現状を定量でつかむのが改善の第一歩
調査を起点に働きがい経営のPDCAを回す
アウンコンサルティング株式会社
取締役 高橋 重行様
更新日 2025.09.162025.09.16
現状を定量でつかむのが改善の第一歩
調査を起点に働きがい経営のPDCAを回す
アウンコンサルティング株式会社
取締役 高橋 重行様
グローバルマーケティング(国内・海外向けの販売促進・AI活用支援)、メディアマーケティング(火災保険・地震保険の申請サポート)などのマーケティング事業で、顧客の成長を総合的に支えているアウンコンサルティング株式会社。「場所や時間に縛られず成果で評価する」を軸にリモート×スーパーフレックスを運用し、社員が誇りを持って働ける環境づくりを掲げています。そんな同社がなぜ「働きがいのある会社」調査に着目し、組織改革に活用しているのか取締役 高橋 重行様にお話を聞きました。
<抱えていた課題>
✓リモート中心・スーパーフレックス環境下で「働きがい」の可視化や課題設定に難しさを感じていた
✓エンゲージメントと事業成果の関係を示す、人的資本開示に使える第三者的で客観的な指標を模索していた
<導入の決め手>
✓「働きがい」を可視化し、課題を明確にできる調査だと感じた
✓定点観測によりエンゲージメントと事業成長を関連づけ、人的資本開示の指標の一つとして運用できる可能性を感じた
✓働きがい認定取得により、採用ブランディング効果が期待できると感じた
GPTW 御社の事業概要とその特色を教えてください。
高橋様 当社はSEOや広告等のマーケティング支援をはじめ、海外進出支援や多言語対応Webサイトの制作・運用など、企業の成長を総合的に支えるサービスを長年展開してきました。そこで培った集客ノウハウを活かし、自社でWebサイトを保有・運営し、集客からサービス提供までを一貫して行う事業にも取り組んでいます。
東京本社を拠点としつつ、全国各地で多様なメンバーがリモートで活躍しているのが組織の特徴です。なかには沖縄県・石垣島で働く社員もいます。リモートワークとスーパーフレックス制度により、場所や時間にとらわれず成果を出せる環境を整えてきました。女性社員の比率も高く、育児や介護、パートナーの転勤などライフステージによる制約があってもキャリアを継続できる制度・環境づくりに注力しています。
GPTW 御社にとっての「働きがい」の位置づけを教えてください。
高橋様 働きがいを高めることは、企業の成果や顧客価値に直結すると考えています。働きがいを持って業務に取り組む人とそうでない人とでは、生産性に明確な差があるからです。
どんなことに「働きがい」を感じるかは人それぞれですが、自分のやりたいことや実現したいことと、会社から与えられる業務やミッションとが重なる部分が大きいほど、その実感は高まるはずです。だからこそ、その「重なりの面積」を広げるために、できることを模索しています。
GPTW 「働きがいのある会社」調査に参画したきっかけを教えてください。
高橋様 第一の狙いは、働きがいという抽象的な概念を「見える化」することです。自由度の高い働き方を採用しているため、日々の様子を目で追いづらいという課題があります。感覚ではなく、客観的なデータで現状を把握し、強みと課題を正しく特定する必要がありました。その情報を制度設計につなげていきたいと考えています。
第二の狙いは、人的資本開示を本質的なものにすることです。開示のための開示ではなく、将来の業績や企業価値に結びつく「先行指標」を見つけたいと考えていました。全世界共通の枠組みで実施されるGPTWの調査はベンチマークとの比較が可能で、項目別の示唆も得られるため、「何を測り、どう改善し、何を外部に語るべきか」を考えるための有効なコンパスになると判断しました。
正直に言えば、働きやすさに関しては一定の自負があり、「働きがいのある会社」認定を獲得できる見込みもありました。認定という第三者の評価は、採用や広報の場面で安心・信頼の材料になるはずだという期待もあり、採用ブランディングへの活用も第三の狙いとして考えていました。
GPTW 「働きがい」を高めるために、具体的にどんな取り組みをしていますか。
高橋様 まず力を入れてきたのは「働きやすさ」の徹底です。全社をリモート中心・スーパーフレックスにし、5:00〜22:00の間で各自が月の所定労働時間を満たせば、時間帯や配分は自由にしています。育児や介護、配偶者の転勤など、場所や時間の制約がある人でも価値を発揮できる設計です。業務の可視化と定量的な評価制度も整えています。
また、非同期コミュニケーションが多いため、情報は極力ドキュメント化して可視化しています。加えて、雑談や相互理解の機会を意図的に設計。社内では、コミュニケーション施策としてラジオ感覚で聴ける動画コンテンツを継続し、インタビューやテーマ別雑談を撮影してSharePointに蓄積しています。これらにより、新しいメンバーが仲間の人となりをつかみやすくなり、声をかけるハードルも下がりました。現在は約190本まで増え、オンボーディングや横のつながりづくりに役立っています。
一方で、「働きがい」を育てるには、個人のやりたいことと会社のミッション・役割が重なる部分を広げる必要があります。調査を通じ、キャリアの解像度が高い人ほど成長機会を活用しエンゲージメントが高い一方で、そうでない人への支援が不足していることに気づきました。実際にはキャリアが明確でない人の方がマジョリティかもしれません。彼らに対する支援のあり方を経営陣や人事と議論できる土壌ができたことは一つの成果でした。
また、調査を通じて「称賛する文化」の弱さも課題として浮かび上がりました。受注報告にスタンプを押す程度の称賛はあっても、行動や学習プロセスを認め合う仕組みは十分ではありません。金銭的インセンティブだけで解決しない領域だからこそ、日常の言語化とフィードバックの質を高める取り組みを丁寧に設計していきます。
GPTW 「働きがいのある会社」認定をどのように活用していますか。
高橋様 認定そのものはゴールではなく、活用の起点です。取得して終わりではなく、結果をもとに仮説を立て、制度設計やコミュニケーション改善につなげています。実際、「称賛する文化」や「キャリア支援の不足」といった論点が明確になり、次の打ち手検討が進みました。
外部向けには、コーポレートサイトや採用導線で第三者評価として掲出しています。「働きがいのある会社」認定ロゴは、応募者にとって安心材料になりやすいようです。
人的資本開示では、総合スコアを提示するというよりは、調査結果と事業成果が結びつき得る項目から段階的に開示し、指標として運用できないか検討しています。
GPTW 「働きがいのある会社認定」の影響をどのように感じていますか?
高橋様 第三者評価としての信頼が応募者の安心材料となり、当社に関心を持つ層が広がりました。特に場所や時間の制約がある方からの応募の質が向上した手応えがあります。認定ロゴ掲出だけで定量的インパクトを断言できるほどの因果は示せていませんが、採用プロセスで効果を感じる瞬間は確かにあります。
今後も定点観測で調査結果の推移を追い、エンゲージメントの変化と定着率や生産性などの指標との関係を自社データで確認し、人的資本開示にも活かしていきます。「働きがいのある会社」認定は「胸を張るため」ではなく、「測る→気づく→直す」を回すための装置であり、その装置が動き出したこと自体が大きな成果です。
GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてメッセージをお願いします。
高橋様 働くことに対する価値観は大きく変化しています。かつて「正しい」とされた考え方が、現在では必ずしも妥当とは限りません。だからこそ、組織や人の課題をまず客観的に捉えることが重要です。
「働きがいのある会社」調査により、現在地を可視化できます。社内にどんな価値観があり、今後どのような人材を採用し、現メンバーにどんな価値創造を期待するのか――こうした論点をスコアとともに浮き彫りにし、対策へつなげることが重要だと考えています。これは企業の生産性向上や業績・企業価値の向上だけでなく、働く一人ひとりの活躍にも直結します。結果として、日本全体の力にも寄与し得るはずです。
現状を明らかにするのは勇気がいりますが、「今どこにいるのか」「これからどうするのか」を決めるための材料として、組織の状態を可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。