女性が管理職になるために「働きやすさ」より大切なこと

2018.02.02

GPTWが行う「働きがいのある会社」調査に参加した企業について女性管理職比率の高い職場の特徴を調べたところ、女性管理職比率は、ワークライフバランスや労働環境が整備されている“働きやすさ”のある職場よりも、経営・管理者層と信頼関係があり、仕事の誇りや連帯感を感じることができる“やりがい”のある職場において、より関係性が高いことが明らかになりました。

日本の管理職における女性の割合は世界でも大変低いレベルに留まっており、多くの企業では増やす努力がなされています。女性管理職比率の低いお客様に、「なぜ女性の管理職が少ないのですか?」とお尋ねすると、「管理職を任せられるような能力・スキルをもった女性が少ないから」といった答えが返ってきます。

また「女性にとって働きやすい環境や制度を十分整備したものの、なかなか管理職になりたがらないから」といった回答もあり、働きやすさのある職場であっても、本人の意識が変わらない課題も指摘されています。

入社時には男女間の能力やスキルの差はなかったことを考えると、「女性自身が管理職になりたいという意欲がない」ために、管理職になるための準備(能力・スキルの獲得)をせず、その結果、管理職候補人材の選定という段階では、男性との差が生まれてしまっているのではないか?という仮説も考えられるでしょう。

そこで、女性が管理職になるためには、どんな要素と関連性があるのか確かめてみるために、今回のレポートでは、“働きやすさ”と“やりがい”という2つの軸から、職場を4つのタイプ(参照図①)に分け、女性管理職比率との関係について分析を行いました。

調査概要については、文末を参照

参照図① “働きやすさ”דやりがい”4つの職場タイプ

高 働きやすさがある 高 やりがいがある Aいきいき職場 働きやすく、やりがいもある Bばりばり職場 働きやすさはないが、やりがいがある Cぬるま湯職場 働きやすいが、やりがいがない Dしょんぼり職場 働きやすくもなく、やりがいもない

結果概要

分析の結果、女性管理職比率は、A「いきいき職場」(“働きやすく”、“やりがい”もある)、B「ばりばり職場」(“働きやすさ”はないが、“やりがい”がある)において高い値を示しました。なお、この2群間には統計的に有意な差は確認されていません。

一方で、最も低くなったのは、D「しょんぼり職場」(“働きやすく”もなく、“やりがい”もない)であり、次にC「ぬるま湯職場」(“働きやすい”が、“やりがい”がない)が低い結果となりました。なお、D「しょんぼり職場」と、A「いきいき職場」およびB「ばりばり職場」との間には、統計的に有意な差がありました。(参照図②)

参照図② 4つの職場タイプごとの女性管理職比率

D しょんぼり職場 12.9% C ぬるま湯職場 15.3% B ばりばり職場 22.8% A いきいき職場 20.7%

“やりがい”のある職場と、女性管理職比率は関係が高い

今回の分析から、C「ぬるま湯職場」やD「しょんぼり職場」よりも、A「いきいき職場」やB「ばりばり職場」において、女性管理職の比率が高くなったことから、女性管理職の比率をあげる上で重要なポイントは、“働きやすさ”よりも、“やりがい”にあるといえそうです。

そこで、“やりがい”のあるA「いきいき職場」とB「ばりばり職場」について、職場のイメージを考えてみたいと思います。

A「いきいき職場」とB「ばりばり職場」では、従業員は責任のある仕事が任されていて、裁量も高く持たされています。また、会社の成長や目標達成を通じて、自分も成長できることに喜びを感じることも多いと考えられます。

女性本人が管理職になりたがらない理由として、“責任が重い仕事であるから”と言われることがありますが、一概にそうとも言えないかもしれません。確かにやりがいや面白みを感じない仕事なのに、責任“だけ”が重いということであれば、男性・女性に関わらず、誰もそんなことを引き受けたがらないでしょう。しかし、“やっていることに意義や意味を感じられる仕事がしたい”、そして、“意味のある仕事に対してはより大きく貢献していきたい”という気持ちは男女関わらず多くの人が持っているものでしょう。そして、その結果のひとつとして管理職になるという選択肢があるのです。“やりがい”の高い職場では、日常的に一人ひとりが担っている仕事の意味や意義が語られたり、感じたりできる場面があります。こうしたことから、女性も自然と「管理職となり、より大きな貢献をしたい」という気持ちが生まれ、意欲的にその準備を行うのではないかと考えられます。

さらに“やりがい”のあるA「いきいき職場」とB「ばりばり職場」では、メンバー一人ひとりが自律して働くことができ、チーム内の連帯感も高く、必要なときには助け合う職場であるので、管理職が孤立してしまうことも少ないと思われます。カルチャーとして、公平感があり、また多様性が尊重されているので、女性だからと言って、不利な立場になることは少ないでしょう。こうした職場では、管理職であっても、なにか困った状況があれば、部下や他の管理職といった「周囲からの支援」を期待することができるのです。結果として、積極的に管理職を引き受ける女性が増えてくることも考えられるでしょう。

働きやすさは不要か?

では、女性管理職にとって、職場に“働きやすさ”は、必要ではないのでしょうか?

今回の分析では、女性管理職比率は、A「いきいき職場」とB「ばりばり職場」の両方において高い結果となりました。しかしながら、両者の平均得点を項目別に比較してみると、A「いきいき職場」ではB「ばりばり職場」よりも、「精神的に安心して働ける」「長く働きたい」という点について、数値が高く得点差も大きく出たことは注目するべきポイントです。(参照図③)

参照図③ 「精神的な安心感」、「キャリアの継続」に関する比較

(%)

A
いきいき職場
B
ばりばり職場
得点差(A-B)
この会社では、精神的に安心して働くことができる 66.5 45.1 21.4
私は、この会社で長く働きたいと思う 73.0 57.7 15.3

つまり、B「ばりばり職場」は、女性管理職が多く活躍している職場であることは事実であるものの、精神的な安心感や、キャリアの継続についてはやや不安を持っている状況であると指摘できます。こう考えると、長期的な視点に立てば、“働きやすさ”が整備されていることは、女性の管理職が長く活躍するという観点においては、不可欠な条件であることを示していると言えるでしょう。

管理職として活躍する女性が、一時的でなく、同じ組織において継続的に活躍し続けるためには、制度やしくみを整備していくなど“働きやすさ”も組織として追求していかなければならないと考えられます。

まとめ

今回の分析から、多くの女性管理職が生まれる職場は、“働きやすさ”を議論する前に、“やりがい”がある職場であることが重要であると言えそうです。しかしながら、当然、精神的にも安心して、長く働き続けるためには、制度や仕組み、労働環境といった働きやすい環境も整えていくことが欠かせません。その意味で、“働きやすさ”と“やりがい”を兼ね備えた「働きがいのある職場」をつくっていくことが、多くの女性管理職が活躍する土壌として求められているでしょう。

女性にとって「働きがいのある職場」とは、働く女性本人が「管理職になる」という選択肢を自然と思い浮かべることができ、なってからも管理職として力を発揮できる「周囲に支援される」職場であるのです。

調査概要

  • 1)
    調査項目と回答方法
    • GPTWの調査は58の設問から構成され、従業員の働きがいを「信用」、「尊敬」、「公正」、「誇り」、「連帯感」の5つの要素で測定しています。(参考:「働きがい」の要素
    • 回答の選択肢は5段階(1=「ほとんど常に当てはまらない」、2=「しばしば当てはまらない」、3=「時には当てはまらない/時には当てはまる」、4=「しばしば当てはまる」、5=「ほとんど常に当てはまる」)あり、スコアは「4」または「5」を回答した人の割合(肯定回答率)を示しています。
  • 2)
    手続き
    • 上記58問について因子分析を行い、“働きやすさ”の因子として抽出された設問の平均値を用いて“働きやすさ”得点とし、それ以外の設問の平均値を“やりがい”得点としました。それぞれに含まれる主な内容は、以下のとおりです。

“働きやすさ”

「ワークライフバランス」・「労働環境の整備」・「福利厚生」など

“やりがい”

「経営・管理者層への信頼」・「仕事への誇りや意味づけ」・「連帯感や一体感」など

各企業の58問の調査結果について、上記“働きやすさ”得点と“やりがい”得点を算出し、それぞれの得点の高低により、各企業を4つのエリア(参考図②)にプロットしました。 各エリアの出現率は、以下のとおりです。

やりがい
低群 高群
働きやすさ 低群 91
38.6%
27
11.4%
118
50.0%
高群 27
11.4%
91
38.6%
118
50.0%
118
50.0%
118
50.0%
236
100.0%

その上で、それぞれのエリア内の企業群について、女性管理職比率を割り出し、比較しました。

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