人的資本開示になぜGPTWを使うのか? TIS株式会社の事例

更新日 2024.10.102024.10.03

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人的資本開示になぜGPTWを使うのか? TIS株式会社の事例
積極的な人的資本の開示は、従業員のエンゲージメント向上に通じる

TIS株式会社
執行役員 人事本部 人事本部長 林 由之 様

人的資本経営とエンゲージメント指標の重要性を認識し、これらを企業価値の向上に繋げる取り組みを積極的に進めているTIS株式会社。GPTWの「働きがい認定企業」にも選ばれており、従業員の働きがい向上のために様々な施策を展開しています。今回は同社の人事本部長の林氏に、人的資本の開示をテーマに、なぜエンゲージメント指標を開示するのか、開示することでどのような期待と効果があるのかを伺いました。

<記事のポイント>
✓人的資本の開示の目的は、社内外のステークホルダーに会社の取り組み姿勢や実績を正しく伝達すること
✓「働きがい満足度」を統合報告書や中期経営計画で積極的に開示
✓人的資本の開示は、全社で一貫したストーリー性のある発信をすることが重要

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TISが大切にしていることをステークホルダーに正しく伝えたい

GPTW 早速ですが、従業員のエンゲージメントを開示した背景についてお教えください。

林様 人的資本の開示を進める背景には、社会からの要請が大きく関わっています。しかし、それだけが理由ではなくIT業界特有の状況も影響していると言えるでしょう。IT業界は、華やかで先進的なイメージを持たれる一方で、具体的な業務内容が理解されにくい面もあります。また、業界全体が忙しいため、従業員エンゲージメントが低いのではないかと捉えられることもあると思います。企業の実情を正確に伝え、外部に発信していく必要性を強く感じています。

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当社は50年の歴史を持つ企業ですが、その活動内容が広く知られているとは言えません。しかし、私たちは常にお客様に価値を提供し、それが評価されてIT業界で成長を遂げてきました。だからこそ、その実績を社会にしっかりと伝えたいと考えています。また、従業員に対しても、これまでの成長がお客様からの評価に基づいていることを理解してもらいたい。これら二つの方向性で、各種情報開示に取り組んでいるのです。

当社では、「ミッションの実現性向上」とステークホルダーとの「価値交換性向上」の二つを成長の定義としています。我々自身が成長するだけでなく、ステークホルダーと共に成長することを目指していますから、この取り組み姿勢をオープンにし、社会に発信していくことが重要なのです。

人材の流動性が高い業界特性も大きな影響を及ぼしています。他の業界に比べるとIT業界は定着率が低いのは事実ですが、流動性の高さにより業界全体が活性化しているとも言えます。優秀な人材に選ばれるリーディングカンパニーとなるためには、業界に先駆けて、人的資本に関する情報を積極的に開示することが重要だと考えています。

「働きがい満足度」を中期経営計画の重要項目に

GPTW 人的資本を可視化して、社内に開示する狙いについてどのように考えていますか。

林様 私たちが社外に開示している情報を、従業員が目にすることで、「この会社はこんなことを大切にしているのか」「自分たちにこんな期待があるのか」と感じてもらうことを狙っています。従業員向けにマニフェストを発表するなど、さまざまな試みを行っていますが、社内での伝達には限界があると感じています。むしろ、社外向けに発信する情報により、会社が本気で取り組んでいることを、従業員にしっかり伝えることができると考えています。

GPTW 社外に公開している資料には、どのようなものがありますか。

林様 コーポレートサイト、ESGデータブック、統合報告書、中期経営計画、有価証券報告書です。これらの中で、人材は価値創出の根幹であり、最重要の経営資本であることを明示し、従業員のエンゲージメントがなぜ重要なのかという考え方や、エンゲージメント指標が年々向上していることをデータと共に開示しています。働きがいの向上は、TIS単体だけでなくグループにも取り組みを拡大しており、グループの情報も掲載しています。

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引用:TISコーポレートサイト エンゲージメント戦略 | 社会 | サステナビリティ | TISインテックグループ | TIS株式会社

私たちは人的資本に係るグループ成果指標として7つの目標を設定していますが、「働きがい満足度」は、中期経営計画において最も重視している目標のひとつです。

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中期経営計画(2024-2026)では人材戦略を推進することで、従業員と会社のエンゲージメントを高める重要性について明記しています。人材への積極的な投資により、付加価値の向上と働きがいの向上を同時に達成することを目指しています。

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引用:TISインテックグループ中期経営計画(2024-2026)

これらは主に社外向けの発信ではありますが、従業員は統合報告書や中期経営計画といった社外への開示媒体を通して、人的資本に関する自社の状況を把握していると思います。

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母集団の規模と多様性、公平性の観点でGPTWを選択

GPTW 人的資本を開示するにあたり、なぜGPTWを活用しているのか教えてください。

林様 第三者評価として価値が高いと考えるからです。その理由としては、調査の公平性や母集団の大きさ、外資系企業を含め多様な企業が含まれていることにあります。私たちは、グローバルで評価される企業を目指しており、あらゆる業界のお客様と接しているため、業界内だけでの競争には限界があると考えています。働きがいの高い企業と比較し、自社の働きがいを向上させる施策を進めることが重要です。

また、人的資本経営が注目されている背景には、個人が成長し企業活動を通してその強みをいかに発揮してもらうかが焦点となっていることがあり、これは全ての業界に共通する課題であると考えています。優秀な人材だけでなく、すべての従業員がパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を整えることが不可欠です。

GPTWの調査は、非常に綿密に研究された結果、キーとなる要素ごとに様々な質問が用意されています。その中から特に注目すべき設問を絞り込み、施策を打ったときに、その施策がどの要素に効いたというのが分かり易いということと、他社と比較できるというのが大事な要素です。

GPTW 具体的にはどのような設問に注目していますか?

林様 個別の設問に注目していくことが重要なのではなく、社会の変化や自社の状況に応じて重視すべきテーマ(課題)が変化していくものと考えています。初期段階では、労働環境や就労条件といった「働きやすさ」の取り組みが働きがいを支えていました。現在は、「経営への信頼」や「誇り」を重視し、仕事で成果を上げることで従業員のウェルビーイングを高める取り組みに注力しています。組織が進化し課題が変わっていく中でも、調査結果にリンクした取り組みを継続することが鍵であると考えています。

GPTW 開示に踏み切るときに、多くの企業の心理的ハードルになっているのが「スコアが下がったときの影響」です。対策など考えていますか。

林様 公開する項目を慎重に選択することは大事ですが、スコアが下がったとしても要因を分析して次につなげることこそが大事だと思います。あえて悪い情報を出すことは、成長の機会にもつながるのではないでしょうか。スコアが下がったことでネガティブな印象を与えるリスクもありますが、結果に向き合い対応していく意志や方針を社内外に示すことで、逆に評価されることもあるはずです。

また、グループ全体で人的資本経営の状況を公表することも大事だと考えています。グループ全体に働きがいを高めようという意識が浸透すると思いますし、グループ各社それぞれの取り組みや実績を共有することで、「やればできるはずだ」というメッセージを伝えることにもつながります。グループ全体の価値を高めるためにも、開示することは不可欠だと思うのです。

全社で一貫したストーリー性のある発信をしたい

GPTW 人的資本の開示を行う際に課題となっていることはありますか?

林様 ストーリー性のある発信をすることが、私たちにとって重要な課題です。数字をどのようにストーリーに結びつけるかが求められていると感じています。以前は、人事部門が独自の視点でストーリーを作り、それを開示してきたという経緯がありました。今では人的資本経営というコンセプトが注目されるようになり、人材が会社全体の経営テーマとして最も重視されるようになりました。経営目標の達成や事業の成功に直結する人材戦略の重要性が広く認識され、それが大きな後押しとなっています。現在では、人事と経営企画が連携し、どのような政策が人的資本の価値を高めるのか、そのためにどの指標をモニタリングすべきかを再検討しています。人事が経営企画、IR、財務経理と一体となって動くことが、今後さらに重要になると考えています。

世間では、ようやく人材指標を注視する動きが強まり、投資家もこれらの指標に関心を寄せ始めています。しかし、現状では人事の指標や人材戦略にフォーカスした投資家とのエンゲージメントが十分に活性化していないという印象です。人的資本に関する対話が増え、対話を通して人材戦略をより実効性の高いものに深化させていく体制の整備が重要だと感じています。

GPTW 最後に人的資本の指標を公開する上で、大切にすべきことを教えてください。

林様 経営戦略との関連を考えると、改善を繰り返し、人材戦略をブラッシュアップさせていくプロセスが非常に重要だと感じています。調査結果に基づいたアクションを取ることが大切で、やりっぱなしでは従業員の信頼を失ってしまいます。人的資本の開示そのものが直接的に会社のパフォーマンスを向上させるわけではありませんが、情報に基づいてどのようなアクションを取るのかを明確にし、経営のコミットに基づいて推進していくことが肝心です。

開示された情報は、ステークホルダーへの「約束」を含む意味合いがあり、それを実行することで初めて価値を持ちます。経営戦略と連携したアクションを立案し、それを実行することで、結果として人的資本のさらなる高度化に繋がるでしょう。PDCAサイクルを回し、社内の改善プロセスをしっかりと実行することが何よりも重要だと考えています。

TIS株式会社 執行役員 人事本部 人事本部長 林 由之(はやし よしゆき)様

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1994年にTIS株式会社に入社し、証券業界向けのシステム営業に従事する。その後、一度退職するが再入社し、復職後はカード業界の開発プロジェクトや新サービスモデルの企画推進を担当する。公共事業本部のプロジェクト推進事業部副事業部長を経て、2018年10月にサービス事業統括本部CreditCubeサービス事業部長に就任。現在は人事本部長として、TISインテックグループ全体の人事戦略を指揮している。

TIS株式会社

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TIS株式会社について
TISインテックグループのTISは、金融、産業、公共、流通サービス分野など多様な業種3,000社以上のビジネスパートナーとして、お客様のあらゆる経営課題に向き合い、「成長戦略を支えるためのIT」を提供している。50年以上にわたり培ってきた業界知識やIT構築力で、日本・ASEAN地域の社会・お客様と共創するITサービスを提供し、豊かな社会の実現を目指す。

TISインテックグループについて
TISインテックグループは、国内外グループ2万人を超える社員が『ITで、社会の願い叶えよう。』を合言葉に、「金融包摂」「都市集中・地方衰退」「低・脱炭素化」「健康問題」を中心とした様々な社会課題の解決に向けてITサービスを提供している。デジタル技術を駆使したムーバーとして新たな価値を創造し、人々の幸せと持続可能な豊かな社会の実現に貢献する。

本内容は2024年10月時点の情報です。

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