株式会社ARISE analytics

更新日 2023.04.102023.04.10

interview_230328_main.jpg

「見えているつもり」にならないために
事業拡大・組織拡大による壁を「対話」で乗り越える

株式会社ARISE analytics 
代表取締役社長 家中 仁 様
CWO 佐々木 彰 様

2023年版「働きがいのある会社」ランキング ベスト100の中規模部門(従業員100名以上999名以下)でベストカンパニーに選出された株式会社ARISE analytics。代表の家中様とCWO(Chief Workstyle Officer) 佐々木様が、働きがいのある会社をつくるために取り組んできた「カルチャーギャップを乗り越える取り組み」や「一体感を生み出すコミュニケーション施策」などについて伺いました。

<記事のポイント>
✔2つの異なる組織カルチャーを融合し、目指すべき姿へ
✔社員の声を吸い上げ、「働きがい」を模索するCWOを任命
✔100名を超え、直近の課題はミドルマネジメントの強化

ジョイントベンチャーならではの新たな文化を確立する

interview_230328_01.jpgGPTW 株式会社ARISE analyticsの成り立ちを教えてください。

家中様 当社の設立は2017年です。その当時、DXという言葉が目立つようになり、KDDIでも、データを蓄積してマーケティングに活用する取り組みをアクセンチュアの支援を受けて始めていました。より大きな取り組みにするために、KDDIとアクセンチュアが興したジョイントベンチャーが当社です。KDDIから5名ほど、アクセンチュアからは40名ほどが参画して立ち上げました。

設立当初はKDDIの事業支援がメインだったため、モバイルを中心としたコンシューマー向けサービスを伸ばすためのマーケティング支援を皮切りに事業をスタートさせました。そこから、KDDIが提供する通信とデータを掛け合わせた新たなサービスとして、故障予測や画像解析、需要予測などIoT領域におけるデータ分析支援やソリューション開発へと当社の事業領域も広がっていき、現在に至ります。

GPTW KDDI出身のメンバーと、アクセンチュア出身のメンバーが同じ組織で働く中で、ギャップはありませんでしたか?

家中様 仕事の進め方とマインドの2つのギャップがあったと思います。事業会社とコンサルティング会社では思考プロセスに違いがあると考えています。「今を積み上げて未来をつくる」という事業会社的な考え方と「ゴールを設定して逆算する」というコンサルティング会社的な考え方があるわけです。そこでの食い違いから当初は社内で反発が起こることもありました。

その結果、誤った事業会社的考えが先行し、顧客のあるべき姿を考慮せず「発注されたことだけをやればよい」というマインドが生まれそうな時期もありました。しかし、それでは真の課題解決には至らず、ARISE analyticsが誕生した意味もありません。そのため、「ビジネスコンサルの目線で、顧客に提言できる存在になろう」と全社集会で繰り返しメッセージを出したり、原籍会社関係なく全従業員で我々が目指すべき姿についてディスカッションしたりしました。

「働きがい」につながる施策を幅広く包括するCWOを任命

interview_230328_02.jpg家中様 2018年から中途採用を開始し、2019年の4月に新入社員を迎えて、働きがいのある会社づくりを強く意識するようになりました。当社の佐々木 彰をCWO(Chief Workstyle Officer)に任命したのがそのタイミングです。CWOという役職名には、人事領域だけではなく、組織文化作りやオフィス環境作りなどを幅広く包括する役職にしたいという思いが込められています。

佐々木様 従業員が増えていく中で、どのようにして成長できる環境を作るのかなど、社長にアイディアをぶつけながら様々な取り組みを展開してきました。当社は事業の特性上、所属する従業員はほぼデータサイエンティストです。彼らが働きがいを感じながら第一線で活躍し続けるためには、常に最先端の知識を習得しスキルを向上し続ける必要があります。そのため「ARISE university」という教育体系を従業員が増え始めた2018年のタイミングで作りました。金曜の午前中は原則ミーティング禁止で自己研鑽の時間としており、外部有識者を招聘する講座やプロジェクトで活用した技術・スキルを共有し合う講座など様々な勉強会が行われています。その他にも外部セミナー参加や書籍購入、資格取得の費用補助など自習支援制度も充実させています。「自ら学び」「教えあい」「共に成長する」という当社カルチャーを実践する場となっています。

GPTW 組織が成長する過程で、難しさを感じる場面はありましたか?

佐々木様 従業員数が増えていくタイミングとコロナ禍に入るタイミングがほぼイコールになってしまい、連帯感やカルチャーをいかに維持・発展させるか悩みました。

家中様 2020年5月から従業員の安全を優先し、リモートワークに振り切ったので、そこでチームのコミュニケーションをどうするかが課題でしたね。

佐々木様 課題に対する取り組みとしては、広報メンバーが毎週社内報を発信し、経営層が考えていることや、進行中プロジェクトの情報共有、さらに社員紹介などをすることで、お互いを知る機会を増やしました。それに加えて、オンラインでシャッフルランチというイベントをしたり、定期的に飲み会をしたり、オフィスにカフェスペースをつくったりして、仕事のコミュニケーションだけではなく、雑談ができる機会を意図的に増やしています。直属の上司ではない他部署のマネジャーと話す機会も減っていましたので、「おせっかいファミリー」という名前で、3カ月に1回のペースで、斜めのつながりをつくる機会もつくりました。

家中様 コロナ禍の2年間の取り組みの甲斐あって、2022年から徐々にオフィスに人が戻ってからも、従業員発の改善活動が活発になりました。一方で、連帯感を強めながら、お互いの視野を広げる意味で、原則として週1回の出社を推奨しています。やはり、直接顔を合わせてのディスカッションやカジュアルなコミュニケーションは、課題解決のヒントや新しいアイデアを生み出す機会の一つであると考えているからです。ところが、その意図が正しく従業員に伝わらないこともあります。ミドルマネジャーがメンバーに対して「社長が会社に来いと言っているから出社するように」とだけ伝えたら反発されますよね。表面的な言葉だけではなく、目的を正しく伝えるコミュニケーションができるようにするなど、組織をより良くするための施策を浸透させる上で、ミドルマネジャーの育成が課題になっています。

調査結果から課題を抽出し、ディスカッションを通じて施策案に落とし込む

interview_230328_03.jpgGPTW ここまでお話いただいた組織づくりを進める中で、「働きがいのある会社調査」の結果をどのように活用されていますか?

佐々木様 スコアの低い設問内容をそのまま課題として捉えるのではなく、スコアが低い要因に組織としての本質的な課題があると考えています。そのため、単に調査結果をマネジメント層に共有するだけでなく、調査結果から考えられる本質的な課題とその対策・施策案まで含めて検討し、共有しています。その内容をマネジメント層でディスカッションし、合意を経て、実際に施策を動かしていくという流れですね。

先ほどの家中の話にもありましたが、ミドルマネジメント層が現組織の課題と捉えていますので、まさに今、ミドルマネジャーを育てるための取り組みを動かしているところです。これまで当社は3回、GPTWの調査に参画しており、1回目は小規模部門で高い評価をいただきました。現在は従業員が100名を超えて中規模部門になり、順位的に見ると少し後退しています。この理由としては、組織が成長して次のステージに進み、ミドルマネジメントの課題がより鮮明に浮かび上がってきたからです。次の調査の時には改善が見られるようにしたいですね。

GPTW 「働きがいのある会社」の認定を受けたことによる影響を感じますか?

佐々木様 客観的に会社・組織を評価してもらえる仕組みであるため、採用の場面などで役立っていることを感じています。働きがいを高めるために色々な取り組みをしている会社だと知ってもらうことで、この会社で働いて共に成長したいと思ってもらえるとうれしいです。

GPTW 組織マネジメントに苦労しているベンチャー企業に向けてのメッセージをお願いします。

家中様 会社の状態を様々な視点から見えるようにしておくことが大事だと思います。リモートワーク、ハイブリッドワークの時代になると、実際には見えていない部分がたくさんあるのに「見えているつもり」になりがち。だからこそ、しっかりとコミュニケーションをとって、意見を吸い上げて、それと向き合うことがより重要です。

また、会社全体に何が起こっているのかを客観的に把握するためには、サーベイツールを活用して俯瞰することも大事だと思います。会社を「見える化」することによって、課題の抽出ができるし、解決に向けての正しいアプローチを確認できるのではないでしょうか。そういう意味でも、まずは従業員の声を見える化することをお勧めします。

株式会社 ARISE analytics 代表取締役社長 家中 仁 様 プロフィール

interview_230328_profile.jpg

札幌市出身。1993年 KDD入社。1999年 3社合併 KDDI設立に伴いインターネットサービス企画・開発業務に従事。その後、グループ会社取締役やサービス保守運用・品質管理部門を経て、KDDIのデータドリブン経営を支援する会社として2017年に設立されたARISE analyticsの代表に就任。現在に至る。

株式会社 ARISE analytics 執行役員専務 Chief Workstyle Officer 佐々木 彰様 プロフィール

interview_230328_profile_02.jpg

東京都出身。2001年 大手SIerに入社。その後、2011年にアクセンチュア入社し、データサイエンス部門の立上げに携わる。
2017年の会社設立時から、ARISE analyticsに参画。データサイエンス部門・コーポレート部門のトップとして組織の立ち上げを行い、2018年からはChief Workstyle Officerを担う。『世界一働きがいのある会社を創る』をミッションに、組織・人材開発の責任者として活動中。

株式会社 ARISE analytics

ariseanalytics_logo.png

ARISE analyticsは、KDDIとアクセンチュアのジョイントベンチャーとして2017年2月に設立されました。国内最大規模のデータを保有するKDDIと、高度なコンサルティング力、アルゴリズム開発力を誇るアクセンチュアの強みを融合させた新しいアナリティクスカンパニーです。350名を超えるデータサイエンティストが活躍しており、データアナリティクスとAI(人工知能)を駆使し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。

本記事は2023年3月時点の情報です。

働きがいのある会社づくりに役立つ最新情報やトレンドをいち早くお届け! メルマガに登録する

働きがいのある会社づくりに役立つ最新情報やトレンドをいち早くお届け! メルマガに登録する