GPTWの調査で「組織変化の兆し」をキャッチ!電通総研の事例

更新日 2024.10.102024.10.01

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人材採用強化により全社員の3割が勤続3年未満
半年間のオンボーディングで活躍の基盤を構築

株式会社電通総研
人事戦略本部 人事部 部長 冨岡 広 様
人事戦略本部 人事部 人事労務グループ 寺地 百合子 様

2024年1月1日、株式会社電通国際情報サービス(ISID)は社名を株式会社電通総研に変更し、新たなスタートを切りました。同社は長期経営ビジョン「Vision2030」にて、「テクノロジー、業界、企業、地域などの枠を超えたX Innovation(クロスイノベーション)によって社会や企業に変革を起こす存在となることを目指す」としており、人的資本強化を重要な戦略に位置付けています。2023年版、2024年版、2025年版の「働きがいのある会社」調査に参画し、「働きがいのある会社認定」を3年連続で取得。今回は、同社の人事部長の冨岡氏と人事労務グループの寺地氏に、働きがいのある職場づくりの取り組みやGPTWの調査活用について伺いました。

<記事のポイント>
✓社員こそが重要な経営資本。
✓勤続3年未満の社員が全体の3割。入社後のオンボーディングに注力。
✓働きがいのある会社調査の結果はぬくもりのある言葉で社員にフィードバック。

>>>「働きがいのある会社認定」について詳しい情報を見る

システムインテグレーターの枠組みを超えた「X Innovator(クロスイノベーター)」へ

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GPTW 電通総研の成り立ちと事業内容について教えてください。

冨岡様 弊社は電通国際情報サービス(ISID)として1975年に設立されました。設立当初は米国のGEGeneral Electric)と電通の合弁企業であり、電通グループの中でも異色の存在でした。GEが世界中で提供していた商用タイムシェアリングサービス(大型コンピューターを電話回線を通じて共同利用する仕組み)を日本企業へ提供したことが私たちの祖業です。当時として最先端のテクノロジー上に、企業の業務システムを構築して利用していただく、現在のクラウドコンピューティングと同様のビジネスを立ち上げました。その結果、大手銀行や自動車メーカーなど、日本を代表する大手企業が私たちのお客様になってくださいました。このようにネットワークサービスから発展し、システムインテグレーターとしての道を切り拓いてきた歴史があり、いち早くシステムインテグレーターを名乗ったのが電通総研です。

設立以来、自己変革によってビジネスを発展し続けてきましたが、電通総研は、202411日(月)に社名を変更し、企業をはじめ、官庁・自治体や生活者を含めた「社会」全体と向き合い、「システムインテグレーション」「コンサルティング」「シンクタンク」3つの機能の連携により、課題の提言からテクノロジーによる解決までの循環を生み出し、より良い社会への進化を実装することを目指しています。

GPTW 中期経営計画「電通総研 X Innovation 2024」を掲げていますが、経営戦略と人材戦略について、どのような取り組みを行っているのか教えていただけますか?

冨岡様 社会の変化、技術の変化や進展に伴い、お客様のニーズも変わりつつあります。例えば、製造業のDXではなく、カーボンニュートラルや少子高齢化に伴う人手不足など社会課題を踏まえた上流からのビジネス変革が求められ、システムインテグレーション、コンサルティング、シンクタンクの3つの機能を連携させた支援が必要になるなどです。そのため、従来の事業領域の深耕はもとより、様々な変化を新しい事業領域の拡張へつなげる「拓くチカラ」を始め、新しい能力の獲得「創るチカラ」、収益モデルの革新「稼ぐチカラ」、そして経営基盤の革新「支えるチカラ」といった、4つの「自己変革(チカラの強化)」を進めています。

新卒・中途の社員を半年間のオンボーディング施策で馴染ませる

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冨岡様 人材戦略面のお話をしますと、我々のようなIT企業は例えば工場などの生産設備を持っている訳ではありませんので、社員こそが重要な経営資本となります。そのため、社員一人ひとりに如何に生産性高く創造的・独創的に働いてもらうかが重要です。社員1人当たりの売上高や利益額は人的資本経営が叫ばれるずっと前から意識していますし、より多くの成果を発揮した社員にはそれが報われるよう、処遇にもメリハリをつけています。会社がきちんと利益を出せたならば、その分社員にもきちんと還元する、という透明性を持たせた業績連動型賞与の仕組みも設定しています。ここ数年、社会的なDX推進の流れから業績が安定し、年収に占める賞与比率が高まったことで、逆に社員の生活の安定性を低下させることを危惧していました。従って今年度制度改定を行い、年収に占める賞与比率を下げて基本給を上げる処遇バランスの見直しも行いました。

寺地様 弊社の特徴として、勤続3年未満の社員が全体の3割を占めている、という点があります。ここ数年にわたり人材採用を特に強化していますが、採用するだけではなく、入社後のオンボーディングについても強化を進めてきました。電通総研のミッションやビジョンを動画で視覚的に伝えるなど、新規入社者がこの会社の成り立ちや文化を短期間で理解できるよう工夫を凝らしています。オンボーディング期間の6ヶ月間でまず組織に適応し、自分に期待される役割を明確に認識し、培ってきたキャリアを元に活躍してもらうためのサポートを用意しています。

例えば弊社が独自開発した、人をタグで可視化する「ENGAGE TAG」というアプリケーションも社内での人脈形成に役立てられています。タグには、人となりを表すパーソナルタグ、仕事経験や専門スキルなどのスキルタグ、趣味タグなどがあります。普段の業務では出会うことがない社員同士がタグを通して交流することができます。このアプリを活用して、マッチングされ昼食を一緒にとる機会を提供したり、タグをシールにして洋服に貼って参加し、同じ趣味や関心を持つ人とつながる「タグパーティー」を開催したりしました。オンラインだけでなく対面でのコミュニケーションの良さにも改めて着目しています。

このように組織適応を重視して、入社後の最初の半年間は、会社の文化や人脈を築くことに重きを置いていますが、「人間魅力」を大事にするこの会社の組織風土がこのようなところにも強く出ています。

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「働きがいのある会社」調査で組織の変化を可視化する

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GPTW 働きがいのある会社」調査を実施するに至った理由を教えていただけますか?

冨岡様 弊社はこの数年人材採用を強く推し進める中で、知らず知らずのうちに人員構成が大きく変化しており、前述した「勤続3年未満の社員が全社員の3割」はその最たる例です。私のように社歴が長い社員は昔の感覚が染みついていて、若い世代の変化を十分に把握しきれていないところがあります。そこで、この調査を通じて、社員の意識や組織の変化の兆候を把握できるのではないかと期待しました。

調査の結果、報酬への納得感や主体的に挑戦できる風土が評価される一方で、経営層への信頼度が相対的に低いことも分かりました。弊社はボトムアップ型のカルチャーが強いため、ある意味当然の結果かもしれません。その一方で「もっと経営層の考えを知りたい」という声があがっていることも事実です。昨年からは社名変更というタイミングもあり、社長メッセージの発信や経営層と社員の座談会などを通じて、経営層とのコミュニケーションを強化しました。今年、その効果がどう反映されるか楽しみです。

GPTW 「働きがいのある会社認定」はどのように活用されていますか?

寺地様 「働きがいのある会社認定」については、採用ページをはじめ、さまざまな場面でPRしていますが、まだ訴求・活用の余地があると考えています。この認定をきっかけに、弊社の働きがいのある風土がさらに注目されるようにしたいです。

また、認定の周知よりも重要なのは「働きがいのある会社調査」のレポートを公開する際に、どのように伝えるかだと考えています。単に共有するだけでなく、アンケート協力への感謝から始め、調査の目的やその結果を活かしてどのような組織を目指しているのか、一連のストーリーとして伝えたいと考えています。そしてそれを、人事部という組織が無機的に発信するのではなく、社員のひとりとして、出来るだけぬくもりのある言葉で伝えることで、勤続年数が短い社員であっても、その心に届くのではないかと思います。ようやく「働きがいのある会社調査」が社内に浸透してきた段階ですので、今後が楽しみです。

GPTW 最後に、人的資本経営や理想の職場づくりに関する思いを教えていただけますか?

冨岡様 私はもともと営業職からキャリアをスタートしたのですが、「企業理念を再構築しよう」と提言したことをきっかけに、縁あって現在の役割を担うことになりました。人事に関わることになった以上、この企業理念を社内全体にしっかりと浸透させたいと考えています。

弊社の最大の強みは「人」です。弊社の社員は人間としての魅力に溢れ、私自身営業時代に、お客さまから「君たち面白いね」とよく言われてきました。私たちは、ずっとそう言われ続ける会社でありたい。加えて、社会の進化や発展に貢献し、価値を提供できる集団でありたいと考えています。人間的な魅力を失わずに、組織の拡大と付加価値の向上を実現するのは非常に難しいことですが、だからこそ「人間魅力を持った人材」を採用し、社員が成果を出せる環境を整えることで、「面白いことができる会社」であり続けたいです。

株式会社電通総研

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人事戦略本部 人事部 部長 冨岡 広様 プロフィール
1996年、株式会社電通国際情報サービス(現電通総研)に新卒入社。製造業のものづくり領域のDXを推進する事業部で一貫して営業畑を歩み営業部長などを歴任。2018年、データビジネスの企画推進責任者の傍ら、新企業理念策定に関わり、2020年1月より一転して人事部へ異動、現在に至る。(写真左)

人事戦略本部 人事部 人事労務グループ 寺地 百合子様 プロフィール
2008年、広告会社に新卒入社。マーケティング職、営業職を経て、新人教育より人事領域に関わる。その後転職し、コンサル会社での人事にて働き方改革対応等を経て、2023年4月より株式会社電通国際情報サービス(現電通総研)へ中途入社し、現在に至る。(写真右)

株式会社電通総研

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前身の電通国際情報サービス(ISID)、電通と米国General Electric Company(GE)との合弁で設立され、パソコンもインターネットもなかった中で民間初のTSS(タイムシェアリング・サービス:コンピュータの共同利用サービス)というユニークな事業スタート。インターネットの普及により、世の中やビジネスモデルが急速な変化を遂げる中、いち早く「システムインテグレーター」という言葉を標榜し、事業の変革とサービスの拡充を図る。2024年1月1日、電通国際情報サービス(ISID)から「電通総研」へと社名変更。システムインテグレーション、コンサルティング、シンクタンクの連携により、「価値の創出」と「顧客体験の向上」の両面から最適なソリューションを提供。

本内容は2024年10月時点の情報です。

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