多くの従業員が”仕事に行くことが楽しみ”と回答
働き方改革推進企業が実践する「組織マネジメントの原則」
株式会社コラボスタイル
代表取締役社長 兼 CEO 松本 洋介様
更新日 2024.10.102023.11.06
多くの従業員が”仕事に行くことが楽しみ”と回答
働き方改革推進企業が実践する「組織マネジメントの原則」
株式会社コラボスタイル
代表取締役社長 兼 CEO 松本 洋介様
2023年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100の小規模部門(従業員25名から99名)に選出された株式会社コラボスタイル。初参加でベストカンパニー入りを果たし、地域優秀企業および女性ランキングにも選出されています。同社代表取締役社長 兼 CEOを務める松本様に、「働きがいのある職場づくりのヒント」や「『仕事に行くことが楽しみ』と回答した従業員が多い理由」などについて語っていただきました。
<本記事のポイント>
✓積極的な権限移譲で事業成長の壁を乗り越える
✓「肯定ファースト」と「上司一人ルール」でやりがいのある職場へ
✓名古屋への本社移転がブランディングにも繋がった
GPTW 松本様、ご経歴と、株式会社コラボスタイルの成り立ちを教えてください。
松本様 私はバーテンダー出身のITベンチャー社長です。飲食業に携わっていたころ、「もっと働き方をよくできないか?」という思いがありました。やりがいはあるけれど、働きやすさがなかった。ITの力を使って働く環境を変えたいと考え、インターネットサービスプロバイダで企画営業職を経験し、SI会社では営業と事業責任者、役員を経験。そして2013年にコラボスタイルを立ち上げました。
「ワークフロー」というクラウドサービスを世の中に展開することで、働き方を少しでも良くしたいという思いでスタートしました。やがて、私がやりたいのはそれだけではないと気づき、改めてビジョンを見直し、「ワークスタイルの未来を切り拓く」を掲げています。事業内容としては大きく2つ。1つは、紙・Excelによる申請・決裁業務の“困った”を解決するワークフローシステム「コラボフロー」というプロダクトの事業。おかげさまで導入企業は1500社を超えています。
もう1つは、我々の知見を世の中に広くシェアするワークスタイル事業です。ワークスタイル事業の一環として、JPタワー名古屋の36階にある当社オフィスの約半分を自社専用として利用し、残りをソーシャルワーキングスペース「コラボベースNAGOYA」として運営しています。コラボベースNAGOYAの狙いは、これからの時代に求められるワークスタイル/ワークプレイスの在り方の実験場であり、「価値創造の場」として共創・コラボレーションを生み出すことです。
こうした取り組みを通じて、働きがいのある社会を作る取り組みを社外の仲間を巻き込んで発展させてきました。ただ単に企業の働く環境を整えるだけではなく、「その会社がどうありたいか」という経営の根幹のところから一緒に見つめ直しています。
GPTW コロナ禍で事業を伸ばし、従業員も増加しています。事業成長と組織マネジメントの関係性をどう捉えていますか。
松本様 組織をマネジメントできていない会社が、成長できるわけがありません。もちろん、社員が20人のときと、60人を超えた今とでは難しさは違います。当社は積極的に権限移譲して、上司にはチームに対して責任を持ってもらっています。「チャレンジは正義」「スピードは正義」というスローガンのもと、上司と部下が相互にマネジメントする環境とすることで事業成長の壁を超えていく仕組みを作っています。
一方で、事業成長が著しいときこそ、「ちょっと無理してでも頑張るとき。流れについていくとき。」という考え方になりがちで、ここにも危険が潜んでいます。一人ひとりの人生には、結婚したり、親の介護が必要になったり、さまざまな局面があります。その状況に合わせた働き方を尊重すると会社として社員にはメッセージを出しているので、少しブレーキを踏んで働き方をスローダウンすることもあって当然です。ところが、事業が成長してアドレナリンが出ているときは、従業員の変化に気づきにくいものです。だからこそ、上司がチームをしっかり見て、メンバーの心の動きをキャッチすることが、これからより重要になります。
GPTW 「働きがいのある会社」調査や認定をどう活用していますか?
松本様 ベストカンパニーに選ばれたことを褒めていただくことが多いです。GPTWを知らない方が「働きがいのある会社」調査に興味を持つきっかけにもなっているようです。「働きがいのある会社」と、コラボスタイルが目指す組織像には重なる部分があります。世の中に働きがいのある会社を増やしたいという想いにも共感しています。この調査のレポートが、経営に活かせないわけがありません。ちなみに、当社では1週間のうちにGPTWという名前が一度は出てきますね。そのくらいの関心ごとなのです。
GPTW 調査の中にある設問「仕事に行くことが楽しみ」のスコアが同規模の他社と比べて高い結果となっていますね。秘訣はどんな点にあると感じますか?
松本様 当社には「自宅オフィス化支援制度」というオフィス出勤と同等の成果が出せる環境を自宅に用意する費用を会社が担う制度があります。自宅での仕事環境はリアルのオフィスのように仕事をするために充実した環境とはいい難い一方で、リモートワーク下でもオフィス出社時と同等の成果を求められるため、自宅もオフィスの延長線と捉えて制度化しているものです。ワークスタイルを理念に掲げる会社として働く場所の制限を緩和しつつ最大の成果を求めるこのような制度は社員への納得感も高いと思っています。こういった制度を用意している会社として仕事をすることが楽しみだと答えてくれることは素直に嬉しいですね。
「仕事に行くことが楽しみ」と答える社員が多い要因は、大きく2つあると思っています。まず「肯定ファースト」のカルチャーです。相手の認められたいという気持ちを理解しながら、会話をしています。上手くいかないときは、それなりの理由があるはず。そういう想いを馳せることを大事にしています。
もう一つ、組織的な要因としては「上司一人ルール」があります。たとえば、社員が直属の上司と私の二人に相談して、答えが別々だったら混乱するでしょう。当社では、直属の上司の意見を聞くべきとしています。そもそも私は組織マネジメントでは権限移譲ありきで考えていますから、上司の権限範囲には手を出しません。上司は権限があるからこそ、遂行責任や説明責任を果たします。この権限と責任がしっかりバランスして機能しているから、従業員の納得度も高いのです。
GPTW 地方の働きがいのある企業にもスポットを当てることを目的として地域優秀企業を発表しています。本社を名古屋に移転されたことは地方創生に資する目的もあったのでしょうか。
松本様 当社が2020年に本社を東京から名古屋に移転した理由の一つは、東京一極集中の世の中に疑問を感じていたからです。また、私自身が愛知県出身で地の利があり、街を盛り上げたかったという想いもありました。名古屋を選んだことはブランディングにもつながっています。東京にいたら目立たないけれど、この場所なら目立つし、地域優秀企業にも選ばれたわけです。
愛知県は製造業が多く、トヨタや伝統ある老舗企業がいくつもあります。歴史があるからこそ、染み付いている仕事の進め方を変えにくいものです。そのため、この地で「ワークスタイルの未来を切り拓く」ことには社会的意義も大きいと思っています。新しい働き方と向き合いたくない人も必ずいますが、そこで大事になるのが、これまでのやり方を肯定することです。従来のやり方には必ず理由があるはずなので、まずそこを明らかにしてから課題を因数分解し、一緒になって変えていくことを大事にしています。
GPTW 組織マネジメントに苦労しているベンチャー/スタートアップ企業に向けてのメッセージをお願いします。
松本様 社長が組織マネジメントに苦労するのは当たり前です。悩んだら、「働きがいのある会社調査」に参加するのもよし。現場を客観的に把握するのに役立ちます。いきなり良い結果は出ないと思いますが、悪くても成長の機会だと捉えればいいです。働きがいのある会社の認定をとっている企業にヒアリングさせてもらうことも効果的だと思います。当社に質問を寄せてくれる方がいれば、ぜひお話ししたいですね。質問に答えていく中で、我々も気づきが得られるからです。一緒に頑張りましょう。