「失敗」や「困りごと」は即座に共有し、みんなで解決
離れ離れだからこそできるコミュニケーションを大切に
ユナイトアンドグロウ株式会社
代表取締役社長 須田 騎一朗 様
更新日 2024.10.162024.10.10
「失敗」や「困りごと」は即座に共有し、みんなで解決
離れ離れだからこそできるコミュニケーションを大切に
ユナイトアンドグロウ株式会社
代表取締役社長 須田 騎一朗 様
2024年版の働きがいのある会社調査にて「働きがいのある会社」として認定されたユナイトアンドグロウ株式会社。中堅・中小企業のコーポレートIT部門を支援するために、同社の正社員が各自の時間をシェアしてさまざまな企業で「社員よりも社員らしく」働く「コーポレートエンジニアのシェアード社員」というユニークな事業を展開しています。一人ひとりの社員が別々の場所で働く同社において、どのように働きがいのある会社をつくり上げたのでしょうか。働きがいを高める取り組みの過程にあった試行錯誤や、「働きがい認定」をどのように活かしているのかを、代表取締役社長の須田 騎一朗様に伺いました。
<記事のポイント>
✓業界の「やりたくない仕事」こそ、顧客から感謝される「やりがいNo.1の仕事」
✓失敗事例の共有が学びとなり、会社の財産になる
✓一人ひとりが「働きがい」を自分の言葉で語れることが大切
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
GPTW ユナイトアンドグロウの成り立ちと事業概要を教えてください。
須田様 世の中に向けて「社内IT担当(社内SE/情シス/コーポレートエンジニア)」という職業に対し、どのような印象を持っているか尋ねると、恐らく「あまりやりたくない」といった意見が多いのではないのかなと思います。
こと中堅・中小企業においては常に人材不足で、IT部門に割ける人材は限られているのが現状で、他の職務と兼任しているケースも少なくないのです。結果的に、あまりITに詳しくない人材が、少人数または一人で多くの難題を抱え込む、という事態に陥りがち。それ故に「あまりやりたくない」仕事になっているのが現状ではないかと捉えています。
しかしながら、デジタル化が進み、仕事の仕組み化やシステム化がその企業の発展・成長のベースとなっている今、技術も業務内容も高度になり続けています。そのため、この「コーポレートエンジニア」という存在は非常に重要であることも事実。大手企業では、優秀な人材が率先してこの業務を担っていますが、中堅・中小企業では同じことができず、人材確保が困難になっています。この問題を解決するためにユナイトアンドグロウを立ち上げました。
当社は「シェアード社員」というサービスを提供しています。これはコーポレートIT業務に必要なIT領域全般に長けた人材が準委任契約のもと、お客様企業で働くというものです。同サービスは一般的な派遣契約とは異なり、時間課金制であることや、業務範囲にこだわらずお客様の社員目線で向き合うこと、仕事を通して得た知識や経験・ノウハウを社内で共有することにより、常にアップデートされた業務を提供できることといったメリットがあります。
GPTW 御社の経営戦略と人事戦略について、その基本方針をお教えください。
須田様 経営戦略は、とにかく今のシェアード社員事業を深掘りし、中堅・中小企業に貢献することに尽きます。人材戦略という点では、当社の仕事を「日本一働きがいのある仕事」にして、それを発信することです。当社の社員は、コーポレートITの利活用にお困りの中堅・中小企業様に対し、「力になりたい」「お客様を幸せにしたい」と集まってきたコーポレートITの仕事が大好きな人たちです。だからこそ、この仕事が面白く、長く継続でき、可能性に満ちていることを知っています。世の中で「やりたくない」「人気がない」と言われている仕事は、実は「やりがいNo.1の仕事」なのです。実際に現場では「すごいね!天才だね」「いてくれて本当によかった」と感謝されることのほうが多いんですよ。
当社は、お客様にとっても社員にとっても価値ある仕事を提供し続けるために、事業の多角化はまだ行いません。「お客様や自分たちにとって重要なものはなにか」ということだけを徹底して議論し続けるためです。これはひとつの事業に特化していなければ一体となって行えないと私は考えています。また、ひとつの事業に特化していることで、「この仕事をやりたい」という人しか集まらない、とどまらないというのも重要な点と言えるでしょう。これが、社員の働きがいにもつながっていると考えています。
GPTW 社員の方がそれぞれ別の会社で働くというワークスタイルで一体感を持つのは難しかったのではと思います。どのような取り組みで乗り越えてこられたのでしょうか。
須田様 大まかに2つの施策があります。まず当社では社内SNSを活用して、全社員で「困りごと」を共有し、解決策を教え合うこと。基本的に「誰かのために役立ちたい」という想いを持って集まってきたメンバーばかりなので、おせっかいなほど教え合いが成り立っています。ここで最も大切にしているのは「失敗した際はできるだけ早く共有する」ことです。失敗はなかなか打ち明け辛いことですが、当社では失敗は決して減点の対象になりません。むしろ失敗をどんどん共有して解決していくことで、次のより良い仕事につなげられるからです。失敗事例の共有は全員にとって重要な学びであり、会社の財産になります。
また、人は365日コンディションが異なります。モチベーションが下がることも当然あるわけです。そうした「マイナスの状態」も共有することで、お互いにフォローしあったり、励ましあったりしています。
7~8人で定期的に集まって話す「フォーラム」も当社独自の重要な取り組みです。1か月を振り返り、自己開示と経験シェアを通じてお互いに気づきや学びを得ようという活動です。意見や批判、アドバイスはせず、守秘義務のなかで話すことで、年齢や社歴にかかわらずフラットな関係性で何でも話せる安心の場となり、尊重・尊敬の社風を構築することにもつながっています。
これらの取り組みは、全社員が同じ社内にいて毎日顔を合わせていると、かえって難しくなることだと思います。なぜなら、遠慮や上下関係への意識、「かっこ悪いかも」といった悲観が発生してしまいがちだからです。「離れ離れだからこそできるコミュニケーション」を当社では大切にしています。
GPTW 御社のパーパスやコアバリュー、ビジョンが作られた背景や狙いなどを教えてください。
須田様 創業から現在に至るまで3度つくりなおしています。当初は具体的な言葉でビジョンを共有する必要があったためその3つすべてが「事業内容」そのものでした。コーポレートエンジニアが社会に必要な存在であり、それを求める企業様が何万社とあり、この仕事を担うことはお客様に非常に喜ばれること。これに尽きるからです。
現在は社員が増え、組織の水準が上がったことで概念化された言葉でも共有できるようになってきました。組織の成長や変化に合わせてビジョンを見直す予定です。
GPTW 今回の「働きがいのある会社認定」をどのように活用されていますか?
須田様 主に採用活動でオープンにする形で活用しています。「働きがいのある会社認定」があることで会社に関心を持ってもらう一つのきっかけになっていますし、第三者機関からの評価ですから、それが安心感にもつながっているようです。
働きがいのある会社の認定について、社内では「それは取れて当たり前でしょ」という声が多く、「認定が取れて当然」という温度感があります。当社では、「なぜこの会社に入ったのか」「なぜこの会社に留まっているのか」という議論を、常日頃から行っています。その問いに答えられないのであれば、この会社に居続ける必要はありませんよね。だから必然的に、在籍している社員は全員、「働きがいを感じている」という結果になっているのだと思います。
GPTW 最後に、「働きがい」を高めるために大切だと考えていることをお教えください。
須田様 社員一人ひとりが「仕事の喜び」や「この会社で働く理由」を、自分の言葉で語れることだと思います。当社では今年から「みんなで採用」という取り組みを始めました。採用担当に同席する形で、採用面談の場に誰でも参加できるというものです。いざ参加すると、初心に帰ることができます。そして、あらためて「なぜこの会社に入ったのか」「なぜこの会社に留まっているのか」を一人ひとりが相手に伝えることが求められるので、問いに対する答えの解像度も高まるのです。
なお、「自分の言葉で語る」というスキルは、営業の場でも活かせます。当社では営業担当者はおりませんし、営業用の資料もありません。現場にいるそれぞれの人間が、各自で商談も行うからです。全員がこの仕事の重要性をしっかり認識・言語化しているからこそ、この仕組みが成り立っています。
最後に改めてとなりますが、「コーポレートエンジニア」という仕事は、「やりがいNo.1の仕事」です。それを一人ひとりが自分の言葉で言語化できるのが当社の大きな強みだと思います。まだまだ多くのお困りの中堅・中小企業様にとって価値ある役割を担い続けられるよう、今後も尽力します。