ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いや従業員・組織へのメリット・デメリットを解説

更新日 2024.11.252024.08.21コラム

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ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用の定義・意味

ジョブ型雇用は、特定の職務や役割に基づいて従業員を雇用・評価する雇用形態であり、従業員の職務内容や責任を明確に定義することを特徴としています。この雇用形態は、特に専門性が求められる職務や、成果主義の組織風土・環境において適用されるケースがあります。ジョブ型雇用とは、職務(ジョブ)の内容や責任が明確に定義され、その職務に応じたスキルや成果が評価される雇用形態です。
具体的には、以下のような特徴があります。

職務の明確化

ポジションに求められる具体的な業務内容や役割が明確に定義されており、従業員はその職務に必要なスキルや知識を持つことが求められます。

成果に基づく評価

職務遂行の成果に基づいて評価が行われるため、従業員は自分の成果が直接的に評価や報酬に反映されます。

職務に特化したキャリアパス

キャリアパスが職務に特化しており、専門性を高めることが求められます。これにより、従業員には、特定の職務において高い専門性を持つことが期待されます。

メンバーシップ型雇用との比較

現在、多くの日本企業はメンバーシップ型雇用を採用しています。このメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の間は、主に以下のような違いがあります。

職務内容の定義

まずは、職務内容の定義です。では、職務内容が比較的曖昧であり、従業員は様々な業務を担当することがあります。一方、ジョブ型雇用では、職務内容が明確に定義されており、従業員は特定の職務に従事します。

評価基準

次に評価基準です。メンバーシップ型雇用では、長期的な貢献度や組織への適応度が評価の基準となりますが、ジョブ型雇用では、職務遂行の成果が直接的に評価されます。

キャリアパス

最後はキャリアパスです。メンバーシップ型雇用では、組織内での多様な経験が評価されるため、キャリアパスが比較的広範囲にわたります。一方、ジョブ型雇用では、特定の職務に特化したキャリアパスが設けられます。

これらのほかにも、以下のような違いがあります。

メンバーシップ型雇用 ジョブ型雇用
職務内容 職務内容が比較的曖昧であり、従業員は様々な業務を担当することがある 職務内容が明確に定義されており、従業員は特定の職務に従事する
評価基準 長期的な貢献度や組織への適応度が評価の基準となる 職務遂行の成果が直接的に評価される
報酬制度 年功序列の給与体系 職務の成果や市場価値に基づく給与体系
キャリアパス 組織内での多様な経験が評価されるため、キャリアパスが比較的広範囲にわたる 特定の職務に特化したキャリアパスが設けられる
採用 組織への適応度や将来のポテンシャルを重視 職務遂行能力や専門知識を重視

また、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用を比較した際によく出る質問として「ジョブ型雇用では配置転換ができないのか?」というものがあります。ジョブ型雇用で配置転換をすることは、完全に不可能ではありませんが、スキルや経験に基づいた配置転換が中心になり、メンバーシップ型に比べると限定的になります。

さらに、近年ではメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用のハイブリッドモデルも登場しています。例えば、新入社員を最初の数年間はメンバーシップ型で育成しその後ジョブ型に移行するというあり方や、管理職にのみジョブ型雇用を導入するというあり方があります。メンバーシップ型雇用のよさ生かしつつ、必要な部分にはジョブ型を取り入れるという考え方も必要となりそうです。

成果主義との関係

ジョブ型雇用と成果主義は、しばしば混同されることがありますが、実際には異なる観点に基づいた考え方です。ジョブ型雇用は、役割や職務ごとに仕事内容や求められるスキルを明確にし、そのポジションに適した人材を採用・配置する「採用・配置」に対するアプローチです。一方で、成果主義は業務遂行の結果や成果に基づいて評価や報酬が決まる「評価・報酬」に対する考え方です。この二つは異なる観点に基づいていますが、以下の点で相互に深く関連しています。

評価

ジョブ型雇用では、職務遂行の成果に基づいた評価が行われるため、職務に応じたスキルや知識が重視されます。これに対して、成果主義では業務の成果そのものに焦点が当てられます。例えば、あるプロジェクトが成功したかどうかが評価の主要な基準となるため、成果を上げることが直接的に評価に結びつきます。このように、評価の焦点は異なりますが、どちらも成果や職務の質を重視する点では共通しています。

報酬

報酬の決定方法にも違いがあります。成果主義では、業績に応じて報酬が変動し、高い業績を上げた従業員にはインセンティブやボーナスが支給されます。一方、ジョブ型雇用では、職務に対する成果に基づいた評価が行われ、その評価に基づいて報酬が決定されます。つまり、職務の専門性や難易度に応じた固定給が基本となり、職務遂行の成果に応じて報酬が調整されます。

キャリアパス

キャリアの進展に関しても、両者は異なるアプローチを取ります。成果主義では、成果を上げることでキャリアが進展します。目標を達成した従業員には昇進や昇給の機会が増えるため、成果がキャリアパスに直接影響を与えます。一方で、ジョブ型雇用では、職務に特化した専門性が重視され、キャリアパスが職務に基づいて構築されます。職務ごとのスキルや知識を高めることでキャリアが進展し、専門性の向上がキャリアの鍵となります。

ジョブ型雇用と成果主義は異なる考え方ですが、両者を適切に組み合わせることで、組織の効率性やパフォーマンスをさらに向上させることが可能です。これらの要素を理解し、自社に最適な雇用形態を導入することで、効果的な人材管理が実現します。

ジョブ型雇用の導入により、職務の明確化や専門性の重視が進み、評価の透明性や公正性が向上し、従業員は自分の役割や期待される成果を理解しやすくなり、キャリア設計もしやすくなります。しかしながら、職務が明確化される分、異動や柔軟な対応が難しくなる可能性があり、従業員に対するプレッシャーが増加することも考えられます。

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ジョブ型雇用が日本で注目されている背景

アメリカなど海外の雇用形態としてのイメージが強いジョブ型雇用ですが、近年、日本の企業においてもジョブ型雇用が注目を集めています。従来のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行は、日本の人事・労務管理に新たな風を吹き込んでいますが、その背景には、経済環境の変化や労働市場の動向、そして企業の競争力強化に向けた取り組みが影響しています。

経済環境の変化

日本の経済環境は、グローバル化やデジタル化の進展によって大きく変化しています。これに伴い、企業はより専門的で効率的な業務遂行が求められるようになりました。特に、技術革新や市場のニーズの変化に迅速に対応するためには、職務ごとに明確な役割と責任を定義し、それに応じた専門性を持つ人材を確保することが重要となり、ジョブ型雇用が注目されています。

労働市場の変動

日本の労働市場は、少子高齢化や労働力人口の減少といった構造的な課題に直面しています。このため、企業は限られた人材リソースを最大限に活用するために、職務に応じた専門的なスキルや経験を持つ人材の確保が必要とされています。ジョブ型雇用は、職務に特化したスキルを持つ人材の採用と育成を促進し、効率的な人材管理を実現する手段として注目されています。

競争力の強化

グローバル競争が激化する中で、日本企業は国際的な競争力を維持・向上させるために、業務の効率化と専門性の強化が求められています。ジョブ型雇用は、職務の明確化と成果主義の導入により、業務の効率化や生産性の向上を実現するための有力な手段とされています。また、専門性の高い人材を確保し、競争力を強化することが可能です。

企業の変革とイノベーション

競争力強化に向けて企業が変革やイノベーションを推進するためには、柔軟で適応力のある人材が必要です。ジョブ型雇用は、職務の定義と評価基準を明確にすることで、従業員が自分の役割や目標を明確に理解し、成果を上げるための動機付けを行うことができます。これにより、企業の変革やイノベーションを支える人材の活用が促進されます。

ジョブ型雇用が日本で注目される背景には、経済環境の変化、労働市場の動向、企業の競争力強化、そして変革やイノベーションの推進などの要因があります。これらの要因が相まって、ジョブ型雇用は日本の企業にとって重要な選択肢となりつつあります。

職務の明確化や専門性の強化、効率的な人材管理を実現するために、ジョブ型雇用を導入する企業が増えています。ただし、導入にあたっては準備や運用に対する理解が必要であり、企業の状況に応じて適切な導入方法を検討することが重要です。

また、日本のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への変化は、雇用制度の見直しに留まらず組織文化の変革を伴うケースがあります。例えば、職務記述書の作成やその過程自体が、組織の価値観や目標を再定義する機会ともなり得ます。

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企業にとってのジョブ型雇用のメリット・デメリット

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ジョブ型雇用は、企業にとって多くのメリットを提供する一方で、いくつかのデメリットも存在します。企業の業務効率化や競争力の強化を目指す際には、ジョブ型雇用がどのように役立つか、またどのような課題に直面するかを理解することが重要です。

ここからは、ジョブ型雇用の企業にとってのメリットとデメリットを詳しく見ていきます。

企業にとってのジョブ型雇用のメリット

職務の明確化と業務の効率化

ジョブ型雇用では、各職務の役割や責任が明確に定義されるため、業務の効率化が図れます。職務が明確であれば、従業員が自分の役割を理解しやすく、無駄な業務や重複を避けることができます。これにより、業務の流れがスムーズになり、全体の生産性が向上させることができます。
また、職務の範囲が明確なため、それ以外の時間の使い方の自由度が増し、副業・複業をしやすくなります。

専門性の高い人材の確保

職務に特化したスキルを持つ人材を確保することで、専門性が高まり、業務の質が向上します。特に高度な専門知識や技術が求められる分野では、ジョブ型雇用が効果的です。

評価の透明化

ジョブ型雇用は職務内容が明確なため、公正で透明性の高い評価を行いやすくなります。これにより、従業員のモチベーションが向上し、業務の効率性や生産性が高まります。また、成果主義の報酬制度との親和性が高く、業績向上に向けた意識が高まります。

効率的な人材配置

ポジションごとに必要なスキルが明確になるため、適材適所での人員配置を行いやすくなり、組織の生産性向上につなげることができます。

グローバル人材の確保

国際的に通用する雇用形態であり、職務内容や評価基準が明確なため外国人材の採用を促進しやすくなります。また、その結果としてや日本国内外の拠点を問わず国際的な人材交流を円滑に行えるようになり、  グローバル展開を目指す企業にとっても大きなメリットになります。

企業にとってのジョブ型雇用のデメリット

導入・運用コスト

ジョブ型雇用の導入には、職務の明確化や評価基準の設定、スキルの見極めなどが必要であり、一定のコストと時間がかかります。また、既存の組織文化や人事制度との整合性を取るための調整も必要です。

柔軟な配置転換が困難

ジョブ型雇用では職務が明確に細分化して定義されるため、突然の人員変更や配置転換が困難になります。また、急速に変化する市場や業界では、職務内容を頻繁に見直す必要が生じる場合があります。

組織の一体感の低下

個々の職務に焦点が当たるため、部も間の連携や協力が弱まる可能性があります。また、従業員の会社への帰属意識が低下する可能性もあります。

キャリアパスの制約

職務に特化したキャリアパスが設定されるため、横の異動や多様な経験を積む機会が限られることがあります。これが従業員の成長やキャリアの幅を制限する可能性があります。

ジョブ型雇用に向いている企業

専門性が求められる業界

ジョブ型雇用は、専門性の高い業界や分野に向いているといわれています。例えば、IT業界、製薬業界、研究開発など、高度な専門知識や技術が必要とされる分野では、ジョブ型雇用が効果的です。

業務が明確に定義される企業

業務プロセスが明確に定義されている企業や、職務内容がはっきりしている企業では、ジョブ型雇用がスムーズに導入できます。特に、大規模なプロジェクトや専門的な業務が多い企業に適しています。

成果主義を導入している企業

成果主義を採用している企業においては、ジョブ型雇用との親和性が高いです。業務の成果に基づいて評価や報酬を決定するため、ジョブ型雇用のフレームワークが役立ちます。

ジョブ型雇用には、専門性の向上や効率的な人材配置といったメリットがある一方で、導入や運用にかかるコストや、組織の一体感の低下といったデメリットも存在します。特に、専門性が求められる業界や業務内容が明確に定義されている企業、そして成果主義を採用している企業であれば、日本企業にとってもジョブ型雇用の導入による利点は大きいです。しかし、そのためには職務の明確化や評価制度の整備といった準備が必要です。業務の性質や組織のニーズに応じて、導入を慎重に検討することが重要です。

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従業員にとってのメリット・デメリット

企業にとってジョブ型雇用のメリット・デメリットがあるように、従業員にとってもジョブ型雇用のメリット・デメリットがあります。ここでは、従業員から見たジョブ型雇用のメリット・デメリットについて説明していきます。特に、メリットは従業員の働きがいを向上させることにもつながると考えられます。

従業員にとってのジョブ型雇用のメリット

キャリアパスの明確化

ジョブ型雇用では、職務内容や評価基準が明確に定義されているため、従業員は自分のキャリアパスを具体的に描きやすくなります。どのスキルや経験が必要で、どのような成果が求められるかが明確になるため、目標設定がしやすくなります。
また、職務に特化したキャリアパスが設けられることで、従業員は自分の専門性を高めることができ、自身のキャリアビジョンを描きやすくなります。このように、自らの成長とキャリアアップが見えやすい環境は、働きがいを高めることにつながります。

モチベーションの向上

職務ごとに明確な職務内容が設定されているため、従業員は自分が何を求められているかを理解しやすくなります。これにより、目標達成に向けた集中力が高まり、働きがいを感じやすくなると言えるでしょう。また、評価基準も明確であるため、従業員は自分の成果が正当に評価されると感じやすくなります。従業員が出した成果が直接的に評価や報酬に反映されるため、努力が正当に報われる環境が整っているといます。自分の貢献が組織内でしっかり評価されることで、より働きがいを感じ、意欲的に働けるようになります。

専門性の向上

ジョブ型雇用では、特定の職務に対する専門性が重視されるため、従業員は自分の専門分野でスキルを磨き、深めることができます。専門性を高めることにより、自分のキャリアパスがさらに充実し、職務への適応力も向上します。

従業員にとってのジョブ型雇用のデメリット

職務内容の変更リスク

ジョブ型雇用では、職務内容が変更される可能性があり、その都度適応が求められます。従業員は新しい職務に対して迅速に適応し、必要なスキルを習得する必要があります。この適応が難しい場合、キャリアの継続に支障が生じる可能性があります。

安定性の欠如

ジョブ型雇用では、職務の成果に基づいて評価が行われるため、成果が上がらない場合や職務が廃止された場合も考えられます。このような場合は、長期的なキャリア形成が難しくなる可能性があります。

職務間の競争激化

職務ごとに評価が行われるため、同じ職務を担当する従業員間での競争が激しくなることがあります。これにより、職場の協力関係が損なわれる可能性があります。競争が激化すると、個人主義が強まり、職場の雰囲気や人間関係が悪化する可能性があります。

ジョブ型雇用に向いている人

また、メリット・デメリットを踏まえて、ジョブ型雇用に向いている人の要素は以下のとおりです。

専門的なスキルを持つ人

高度な専門スキルや技術を持つ人材は、ジョブ型雇用に向いています。職務に特化した専門知識や経験が評価されるため、専門性を高めたいと考えている人に適しています。専門職としてのキャリアを追求する意欲がある人にとって、ジョブ型雇用は理想的な環境といえます。

成果に基づく評価を重視する人

自分の成果が評価や報酬に直接反映されることを望む人は、ジョブ型雇用に向いています。成果主義の環境で自分の成果を証明したいと考える人には向いています。成果を上げることに自信がある人や、業績で自分を評価されたいと考える人にとって、ジョブ型雇用は非常に魅力的です。

明確なキャリアパスを望む人

職務に特化したキャリアパスを望む人にとって、ジョブ型雇用は適しています。専門性を深めることでキャリアを築きたいと考えている人には向いており、自分の専門分野での成長を追求することで、長期的なキャリアビジョンを描くことができます。

ジョブ型雇用に向いている人は、高度な専門スキルを持つ人、成果に基づく評価を重視する人、明確なキャリアパスを望む人で、この特徴に合致する人にとっては働きがいを感じながら仕事に取り組める雇用形態といえるでしょう。企業はこれらを考慮し、自社のニーズや従業員の特性に合わせた人事制度の設計を行うことが重要です。

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ジョブ型雇用導入の3つのステップ

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ジョブ型雇用の導入は、単なる制度変更にとどまらず、企業の文化や運営方法に深い影響を与える可能性があり、導入成功に導くためには、慎重な計画・実行が必要です。

ここでは、ジョブ型雇用の導入を成功させるための3つの重要なステップを示します。これらのステップを、ジョブ型雇用の導入をスムーズに進めるための参考としてみてください。

ステップ1 職務の明確化と定義

職務内容の洗い出しと明確化

ジョブ型雇用を導入する最初のステップは、各職務の内容と責任範囲を明確に定義することです。職務ごとの役割や期待される成果を具体的に記載し、従業員が自分の職務について理解できるようにします。これには、業務フローの分析や、現場のヒアリングが必要です。

職務内容が曖昧であると、従業員が自分の役割や期待される成果を理解しにくくなります。このため、職務の詳細な定義と明確な説明が不可欠です。

業務フローの分析や現場のヒアリングが不十分な場合、実際の業務内容と職務定義が乖離することがあります。現場の意見をしっかりと反映させることが重要です。

職務要件の設定

各職務に必要なスキルや資格、経験を明確にすることも重要です。これにより、適切な人材の採用や育成が可能になります。また、職務要件の設定は、評価基準の策定にも役立ちます。

コミュニケーションの強化

職務内容や要件の変更を全社員に周知することが必要です。これにより、従業員は新しい制度の目的や自分の役割を理解しやすくなります。適切なコミュニケーションを図ることで、制度への理解と協力を得やすくなります。

ステップ2 評価基準と報酬制度の整備

成果に基づく評価基準の策定

ジョブ型雇用の成功には、成果に基づく評価基準が不可欠で、各職務の成果をどう測定するか、どのように評価するかを明確に定めることが求められます。具体的なKPI(重要業績評価指標)や目標設定を行い、評価基準を透明にすることが必要です。

成果の評価基準が曖昧だと、従業員がどのような成果を上げれば良いか不明確になり、評価に対する不満が生じる可能性があります。具体的で測定可能な基準を設定することが重要です。

報酬制度の整備

評価に基づいた報酬制度を整備することで、従業員のモチベーションを高めることができます。成果に応じたボーナスや昇給、キャリアパスの設計、報酬制度の整備が重要です。報酬が明確に成果と連動することで、従業員は目標に対してより高い意欲を持つようになります。
成果に基づいた報酬制度が導入されていない場合、成果と報酬の乖離が問題となります。公平で透明性のある報酬制度を設計し、全従業員に理解されるよう努める必要があります。

フィードバックと改善の仕組みの導入

評価や報酬に対するフィードバックの仕組みを導入し、従業員が自己改善に努められる環境を整えることが重要です。また、制度導入後も定期的に評価基準や報酬制度を見直し、改善を図ることで、制度の効果を持続させることができます。

ステップ3 変革の定着と文化の醸成

カルチャーの見直し

ジョブ型雇用を成功させるためには、企業文化(カルチャー)の見直しが必要です。職務や成果を重視する文化を醸成し、従業員が新しい制度に適応しやすくするための取り組みが求められます。文化の変革には、トップダウンとボトムアップの両面からのアプローチが有効です。
新しい制度が従来のカルチャーと合わない場合、従業員が制度に抵抗を示すことがあります。カルチャーの見直しや従業員の意識改革が不可欠です。

トレーニングと支援の提供

従業員がジョブ型雇用に適応できるよう、必要なトレーニングや支援を提供します。職務に必要なスキルの習得や、新しい評価制度の理解を助けるための研修を実施することで、従業員がスムーズに新しい制度に適応できるようにします。

従業員が新しい制度に適応できない場合、十分なトレーニングやサポートが提供されていない可能性があります。適切なトレーニングプログラムを設計し、従業員が新制度を理解し活用できるようにすることが重要です。

定期的なレビューとフィードバック

制度の運用状況を定期的にレビューし、必要な改善を行うことが重要です。従業員からのフィードバックを積極的に収集し、制度の効果を評価しながら柔軟に対応することで、ジョブ型雇用の定着を図ります。

ジョブ型雇用の導入には、職務の明確化と定義、評価基準と報酬制度の整備、変革の定着と文化の醸成という3つのステップが重要です。計画的にジョブ型雇用の成功を目指していきましょう。

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ジョブ型雇用を導入した企業の事例

ジョブ型雇用が日本でも注目されるようになり、企業の戦略的な人事改革の一環としてジョブ型雇用を導入する事例が見られるようになりました。ここからは、ジョブ型雇用を導入した企業の事例について、導入背景とポイントの観点からご紹介していきます。

A社

ジョブ型を導入した背景

A社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展やグローバルな事業環境の変化に対応するため、ジョブ型雇用を導入しました。この取り組みの主な目的は、多様な人材を活用し、特にIT・デジタル領域の高度な専門性を持つ人材の獲得競争に対応することです。従来のメンバーシップ型雇用では、個々の役割や責任が曖昧になりがちでしたが、職務の定義を明確にし、業務の効率化を図ることを目指しています。

導入のポイント

A社は、ジョブディスクリプション(職務記述書)を詳細に作成し、職務内容と成果目標を明確に設定しました。多様な人材の多様な働き方を支援し、適材適所を実現することを目指しています。また、社内の教育プログラムを強化し、社員のスキルアップをサポートする体制を整備し、グローバルでの人材活用を念頭に置き、多様なバックグラウンドを持つ社員の活躍を促進しています。

B社 

ジョブ型を導入した背景

B社は、急速に変化する市場環境に対応し、革新を推進するためにジョブ型雇用を導入しました。B社の業界では、消費者のニーズがますます多様化しており、柔軟な人材配置と高度な専門スキルが求められています。グローバル市場でのブランド力を強化するため、各地域の市場ニーズに合わせた製品開発とマーケティングが必要であり、専門性を持った人材の活用が不可欠となっています。

導入のポイント

B社は、ジョブ型雇用の導入に際して、社員のキャリアパスを明確にし、専門性を高めるための研修プログラムを充実させています。特にR&D部門やマーケティング部門では高度な専門知識を持つ人材が求められ、これらの分野でのエキスパートを育成するための支援を行っています。また、社員のモチベーションを高めるためのインセンティブ制度も整備し、成果に応じた報酬体系を導入することで、社員の成果を正当に評価し、さらなるパフォーマンス向上を図っています。

C社 

ジョブ型を導入した背景

C社は、DXを推進するためにジョブ型雇用を導入しました。C社の業界では技術革新が急速に進んでおり、高度な専門性を持つ人材が必要とされています。ジョブ型雇用により、職務に応じた適切な人材配置を実現し、プロジェクト運営の効率を高めることを目指しています。さらに、リモートワークの普及により、場所にとらわれない柔軟な働き方が求められており、ジョブ型雇用がこのニーズに応えるための適切なアプローチと判断しました。

導入のポイント

C社は、プロジェクトベースでの業務運営を強化し、各プロジェクトに最適な人材を配置する体制を整備しました。これにより迅速かつ柔軟な対応が可能となり、顧客満足度の向上を図っています。また、社員のスキルと業績を定期的に評価し、適切なフィードバックを行うことで、社員の成長を促進しています。リモートワークの推進に伴い、クラウドベースのコラボレーションツールを活用し、社員同士がどこからでも効率的に連携できる環境を整備しています。さらに、フレキシブルな勤務時間制度を導入し、社員のワークライフバランスを重視しています。

事例企業の共通点

さらに、ここで紹介した企業の事例には、以下の共通点が見られます。

専門性の強化

各社は、業界の変化や市場のニーズに応じて、高度な専門性を持つ人材の獲得と活用を重視しています。

職務の明確化と成果目標の設定

ジョブ型雇用の導入にあたり、すべての企業が職務内容や成果目標の明確化を図っています。A社はジョブディスクリプションを詳細に作成し、B社はキャリアパスと専門性を高めるための研修を充実させ、C社はプロジェクトベースでの業務運営を強化しています。

柔軟な働き方の推進

各社は、リモートワークやフレキシブルな勤務時間制度など、柔軟な働き方の導入を進めています。C社はクラウドベースのコラボレーションツールを活用し、A社も多様な働き方を支援、B社はインセンティブ制度で社員のモチベーションを高めています。

社員のスキルアップと成長支援

すべての企業が社員のスキルアップと成長支援に力を入れています。A社は教育プログラムを強化し、B社は研修プログラムとインセンティブ制度を整備し、C社は定期的な評価とフィードバックを行っています。

ジョブ型雇用の導入が進む中、大手企業の事例には共通の特徴が見られ、これらの企業は業界の変化に対応し、高度な専門性を持つ人材の確保と活用を重視しています。具体的には、職務内容や成果目標の明確化を行い、職務に応じた専門的なスキルの強化を図っています。また、リモートワークやフレキシブルな勤務時間制度の導入を通じて、柔軟な働き方を推進し、社員のスキルアップや成長支援に努めています。これにより、業務の効率化や市場ニーズへの適応が進められ、企業の競争力強化へつなげようとしています。

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ジョブ型の導入には、従業員の働きがいの観点も考慮していくことが重要

これまでに説明してきたように、ジョブ型雇用の導入は、企業の競争力を高めるとともに、従業員の専門性やキャリアパスの明確化を促進します。しかし、ジョブ型雇用は、導入の方法を誤ると従業員の働きがいの低下や、組織の一体感を低下させてしまうというリスクもはらんでいます。ジョブ型雇用が持つ可能性を最大限に活かし、持続可能な組織運営を実現するためには、自社にとってよいあり方を見極め、制度設計と運用に反映していくことが必要となります。

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株式会社リクルートマネジメントソリューションズ コンサルティング部 上田 彩乃

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出版社にて編集として勤務後、2017年リクルートキャリアに入社(後にリクルートマネジメントソリューションズに転籍)
大手企業での採用に関するアセスメントやコンサルティング、トレーニングの提供に携わり、2024年4月より現職。

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