新ビジョン「心、おどる、デジタル」を合言葉に、
日本のDXを推進するクリエイティブな職場へ
アドビ株式会社
代表取締役社長 神谷 知信 様
更新日 2024.10.312022.03.31
新ビジョン「心、おどる、デジタル」を合言葉に、
日本のDXを推進するクリエイティブな職場へ
アドビ株式会社
代表取締役社長 神谷 知信 様
Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloudの3つのクラウドソリューションで、企業や個人が優れた「デジタル体験」を提供できるよう支援しているアドビ株式会社。「働きがいのある会社調査」(Great Place to Work® Institute Japan)では2022年度まで6年連続で「働きがいのある会社」ランキングに選出されています。2021年4月に代表取締役社長に就任された神谷様に、「心、おどる、デジタル」という新ビジョンの話題を皮切りに、働きがいを高める会社づくりの考え方や取り組みについてうかがいました。
<記事のポイント>
✔トップ就任と同時期に日本版ビジョン「心、おどる、デジタル」を策定
✔顧客は、小学生から大手の企業・官公庁まで。多種多様な人材で顧客を支える
✔組織の縦割りの壁を壊し、よりクリエイティブな職場へ
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
アドビは2022年12月で40周年、日本は2022年3月末に30周年を迎えます。パソコンの画面上に表示されたレイアウトと同じ内容をプリンターで出力することを可能にしたPostScript言語の開発から事業をスタートし、その後Adobe IllustratorやAdobe Photoshopなどのクリエイティブツールや、デジタル文書であるPDFの楚を築いたAdobe Acrobatなどを提供。インターネットのSNSが発展し、2010年ごろから企業と一般消費者がデジタル上で直接接点を持つ動きが広がる中、消費者一人ひとりが「好きなコンテンツを好きなときに楽しむ」というスタイルが広がっています。それに伴いアドビは「世界を動かすデジタル体験を」というグローバルミッションを掲げ、テクノロジーやデータを活用することで、企業が消費者に優れたデジタル体験を提供するための支援を行っています。
優れたデジタル体験を提供するためには2つの要素があります。一つは、コンテンツが魅力的であること。しかもコンテンツを見る目はどんどんと厳しくなっており、個人の趣向にあったものが求められています。もう一つは、データの活用です。「見たいコンテンツ」や「見たいタイミング」は人によって異なります。その最適化をするためには、コンテンツとデータの連携が不可欠です。当社はサブスクリプション・クラウド化したことにより、比較的早くからデータ分析の事業に取り組み、当社のeコマースにおけるカスタマージャーニーの向上を実現しました。プロダクトを購入するだけではなく、喜んで使ってもらい、長期間にわたり更新してご利用を継続いただく。アドビ自身が活用しているその「顧客体験管理プラットフォーム」を提供することで、企業がデータを活用して優れたデジタル体験を提供できるよう支援しています。コロナ禍でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速するなか、アドビには「デジタル体験」を進化させる使命があります。DXの分野では、アメリカが日本の5年以上先を進んでいる印象があります。日本において企業がアドビプロダクトやソリューションを通じて「世界を動かすデジタル体験」実現に向けて力になることが私たちの役目であると強く感じています。
2021年4月に私が代表に就任するタイミングで「心、おどる、デジタル」というビジョンを策定しました。従業員と話す中で、日本市場に合った独自の方向性を言葉にし、製品や事業部を横断して共有できるようにしてほしいという要望が多かったことを受けて、10年後の会社の未来を表すビジョンをみんなでつくる必要があると考えました。今では「心、おどってる?」という言葉が社内で使用されるほど、従業員に根付いてきています。社員自らが良い会社を作っていくためにも、ビジョンはトップだけで決めるものではなく、会社を構成する従業員が関わることが大切です。特に、日本の場合は年功序列的な意識が強いので、若手の声をしっかり吸い上げることが重要だと感じています。プロセスにみんなが参加することにより、ビジョンが自分たちのものとなり、それが横や斜めのつながりを生むことを実感しました。
社内の連帯感を高めるためには、当然ながら従業員との対話が欠かせません。当社には約600名の従業員がいますが、私は就任後の1年間で、今まであまり関わることがなかった従業員を中心に話す機会を作り、1人10分程ですがほぼ全員と言葉を交わしました。私が一方的に語りかけるのではなく、できるだけ少人数で密度の高いコミュニケーションをとることを意識しています。まずは軽い自己紹介から始めるのですが、それだけでお互いに発見があります。話題づくりの工夫として、「誰にも話したことのない秘密を教えてください」と投げかけているのですが、ユニークな秘密からシリアスな内容まで、興味深い話がたくさん出てきます。また社員とのビデオ会議は10人いると半分はカメラを消してしまうので、なるべく参加人数を1桁台にして顔を見てのコミュニケーションを心掛けています。
実際に話してみるとより深く理解できるのですが、当社の従業員は本当に個性豊かです。アドビのプロダクトのファンもいますし、アドビは写真やデザインなどクリエイティブ系のコミュニティと非常に近いという特徴もあるので、そういう繋がりから当社に入社するケースもあるようです。一方で、クライアント企業のデジタル改革に貢献したいという人もいますし、当社がサブスクリプションビジネスを最初期に始めた企業ということもあり、ファイナンスの仕組みを学びたいという人もいます。当社の顧客は、小学生から大手の企業・官公庁までと、本当に幅広いので、ダイバーシティを常に意識した組織づくりをしています。お客様をより深く理解するためにも多種多様な人材が一枚岩となりオールアドビとして活躍していくことが必要不可欠です。
アドビは40年間シリコンバレーで躍進し続ける数少ない企業の一つであり、常に新しいプロダクト、サービスを生み出し、提供し続けてきました。そのため働いている従業員は、デジタル社会・経済を支えている会社で働く誇りを感じられるのだと思います。私は日頃から従業員にとにかく自らアドビ製品を使用し、自社の製品を愛することをメッセージングしています。一方で、自分たちが手がけているプロダクトやソリューションに誇りを持ち、専門性を高めてきたからこそ、組織が縦割りになっていたことも事実です。まさに今、私たちはチームの壁を取り壊しています。例えば、日本でいう全社会議「All Hands Meeting」でも、これまではデジタルメディアとデジタルエクスペリエンスという2つのチームで別々に行っていました。現在は所属するチームに関係なく、誰でも参加できるようにしてあります。これにより、ずいぶんと社内の風通しが良くなりました。
人事制度面では、マネージャーとメンバーが今後目指したいポジションや組織から求められている期待について対話する「Check-in」が、働きがいの向上に寄与しています。年に1度だけの評価レビューを廃止し、四半期に一度という枠組みの中で内容も頻度もマネージャーとメンバー間で柔軟に設定できる「Check-in」を採用しています。給与の裁量権もマネージャーにあることが、この「Check-in」の大きな特徴で、マネージャーも、今まで以上にしっかりと納得感の高い評価を行なうために、より頻繁に部下達とコミュニケーションするようになりました。
こうした数々の取り組みを通じて、「働きがい」のある会社づくりを継続していけば、当然ながら幸せな従業員が増えますし、それに比例して事業も拡大すると私は確信しています。「アドビで働くことが楽しい」と感じられれば、それはきっとお客様にも伝わるはずだからです。私たちは「Creativity for All」というミッションも掲げています。一人ひとりが創造性を発揮する社会を目指していますし、従業員に対しても同じことを願っているのです。楽しくないと優れたアイディアは出てきません。日々働きがいを感じられる幸せな従業員が、クリエイティブな職場をつくるのです。