新潟の地域密着ゼネコンが挑む"働きがい経営"の再構築 株式会社阿部建設の事例

更新日 2025.08.202025.08.04

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社長の想いに、確かな裏付けを
第三者認証が「働きがい」を進化させる

株式会社阿部建設 
代表取締役社長 阿部 尚義 氏

新潟県柏崎市と上越市に拠点を構え、地域に根ざした建設事業を手がけてきた株式会社阿部建設。「社員がHAPPYになることこそ経営者の幸せ」という信念のもと、社員の声を起点に1on1面談やチームビルディング、新社屋の建設など多彩な取り組みを展開してきました。そんな同社がなぜ「Great Place To Work(R)働きがいのある会社調査(以下、働きがいのある会社調査)」に参画し、組織改革のさらなる一歩を踏み出したのか。代表取締役社長・阿部尚義様にお話を伺いました。

<抱えていた課題>
✓内製の社員満足度調査にマンネリ化を感じていた
✓調査項目が経営層への評価に偏っていた

<導入の決め手>
✓GPTWが掲げる「働きがい」という概念に共感した
✓「働きがいのある会社」調査・認定なら信頼性の高い客観的評価ができると感じた

>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る

地域密着の建設会社が、「働きがい」を軸に経営改革へ

GPTW 御社の事業概要とその特色を教えてください。

阿部様 当社は新潟県柏崎市と上越市に拠点を構え、建築・土木工事を中心とした事業を展開しています。創業から約80年、地域に根ざしたゼネコンとして、公共・民間を問わず数多くのプロジェクトに携わってきました。取引の約97%が既存顧客によるリピートであり、信頼関係を軸にした安定的な事業基盤を築いています。社員数は約100名で、そのうち35歳以下が約4割を占めるなど、若手の比率が高いのが特徴です。

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GPTW 御社にとっての「働きがい」の位置づけを教えてください。

阿部様 将来の次期経営者への事業承継を見据えたときに、「私がいなくなっても揺るがない会社のDNA」を構築する必要性を強く感じたことがあります。そのためには、経営者の個人的なキャラクターに依存せず、価値観や文化として働きがいのある職場を根づかせていくことが不可欠であると考えました。

その道しるべとなったのが、ドラッカーの『マネジメント』や、フランクリン・コヴィーの『7つの習慣』といった指針です。特に『7つの習慣』の中で最も基本となる「主体性を発揮する」という教えに共感しています。誰かに言われて動くのではなく、自ら考え、自ら選び取って動く。その働き方こそが、人間としての充実感や幸福感につながると確信しました。

働きがいのある職場とは、社員が主体的に動き、人とのつながりの中で高次の幸福感を得られる場所です。そして、社員がただ会社の方針に従うのではなく、自分の頭で考え、ミッションを自覚し、自ら動けるような組織であることが理想だと考えています。

社員満足度調査を10年以上継続して見えた“限界”

GPTW 働きがいのある会社調査に参画したきっかけを教えてください。

阿部様 当社では2012年から、自社で設問を作成した社員満足度無記名調査を実施し、社員の声をもとに毎年改善に取り組んできました。調査項目は最大で50項目におよび、社長である私自身が結果を分析し、優先順位をつけて必ず13件は改善を実行するというサイクルを10年以上続けてきました。

しかし、長年続けている中で制度疲労やマンネリ化といった課題も見えてきました。また、質問の設計が経営層への評価に偏っていたこともあり、社員に「会社が何でも応えてくれて当たり前」といった依存的な雰囲気が生まれてしまった側面も否めません。

そうした中で、GPTW Japan荒川氏の著書「働きたくなる職場のつくり方」を読む機会があり、GPTWが掲げる「働きがい」という概念が自分の価値観にしっくりと腹落ちしたのです。さらに、「働きがいのある会社」調査の「第三者認証」という仕組みは、主観に偏りがちな自社調査とは異なり、対外的な信頼性も高いと感じました。学生や求職者に向けたブランディング、あるいは既存社員に対するロイヤリティ強化という観点からも、客観的な評価の必要性は高まっています。こうした経緯で「働きがいのある会社」調査へ参画しました。

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「社員の声から生まれる改革」を実現する取り組み

GPTW 「働きがい」を高めるために、具体的にどんな取り組みをしていますか。

阿部様 まず、人事評価制度として、全社員を対象に1on1を毎月実施しています。評価する側・される側が年12回対話を重ねることで、承認欲求を満たし、「自分は会社に必要とされている」という実感につなげています。

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次に、年2回のチームビルディング・ワークショップを通じて、部門ごとに「私たちの存在価値は何か?」という問いに向き合い、課題の見える化や個人のミッションの共有を行っています。これは必ず全員参加とし、発言の否定はNG、役割分担を明確にしたうえで対話の場をつくるようにしています。

また、社員が自らのキャリアについて不安なく挑戦し続けられるよう、企業内大学を新たに設立しました。建築・土木・管理等の職種ごとに必要な知識やスキルを体系的に学べる場を提供することで、「この会社にいれば成長できる」という安心感につなげています。

さらに、社員が社員を推薦する社内表彰制度も導入。これは毎年の全社会議にて発表され、推薦理由とともに表彰し、現金を支給する仕組みです(今年度実績:約50件、総額約180万円)。頑張った人が正当に称賛されることでモチベーションが高まり、次に続く人材の育成にもつながっています。

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新社屋の設計にあたっては、GoogleAppleなど先進企業のオフィス文化を参考にしました。トレーニングルームやキッチンスペースなどを備えた設計とし、「未来に向けたみんなの職場をつくる」というコンセプトを掲げています。これは、働く空間そのものが社員の夢や成長意欲を後押しする環境であってほしいという思いからです。

実際に私自らが設計意図を社員にプレゼンし、「なぜこの場所をつくるのか」「どんな働き方をしてほしいか」を丁寧に伝えたことで、社員の共感や自発的な行動が生まれました。単なる施設整備にとどまらず、「空間を通じて価値観を共有する場」としての社屋づくりが、働きがい向上の一端を担っています。

第三者認証は、採用の武器であり、経営者の自信にもなる

GPTW 「働きがいのある会社認定」をどのように活用していますか。

阿部様 当社では「働きがいのある会社認定」を主に採用活動と社内エンゲージメントの向上の両面で活用しています。

まず採用面では、会社説明会や求職者向けのサイトなどでこの認定をしっかりと紹介しています。どの企業も自社の良さを語りますが、第三者機関の認定が社長の独りよがりではないことを裏付ける客観的な根拠となり、求職者に安心感や説得力を与えています。

また、これまで当社では、「社員がHAPPYになる会社をつくりたい」という思いのもと、1on1の実施や各種制度の整備など、働きがいの向上に向けた取り組みを継続してきました。しかし、「働きがいのある会社」調査を通じて気づかされたのは、「伝えているつもりでも、社員には十分に伝わっていなかった」という現実です。

実際、健康診断や人間ドックの補助、ワクチン接種支援といった制度を整備していても、それが当たり前になってしまい、自分たちが恵まれた環境にいることを社員自身が自覚できていない場面が多く見受けられました。

そこで、こうした状況を可視化し、経営側の意図を正しく伝える手段として、「施策一覧表」を作成・配布することにしました。制度の内容を一覧化し、毎月紙で配ることで、「会社がどのような取り組みを行っているのか」「どんな配慮がされているのか」を明確に伝えるようにしています。社員が自らの働く環境に対する理解と感謝を深め、働きがいの醸成につながることを期待しています。

GPTW 御社では「働きがいのある会社認定」の影響をどのように感じていらっしゃいますか?

阿部様 まず一つは、採用活動で手応えがあります。特に中途採用では、前職での経験から他社との比較ができる応募者に対する訴求ポイントになります。地方の建設業は採用応募がゼロも珍しくない難しい現状がありますが、当社は毎年68人の応募者がきており、これは他社と比べても非常に好調です。しかも、毎年離職はゼロではありませんが、ほとんどありません。「働きがいのある会社認定」が、この裏付けの一つになると思います。

社内においても、認定が社員の誇りやロイヤリティの向上につながっているのを実感しています。例えば、他社と一緒に仕事をした社員が「うちの会社の方が断然いい」と実感したと話してくれたこともありました。「働きがいのある会社」認定の取得をきっかけに、「隣の芝生は青く見えたけど、実際はうちの方がずっと働きやすい」と感じる社員が増えるのではないかと感じています。

そして、認定を取得したことで経営者としての自信がつきました。長年、社員満足度調査を自社で行い、地道に改善を重ねてきましたが、やはり「社内だけの取り組み」では限界もあります。その中で、第三者の視点から働きがいがある会社と評価されたことは、これまでの取り組みに対する確かな裏付けとなり、経営の方向性にも確信を持てるようになりました。

「働きがいのある会社調査」が、組織改革の第一歩になる

GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてメッセージをお願いします。

阿部様 社員の本音を聞くというのは、時に耳の痛いこともありますし、改善には時間も手間もかかります。でも、それを一つひとつ受け止めて、地に足をつけて取り組んでいくことで、着実に組織が変わっていきます。

「働きがいのある会社調査」にある60の設問は本当によくできています。自社で10年以上アンケートを続けてきた経験から見ても、非常にバランスがよく、会社と社員がともに成長していくためのヒントが詰まっていると感じました。ただし、60の設問すべてを気にする必要はありません。自分の会社でできそうなところから、ひとつずつやっていけばいい。3年かけて全部やる、でもいいと思います。

社員の声を聞き、それに向き合って改善していく。その積み重ねが文化になり、やがて会社のDNAになっていく。だから、ぜひ一歩踏み出してみてください。やる価値は、必ずあります。

株式会社阿部建設 代表取締役社長 阿部 尚義 氏

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新潟県柏崎市出身。家業である阿部建設に入社後、現場管理・営業・経営企画など多岐にわたる業務を経験し、のちに代表取締役社長に就任。地方ゼネコンとしての信頼と実績を礎に、若手人材の積極採用、社員満足度調査の導入、1on1ミーティングの確立、未来志向の新社屋建設、BCP対策の徹底など、働きがいを軸とした経営改革を牽引。「社員がHAPPYになることこそ、経営者の幸せである」という信念のもと、全社員との対話を重視した組織づくりを推進。採用広報・定着支援・中長期的な成長戦略の柱として、「働きがいのある会社」づくりに一層力を注いでいる。

株式会社阿部建設

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新潟県柏崎市に本社を構える総合建設会社。1947年創業(約78年の歴史)以来、建築・土木・住宅・リフォーム工事を中心に地域に根ざした事業を展開。現在、本社(柏崎市)と支店(上越市)の2拠点体制で約100名の社員が勤務。公共・民間どちらの案件でも豊富な施工実績を有し、長年にわたって地元企業・自治体から信頼を築いている。

本内容は2025年7月時点の情報です。

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