「働きがい」が優秀な人材を惹きつける
ローカル企業・ホリエの採用戦略とその成果
株式会社ホリエ(シエルホームデザイン)
代表取締役社長 堀江 龍弘様
更新日 2025.03.102025.03.10
「働きがい」が優秀な人材を惹きつける
ローカル企業・ホリエの採用戦略とその成果
株式会社ホリエ(シエルホームデザイン)
代表取締役社長 堀江 龍弘様
デザイン性と住宅性能を兼ね備えた住宅ブランド「シエルホームデザイン」を展開する株式会社ホリエ。「働きがいのある環境をつくることが、企業成長の土台」と語るのは、2019年に代表取締役に就任した堀江龍弘氏です。東北地方の住宅会社が、どのようにして優秀な人材を惹きつけ、企業文化を築き上げたのか。GPTWの「働きがいのある会社調査」に参画した経緯や働きがいのある環境づくり、そして「働きがいのある会社認定」の効果について語っていただきました。
<記事のポイント>
✓ローカル企業が優秀な人材を惹きつけるには「働きがい」が重要
✓大胆な権限委譲で、若手のうちから面白い仕事ができる
✓経営者はまず「ウチは働きがいを大切にする会社だ」と宣言すべき
GPTW 御社の事業概要とその特色を教えてください。
堀江様 私たちはシエルホームデザインという住宅ブランドを山形・宮城・福島を中心に展開しています。国際デザイン賞をはじめ、国内外で数多くの賞を受賞しており、断熱性や耐震性などの住宅性能にも優れている点が強みです。日本全国の大手ハウスメーカーを含む住宅性能ランキングにおいて、2,206社中1位を獲得した実績もあります。
住宅の提案においては、家具、カーテン、インテリア、アートなどトータルでご提案が可能です。企画設計から不動産開発、大工、コーディネーターまで自社に抱えて運営しています。長いバリューチェーンを持ち、内製化によるコストパフォーマンスと品質管理の向上に取り組んできました。
GPTW 働きがいのある会社調査に参画したきっかけを教えてください。
堀江様 働きがいを高めることは経営戦略のど真ん中にあるテーマです。当社は人口約6,000人の山形県飯豊町でスタートしました。正直なところ、大雪が降る地方の住宅会社に、優秀な人材が「ここで働きたい」と思うことはほとんどないと思います。そのため、労働条件で選ばれるのではなく、「この会社で働くことに価値がある」と感じてもらえるような企業文化を築くことが重要でした。
「働きがいのある会社調査」を知ったのは、経営者の先輩から、「GPTWを活用した従業員教育を実施し、組織力を高めている」という話を聞いたことがきっかけでした。「従業員の働きがいを可視化し、高めることが企業成長にもつながるのではないか」と考え、調査に参加することにしたのです。
実際に調査を受け、思っていたよりも良い評価をいただき、驚いたことを覚えています。というのも当初は、厳しい評価になることを覚悟していました。ウッドショックや原材料費の高騰により、住宅業界全体が大きな打撃を受けていた時期だったからです。売上自体は伸びているものの、粗利率の低下という課題に直面していました。
そのような状況下であったのにも関わらず、4年連続で「働きがいのある会社」としての認定を維持できたことは、非常に大きな意味を持っています。正直なところ、毎年「今年は無理だろう」と思いながらエントリーしているのですが、それでも認定を維持できていることには驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。
GPTW 働きがいを高めるために、具体的にどんな取り組みをしていますか。
堀江様 代表的な取り組みは、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透です。2019年に前代表から私に経営をバトンタッチしたタイミングで、私が考えたものを発表しようと考えていました。しかし、「私が決めてしまうのは、この会社らしくない」と考え直したのです。そこで、全従業員を巻き込んだプロジェクトとしてMVVを策定することにしました。 このプロセスを経たことで、MVVは単なる言葉ではなく、従業員一人ひとりの意思が反映されたものになり、「所有感」のあるものになりました。このMVVを浸透させるために、朝礼での唱和や勉強会の実施、MVVに則る優れた事例を全社で発表するなどの取り組みを継続的に行っています。
これに限らず、大胆な権限委譲により「本当にこの会社は自分にチャンスをくれる」と実感できる仕組みを作ってきました。たとえば、当社には人事部がなく、新卒採用の企画・選考プロセスを、興味のある従業員がタスクフォースとして担当しています。また、築古の物件をリノベーションしてシェアハウスをつくる「シェアハウスプロジェクト」では、2,000万円の予算を1年目の従業員4名に全権委任し、企画・設計・運営まで実施しました。最終意思決定も従業員に委ねています。
「1年目の従業員が、いきなりこんな大きなプロジェクトを任されるのか?」と思われるかもしれませんが、当社では「面白いことをやれる会社であること」が最大の強みと考えています。豪雪地帯の町から始まった会社だからこそ、大手にはできない自由度の高い経営で勝負してきたのです。
なお、当社には「働きがいを高めること」に特化した専門の部門もあります。「どうすれば従業員が誇りを持って働けるか?」を考えることがミッションです。
GPTW 「働きがいのある会社認定」をどのように活用していますか。また、どのような効果を感じていますか?
堀江様 会社の説明や採用活動、営業活動などさまざまな場面で積極的に活用しています。特に採用活動においては、「給料がいいから」ではなく、「やりがいを感じられる会社だから入りたい」という人に来てもらいたいと考えています。実際、「この認定があったから応募しました」という人も増えてきました。2022年は新卒採用に約450名もの応募があり、会社の価値観に共感してくれた6名を採用することができました。飯豊町に本社を置く企業にこれだけの応募が集まるのは異例だと思います。
中途採用に関しても、これまで考えられなかったような人材が集まってきました。たとえば、業界トップクラスのハウスメーカーで店長を務めていたような人が転職してくることもあります。もちろん、給与水準も上げていますが、それだけが理由ではないはずです。実際に、「働きがいのある会社」という認定があることが、転職を決める後押しになったという声も聞いていますし、やっぱり人は「働く環境」に惹かれて集まるものなんだと実感しています。
建築業界では職人不足が深刻で、多くの企業が人材確保に苦戦しています。にもかかわらず、当社には技術の高い職人や、営業のトップクラスの人間が集まってくる。その理由は何なのか。まず、職人の世界では「腕のいい人は、腕のいい人と仕事をしたい」という文化があります。当社は日本一の職人集団を目指しているので、「もっと上のレベルで仕事をしたい」という職人が応募してくれるのです。同じことは営業にも言えます。他社でトップを張れる営業は、どこへ行っても活躍できる。でも、そんな人たちがなぜうちで働くのか?というと、やっぱり「働きがい」なんです。
経営数字の面でも、おかげさまで少しずつ成長しています。地域性や住宅業界の厳しい状況を考えれば、ここまで伸びているのはむしろ珍しいかもしれません。「やりがいを持って働ける環境を作ることが、結果的に成長につながった」ということだと感じています。
GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてのメッセージをお願いします。
堀江様 経営者が「働きがいが大事だ」と言い続けることが何よりも大切だと思います。 当社では、MVVを策定する際に「働くを最高にしよう」というテーマを掲げました。常務が考えてくれた言葉なんですが、今でもとても大事にしています。
企業ごとに環境も違えば、業態も違うので、施策そのものはそれぞれの会社に合うものを見つけていく必要があります。でも、どんな会社でも共通して言えるのは、経営者が一貫して発信することで、従業員の意識も変わっていくということ。企業文化は、一度や二度の発信ではなく、一貫したメッセージの積み重ねで作られていくものなんだと思います。
だから、「働きがいを高めたい」と思ったら、まずは自分たちの会社にとってのキーメッセージを決めることから始めといいんじゃないでしょうか。そのメッセージが決まったら言い続けること。そうすれば、自然と企業文化が変わっていくはずです。