1on1ミーティングとは?目的や進め方、話すことのテーマを紹介

更新日 2022.09.122022.09.07コラム

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最近、1on1ミーティング(上司と部下との面談)の導入が、多くの企業で進んでいます。コロナ禍で部下の状況が見えにくくなっている今、新しいコミュニケーションのスタイルとして注目を集めています。一方で導入企業では、いくつかの課題にも直面しています。例えば、上司からは、「忙しい業務の中で時間がとられる」「将来のキャリアについて相談をされても回答に困る」といった声、部下からは、「特段これといった相談は思い当たらない」といった声が寄せられるのです。

GPTWが選出する働きがい認定企業では、10年以上前から1on1ミーティングを導入している企業が少なくありません。うまく活用すると職場の働きがい向上にもつながるからです。そこで、このコラムでは1on1のよりよい活用に向けて、働きがい認定企業で実際に行われている取り組み方法や工夫について、ひも解いていきたいと思います。

1on1ミーティングとは?

1on1ミーティングは、一般的には、「上司と部下との面談」のことで、定期的に行われることが特徴です。企業によってミーティングの長さや頻度は異なりますが、1回30分~1時間程度、週1回~月1回の頻度で行われていることが多いようです。

面談者は、多くの場合「直属の上司」が担いますが、部門長やメンター(職場の先輩)、経営者という例もあります。もともと、米国シリコンバレーの企業が、社内のコミュニケーション不足の解消にむけて取り組み始めたことがきっかけと言われています。

1on1ミーティングと評価面談との違いは?

1on1ミーティングを上司と部下の有意義なコミュニケーションの場にしていくには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。

日本企業で馴染みのある「評価面談」との比較で考えてみましょう。まず話し合うトピックは、評価面談では「業務の進捗や成果」(現在の仕事)が主となりますが、1on1ミーティングでは、「部下が相談したいことすべて」となります。つまり、場のねらいは、部下育成や支援に置かれています。結果として、相談内容が、仕事の話になることもありますが、例えば、「社内プロジェクトを進めるにあたり、プロジェクトメンバーがなかなか期日を守ってくれない」(人間関係の悩み)、「将来は〇〇に関する仕事をやってみたい」(将来のキャリアの展望)といった内容も大いに含まれるのです。

コミュニケーションのアプローチは、評価面談では上司から部下に対して「一方通行」になりがちですが、1on1ミーティングでは「双方向で対話」することを目指します。なぜなら、部下の成長を促すにはそもそも本人が相談したいことを引き出したり、なにが解消されれば悩みは解決しそうなのか、当事者として考えてもらったりするようなやりとりが必要だからです。

1on1ミーティングが話題となっている背景

では、アメリカのIT企業で始まったこのような面談手法が、今日本で取り入れられているのは、なぜなのでしょうか。

考えられるのは、コロナ禍の影響です。リクルートマネジメントソリューションズが2022年1月に実施した「1on1ミーティングに関する実態調査」によると、1on1ミーティングは日本企業の約70%で導入が進んでいて、そのうち60.5%がこの3年間で導入したということです。リモートワークの導入もあり、職場で直接顔を合わせる機会が減少し、部下の状況がわかりにくくなったことがあるでしょう。かつては職場のコミュニケーションとして、普通に行われていた“飲み会”や“ランチ会”が制限されていることも経営にとっては痛手です。

コロナとは直接関係がありませんが、上司である管理職の多くがプレイングマネジャーで忙しい業務の合間に部下のマネジメントをしなくてはならないといった事情も普及の背景としてありそうです。1on1ミーティングが定期的に設定されていれば、部下の状況を把握し、どんなサポートを行うべきなのか具体的にイメージすることができます。

1on1ミーティングの導入状況

1on1ミーティングの目的とメリット

積極的導入が進んでいるものの、定期的に行う1on1ミーティングは、頻度が多く時間がないと業務をひっ迫させ、中身が不完全であると不満の種にもなりかねません。改めて、場の目的とメリットを整理して理解しておくことが大切です。

まず、目的ですが、1on1ミーティングは、「上司と部下が対話することを通じて、部下が成長すること」を目指しています。よって部下にとってのメリットは、定期的な相談の場があることで、業務を進める上で何となくつまずいていた仕事の相談を気軽にでき前に進められたり、必要なリソース(他部署の協力、予算)を上司に掛け合ったりできるような機会であることです。また将来のキャリアやプライベートについて話すことがあれば、上司は自分を理解してくれているという安心感にもつながり、積み重ねていくことでお互いの信頼関係を醸成することにもつながります。

一方、部下の育成をねらいにしているものの、実は上司や会社にとってもメリットがあります。上司は、部下と率直に話すことで、自分のマネジメントの課題を認識できたり、回を重ねていくうちに部下の成長を感じたりする喜びの瞬間も味わえるでしょう。

1on1ミーティングの進め方

ここでGPTWが選出する「働きがい認定企業」(調査の結果、一定水準以上であると認められた会社)で行われている1on1ミーティングの進め方として、よくあるステップ1~4を紹介します。

ステップ1:面談で扱う内容について決定する

なにを話したいかについては、部下が決定します。「特にない」という場合には、上司から最近の仕事の状況などについて触れることも可能ですが、あくまで本人の意思を尊重するように心がけましょう。

ステップ2:上司は部下の話を傾聴する

テーマが決定したら、部下に質問をしながら、うまくいっていること、困っていることなどに耳を傾けましょう。気持ちに寄り添うことが大切で、上司の興味のある内容で質問攻めにしたりしないよう気を付けましょう。

ステップ3:具体的な行動と期限を決定し、上司ができる支援を明確にする

話してもらったことについて、本人の気づきや次に起こすべきアクションについて問いかけをします。その際、上司に支援してもらいたいことがあればヒアリングし、すぐに解決できることがあれば、その場で回答するようにしましょう。

ステップ4:本日の振り返りを行う

簡単にミーティングの内容を振り返り、決定したアクションや自ら行うサポートについてお互いが確認することが大切です。そして、本人が行う次の一歩については、背中を押してあげるような気持でポジティブな一言を添えられるとよいでしょう。上司は話した内容を記録しておくことで、次回のミーティングに役立てていくことができます。

1on1ミーティングの進め方

1on1ミーティングの進め方

1on1ミーティングで話すことやテーマ

冒頭に1on1ミーティングで扱うテーマ(トピック)は、「部下が相談したいことすべて」と述べました。具体的にどのような内容が話されているのでしょうか。GPTWでは、働きがい認定企業の選出にあたり、各企業に「会社へのアンケート」(各種人事施策やカルチャーについての記述書)を提出いただいていますが、その記載内容から代表的なものを以下に列挙したいと思います。

・仕事の進め方・必要なリソースの調達方法
・職場の人間関係の悩み
・中長期的なキャリアに関するもの、やってみたいチャレンジ
・プライベート(家族のこと、休日の過ごし方、趣味等)
・会社方針など大きな出来ごとについての不安
・最近の仕事から学んだこと(失敗・成功体験の共有)

さらにテーマの発想を拡げるために、「時間軸」や「話す対象」の二軸から考えてみることもお勧めです。

1on1で話すことのテーマ例

1on1で話すことのテーマ例

1on1ミーティングで本音を聞き出すポイント

1on1ミーティングは、上司と部下とのコミュニケーションの場として実施するだけでも意義のあることですが、お互いにとって良い場にしていくには、部下が本音で話すことができているかがポイントになります。今なににつまずいているのか、困っているのか、悩んでいるのか、必ずしも前向きな話題ばかりとは限りません。一般的にネガティブな話を管理職にしていくというのは従業員の立場から考えると心理的なハードルが高いことでもあります。

特に日本企業のカルチャーにおいてその傾向があることが、日米比較をしたデータで理解できます(下図)。GPTW調査には、経営・管理者層とのコミュニケーションレベルを問ういくつかの質問がありますが、日米の結果を比較すると「経営・管理者層による伝達」についてはそれほど差がなかったのに対し、「経営・管理者層との距離」については大きな乖離が見られました。日本では働きがい認定企業の上位群であっても、「伝える」ことより「聴く」(お互いの距離を近づける)について改善の余地がありそうです。

マネジメントとのコミュニケーション日米比較

「経営・管理者層が重要事項・変化を伝えている」について日米間の差は2ptであったが、「経営・管理者層は気軽に話せる」についての差は17ptとなった。GPTW60問の設問の中でもこの差は上位2位となるほど大きい。

では、部下の本音を引き出すにはどのような工夫があるとよいでしょうか。お互いの心理的な距離を近づけるには、例えば、上司は話しやすい雰囲気をつくるために、会議室ばかりでなく、時にはカフェを利用してみる、座る位置を工夫してみるとよいでしょう。相手の話を遮らず、聴くことに集中する、うなずいて反応するなども有効です。働きがい認定企業では、1on1ミーティングを、“雑談”といったネーミングにして呼んでいる企業がありますが、こうした従業員側の心理的なハードルを緩和させ、親しみのあるイメージを持ってもらうことも期待していると思われます。

1on1ミーティングでは、双方向での対話を目指しますが、それは相手から表層的に出てきた意見や行動だけでなく、その背景になる考え方や価値観、つまりコンテキストと言われる部分について理解し合うことを意味します。相手の本音を引き出すには、このコンテキストを理解しようとする姿勢が欠かせません。上司と部下が信頼関係にあることが大前提となるでしょう。

しかしながら、信頼とは目に見えず高めていくことは簡単ではありません。働きがいの職場のリーダーは、部下に対してGiftwork®というアプローチでコミュニケーションをとっています。Giftwork®は、従業員や経営・管理者層がお互いに、当初の期待や要求を上回るものを提供することで、組織全体や人間関係の向上に寄与できる相互交流のことを Giftwork® と呼んでいます。1on1はなにをGiftwork®したらよいのか、情報収集する場として最も適切とも言えるでしょう。

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1on1ミーティングを継続させるためには?

1on1ミーティングは職場のマネジメント上においてもメリットが期待できる一方で、管理職にとっては「一日中、面談続きで自分の仕事ができない」「部下の悩みを聞いたところで解決にむけたアドバイスができない」、部下にとっては「特に相談はない」といった不満も見聞きします。こうした不満を放置してしまうと、せっかくのよい施策が形骸化したり、やらされ感が募ったりと効果は期待できません。では、うまく継続していくにはどうしたらよいのでしょうか。3つのポイントがあります。

1on1ミーティングは短い時間で頻度を上げる

働きがい認定企業では、1回の所要時間は30分程度に設定している場合が多く、中には15分という例もあります。その代わり、週1回、月1回と回数を増やすこともお勧めです。業務時間内に行い、両者が集中して向き合うことが大切です。どちらかが急用の場合、キャンセルできるような柔軟さもあるとよいでしょう。

管理職に対して会社からのサポート・支援ツールがある

1on1ミーティングの質の良し悪しは管理職の関わり方が大きく影響します。本質的なねらいを理解し、効果的な進め方や対話のスキルを身に着けていることが大切です。管理職向けの研修があるとよいでしょう。あるいは、読んで理解できるようなマニュアルを上司や部下の両方に配布するのもよいでしょう。部下側がテーマを決められず、「特に話すことがない」という課題については、具体的にテーマとなりそうな事例が示されているとイメージしやすくなります。

人事部が、現場任せにせずミーティングの質の向上に関わる

人事部が定期的に上司、部下の双方に対して、アンケートをとり満足度を確認します。課題が確認できた場合には、必要に応じ人事が上司に掛け合い、改善に向けたアドバイスを行うとよいでしょう。

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働きがい認定企業における1on1ミーティングの事例

働きがい認定企業では、多くの企業で1on1ミーティングが導入されています。「上司と部下の双方向のコミュニケーションをベースとしている」、「お互いの信頼を高める身近な機会である」、「成長やチャレンジ、未来といったポジティブなゴールを置いている」といったことが働きがいと親和性が高いという特徴もあると思います。

バリューの実現とリンクした1on1ミーティングの事例

若手ランキングにもランクインしているA社では、コアバリューに、従業員のチャレンジと仕事を通じた成長を掲げています。人事制度には、従業員のWill(やりたいこと)をベースに成長に向けた支援をマネジメントが積極的に行っています。成長のための目標設定や進捗を話し合う場として活用されているのが、上司と部下の1on1ミーティングです。

職場の信頼醸成を目的とした1on1ミーティングの事例

社員の離職が増え、コミュニケーションにも課題を感じていたB社では、会社のミッションを意識した経営を行いました。その際、導入したのが、1on1ミーティング。週1回の対話の機会を設定しました。対話では、特に“自己開示”を大切するよう管理職、従業員に投げかけたようです。例えば「自分の価値観がどう形成されたのか」「自分の苦手な部分、弱い部分はどこか」「直したいと考えている悪い癖」についてお互い共有するといったことです。結果として率直なフィードバックをし合える信頼関係を組織の強みにしていくことができました。

働きがい認定企業で行われている1on1ミーティングには、さまざまな種類があります。直属の上司と部下との面談(表中「1on1ミーティング」)が標準的ではありますが、「誰」と対話するのか、「定期的なのか不定期なのか」というパターンで整理してみると、バラエティに富んでいることが分かります。例えば以下のような種類があります。

・「経営との1on1」・・・社長との個人面談です。あるいは経営メンバーで話してみたい人を指定できる会社もあります。
・「スキップ・ミーティング」・・・従業員から見て直属の上司のさらに一つ上の管理層とのミーティングです。
・「評価面談」・・・目標について進捗度合や、期の最後に成果について話し合う上司との面談です。
・「メンターとの1on1」・・・メンターには従業員からみて近い年齢の先輩が担当します。会社によっては、他部署の管理職が担う場合もあります。
・「バディとの1on1」・・・入社後のフォローとして、同じ部署の先輩が担います。

1on1の種類

1on1の種類

企業によっては、複数のミーティングを組み合わせて施策として落とし込み、組織におけるタテ・ヨコ・ナナメの関係性を築いています。正解はありませんので、自社に合ったやり方でやってみることが大事だと思います。

まとめ

1on1ミーティングとは、上司と部下とのコミュニケーション場として様々なメリットが期待できます。日常的に丁寧に積み重ねていくことでお互いの信頼関係を構築できれば、職場全体の働きがいも向上していくでしょう。

しかしながら、1on1ミーティングが形骸化せず、従業員の働きがいにも寄与していくには、管理職がこのミーティングを効果的に実施するだけでは十分とは言えず、会社として人材育成のプログラム、公正な評価システム、フィードバックが奨励されるオープンなカルチャーなどがベースとして実現されていることも重要です。そうした大きな体制整備があってこそ、職場で行われる一つひとつの1on1ミーティングが機能していくことの意義があります。

Great Place to Work(R) Institute Japan シニアコンサルタント 今野 敦子

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名古屋大学大学院経済学研究科(経営管理学)修了。フランス国立ボンゼショセ工科大学MBAコース取得。
外資系航空会社、医療系商社の人事部を経て、リクルートマネジメントソリューションズに入社。人事領域において、採用・制度設計・人材育成など一連の業務に携わる。
2009年GPTWジャパン設立メンバーとして、事業立ち上げに参画。働きがいのある職場を目指す多くの企業などに調査分析、経営層への提言と支援を行う。

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