ヨガの源「瞑想」と徹底的な「理念浸透」で
社員の幸福度を向上させ、働きがいのある組織をつくる
株式会社LAVA International
取締役 名波 花子 様
更新日 2024.10.312019.06.28
ヨガの源「瞑想」と徹底的な「理念浸透」で
社員の幸福度を向上させ、働きがいのある組織をつくる
株式会社LAVA International
取締役 名波 花子 様
身体の柔軟性を高め、発汗を促す温湿度の中でゆったりとポーズをとる「ホットヨガスタジオLAVA」を全国で展開している株式会社LAVA International。2019年度版 日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work® Institute Japan)において、大企業部門(従業員数1000名以上)8位に選出されました。社員の幸福度向上と理念の浸透が同社の働きがいの源泉になっているそうです。取締役の名波花子様に、ヨガスタジオを運営する会社ならではのユニークな取り組みを伺いました。
>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る
株式会社LAVA Internationalは、ホットヨガスタジオLAVAという直営スタジオを全国で430店舗以上運営しています。インストラクターは約2500名で、ほぼ全員正社員です。2004年に渋谷でホットヨガスタジオを立ち上げて、現在15年目になります。
8年前、私がそれまで勤めていたリクルートを退職し、LAVAに入社した時に、大変驚いたことが二つあります。一つ目は、社員がとても忙しそうなのに、とにかく楽しそうなこと。店舗運営のシステムが確立しておらず混沌とした状態でしたが、嫌々働いている人は一人もいなくて、何か問題があったときも笑顔で乗り越えていく。すごい会社だなと思いました。
二つ目は、施策に対する店舗スタッフの取り組みスピードの速さです。次々と施策が生まれるスピードはもちろん、すぐに取り組む実行力がありました。これらすべては、振り返ると理念に基づいた経営のお陰だったんだなと思っております。弊社にはお客様に対して提供したい価値を掲げた理念と、社員の行動指針につながる理念があります。特に後者については、採用基準にも直結しています。その理念は、「幸せになるための要素」から構成されています。なぜなら自分が幸せでないと、お客様を幸せにできないからです。
幸せになるための要素は4つにまとめられています。まずは感謝すること。次に素直な心で行動すること。続いて、自分のいいところを認め、自分らしくあること。そして最後は「何とかなるさ」という楽観性です。行動の結果に一喜一憂せず、成功するまでチャレンジしてみよう、自分自身も幸せに生きよう、という価値観を大切にしています。
従業員満足度を高めるためには、第一に自分自身が幸せであることが大前提だと思います。なぜ幸せにこだわるのか。アメリカのイリノイ大学の研究結果によると、幸せな人ほどパフォーマンスが高いことが分かっています。生産性は約3割向上、クリエイティビティに関しては約3倍になるそうです。さらに年収も高く、昇進も早く、健康寿命も長いとされています。「成功しているから幸せなのでは」と思いがちですが、幸せな人が成功するという順番なのだそうです。
では幸せを感じながら生きるために、何をしたらいいのでしょうか。当社では2012年からある習慣を導入しています。その習慣を始めてから、業績の伸びが大きくなりました。2012年の戦略発表会で打ち出された方針は「瞑想」の浸透です。瞑想をすると健康増進や幸福度向上、自己管理能力向上につながるとして、近年は大手企業の研修にも取り入れられています。
私自身、瞑想をすると脳がクリアになり、生産性が向上している実感があります。そもそも、ヨガも瞑想状態に入ることが目的でつくられたものです。瞑想に入るために、ずっと座れる態勢をつくったり、心地よい体をつくったりするために体を動かすところから、現在のヨガにつながっています。そのため、インストラクター自身もレッスン前に必ず瞑想の時間を設け心と体を整えてからレッスンに入るようにしているのです。
理念の浸透度合いを確かめるために毎年必ず、2500名の従業員に対して幸福度調査を行っています。質問項目は大きく二つ。理念が明確に頭の中にあるのか、理念に沿って行動しているかどうかです。社員の約9割が、理念が明確で、理念に沿って行動していると回答しています。
弊社は過去に2度企業理念を見直してきました。一度目は分社化の前に各事業部ごとの理念を急いで作ったことがあったのですが、それを見たインストラクターから「しっくりこない」という意見が続出。しかも、活躍している社員ほどそういった声が大きい状態で、まるで浸透しませんでした。
そのため、腰を据えて理念を作り込んだのが2016年のこと。働きがいの大前提となるのは、一緒にいる仲間と同じ目標に向かって進むこと。経営の想いだけではなく、社員やお客様の声を盛り込み、しかもシンプルで覚えやすいものになるように作り込みました。具体的には、お客様、社員、その他の関係者に対するアンケートで1万件ほどの声を集めています。その回答を各部署のリーダーが読み込み、LAVAに求められていることや、LAVAらしさを集約。その内容を踏まえて、活躍している社員が納得するものをつくりました。その結果、自然と社員が覚え、唱和したくなるような理念になりました。
人事施策全てが理念を軸に一気通貫するように設計しているのも弊社の強みです。人事施策には大きく分けて採用・育成・評価・賞賛の4つがありますが、もっとも重要なのは採用時の見極めです。採用基準は企業理念とのマッチング。理念に沿って活躍した人を採用したかどうかが、採用担当者の評価になります。入社6ヶ月後に、理念に沿った行動ができているか、顧客満足度や店舗での評価を見極めて、採用担当者にフィードバックするという仕組みです。実際に理念に共感しているか否かで入社後の成長スピードも全く変わります。
育成では体験型の研修を重要視しています。研修を通じて、自分が理念に基づいて行動ができているか、という気づきを促すことが目的です。社員の評価も理念とリンクしています。お客様に約束した価値を提供できているのか、お客様のアンケートの数値を評価につなげています。
そして、最後は賞賛です。理念に共感する人を採用し、育成し、評価して賞賛するという流れを大事にしています。この賞賛を弊社は盛大に行っています。年1回のLAVA conventionでは、社員が憧れるような舞台を用意。表彰項目は理念と結びつけられており、理念を体現した人を表彰しています。そして、その姿を見て、社員たちはあらためて自分の目標を立てるという好循環が生まれています。
日常的なところでは、「褒めるカード」という制度もあります。いわゆる感謝カード、ありがとうカードようなものです。この褒めるカードは、褒めるポイントが企業理念や行動指針に沿った行動が中心となっています。「この人は企業理念のどこを体現しましたか」という項目があり、そこにチェックを入れて本人に渡すという仕組みです。
ここまでご紹介した通り、弊社は小さなことから大きなことまで、さまざまな取り組みを通じて企業理念の浸透に取り組んできました。従業員満足度を高めるためには、社員自らが「幸せである」と実感しながら働いていることが大前提です。その上で、採用・育成・評価・賞賛といった人事施策は、理念を軸に一気通貫させることが大事であり、いつでもどこでも理念を意識し、自分の行動が理念に沿っているかどうか確認できる状態をつくることが、働きがいのある会社づくりの重要なポイントになると考えています。