自社アンケートでは拾いきれない声を「見える化」
急成長のなかで自由と責任の文化を守り抜く
株式会社日本の窓(Windows to Japan)
CEO アブラハム・ルガシ様
更新日 2025.11.062025.11.06
自社アンケートでは拾いきれない声を「見える化」
急成長のなかで自由と責任の文化を守り抜く
株式会社日本の窓(Windows to Japan)
CEO アブラハム・ルガシ様
京都を拠点にBtoB専門のフルオーダーメイド旅行を手がける株式会社日本の窓(Windows to Japan)。社員が倍増する急成長期にあっても、自由度の高い働き方と個々の主体性を尊重する文化を守っています。その取り組みをさらに発展させるために「働きがいのある会社」調査を活用し、認定も取得。社内の改善だけでなく、採用や社外への信頼醸成にもつなげています。どのようにして「働きがい」を見える化し、次の成長へとつなげているのか、CEOのアブラハム・ルガシ様に伺いました。
<抱えていた課題>
✓働きがいのある環境づくりを重視し、その取り組みを発展させたいと考えていた
✓自社で社員アンケートを実施していたが、さらに深い部分まで本音を拾いたかった
<導入の決め手>
✓「働きがいのある会社」調査の世界的な認知度と信頼性の高さ
✓働きがいを高める上で重要な質問項目をもとに、社員の声をデータ化できること
GPTW 御社の事業概要とその特色を教えてください。
アブラハム様 BtoBに特化した完全オーダーメイドの旅づくりをしています。私たちの出発点は「どこへ行くか」ではなく「誰が来るか」。まずお客様(私たちのパートナーである海外エージェントのクライアント)のプロフィールを深く理解し、その人たちに最も合う体験と人を丁寧に組み合わせます。行程を並べる前に、ペース配分(ゆっくりか、アクティブか)、趣味嗜好、対話のスタイルまでを踏まえ、最適なガイドをマッチメイクする。創業以来、何千という行程を作ってきましたが、すべての旅がユニークで、同じものは一つもありません。
チームは日本人と外国籍が半々です。日本側は予約・手配など日本のシステム運用を、海外出身メンバーはエージェント対応やお客様との橋渡しを担います。社内は一般的な日本企業より自由度が高く、始業時刻をカードで厳密に切るような管理はしません。
大切なのは、社員がお客様に合わせて旅を仕立てること。一人ひとりが主体性と責任をもって、魂に触れるような手づくりの体験をつくり続ける。それが私たちの文化です。
GPTW 御社にとっての「働きがい」の位置づけを教えてください。
アブラハム様 日本の窓にとって一番の宝物は、そこに集う「人」です。事務所は約500㎡ありますが、そのうちの6割は仕事をする場所ではなく、ジムやキッチン、バーカウンターなどスタッフが休んだり遊んだりできるスペースになりました。

なぜかというと、お客様の特別な体験やハイエンド旅行を預かることもあり、日々の仕事は責任が大きく、トラブルなど大変なこともあるからです。そんな中で、もし社内の雰囲気が息苦しく居心地の悪いものだったら、みんな頑張れなくなってしまうでしょう。
私たちが向き合う相手は三つあります。お客様、地域や社会、そして一緒に働くスタッフです。その中でどれか一つが欠けていいわけではなく、同じように大切にしなければなりません。繰り返しになりますが、私たちが提供しているのは、人と人との出会いから生まれる「魂に触れる経験」です。その仕事を支えるスタッフ自身が楽しさや充実感を感じていなければ、お客様に感動を届けられません。だからこそ、私たちは「人」を大事にし、働きがいのある環境づくりに集中しているのです。
GPTW 「働きがいのある会社」調査に参画したきっかけを教えてください。
アブラハム様 これまでも私は、自分でアンケートを作ってスタッフに意見を聞いてきました。ただ、それではどうしても質問が粗く、深い部分まで従業員の声を拾いきれませんでした。もっと客観的で、体系的に社員の声を聞く方法を求めていました。
社員の声を集める仕組みとして、「働きがいのある会社」調査を選んだ理由は、その知名度と信頼性の高さです。世界的に評価のある調査だからこそ、結果に説得力がありますし、社外に向けても胸を張って示すことができます。しかも、調査を通じてスタッフの本音がデータとして「見える化」されます。その結果をもとに「何ができていて、何が足りないのか」を具体的に把握できる。特に私たちは仕事量が増えて社員数も急拡大しているので、マネジメントが追いつかない部分も出てきます。だからこそ、この調査を通じて課題を確認し、改善につなげることが大切だと思っています。
GPTW 「働きがい」を高めるために、具体的にどんな取り組みをしていますか。
アブラハム様 調査を通じて、マネジメント体制の課題が浮き彫りになりました。近年は、観光需要が急増し、社員も16名から40名規模に拡大しました。顧客からのリクエストの数も膨大になり、目の前の仕事を回すだけでも大きなエネルギーが必要です。どうしてもマネジメントのような重要な仕事が後回しになっている。調査を通じて、その点がはっきりと見えました。そのため、マネジメント人材の育成はこれからの課題です。
一方で、スタッフからはチームワークや柔軟な働き方への満足、会社のユニークな文化への共感が多く寄せられました。これは非常に励みになりましたが、私が考えていることや会社としての方向性が、もっと明確に伝わるようにしなければいけないとも感じました。そこで、社内コミュニケーションを増やし、経営層が何を考えているのかをもっと共有する取り組みを始めています。
また、社員の「成長の機会」をどう提供するかも重要な課題です。旅行づくりの仕事は細かい調整も多いですが、その中で個人が成長を感じられるように、マネジメントや語学の研修や学びの場を整えています。
社外での活動も、働きがいにつながる大事な要素です。たとえば、京都の窯元で陶芸クラスを設け、毎週スタッフが焼き物に挑戦したり、オフィスの遊び場で編み物クラブを開いたりしています。オフィスにはビールサーバーや大きなスクリーンもあるので、今後は映画ナイトなども企画したいですね。
GPTW 「働きがいのある会社」認定をどのように活用していますか。
アブラハム様 たとえば、補助金や助成金など、公的な制度を利用するときには「この会社がどういう組織か」を示さなければなりません。その際、「働きがいのある会社」認定を第三者の認証として提示できることは説得力のある材料となっています。
また、日常的なコミュニケーションの中でも認定を活用しています。メール署名には必ず認定ロゴを入れていて、海外のエージェントとのやり取りでも、ほかの国際的な認定マークと並べて表示。ホームページにはまだ掲載していませんが、署名を見た方から反応をいただいたことも。認知度の高い認定だからこそ、分かる人にはしっかり伝わります。
また今後、新しい人材を迎えるときに「働きがいが認められている会社だ」と示せれば、安心材料にもなるでしょう。これからは採用や社外への発信のなかで、さらに積極的に活用していきたいと考えています。
GPTW これから働きがいを高めていきたい企業に向けてメッセージをお願いします。
アブラハム様 社員に良い仕事をしてもらうために給料はもちろん大切です。しかし、それ以上に会社の文化こそが本当に大切だと思います。文化が強ければ、人は安心して力を発揮できますし、結果的に業績やお客様との関係性にも良い影響が生まれます。
実際に私たちもできるだけの報酬を還元する努力をしており、昨年は7か月分の賞与を出すことができました。それもすべて、人が力を存分に発揮できる文化があってこそ実現できたことです。
会社を支えているのは仕組みや商品ではなく「人」。だからこそ、人を中心に置いた経営をしなければなりません。今はどこでも人材の採用が難しく、ひとり辞めてしまうと組織全体に大きな負担がかかります。だからこそ、目の前の人を大切にし、感謝し、働きがいを感じられる文化をつくることが一番の投資だと思います。
働きがいを高めることは、会社にとっても社員にとっても、そして社会にとっても必ずプラスになります。人を大切にする文化を築けば、必ず会社は強くなれる。私はそう信じています。
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