SDGsの達成に向けたGPTW指標活用のすすめ
更新日 2024.11.262021.06.14コラム
世界の流れを受けて、日本企業もESGへの配慮やSDGs達成に向けた活動に力を入れ始めています。しかしながら、2021年現在では積極的に取り組んでいるのは一部の大手企業など先進的な企業に限られます。なお、SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」のことであり、2015年9月、国連サミットで採択された、国連加盟193か国が達成を目指す2016年から2030年までの国際目標です。SDGsでは17の目標と、それを達成するための169のターゲットを設定しています。(詳細はこちら)
では、どうしたら企業はSDGs達成に向けた活動を具体化していけるのか。GPTWが提唱する働きがいのある会社モデル、およびそのモデルを基にした設問のうち、SDGsの達成に向けた非財務指標として有効であるものについて考えてみます。
SDGs達成に向けて優先課題と目標の設定を行う
昨今、「財務情報」だけでなく、「非財務情報」も考慮して投資を行うこと、その中でも特に環境(E:Environment)、社会(S:Social)、企業統治(G:Governance)の3つの要素を投資対象の決定に取り込むESG投資が活況です。日本政策投資銀行(DBJ)も2021年5月、今後5年間の投融資総額のうち、約4割の5.5兆円をESG分野に充てると発表しています。また、SDGsに紐づけたESG投資を行う機関投資家が増えてきていると言われています。その流れを見ても、今後SDGsの達成に向けて動きを加速させる日本企業は増えると考えています。
SDGs達成に向けて大切なことは、現状と目指す姿の可視化です。企業がSDGsの達成目標を設定する際、サプライチェーンに基づいて自社がSDGsに貢献できる領域を整理、言語化していくことが一般的なプロセスとなっています。例えば、「⑬気候変動に具体的な対策を」という目標に対して、企業活動の中で出る二酸化炭素やごみを削減し、この目標達成に貢献することを宣言するという具合です。他にも、女性管理職比率・女性採用比率を高めることや、働きがいを感じている従業員の割合を調査・公表し、将来の数値目標やKPIを明示することで、SDGsの目標のうち「⑤ジェンダー平等を実現しよう」や「⑧働きがいも経済成長も」をカバーするとしている企業をよく見かけます。それらの目標は、各社のホームページや統合報告書・アニュアルレポート等において現状と目標を開示する形で記載されています。
非財務指標としてGPTWスコアを活用する
GPTWは「働きがい」に関する調査・分析を行い、一定の水準に達している企業を働きがいが高いと認定する活動を世界60カ国以上で行っている専門機関です。また、日本を含む各国で年1回、認定企業の中から特に働きがいの高い会社をランキング形式で発表しています。
その活動を通じて、SDGsの達成に向けて私たちが提案したいことは、「⑤ジェンダー平等を実現しよう」や「⑧働きがいも経済成長も」の目標を達成するために、女性管理職比率や女性採用比率だけでなく、ジェンダー平等の意識を問う従業員向けの調査設問スコア(特にその設問における男女の認識差)や、総合的な働きがいのスコア、もしくは全設問平均をKPIとしてはどうかということです。また、「働きがい認定」の取得やランキング入りを1つの目標としてもよいでしょう。
私たちは2021年版 日本における「働きがいのある会社」女性ランキングを発表する際、GPTWのジェンダー平等を問う設問について、ランクイン企業とそれ以外における男女の認識差を分析しました。その結果は、女性ランキングのランクイン企業は「性別に関係のない正当な扱い」が高いレベルで実現されており、男女の認識差が小さいことも特徴であることがわかりました。一方で、働きがいを高めたいという意識を持ち、GPTWの調査・ランキングに参画している日本企業であっても、ランクインしていない企業(ノンベストカンパニー)では、ジェンダー平等に向けてまだまだ課題はあるということが見て取れます。
SDGsの達成に向けて、例えば男女のジェンダー平等に関する認識差を縮めていくこと、そして働きがいに関するスコアを男女共に高めていくことをKPIとし、「⑤ジェンダー平等を実現しよう」に貢献する。そして多様な人材が活躍することでイノベーティブな組織風土を構築し、変化に対応できる強い組織をつくることで総合的な働きがいのスコアを高め、「働きがい認定」の取得やランキングにランクインすることで、「⑧働きがいも経済成長も」に貢献する。そうしたストーリーを描くことができると考えます。
世界に目を向けると、例えばAdecco Groupは非財務指標としてGPTWのランキングをKPIに置き 、公開しています。レポートの中ではSDGsのいくつかの目標を引用しながら、優秀な人材を獲得して共に成長していくためには、働きがいのある職場づくりが欠かせないとしています。(Adecco Group 2020年アニュアルレポートよりP.32,39参照)
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SDGsに取り組むメリット と GPTWスコアが指標に選ばれる理由
SDGsに取り組むことは、投資家からESG関連の資金調達する上では必須事項となっていくことは言うまでもありません。資金調達の考えは当面なくとも、SDGsの達成に向けて自社が貢献できることを言語化することは、多くのメリットを生み出します。
例えば環境保全や日本が遅れているとされる女性活躍推進に対して、自社らしいやり方でそれに取り組んでいることを明示することは、採用市場において求職者にアピールする好材料となります。また、世界の先行事例に則れば、企業のESGやSDGsに対する姿勢は将来的に、顧客が商品・サービスを選択する基準として大きなウェイトを占めていく流れはより強くなっていくと言えます。すなわち、持続可能な社会をつくるために、企業が担う役割にかかるお金は「コスト」ではなく「必要経費」となっていくでしょう。
GPTWの調査設問やランキングは、世界各国および日本において働きがいの高い会社をベンチマークとして比較することができるので、自社の現在地点が高いのか低いのかがわかり、さらにベンチマークを基準として目標値を設定することができます。社内の独自調査でも経年変化を追うという意味では有効ですが、客観的なものとしてGPTWの指標を利用することは、対外的に自社の立ち位置や目指す姿を明示するという意味で、価値があるのではないでしょうか。
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