみです。
細谷様 グループの主要7社も2020年度から「働きがいのある会社調査」を実施しています。 グループ人事組織間の連携を強化し、 TISが先行して行ってきた施策や効果があった取り組みを積極的にグループ内に共有しています。グループの共通言語として「OUR PHILOSOPHY」があるので、意見交換もしやすいです。強制はすることなく、各社が自分たちに合わせた働きがいを高める動きをつくっていき、グループ全体に広がっていけば良いなと考えています。